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第一章 異世界に来ました(一年前)
六、魔法と冷蔵庫
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私は畑でジャガイモも追加で収穫して調理場へ戻った。竈の中を見るとすでに薪がくべてある。燃え残りではなく新品の薪だ。
「魔法の竈か……。魔法……。もしかして私、魔法が使えたりして」
試しに竈の中の薪に向かって左手をかざしてみた。
「デロデロ~……」
なかなか火がつかない。『デロデロ』って呪文じゃないのか。今度は頭の中で薪に火をつけるイメージを浮かべてみる。すると……
――ボッ
「火がついた……。信じられない。私、魔法が使える?」
火をつけたときに体の中で何かが動く感覚がした。もしかして魔力というやつだろうか。あんまりやり過ぎるとお腹が空く気がする。きっと際限なく使えるものじゃないんだろう。私は海翔と一緒に遊んだロールプレイングゲームの魔法使いをなんとなく思い出してしまった。これは便利だ。
「よし、あとは調味料か」
冷蔵庫の一番上に向かって『デロデロ~』じゃなくて、きちんと欲しい調味料を指定してみた。
「醤油、砂糖、みりん、塩、サラダ油、料理酒……今はこんなもんかな」
取りあえずこれだけあればいいだろう。再び体の中で何かが動く感覚がした。やっぱり体の中に魔力っていうのがあって、特別なチカラを使うと減っていくんだろう。
恐る恐る冷蔵庫の一番上の謎スペースを開けてみる。すると中にはきちんと指定した調味料が入っていた。だが調味料はペットボトルではなくてガラス瓶に入っている。試しに黒い液体の入ったガラス瓶のふたを開けて香りを嗅いでみたら、中身は醤油だった。
「醤油まで出てくるとは……」
日本の調味料でも問題ないみたいだ。味噌とかカレールーもいけるかもしれない。私は何ともいえない感動を感じながら各種調味料を取り出して棚に置いた。醤油だけは冷蔵庫に入れておくことにしよう。
「フライドポテトでも作るか。サツマイモは茹でよう。」
サツマイモとジャガイモの土を水で綺麗に擦り落としながら洗う。サツマイモを水に入れて茹でながらフライドポテトに取りかかることにした。
私は皮ごと揚げたものが好きなので、綺麗に洗ったジャガイモをそのまま櫛形に切っていく。ジャガイモの水分を布巾でしっかり吸い取ったら、深さ一センチくらいに油を入れたフライパンに断面を下にして並べていく。最初は低めの温度で揚げていくのがコツだ。ひっくり返して両面に火が通ったら今度は油の温度を上げてほんのり色づくまで両面を揚げる。
「うん、いい色だ」
よく狐色になるまでっていうけど、油が新しいと色がつきにくい。狐色まで待ってたら揚げすぎになってしまう……と個人的には思っている。
揚がったポテトを鍋から取り出して油を切ったあと、ボウルに入れて塩を振って上から同じ大きさのボウルを被せる。球体になったボウルのボールを……
「シャカシャカシャカ―ッ!」
これ、結構楽しいんだよね。こうすると満遍なくポテトに塩がまぶされるのだ。出来上がったフライドポテトと茹でたサツマイモを皿に盛りつけた。そして皿を調理場と今の間にあるダイニングテーブルに運んだ。ようやく食べ物にありつける。逸る気持ちを抑えつつ目の前のフライドポテトにフォークを突き刺して口に運んだ。
「あつっ。……ん~まぁ~! でもすっごく炭水化物だなぁ」
塩がきいたフライドポテトは美味しい。空腹は最高の調味料……昔の人はよく言ったものだ。あと五分食べるのが遅れていたらエネルギー切れで倒れたかもしれない。そういえば海翔にもよく作ってあげたっけ……。
サツマイモもほくほくして甘みが強くて美味しい。秋の味覚だぁ。
胃袋がようやく落ち着いたところで、私はフライドポテトをモグモグと食しながらこれからのことについて考えてみる。
「調味料と野菜はある。でもたんぱく質がない……」
流石に肉は畑にも森にも実ってないだろう。かといって、私にはノームさんの言ってた森にいる獣を狩ることはできない。
「例え狩れても捌けないけど……いや、死ぬ気でやればできるかもしれないけど……。魚は捌けるし……うん」
肉、卵、牛乳、豆腐もない。穀物もない。仮にノームさんに稲穂や麦穂を貰うことができても、脱穀も粉ひきもできない。たんぱく源と穀物はこの世界のお店で買うしかないだろう。そうなるとお金が必要だ。じゃあ、お金を得るにはどうしたらいいんだろう。野菜持っていったら肉と交換してくれるかな。でも確実に目的の食材を手に入れるには、通貨で売買するしかないよね。
「お金かぁ。どうしたら……」
茹でたサツマイモも食して取りあえずお腹が満たされたので、家の探索を進めることにした。調理場にある勝手口の向かいにある西側の扉を開けてみた。するとそこは陳列棚が設置されているお店のような空間が広がっている。陳列棚には商品らしきものは何も置いていない。私は予想外の空間を見て、呆然と立ち竦んでしまった。
「ここ、お店屋さん……だよね」
右側にはダークブラウンのカウンターとレトロな黒いレジ、正面には店の、多分お客さんが入ってくる扉。そして左右には陳列棚が設置されている。私が入った途端、店内に不思議なランプの光が灯された。
「こんな森の中にお店屋さんって……魔女の怪しい薬でも売ってたのかな」
私はノームさんの言っていた『彼女』は魔女なんじゃないかと思ってる。思わずお伽噺の魔女を思い出してしまった。魔女の怪しい薬の店とかだったら森の中にあるのも頷ける。
私は店の入口の扉を開いて外に出てみた。そして目の前に広がる光景に再び驚いてしまった。
「えっ、何、ここ……。森じゃない……」
もうすでに薄暗くなってきた店の周囲は、生い茂った木々ではなく密集した人工的な建造物に囲まれていた。二階建てもあれば三階建てもある。家は森に囲まれているはずなのに、店の入口から出ると建物に囲まれている。なんだか頭の中が混乱してくる。
「うん、ここは異世界だ。魔法の世界だ。何が起こっても不思議じゃない」
私はぶつぶつと呟きながら考える。家は森に囲まれている。でも店の入口は違う場所に繋がっているということなんじゃないだろうか。だって辺りには樹木一本生えていないのだから。
店の外がどこなのかを確かめるために、私は店の前にある狭い路地の先へ進むことにした。
「魔法の竈か……。魔法……。もしかして私、魔法が使えたりして」
試しに竈の中の薪に向かって左手をかざしてみた。
「デロデロ~……」
なかなか火がつかない。『デロデロ』って呪文じゃないのか。今度は頭の中で薪に火をつけるイメージを浮かべてみる。すると……
――ボッ
「火がついた……。信じられない。私、魔法が使える?」
火をつけたときに体の中で何かが動く感覚がした。もしかして魔力というやつだろうか。あんまりやり過ぎるとお腹が空く気がする。きっと際限なく使えるものじゃないんだろう。私は海翔と一緒に遊んだロールプレイングゲームの魔法使いをなんとなく思い出してしまった。これは便利だ。
「よし、あとは調味料か」
冷蔵庫の一番上に向かって『デロデロ~』じゃなくて、きちんと欲しい調味料を指定してみた。
「醤油、砂糖、みりん、塩、サラダ油、料理酒……今はこんなもんかな」
取りあえずこれだけあればいいだろう。再び体の中で何かが動く感覚がした。やっぱり体の中に魔力っていうのがあって、特別なチカラを使うと減っていくんだろう。
恐る恐る冷蔵庫の一番上の謎スペースを開けてみる。すると中にはきちんと指定した調味料が入っていた。だが調味料はペットボトルではなくてガラス瓶に入っている。試しに黒い液体の入ったガラス瓶のふたを開けて香りを嗅いでみたら、中身は醤油だった。
「醤油まで出てくるとは……」
日本の調味料でも問題ないみたいだ。味噌とかカレールーもいけるかもしれない。私は何ともいえない感動を感じながら各種調味料を取り出して棚に置いた。醤油だけは冷蔵庫に入れておくことにしよう。
「フライドポテトでも作るか。サツマイモは茹でよう。」
サツマイモとジャガイモの土を水で綺麗に擦り落としながら洗う。サツマイモを水に入れて茹でながらフライドポテトに取りかかることにした。
私は皮ごと揚げたものが好きなので、綺麗に洗ったジャガイモをそのまま櫛形に切っていく。ジャガイモの水分を布巾でしっかり吸い取ったら、深さ一センチくらいに油を入れたフライパンに断面を下にして並べていく。最初は低めの温度で揚げていくのがコツだ。ひっくり返して両面に火が通ったら今度は油の温度を上げてほんのり色づくまで両面を揚げる。
「うん、いい色だ」
よく狐色になるまでっていうけど、油が新しいと色がつきにくい。狐色まで待ってたら揚げすぎになってしまう……と個人的には思っている。
揚がったポテトを鍋から取り出して油を切ったあと、ボウルに入れて塩を振って上から同じ大きさのボウルを被せる。球体になったボウルのボールを……
「シャカシャカシャカ―ッ!」
これ、結構楽しいんだよね。こうすると満遍なくポテトに塩がまぶされるのだ。出来上がったフライドポテトと茹でたサツマイモを皿に盛りつけた。そして皿を調理場と今の間にあるダイニングテーブルに運んだ。ようやく食べ物にありつける。逸る気持ちを抑えつつ目の前のフライドポテトにフォークを突き刺して口に運んだ。
「あつっ。……ん~まぁ~! でもすっごく炭水化物だなぁ」
塩がきいたフライドポテトは美味しい。空腹は最高の調味料……昔の人はよく言ったものだ。あと五分食べるのが遅れていたらエネルギー切れで倒れたかもしれない。そういえば海翔にもよく作ってあげたっけ……。
サツマイモもほくほくして甘みが強くて美味しい。秋の味覚だぁ。
胃袋がようやく落ち着いたところで、私はフライドポテトをモグモグと食しながらこれからのことについて考えてみる。
「調味料と野菜はある。でもたんぱく質がない……」
流石に肉は畑にも森にも実ってないだろう。かといって、私にはノームさんの言ってた森にいる獣を狩ることはできない。
「例え狩れても捌けないけど……いや、死ぬ気でやればできるかもしれないけど……。魚は捌けるし……うん」
肉、卵、牛乳、豆腐もない。穀物もない。仮にノームさんに稲穂や麦穂を貰うことができても、脱穀も粉ひきもできない。たんぱく源と穀物はこの世界のお店で買うしかないだろう。そうなるとお金が必要だ。じゃあ、お金を得るにはどうしたらいいんだろう。野菜持っていったら肉と交換してくれるかな。でも確実に目的の食材を手に入れるには、通貨で売買するしかないよね。
「お金かぁ。どうしたら……」
茹でたサツマイモも食して取りあえずお腹が満たされたので、家の探索を進めることにした。調理場にある勝手口の向かいにある西側の扉を開けてみた。するとそこは陳列棚が設置されているお店のような空間が広がっている。陳列棚には商品らしきものは何も置いていない。私は予想外の空間を見て、呆然と立ち竦んでしまった。
「ここ、お店屋さん……だよね」
右側にはダークブラウンのカウンターとレトロな黒いレジ、正面には店の、多分お客さんが入ってくる扉。そして左右には陳列棚が設置されている。私が入った途端、店内に不思議なランプの光が灯された。
「こんな森の中にお店屋さんって……魔女の怪しい薬でも売ってたのかな」
私はノームさんの言っていた『彼女』は魔女なんじゃないかと思ってる。思わずお伽噺の魔女を思い出してしまった。魔女の怪しい薬の店とかだったら森の中にあるのも頷ける。
私は店の入口の扉を開いて外に出てみた。そして目の前に広がる光景に再び驚いてしまった。
「えっ、何、ここ……。森じゃない……」
もうすでに薄暗くなってきた店の周囲は、生い茂った木々ではなく密集した人工的な建造物に囲まれていた。二階建てもあれば三階建てもある。家は森に囲まれているはずなのに、店の入口から出ると建物に囲まれている。なんだか頭の中が混乱してくる。
「うん、ここは異世界だ。魔法の世界だ。何が起こっても不思議じゃない」
私はぶつぶつと呟きながら考える。家は森に囲まれている。でも店の入口は違う場所に繋がっているということなんじゃないだろうか。だって辺りには樹木一本生えていないのだから。
店の外がどこなのかを確かめるために、私は店の前にある狭い路地の先へ進むことにした。
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本作をお読みいただき、ありがとうございます!
お知らせです!
過去編のエピソードを追記させていただきました。
そのため、現代編の『パンとお菓子の店すきま家』と『魔法の手』を一旦非公開とさせていただきました。過去編のエピソードの投稿が全て終わりましたらすぐに公開させていただきます。
5話までお読みの読者様には大変紛らわしい思いをさせてしまって申し訳ありません。
大幅な構成の変更となりますが、どうかご容赦くださいませ。
なお、本編のあらすじには変更はありませんのでご安心ください。
時間のあるときに書き溜めていた小説を、一話ずつ公開していきます。
ストックが切れるまでは毎日投稿させていただきます。
ご感想、ご意見、このキャラクターが好き! などのメッセージをいただけますと、筆者は大変励みます。
時間の許す限りは返信もさせていただきます。
これからも読者様に喜んでいただけるお話を書いていきたいと思います。応援、よろしくお願いします。
■こちらも連載中■
異世界で恋愛とお菓子作り 『嫌われたいの ~好色王の妃を全力で回避します~』
■春野こもものアルファポリス掲載中の小説はこちら■
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