28 / 52
第3章 婚約破棄
27.ダンスは上手く踊れなイ
しおりを挟むお願いしたいことって何だろう? ハルはクリスのためならどんなことでも頑張るよ!
オリバーの提案に対しクリスが答える。
「いや、でもハルに申し訳ないし……」
「黙って笑っていれば貴族でないのは分かりませんし、貴族でないからこそハルさんは打ってつけです。ぜひお願いするべきです」
「うーん……」
オリバーは何かを懸命に勧め、クリスはそれについて腕を組んで悩んでいる。
2人の会話がよく分からなくて思わず首を傾げてしまう。思い切って尋ねてみよう。
「どうしたノ? 何か助けてほしいノ?」
「あ、いや……」
うん? クリスはハルに遠慮しているのかな?
ハルの言葉を聞いてオリバーの目がキラーンってなった気がする。
言い淀むクリスを尻目にオリバーが説明してくれる。
「城で夜会が開かれるのですが、殿下の夜会でのパートナー選びに困っていたのです。そしてそうこうしているうちにいよいよ明日がその日となってしまったのです」
「あらラ」
夜会のパートナーかぁ。それは大変だね。でも夜会って何だろう?
『夜会ってのは夜貴族が集まって開かれる社交の場だな』
「ほーほー。貴族ねぇ……」
流石マメリルは物知りだね。ハルは貴族じゃないけど、オリバーがさっき貴族じゃないからこそ打ってつけだと言っていた。何か事情があるのだろうか。
「オリバー、そこからは私が言うから。ハル、どうか私と一緒に明日の夜会に行ってもらえないだろうか?」
クリスが真剣な表情で夜会に誘ってくれた。ちょっとドキドキするね。
『ハル、夜会ってのは踊れないと困るぞ。踊ったことあるのか?』
マメリルが忠告してくれた。何? 夜会って踊れないと駄目なの?
「うン? 踊りが要るノ? そんなのやったことないヨ?」
うーん、行くのは構わないんだけど踊れなくてもいいのかな?
「わたし貴族でもないし踊れないけど、それでいいなら行ってもいいヨ」
「ありがとう。ダンスは私がリードするから適当でいいよ」
ハルが答えるとほっとしたようにクリスが微笑んでお礼を言ってくれた。それに対してハルも微笑む。うん、喜んでもらえてよかった。
「ではドレスなどはこちらで準備しましょう。あとハルさんは御髪の色が少々珍しいのであまり他の者の印象に残らないようにウィッグを着けさせましょう」
オリバーがいろいろ準備してくれるようだ。よく分からないけど任せよう。
それにしてもハルの髪の青銀色ってそんなに目立つんだ。知らなかった。そういえばハンスもそんなこと言ってた気がするな。
「この髪目立つノ?」
「そうですね、少々。いや、かなり。他の者の記憶に残って素性を探られると厄介ですからね」
ハルが尋ねるとオリバーが即答した。確かに目立って他の貴族にいろいろ聞かれるのは不都合かもしれないね。
「綺麗な髪だから本当は隠すのが勿体ないけどね」
「ク、クリスが褒めてくれタ! ありがとウ、嬉しイ!」
「あ、いや……!」
髪をクリスが褒めてくれるなんて嬉しくって思わずぱぁっと笑う。すると彼は真っ赤になって顔を背けた。ん、どうしたんだろう?
オリバーがクリスの様子を見て肩を竦めながら口を開く。
「まあ夜会では黙ってにっこりと笑っていればいいですよ。挨拶を返す以外はくれぐれも喋らずに」
「ふむゥ」
オリバーが淡々と説明する。黙ってにっこりか。合点承知!
当日はオリバーの言う通りにしよう。折角クリスの助けになれるんだもの。失敗はしたくないからね。
「夜会のパートナー選びってそんなに難しいノ?」
「ええ、実は殿下の後ろ盾となっている貴族がかなり影響力が大きいのです。その権力にあやかろうとする貴族が大変多く、それでなくとも殿下は大変おモテ、ゴホン、貴族令嬢に人気があります。そういった訳で下手に誰かを選んでしまうと力関係を崩してしまう恐れがあるのです」
「そうなんダ」
オリバーが真剣な顔で説明してくれた。貴族社会って複雑なんだね。権力闘争とかいう奴かな。
要するに誰かを選ぶことで虎の威を借る狐を作らないようにしたいってことかな?
『うーん、なんかちょっと違うような……いや、合ってるのか?』
マメリルが鎮座したまま首を傾げる。
今度は言葉でマメリルに勝ったね。ハルは動物を使った諺には強いんだから!
それにしてもクリスは女の子に狙われてるのか。でも彼を狙う者は相手がだれであろうと威嚇して守らないとないといけない。番を守るのはハルの役目だからね!
「そこでハルさんに殿下のパートナーになっていただければ貴族関係に何の影響も与えずに済みます。お部屋はこちらの方で準備させていただきます。」
オリバーが淡々と話を進めていく。
ハルが貴族じゃない方が都合がいいっていう理由は何となくわかった。
「そして殿下は彼女にダンスの手ほどきをお願いします」
「ええっ、だけど私は仕事が……」
ダンスっていうのが踊りだよね? クリスは困っているみたいけど彼にダンスを教えてもらえるなら嬉しいな。なんだか楽しみになってきたよ。
でもクリスのお仕事は大丈夫なのかな?
「それはこちらでフォローしておきますから。ハルさん、今日は何かご予定がありますか?」
「ううん、特にないヨ」
王都へ来たのはハバネロ教のことを聞くためだからもう用事は済んだ。クリスにも会えたしね。
「それでは侍女にお部屋へ案内させますのでしばらくお待ちください。準備ができたら殿下を迎えに行かせますね」
「ありがとうございまス」
至れり尽くせりのオリバーの采配に深々と頭を下げる。どうやら今夜は美味しいご飯食べられそうだね。
0
お気に入りに追加
418
あなたにおすすめの小説

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

憧れのテイマーになれたけど、何で神獣ばっかりなの⁉
陣ノ内猫子
ファンタジー
神様の使い魔を助けて死んでしまった主人公。
お詫びにと、ずっとなりたいと思っていたテイマーとなって、憧れの異世界へ行けることに。
チートな力と装備を神様からもらって、助けた使い魔を連れ、いざ異世界へGO!
ーーーーーーーーー
これはボクっ子女子が織りなす、チートな冒険物語です。
ご都合主義、あるかもしれません。
一話一話が短いです。
週一回を目標に投稿したと思います。
面白い、続きが読みたいと思って頂けたら幸いです。
誤字脱字があれば教えてください。すぐに修正します。
感想を頂けると嬉しいです。(返事ができないこともあるかもしれません)

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

異世界に来ちゃったよ!?
いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。
しかし、現在森の中。
「とにきゃく、こころこぉ?」
から始まる異世界ストーリー 。
主人公は可愛いです!
もふもふだってあります!!
語彙力は………………無いかもしれない…。
とにかく、異世界ファンタジー開幕です!
※不定期投稿です…本当に。
※誤字・脱字があればお知らせ下さい
(※印は鬱表現ありです)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる