初恋に一途なつがいを振り向かせたい!~チート美少女のモフモフのんびり救国ライフ~

春野こもも

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第3章 婚約破棄

27.ダンスは上手く踊れなイ

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 お願いしたいことって何だろう? ハルはクリスのためならどんなことでも頑張るよ!
 オリバーの提案に対しクリスが答える。

「いや、でもハルに申し訳ないし……」
「黙って笑っていれば貴族でないのは分かりませんし、貴族でないからこそハルさんは打ってつけです。ぜひお願いするべきです」
「うーん……」

 オリバーは何かを懸命に勧め、クリスはそれについて腕を組んで悩んでいる。
 2人の会話がよく分からなくて思わず首を傾げてしまう。思い切って尋ねてみよう。

「どうしたノ? 何か助けてほしいノ?」
「あ、いや……」

 うん? クリスはハルに遠慮しているのかな?
 ハルの言葉を聞いてオリバーの目がキラーンってなった気がする。
 言い淀むクリスを尻目にオリバーが説明してくれる。

「城で夜会が開かれるのですが、殿下の夜会でのパートナー選びに困っていたのです。そしてそうこうしているうちにいよいよ明日がその日となってしまったのです」
「あらラ」

 夜会のパートナーかぁ。それは大変だね。でも夜会って何だろう?

『夜会ってのは夜貴族が集まって開かれる社交の場だな』
「ほーほー。貴族ねぇ……」

 流石マメリルは物知りだね。ハルは貴族じゃないけど、オリバーがさっき貴族じゃないからこそ打ってつけだと言っていた。何か事情があるのだろうか。

「オリバー、そこからは私が言うから。ハル、どうか私と一緒に明日の夜会に行ってもらえないだろうか?」

 クリスが真剣な表情で夜会に誘ってくれた。ちょっとドキドキするね。

『ハル、夜会ってのは踊れないと困るぞ。踊ったことあるのか?』

 マメリルが忠告してくれた。何? 夜会って踊れないと駄目なの?

「うン? 踊りが要るノ? そんなのやったことないヨ?」

 うーん、行くのは構わないんだけど踊れなくてもいいのかな?

「わたし貴族でもないし踊れないけど、それでいいなら行ってもいいヨ」
「ありがとう。ダンスは私がリードするから適当でいいよ」

 ハルが答えるとほっとしたようにクリスが微笑んでお礼を言ってくれた。それに対してハルも微笑む。うん、喜んでもらえてよかった。

「ではドレスなどはこちらで準備しましょう。あとハルさんは御髪の色が少々珍しいのであまり他の者の印象に残らないようにウィッグを着けさせましょう」

 オリバーがいろいろ準備してくれるようだ。よく分からないけど任せよう。
 それにしてもハルの髪の青銀色ってそんなに目立つんだ。知らなかった。そういえばハンスもそんなこと言ってた気がするな。

「この髪目立つノ?」
「そうですね、少々。いや、かなり。他の者の記憶に残って素性を探られると厄介ですからね」

 ハルが尋ねるとオリバーが即答した。確かに目立って他の貴族にいろいろ聞かれるのは不都合かもしれないね。

「綺麗な髪だから本当は隠すのが勿体ないけどね」
「ク、クリスが褒めてくれタ! ありがとウ、嬉しイ!」
「あ、いや……!」

 髪をクリスが褒めてくれるなんて嬉しくって思わずぱぁっと笑う。すると彼は真っ赤になって顔を背けた。ん、どうしたんだろう?
 オリバーがクリスの様子を見て肩を竦めながら口を開く。

「まあ夜会では黙ってにっこりと笑っていればいいですよ。挨拶を返す以外はくれぐれも喋らずに」
「ふむゥ」

 オリバーが淡々と説明する。黙ってにっこりか。合点承知!
 当日はオリバーの言う通りにしよう。折角クリスの助けになれるんだもの。失敗はしたくないからね。

「夜会のパートナー選びってそんなに難しいノ?」
「ええ、実は殿下の後ろ盾となっている貴族がかなり影響力が大きいのです。その権力にあやかろうとする貴族が大変多く、それでなくとも殿下は大変おモテ、ゴホン、貴族令嬢に人気があります。そういった訳で下手に誰かを選んでしまうと力関係を崩してしまう恐れがあるのです」
「そうなんダ」

 オリバーが真剣な顔で説明してくれた。貴族社会って複雑なんだね。権力闘争とかいう奴かな。
 要するに誰かを選ぶことで虎の威を借る狐を作らないようにしたいってことかな?

『うーん、なんかちょっと違うような……いや、合ってるのか?』

 マメリルが鎮座したまま首を傾げる。
 今度は言葉でマメリルに勝ったね。ハルは動物を使った諺には強いんだから!

 それにしてもクリスは女の子に狙われてるのか。でも彼を狙う者は相手がだれであろうと威嚇して守らないとないといけない。番を守るのはハルの役目だからね!

「そこでハルさんに殿下のパートナーになっていただければ貴族関係に何の影響も与えずに済みます。お部屋はこちらの方で準備させていただきます。」

 オリバーが淡々と話を進めていく。
 ハルが貴族じゃない方が都合がいいっていう理由は何となくわかった。

「そして殿下は彼女にダンスの手ほどきをお願いします」
「ええっ、だけど私は仕事が……」

 ダンスっていうのが踊りだよね? クリスは困っているみたいけど彼にダンスを教えてもらえるなら嬉しいな。なんだか楽しみになってきたよ。
 でもクリスのお仕事は大丈夫なのかな?

「それはこちらでフォローしておきますから。ハルさん、今日は何かご予定がありますか?」
「ううん、特にないヨ」

 王都へ来たのはハバネロ教のことを聞くためだからもう用事は済んだ。クリスにも会えたしね。

「それでは侍女にお部屋へ案内させますのでしばらくお待ちください。準備ができたら殿下を迎えに行かせますね」
「ありがとうございまス」

 至れり尽くせりのオリバーの采配に深々と頭を下げる。どうやら今夜は美味しいご飯食べられそうだね。



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