初恋に一途なつがいを振り向かせたい!~チート美少女のモフモフのんびり救国ライフ~

春野こもも

文字の大きさ
上 下
19 / 52
第2章 カルト教団

18.教団へ行こウ

しおりを挟む

 バウム雑貨店の建物の屋上で、番である王子を見つけてハルは驚いた。こんなに早く番を見つけることができるとは思っていなかったからだ。彼の姿を目に焼きつける。

「見つかってよかっタ。きっとまた会いに行ク」
『よかったな!』
「何が見つかったの、ハル姉ちゃん?」

 ハンスが不思議そうに尋ねてくる。番のことは聞こえてなかったみたいだね。

「未来の旦那さんだヨ」
「えっ、そんなの分かるの? なんか凄いね」

 ハンスがハルの言葉を聞いてびっくりした。これって凄いの?
 皆自分の番が誰かすぐに分かるんじゃないのかな?
 首を傾げつつ建物の屋上から降りて中へ入る。




 1階の店先へ行って店番をしているサラにお礼を言う。彼女のお陰で番を見つけることができたし音楽を聴くこともできた。

「サラ、屋上に入らせてくれてありがとウ。凄く見晴らしがよかったヨ」
「そうですか、それはよかったです!」

 お礼を言うとサラがにっこりと笑って答えた。
 音楽を聴くことができた。そして偶然にも番を見つけることができた。彼女が屋上へ上がらせてくれなかったらきっと全部できなかった。そう思うと彼女に対する感謝の気持ちで胸がいっぱいになる。

 その日は彼女の紹介してくれた宿屋でハンスと一緒に一晩泊まった。




 翌日再びサラに会いにバウム雑貨店を訪れた。今日もサラのお父さんとお母さんは居ないようだ。日を改めたら会えると思っていたんだけどな。アリスのことをもっと詳しく聞きたかったんだけど問題の父親が居ないなんて。

「ところでアリスのことなんだけど居なくなったのっていつ頃なノ?」

 サラにアリスの居なくなった経緯の詳細を聞いてみることにする。

「はい、もう1週間ほど前になります。アリス姉ちゃんはハバネロ教には全く興味がなかったのに、父さんに1回だけだからって言われて仕方なく教団へついていったんです。そしたらそのまま帰ってこなくて」
「そうなんダ。それは怪しいネ。ハンスはどう思ウ?」
「うん、そういうのリューベックでもよくあったみたいだよ。でも家族は騒いでないのに職場の人や友人が不審に思ってたみたいで、かなり噂になってた。行方不明は女性が多いみたい」

 ハンスが忌々しそうに話す。そういえば彼の父親もお母さんを連れてこいって言われたんだったね。本当に目的は何だろう?

「サラは他に行方不明になった人のことは知らなイ? アリス以外二」
「うーん、そういえばお客さんが恋人が居なくなったって話してた気がします」

 懸命に記憶を辿ってサラが教えてくれた。
 恋人か……その人も教団に居るのかな?

「そっカ。サラのお父さんはやっぱりよく礼拝に行くノ?」
「はい……。店の売り上げも寄付してしまって困ってます。このままだと商売を続けることができないってお母さんが言ってます」

 サラが悲しそうな顔でそう答える。
 ここでもお金か……。ハバネロ教はそんなにお金を集めて何に使ってるんだろう? それにしてもサラの父親も家族から多くのものを奪っているみたいだね。

「なんで大人なのに分からないんだろう!? 家族皆で仲良く暮らすのが一番幸せじゃないか!」

 サラの告白を聞いてハンスが憤慨する。きっと自分と重なってしまったんだろう。

「ハンス……」
『さっさと行って成敗しちゃおうぜっ、ハル!』

 マメリルが前のめりに声をあげる。なんだかワクワクしてるように見える。
 確かに一刻も早くハンスやサラの問題をどうにかしてあげたい。

「んー、成敗するかどうかは分からないけどちゃんと話してみないといけないネ。ハンスのお父さんともサラのお父さんとモ」

 ハバネロ教の真実を究明する前に父親たちと話してもきっと納得してくれない。きっとサラの父親もそうだろうけど、彼らはハバネロ教を妄信している。今は何を言っても無駄だろう。究明した事実を目の前に突きつけるしか道はない。父親たちと話すのはその後だ。
 ハンスは行きたがっていたけど、教団へ連れていっていいものか悩む。聞いた限りでは幼い子供には危ない気がするからね。

「ハンス、サラと留守番しとかなくていイ? 教団はわたしが行ってくるヨ」
「ハル姉ちゃん1人じゃ危ないよ」
「そうだけどわたしは平気。捕まったりはしないヨ」
「うう……ハル姉ちゃんも心配だけど、正直父さんも心配なんだ。ごまかしてごめんなさい」

 ハンスがしょんぼりと項垂れてしまった。やっぱり父親が心配だったんだね。しょうがない。ハルが守ればいいか。

「分かっタ、一緒に行こウ!」
「ハル姉ちゃん、ありがとう!」

 ハンスがほっとしたように笑って礼を言う。教団へ行って父親に会えるといいね。

「あの……姉をお願いします」

 サラがそう言って深々と頭を下げる。勿論アリスのことも探ってくるよ!

「任せなさイッ!」

 安心させるようにサラに笑って答えた。すると彼女もにっこり笑ってくれた。
 それからハンスとマメリルと一緒に教団へと向かった。




 広場から東へのびる通りをしばらく歩いていると、突然ハンスがある方向を指差して口を開いた。

「ハル姉ちゃん、あれ。入口の石板に『ハバネロ教本部』って書いてるでしょ。あの建物が教団の本部だよ」
「おお、あれがそうなんだネ」

 ハンスに教えられた建物を見た。するとそれは森の近くにある村の教会が大きくなったような建物だった。でもあんまり綺麗じゃないし神様の気配も感じられない。

「入ってみるヨ」

 建物の正面の大きな扉を開くとそこはあまり大きくない礼拝堂だった。奥に祭壇が置いてある。何人かの信者がお祈りと掃除をしているようだ。
 まっすぐ祭壇のほうへ歩いていく。祭壇の前で他の信者の様子を見るが何というか皆表情が疲れ切っている。どうしたのだろう。

「これはこれは我がハバネロ教へようこそいらっしゃいました」

 突然声をかけられたのでそちらへ振り向くと、そこには30才くらいで痩せた吊り目の神官風の男が立っていた。そして彼はその神経質そうな眼差しをこちらへ向けて笑みを浮かべていた。



しおりを挟む
本作をお読みいただき、ありがとうございます!

ツギクルバナー ←よろしければクリックを(*´д`*)

ご感想、ご意見、このキャラクターが好き! などのメッセージをいただけますと、筆者は大変励みます。
時間の許す限りは返信もさせていただきます。

これからも読者様に喜んでいただけるお話を書いていきたいと思います。応援、よろしくお願いします。


春野こもものアルファポリス掲載中の小説はこちら
感想 3

あなたにおすすめの小説

髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。 そんな世界に唯一現れた白髪の少年。 その少年とは神様に転生させられた日本人だった。 その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。 ⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。 ⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。

憧れのテイマーになれたけど、何で神獣ばっかりなの⁉

陣ノ内猫子
ファンタジー
 神様の使い魔を助けて死んでしまった主人公。  お詫びにと、ずっとなりたいと思っていたテイマーとなって、憧れの異世界へ行けることに。  チートな力と装備を神様からもらって、助けた使い魔を連れ、いざ異世界へGO! ーーーーーーーーー  これはボクっ子女子が織りなす、チートな冒険物語です。  ご都合主義、あるかもしれません。  一話一話が短いです。  週一回を目標に投稿したと思います。  面白い、続きが読みたいと思って頂けたら幸いです。  誤字脱字があれば教えてください。すぐに修正します。  感想を頂けると嬉しいです。(返事ができないこともあるかもしれません)  

異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました

ピコっぴ
ファンタジー
【異世界に召喚されましたが、間違いだったようです】 ノベルアッププラス小説大賞一次選考通過作品です ※自筆挿絵要注意⭐ 表紙はhake様に頂いたファンアートです (Twitter)https://mobile.twitter.com/hake_choco 異世界召喚などというファンタジーな経験しました。 でも、間違いだったようです。 それならさっさと帰してくれればいいのに、聖女じゃないから神殿に置いておけないって放り出されました。 誘拐同然に呼びつけておいてなんて言いぐさなの!? あまりのひどい仕打ち! 私はどうしたらいいの……!?

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

転生したらチートすぎて逆に怖い

至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん 愛されることを望んでいた… 神様のミスで刺されて転生! 運命の番と出会って…? 貰った能力は努力次第でスーパーチート! 番と幸せになるために無双します! 溺愛する家族もだいすき! 恋愛です! 無事1章完結しました!

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

処理中です...