初恋に一途なつがいを振り向かせたい!~チート美少女のモフモフのんびり救国ライフ~

春野こもも

文字の大きさ
上 下
18 / 52
第2章 カルト教団

17.ツガイ、見つけタ

しおりを挟む


「ツガイ、見つけタ」

 ハルは少年を見て思わず呟く。旅立ってから大して時間も経たないうちにつがいと出会えたことに喜びを隠しきれない。彼と出会えた嬉しさで思わずにぱっと笑ってしまう。

 バウム雑貨店のある建物の屋上から少年を見下ろす。彼は煌びやかな王族の端のほうに立っていた。
 さらさらとした肩までの金髪に空色の瞳がすごく綺麗だ。背筋を伸ばして凛としている姿も好ましい。そして民衆を見る眼差しは慈愛に満ちてとても優しい。
 目に焼きつけるために彼をじぃっと見る。ふと目が合った気がした。気のせいだと思うけどなんだかドキドキする。

 なぜ彼にのみ目を引かれたのかは分からない。外見で見れば彼だけが特別美しいというわけではない。王族は皆美しい。
 ただハルの本能が彼こそ番だと教えてくれたのだ。上手く表現できないけど彼を見ると全身がぞくぞくっとする。彼と直接会いたい。そして名前を教えてほしい。そして彼にも『ハル』って呼んでほしい。
 だからといってあの人混みの中に飛び込んでいくことはできそうにない。あまりにも人が多すぎる。ロウが番以外の人間には気をつけるようにって言ってたし。

「理屈じゃないんだナァ……」
「ん、ハル姉ちゃん、何のこと?」

 番に対して感じたことをふと呟くとハンスに不思議そうな顔をされた。あ、聞かれちゃった。恥ずかしいね。

「ううン。ねえ、ハンス。あの綺麗な人たちにはどうやったら会えるノ?」

 王族を指さしてハンスに尋ねてみる。

「えっ!? 王族に会うのなんて無理だよ! 普段はお城に住んでるしこの国で一番偉い人たちなんだから」
「そうなんダ……」

 ハルの質問にハンスはとても驚いたようだ。
 彼らに近づくのはよっぽど大変なんだね。となると番に会うのはかなり難しそうだ。しょぼん……。せっかく見つけたのに会えないのかぁ。

「ハンス、あの一番右端にいるわたしよりちょっと年上の男の子は誰かナ?」
「うーんと、僕もあんまり詳しくないけど王子様だと思うよ」
「王子様かァ……」
『ハルの番が王子だとは難儀だな。諦めるのか?』

 マメリルが珍しく憐れむような眼差しでハルを見る。

「ううん、諦めないヨ。だってせっかく番が誰か分かったんだもン。わたしを見てもらうまで頑張るヨ!」
『そうか、せいぜい頑張るだなっ。なんならボクが協力してやってもいいぞ』

 ハルの言葉を聞いてマメリルが踏ん反り返って得意げに話す。

「協力っテ?」
『あの王子に会えるようにすればいいんだろ? 強引に道を切り開くんだよ。邪魔するものを排除しながらなっ』
「駄目。そんなことしたら嫌われちゃうヨ」
『ぇ~~』

 マメリルの耳と尻尾がしょぼんと垂れた。そんな強引なことしたら王子様に嫌われちゃうでしょ。全く……。
 きっとそのうちチャンスが来る。どうしても来なかったら多少無理してでも会いに行く。
 でも今はハンスのお父さんとサラのお姉ちゃんのアリスを探しにいかないといけないから番の王子に会うのは後だ。

「ハルのツガイ、きっと迎えに行ク」



◆◆◆ <クリストフ視点>

 建国祭の当日、第3王子クリストフは他の王族とともに王都の広場の式典会場へ足を運んでいた。あまり折り合いの良くない王太子ダニエルと顔を合わせるのが憂鬱だ。早く終わってほしい。

 ファンファーレが鳴ったあと、陛下がステージに上がって開会の式典の挨拶を始める。広場に集まった人々の顔を眺める。老若男女様々な年齢層の人たちが集まっている。それぞれが期待に満ちた眼差しで陛下に注目している。
 僕はこの人たちを笑顔にしたいと思っている。この広場にいる人たちを見ているとまるでこの国の縮図を見ているようだ。彼らの抱える様々な問題を解決する手助けがしたい。

 ふと視界の上の方にきらきらとしたものが映った気がしてそちらを見てみる。広場の反対側の建物の屋上で誰かがこちらを見ているようだ。こんなに人が多いのだ。屋上から見る人もいるだろうと深くは考えず視線を前へ戻した。だがなんだかすごく視線を感じたので再び屋上を見た。

 よく見るとそこにいたのは僕より少しだけ年下に見える少女だった。きらきらと視界の中で光って見えたのは、彼女の青銀色に光る長い髪が風に靡いて陽の光を反射していたからだろう。彼女の体は樺色の毛皮に包まれており、肌の露出が若干……いや、かなり多いようだ。
 女性の狩人ハンターは皆ああなのか? 彼女を見ているとずっと幼い頃に出会った黒曜石の少女のことを思い出す。彼女はお腹も出していたっけ。可愛かったなぁ……。あの娘も狩人なら知り合いだったりしないかな?

 それにしても屋上の少女に凄く見られている気がするな。気のせいか……?
 そんなことを考えているうちに陛下の挨拶が終わったようだ。式典ももうすぐ終わる。彼女のお陰で憂鬱な式典があっという間に過ぎた。

 あっ! 屋上の少女が髪を靡かせて立ち去ってしまった。
 なんだか寂しい気持ちになるのは屋上の彼女と昔出会った少女を重ねたからなのか。だけどなんだか青銀色の子にはまた会える気がするな。あれだけ目立つのだもの。
 式典がまだ終わってもいないのに、僕はなんとなく可笑しくなって笑ってしまった。



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

憧れのテイマーになれたけど、何で神獣ばっかりなの⁉

陣ノ内猫子
ファンタジー
 神様の使い魔を助けて死んでしまった主人公。  お詫びにと、ずっとなりたいと思っていたテイマーとなって、憧れの異世界へ行けることに。  チートな力と装備を神様からもらって、助けた使い魔を連れ、いざ異世界へGO! ーーーーーーーーー  これはボクっ子女子が織りなす、チートな冒険物語です。  ご都合主義、あるかもしれません。  一話一話が短いです。  週一回を目標に投稿したと思います。  面白い、続きが読みたいと思って頂けたら幸いです。  誤字脱字があれば教えてください。すぐに修正します。  感想を頂けると嬉しいです。(返事ができないこともあるかもしれません)  

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

異世界に来ちゃったよ!?

いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。 しかし、現在森の中。 「とにきゃく、こころこぉ?」 から始まる異世界ストーリー 。 主人公は可愛いです! もふもふだってあります!! 語彙力は………………無いかもしれない…。 とにかく、異世界ファンタジー開幕です! ※不定期投稿です…本当に。 ※誤字・脱字があればお知らせ下さい (※印は鬱表現ありです)

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

処理中です...