復縁マニュアル

シルビア

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復縁屋

冷却期間

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(希今までごめんな。いっつも優しくしてくれて、俺それだけでどれだけ救われたことか。でもそれなのに俺は、希に甘えてしまってたな。俺やっぱり希が好きだし、大事なこと分かってなかったんだと思う。ちゃんと感謝の気持ち伝えられていなかったし。俺は希のことが大好きでとても大事や。でも俺は希の幸せを考えたら身を引かなあかんな。幸せになってな。いつも幸せを願ってる)

 健は、そこまで打って溜息をつく。

 こんなんで響くのかな……全然良い文章が思いつかない。
 でも、素直な気持ちで打ったメールだから、これが俺のベストなのかもしれない。
 このメールを送ってみよう。

 翌日、希からメールが来ていた。

(ありがとう。本当にごめんね。健も幸せになってね。私も幸せになれるように頑張る。)

 健は、これだけかという気持ちと、返信したい気持ちをぐっとこらえて、メールを閉じる。

 何をやっても楽しくない。ずっと焦燥に駆られ、苦しい毎日。
 唯一仕事中少し紛れるのが救いか。

 そうして、みゆきさんと会うまでの長い2週間が過ぎていった。


 ようやく2週間が過ぎ、みゆきさんとの待ち合わせ場所に向かう。
 今回は、他人の金で焼肉が食べたいと、みゆきさんが言うので、焼肉屋に行く予定だ。

「おいしーーい!」

 みゆきさんは、牛タンをバクバク食べていく。
 細いのに、よく食べるなこの人。

「みゆきさんに言われた通り、メールしてから、何もしてないですよ。辛い状況が、ずっと続くと思うと……」

「あー!冷却期間!辛いよねー!わかる……わかるよ健くん!」

「冷却期間?」

「そうそう、復縁の第2ステップは、冷却期間なのよ。放置して自分の存在を薄めることで、マイナスなイメージを薄めるって訳よ」

「あー……なるほど。でもそんな薄まりますかねえ……」

「大丈夫!大丈夫!薄まらなかったら、星の数ほど女はいるから!」

 みゆきさんは、美味しそうにハラミを食べながら、ゲラゲラ笑ってる。
 あんまり笑えないんですが……

「まーあれよ。他好きの場合は、ラブラブ期の熱を冷却させるってのもあるわ。あと上手くいってない時って前の人と比べちゃうこともあるじゃない?人によるけれども。それで比べてもらって、勿体無かったって思われたらラッキーよ。」

「勿体無かったですか……?なんか物みたいで嫌だなあ……」

「そんなことないわよー。復縁に限らず勿体無いって思わせられることは、恋愛において得よ。人って手に入りそうで手に入らないものって欲しくなるじゃない?」

「確かに……そうかもしれないですね。なるほど……」

「あー話逸れちゃったけれど、ラブラブ期も3ヶ月から半年ももすれば落ち着くと思うわ。それに勢いで付き合うカップルなんて、3ヶ月以内に何か違う……って別れることなんて良くある話よ。」

「半年もですか!?」

「わかんない。3ヶ月かもしれないし、半年かもしれない、はたまた1年かもしれない。耐えられなければ他の女なんて星の……」

「待ちます!待ちます!」

「そう!んじゃ耐えないとだね。あとその間は、やれなかったことにチャレンジしてみたり、本を読んだり、人と会ったりして自分を磨くようにしないといけない期間でもあるわ」

「わかりました。自分磨きですね」

「もし連絡が来てもしつこくしちゃだめよ。程よく友達とメールする時の様に冷静に、でも優しく接するの。好きとか好意は、もう絶対に伝えちゃだめ。あっちに言わせるまでね。まだ好き?とか聞かれたら言っても良いかもだけど、淡々とね」

「できるかな……頑張ってみます」

「復縁の第2ステップは冷却期間をとること。その間自分の気持ちも整理して冷静さを取り戻すこと。またそのうち元彼ちゃんから連絡来ると思うわ。彼と上手くいってない時、健くんの事を思い出した時とかね」

「わかりました。冷静さを取り戻せるように励んでみます。」

「次回は連絡が来た時か、3ヶ月後にしておきましょうか。とりあえず3ヶ月後で、状況が変わったら連絡してね。ご馳走さまー」

みゆきさんは、肉でいっぱいであろうお腹をさすりながら、笑顔でそう言って去っていった。
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