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あいつは可愛いバカだー第三者からみたHRー
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今日の黒川君は朝からすごくイライラしていた。
自分の席から動かずに校庭ばかり見ていて、私が話しかけても生返事。するとHRのチャイムがなり、先生が入って来て出席を取り始める。
「こねえなー…」
黒川君が窓に腕を乗せて横を向いていたから、後ろの席に聞こえるくらいの小さな声で、黒川君は呟いた。
黒川君が呟いた誰か、なんかは分かってる。
一緒に聞こえた私の隣のやつなんか、体を震わせて笑いを堪えている。何かメモに書き出して、私に回してくる。
そのメモには、黒川君と書かれた人間に、大きな尻尾が生えていて、それがしゅーーんと垂れている絵が書いてあった。
(ちょ、やめなさい、私だって笑いたいんだから)
2人で目で笑いあっていると先生が出席を取り終わった。
指でコツコツと窓枠を叩いている黒川君を横目で見ながら今日の連絡を話しているのを聞いていると、いきなり顔を上げて尻尾をブンブンふった。もちろん、あった場合のことだけど。
「おーい、黒川ー、気になるのは分かってるから、俺の話も聞いておけよー」
「…聞いてるし」
くくく、と笑いを堪える声がそこら中でする。が、黒川君は全然気づいていない。
チラと横顔を見ると、校庭をじっと見ている。さっきより、表情が明るく、口元もどこか緩んでいる。
目線を追って校庭を見ると、長い髪の毛を振り乱しながら、女子生徒が横切っていた。
(ほんと黒川君ってー)
そこまで思って前を向く。
「じゃあ、今日もがんばれよー俺も何とかがんばるわー」
と担任の訳わからんやる気の出ない励ましを聞き流し、1限の授業の用意をすると担任と入れ違いで1限の先生が入ってくる。
その担任は、今日もお綺麗ですねーと先生の肩を抱き寄せようとして、教科書で頭を叩かれていた。
そんな光景もいつも通り。
またやってる、とどこか冷めた目でみて、教科書を開けると、さっきの女子生徒が駆け込んで来た。
「セーーーーフ!」
「アウトですよ、新井さん」
ドアを勢いよく開けて入って来たのは、私の後ろの隣の席の子。
新井香苗ちゃん。私とも友達だ。
えー!だめー?って言いながら先生に言う姿にクラス中が笑っている。
「早く席に着きなさい」
軽く笑う先生に言われて、はーい、と席に着く前に私におはようって挨拶するから挨拶をしかえした。
殺気がくる。挨拶で嫉妬はダメよん、黒川君。
「陽ちゃん、おはよー」
「…数学の教科書じゃないから」
挨拶されたのにそれには返事を返さずに、香苗が出した教科書の間違いを指摘している。
(さっきまでイライラしてたのに、もうお花飛んでる)
「えへへ、間違えちゃった、英語だよね」
香苗は鞄から英語の教科書とノートを出した。
何ページかわからなかったのか、香苗が黒板と教科書を交互に見ると。
「…26ページ」
黒川君が横から手を伸ばして香苗の教科書をパラパラとめくる。
「ありがとう、陽ちゃん」
香苗は、授業中だからなのか、その教科書をめくったその腕を少しだけ掴み引き寄せて、そしてその耳にこそっとお礼を言って笑顔を浮かべた。
黒川君は何かを言おうと口を開き、閉じて、また開き、また閉じた。香苗はもう黒板を写し始めようとシャーペンの芯をカチカチ出してて、黒川君は肘をついて、その手に顎を置いて校庭をまた見ていた。
また隣のやつからメモが回って来た。
そのメモには、こう、書かれていた。
ー耳やべえ
黒川君の耳が真っ赤だった。それと首も。
思わず噴き出してしまい、先生に英語の長文の読解をご指名されたのは、隣のやつのせいだ。
それと黒川君のせい。
自分の席から動かずに校庭ばかり見ていて、私が話しかけても生返事。するとHRのチャイムがなり、先生が入って来て出席を取り始める。
「こねえなー…」
黒川君が窓に腕を乗せて横を向いていたから、後ろの席に聞こえるくらいの小さな声で、黒川君は呟いた。
黒川君が呟いた誰か、なんかは分かってる。
一緒に聞こえた私の隣のやつなんか、体を震わせて笑いを堪えている。何かメモに書き出して、私に回してくる。
そのメモには、黒川君と書かれた人間に、大きな尻尾が生えていて、それがしゅーーんと垂れている絵が書いてあった。
(ちょ、やめなさい、私だって笑いたいんだから)
2人で目で笑いあっていると先生が出席を取り終わった。
指でコツコツと窓枠を叩いている黒川君を横目で見ながら今日の連絡を話しているのを聞いていると、いきなり顔を上げて尻尾をブンブンふった。もちろん、あった場合のことだけど。
「おーい、黒川ー、気になるのは分かってるから、俺の話も聞いておけよー」
「…聞いてるし」
くくく、と笑いを堪える声がそこら中でする。が、黒川君は全然気づいていない。
チラと横顔を見ると、校庭をじっと見ている。さっきより、表情が明るく、口元もどこか緩んでいる。
目線を追って校庭を見ると、長い髪の毛を振り乱しながら、女子生徒が横切っていた。
(ほんと黒川君ってー)
そこまで思って前を向く。
「じゃあ、今日もがんばれよー俺も何とかがんばるわー」
と担任の訳わからんやる気の出ない励ましを聞き流し、1限の授業の用意をすると担任と入れ違いで1限の先生が入ってくる。
その担任は、今日もお綺麗ですねーと先生の肩を抱き寄せようとして、教科書で頭を叩かれていた。
そんな光景もいつも通り。
またやってる、とどこか冷めた目でみて、教科書を開けると、さっきの女子生徒が駆け込んで来た。
「セーーーーフ!」
「アウトですよ、新井さん」
ドアを勢いよく開けて入って来たのは、私の後ろの隣の席の子。
新井香苗ちゃん。私とも友達だ。
えー!だめー?って言いながら先生に言う姿にクラス中が笑っている。
「早く席に着きなさい」
軽く笑う先生に言われて、はーい、と席に着く前に私におはようって挨拶するから挨拶をしかえした。
殺気がくる。挨拶で嫉妬はダメよん、黒川君。
「陽ちゃん、おはよー」
「…数学の教科書じゃないから」
挨拶されたのにそれには返事を返さずに、香苗が出した教科書の間違いを指摘している。
(さっきまでイライラしてたのに、もうお花飛んでる)
「えへへ、間違えちゃった、英語だよね」
香苗は鞄から英語の教科書とノートを出した。
何ページかわからなかったのか、香苗が黒板と教科書を交互に見ると。
「…26ページ」
黒川君が横から手を伸ばして香苗の教科書をパラパラとめくる。
「ありがとう、陽ちゃん」
香苗は、授業中だからなのか、その教科書をめくったその腕を少しだけ掴み引き寄せて、そしてその耳にこそっとお礼を言って笑顔を浮かべた。
黒川君は何かを言おうと口を開き、閉じて、また開き、また閉じた。香苗はもう黒板を写し始めようとシャーペンの芯をカチカチ出してて、黒川君は肘をついて、その手に顎を置いて校庭をまた見ていた。
また隣のやつからメモが回って来た。
そのメモには、こう、書かれていた。
ー耳やべえ
黒川君の耳が真っ赤だった。それと首も。
思わず噴き出してしまい、先生に英語の長文の読解をご指名されたのは、隣のやつのせいだ。
それと黒川君のせい。
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