上 下
11 / 13

ティさんは、ファイがお気に入り

しおりを挟む
(昨日は寝るまで大変だったー)

あれからご飯の支度ができたとメイドが伝えに来るまでマリアの詰問は続いていた。メイドが部屋に運びましょうか?と気を遣っていたので、きっと白目を剥いていたと思う。
しかも珍しく水の精霊ウンディーネのティが心配してくれたから、相当な疲れ具合だったのだろう。
お母様もお父様も、少し気を使ってくれた。

お兄様は察しがついていたようで、ニヤリ顔だ。くそ、イケメンなのにほんと残念。きっと昼間のことまだ怒っているのだろう、心の狭い男だ。
ヤンも知らんぷりだし、はい、もう諦めた。


「でも!今日はルンルンなんだよね~」
もとから一晩寝たら忘れるタイプだ!引きずってても意味なんかないし、今日はやることもある。

「さてさて…ティ、いる?」
《さっきから百面相している貴方の隣にいたわ~、どこでする?》
「一言余計!どこでする、だけでいいからね?」

横でふわふわ浮いている水の精霊ウンディーネがくすくすと笑い、中庭はどう?今日は使用人は使わないってファイが言ってたよ~と教えてくれた。

「中庭ね…うーん…成功するか分かんないしなぁ…庭をボロボロにしちゃったらきっとマックさんが悲しむからね…」
何度か兄様が剪定したバラを燃やして、ずーーーんとなっていたのを慰めたことがある。


《先生のところに行く?》

「うーん…そーだね!そーしよ!ファーイ!いるんでしょー?」
にょ、と壁から出て来るファイにちょっと面白いな、と思いながら、外に出たいんだけど、今大丈夫?とお願いした。

《任せろ、我が姫》

さっそく準備を始めて、マリアへ、としたためた手紙をテーブルの上に置く。これでちょっとしたことはマリアがなんとかしてくれるだろう。
バルコニーに出て、風が髪を後ろにはためかせる。
ファイが私を横抱きにして、持ち上げてくれて運ばれるのだが…

「ねぇ、やっぱりおんぶとかにしない?」

《俺はコレしか受け付けねー》

目が緑色に薄く光り、私の身体が浮く。
魔力マナが私から出て行く感じがして、ファイがごちそーさん、と舌をぺろり、と出す。

(色気だだ漏れか)

しらっとした目で見ると、ティが横で広げていた扇で口元を隠した。

《私もお姫様抱っこされたいわぁ》
《てめぇは浮いてこれるだろ》
《自分で浮くより気分がいいもの》
ふふふ、と扇をパチン、と閉めてえい!とファイの頬をぶっ叩いた。
《ぶふっ!ぐぉら!てめぇ、何してんだ!》
《だって、私のことカマ野郎って思ったでしょ?》
《思ってねーよ!!》

ぎゃいぎゃい言い合う2人の会話を外の景色を見ながら聴いているけど…
(ティさん、超理不尽…。)
ちょっとファイが可哀想だな…と思ったが口を出したら矛先が私に向くから、おとなしく人形になっておく。下の景色は街が一望でき、人の姿も見える。
ティの力で薄く膜を張って光りを屈折させて、私達の姿が見えないようにしているから。
難しいことはわかんないけど、そのへんは前の世界の理科で習ったから、何となくティに説明したら、出来るわよ、とスッとやってくれた。実際するのは始めてだったらしいけど。

そんなティさんは、ファイをからかうのが大好きだ。


(だてに経験してきてないからねー。こーゆー時は黙るべし。)

それがファイが反対の頬をまた叩かれていても。

(すごい音した…でもごめん、ファイ、任せた)


きっと昨日、また振られたんだ。
ティはオネエぽい口調で綺麗可愛いモノ好きだが、恋愛対象は女なのだ。
だから、愛を囁いても向こうはそんな気がなかったみたいで、騙された!と言って振られるらしい。
そのイライラをこちらにぶつけてくるから、タチの悪い精霊だ。

そして、いつも被害を受けるのはファイだった。

(私の周りは騒がしい人しかいないのかなー…波風立てずに過ごしたい…。心労は40歳にはキツイ)

《おい!あいつおかしいぞ、何とかしろよ!》

「…………ぐー…」

《あら、寝ちゃったわね、ふたりきりよ?ファイ》

《~~!ぜってー嘘だから!くるな寄るな近づくな頬を撫でるなーー!》

いや、分かるよティさん。からかうとおもしろいもんね。

それに比べて寝たふりしている私は何も面白くないはず、だから頬を撫でないでください。



ファイだけにしてほしいです、ほんとに。



(早く先生のところにつかないかな…)





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

召喚されたけど不要だと殺され、神様が転生さしてくれたのに女神様に呪われました

桜月雪兎
ファンタジー
召喚に巻き込まれてしまった沢口香織は不要な存在として殺されてしまった。 召喚された先で殺された為、元の世界にも戻れなく、さ迷う魂になってしまったのを不憫に思った神様によって召喚された世界に転生することになった。 転生するために必要な手続きをしていたら、偶然やって来て神様と楽しそうに話している香織を見て嫉妬した女神様に呪いをかけられてしまった。 それでも前向きに頑張り、楽しむ香織のお話。

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

チートスキルを貰って転生したけどこんな状況は望んでない

カナデ
ファンタジー
大事故に巻き込まれ、死んだな、と思った時には真っ白な空間にいた佐藤乃蒼(のあ)、普通のOL27歳は、「これから異世界へ転生して貰いますーー!」と言われた。 一つだけ能力をくれるという言葉に、せっかくだから、と流行りの小説を思い出しつつ、どんなチート能力を貰おうか、とドキドキしながら考えていた。 そう、考えていただけで能力を決定したつもりは無かったのに、気づいた時には異世界で子供に転生しており、そうして両親は襲撃されただろう荷馬車の傍で、自分を守るかのように亡くなっていた。 ーーーこんなつもりじゃなかった。なんで、どうしてこんなことに!! その両親の死は、もしかしたら転生の時に考えていたことが原因かもしれなくてーーーー。 自分を転生させた神に何度も繰り返し問いかけても、嘆いても自分の状況は変わることはなく。 彼女が手にしたチート能力はーー中途半端な通販スキル。これからどう生きたらいいのだろう? ちょっと最初は暗めで、ちょっとシリアス風味(はあまりなくなります)な異世界転生のお話となります。 (R15 は残酷描写です。戦闘シーンはそれ程ありませんが流血、人の死がでますので苦手な方は自己責任でお願いします) どんどんのんびりほのぼのな感じになって行きます。(思い出したようにシリアスさんが出たり) チート能力?はありますが、無双ものではありませんので、ご了承ください。 今回はいつもとはちょっと違った風味の話となります。 ストックがいつもより多めにありますので、毎日更新予定です。 力尽きたらのんびり更新となりますが、お付き合いいただけたらうれしいです。 5/2 HOT女性12位になってました!ありがとうございます! 5/3 HOT女性8位(午前9時)表紙入りしてました!ありがとうございます! 5/3 HOT女性4位(午後9時)まで上がりました!ありがとうございます<(_ _)> 5/4 HOT女性2位に起きたらなってました!!ありがとうございます!!頑張ります! 5/5 HOT女性1位に!(12時)寝ようと思ってみたら驚きました!ありがとうございます!!

異世界転生は、0歳からがいいよね

八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。 神様からのギフト(チート能力)で無双します。 初めてなので誤字があったらすいません。 自由気ままに投稿していきます。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺若葉
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

辺境伯令嬢に転生しました。

織田智子
ファンタジー
ある世界の管理者(神)を名乗る人(?)の願いを叶えるために転生しました。 アラフィフ?日本人女性が赤ちゃんからやり直し。 書き直したものですが、中身がどんどん変わっていってる状態です。

処理中です...