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思わぬ癒しタイム
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コンコン、と部屋の扉を叩かれて、どうぞ、と声を掛ける。
お茶を持って来てくれたのかな、と姿勢を直すと、マリアじゃなくヤンが入って来た。
「あれ?ヤン、どうしたの?」
さっきぶりだ。もう少しあのふわふわを堪能したいと思っていたからヤンに会えて嬉しい。
ちょいちょいと手招く私に、ヤンは正確な意味を把握して、目をキョロキョロさせて、少し赤くなり近くにきて目の前で立ち止まった。
「ごほん…失礼いたします。先ほど私達もお嬢様が出席されないことを聞きました」
「ヤン」
「それに関してラーシャ様は、お嬢様を不憫に思われ、遠乗りに連れて行きたいと仰っています。」
「ヤン」
「日時なのですが、家庭教師とのスケジュールの兼ね合いで明後日などはいかがでしょうか」
「ヤン!」
「…どうされました?」
さっきから名前を呼んでいるのに全然反応してくれないから、ちょっと強く呼んでしまった。
(これは、今から言われることをわかってて無視したな~)
嫌がってるの分かっているけれど、やめられない!止まらない!例のおかしみたいなセリフが頭をよぎる
「もう、わかってるくせに~」
ニヤリ、と不気味に笑うとまたヤンは赤くなった。
「あれは…どうかご勘弁を」
「なんで?」
「緑の精霊__・__#様がいらっしゃるではないですか」
「ファイなら大丈夫だよ?」
「私が嫌なのです」
誰にもあんな姿見せられません、といつもはクールなヤンが赤くなる姿に、心を鷲掴みにされた。
(やだ、この子…おばさんの心をくすぐる!)と無駄にトゥンクする。
「え~…ファイ、ちょっと遊びに行ってくれない?」
《嫌だ!!》
ほら見ろ、とヤンは視線を鋭くして、ファイは首に噛り付いてきた。あはは、この子も可愛い
「うーん、ファイ、お願いしてもダメ?」
《…お願いは、卑怯だぞ》
知ってると笑ってお願い、と首を傾げてみる。
少しだけ、私からもスリスリ、と甘える仕草をするとファイはヤンに手を出すなよ!と言って消えてしまった。
「はぁ…ここまでしますか」
「何とでも言いなさい、私は今日お兄様に邪魔をされて、心は荒んでいるのです!」
ヤンもこれからお兄様の誕生日パーティでバタバタするから、私がアレをするのは、今日しかない!
ここまでするのは癒されたい一心だ!
「さ、ヤン!観念しなさい!」
カモンカモン、と手招きすると大きくため息をついてさらに距離を詰めてきた。
目の前に、ヤンが立つ。
光が遮られて、上を見上げる形になる。
「それでは…失礼します」
ギシ、とソファが揺れて隣に座る。
ソファに手をかけて、ヤンは私に傾いてきてー。
その体勢は、膝枕!
「うう、何で私がこんな格好を…」
フワフワの耳が垂れて、尻尾もソファから落ちて不機嫌にバタバタしている。私は数ヶ月ぶりのふわふわによだれを垂らしそうな勢いだ。
「すっごいよ、ヤン!すっごい可愛さだよ!はぁ、癒される~」
耳をもふもふと撫でる。気持ちいい、極上のふわふわだ~
「うう、くすぐったい…」
「くすくす、くすぐったいんだ~この耳の後ろはどう?」
「そこはダメです」
「む~ケチ~」
目を瞑り、その手触りを堪能する。
私が無言になると、ヤンも話さなくなる。
シーンとした部屋に、どこかでメイド達の話し声がかすかに聞こえてくる。
耳も気持ちいいが、サラサラの頭も大好きだ。
こんな髪の毛をしてたのだ。
前の世界の息子も。
だから触りたくなるのだ、だからファイにもヤンにも無茶なお願いもする。
(本当は忘れた方がいいのかもしれないけれど…)
自分がお腹を痛めて産んだ子なのだ。忘れるはずがない。
「…お嬢様は、何故この耳と尻尾を気に入っておられるのですか?」
目を瞑っていると、落ち着いた、でもどこか不安げな声が聞こえた。
お茶を持って来てくれたのかな、と姿勢を直すと、マリアじゃなくヤンが入って来た。
「あれ?ヤン、どうしたの?」
さっきぶりだ。もう少しあのふわふわを堪能したいと思っていたからヤンに会えて嬉しい。
ちょいちょいと手招く私に、ヤンは正確な意味を把握して、目をキョロキョロさせて、少し赤くなり近くにきて目の前で立ち止まった。
「ごほん…失礼いたします。先ほど私達もお嬢様が出席されないことを聞きました」
「ヤン」
「それに関してラーシャ様は、お嬢様を不憫に思われ、遠乗りに連れて行きたいと仰っています。」
「ヤン」
「日時なのですが、家庭教師とのスケジュールの兼ね合いで明後日などはいかがでしょうか」
「ヤン!」
「…どうされました?」
さっきから名前を呼んでいるのに全然反応してくれないから、ちょっと強く呼んでしまった。
(これは、今から言われることをわかってて無視したな~)
嫌がってるの分かっているけれど、やめられない!止まらない!例のおかしみたいなセリフが頭をよぎる
「もう、わかってるくせに~」
ニヤリ、と不気味に笑うとまたヤンは赤くなった。
「あれは…どうかご勘弁を」
「なんで?」
「緑の精霊__・__#様がいらっしゃるではないですか」
「ファイなら大丈夫だよ?」
「私が嫌なのです」
誰にもあんな姿見せられません、といつもはクールなヤンが赤くなる姿に、心を鷲掴みにされた。
(やだ、この子…おばさんの心をくすぐる!)と無駄にトゥンクする。
「え~…ファイ、ちょっと遊びに行ってくれない?」
《嫌だ!!》
ほら見ろ、とヤンは視線を鋭くして、ファイは首に噛り付いてきた。あはは、この子も可愛い
「うーん、ファイ、お願いしてもダメ?」
《…お願いは、卑怯だぞ》
知ってると笑ってお願い、と首を傾げてみる。
少しだけ、私からもスリスリ、と甘える仕草をするとファイはヤンに手を出すなよ!と言って消えてしまった。
「はぁ…ここまでしますか」
「何とでも言いなさい、私は今日お兄様に邪魔をされて、心は荒んでいるのです!」
ヤンもこれからお兄様の誕生日パーティでバタバタするから、私がアレをするのは、今日しかない!
ここまでするのは癒されたい一心だ!
「さ、ヤン!観念しなさい!」
カモンカモン、と手招きすると大きくため息をついてさらに距離を詰めてきた。
目の前に、ヤンが立つ。
光が遮られて、上を見上げる形になる。
「それでは…失礼します」
ギシ、とソファが揺れて隣に座る。
ソファに手をかけて、ヤンは私に傾いてきてー。
その体勢は、膝枕!
「うう、何で私がこんな格好を…」
フワフワの耳が垂れて、尻尾もソファから落ちて不機嫌にバタバタしている。私は数ヶ月ぶりのふわふわによだれを垂らしそうな勢いだ。
「すっごいよ、ヤン!すっごい可愛さだよ!はぁ、癒される~」
耳をもふもふと撫でる。気持ちいい、極上のふわふわだ~
「うう、くすぐったい…」
「くすくす、くすぐったいんだ~この耳の後ろはどう?」
「そこはダメです」
「む~ケチ~」
目を瞑り、その手触りを堪能する。
私が無言になると、ヤンも話さなくなる。
シーンとした部屋に、どこかでメイド達の話し声がかすかに聞こえてくる。
耳も気持ちいいが、サラサラの頭も大好きだ。
こんな髪の毛をしてたのだ。
前の世界の息子も。
だから触りたくなるのだ、だからファイにもヤンにも無茶なお願いもする。
(本当は忘れた方がいいのかもしれないけれど…)
自分がお腹を痛めて産んだ子なのだ。忘れるはずがない。
「…お嬢様は、何故この耳と尻尾を気に入っておられるのですか?」
目を瞑っていると、落ち着いた、でもどこか不安げな声が聞こえた。
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