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母様は天女で般若
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部屋に入ると、長椅子に座ってティカップを持っていた母様がニコニコと落ち着いた声でそれでもビシバシ凍った声音で遅いわ、と言った。
(あぁぁ、兄様が早くに教えてくれてたら!)
母様は金髪を後ろにお団子で1つにまとめて前髪は長く片方で右に垂れている。
うん、般若モードだ。
これが天女モードの時はハーフアップなのだ。
般若モードになる時は、すぐに機嫌が悪くなったのを察知した緑の精霊達が(きゅぴーん!という顔をして)ふよふよ~と下に垂らしている髪を持ち、ハーフアップのお団子に巻きついて一つにまとめる。どうやって固定しているのかは、…謎だ。きっと小さな回旋でも起こしているのだろう。
出来上がったら精霊達がパチパチ~と拍手をして、他の子が母様の頬にキスをしたりしている。
母様はすごい美人だからなんて美しい光景。
母様が般若モードでなければ、だけど。
しかもなんで機嫌によって髪型をいじるのかも謎だ。
マナも消費していないらしい。
自分の使役する精霊に愛されてる人は、このように呼ばなくても側に居て干渉してくる。
それは母様も自分に寄り添ってくれる存在がいてくれると分かっているから、大切に思っている気持ちが伝わっているのだろう。
しかしー。
汗なんかかいてないのに、汗を拭うマネをしていたり、隣の子とハイタッチをしてる姿が悶絶するほど可愛い
「いつまで立っているの?」
紅茶を優雅に飲みながら、ニッコリと笑いかけてくる。笑ってるけど、目の奥が笑っていない。
(ひえぇ、ごめんなさい!でもその声量でカップが揺れないなんて、さすが母様です!)
母様の前に座ると、メイドが私にもミルクティを入れてくれる。
猫舌だからすぐに飲まず、少しでも冷めるのを待つ。
すると、カップが浮き上がり、口許にグイグイ押し付けられた。
クスクスと笑う緑の精霊に、こぼれるこぼれる熱い熱い熱い!と思いながらも優雅に一口飲む。
ありがとう、あとは自分で飲むね、と目で伝えてカップを持つ。
その子はニコニコと母様の方へ行き、指をくるくるして、母様の前髪とティスプーンをゆらゆら揺らす。
母様は私の様子を伺っていて私の目線で、ひとりでに動くスプーンが精霊によるものだと理解し、ぎこちなく微笑んでお礼を言った。
精霊さんも母様に声を掛けてもらえてはしゃいでおります。と伝えると、そうですの、とますます笑みを深めた。
ゴホンと咳き込み、それより、と母様が言った。
「来週、ラーシャの誕生パーティーに貴女は出席は控えるようにと伝えようと思い、呼んだのです」
思わず、グラスとソーサーをぶつけてしまい、音を立ててしまう。
それに対して、いつもなら厳しく指導が入る母様は何も言わない。
「え、でも、今回私は参加…」
いきなりのことで戸惑い、母様の次の言葉を待たずに喋り出してしまった。
いえ、すみません、続けて下さい、と伝えると母様はため息をついた。
「王族が参加するということが先ほど知らされました」
兄の同級生である皇太子様は親しくしていると聞いているが今回は地方への視察で不参加だと聞いていた。というか、その視察に合わせて誕生パーティの日程を組んだのだけどー。
そういう事情なら、不参加が妥当だ。
「そうなのですね、分かりました。私は参加致しません」
(まぁ仕方ないよね。私が病弱じゃないって知られたら、だめなんだし)
正直、病弱の令嬢のふりをするのも疲れるので不参加は願ったり叶ったりだ。
何しよっかなーと鼻歌を吹きたい気分だがそれをグッと堪えた。それを母様は参加できないことへのショックだと勘違いしたみたいで私を気遣ってくれた。
「……今度、母と一緒に、ガーデンでも行きましょうか」
ガーデンとは街で流行っている人気のカフェだ。美味しいモンブランがあると有名でケーキに目がない私は常日頃から行きたいと思っていたけれど、なんせ病弱設定だから、1人では難しい。友達もいない。
そんなカフェに母様からお誘いが!やっほーい!
「ええ!行きたいです!断然そっちの方が嬉しいです!」
よく見たら、母様の髪の毛もハーフアップになってて、天女モードだ。手放しで喜んでしまった。
のが悪かった。
「ふふ、その元気さはパーティに参加できなくて暗くなっていたのではなさそうね。では、ガーデンに行く為にお勉強を普段の倍増やしましょうね」
あー、やってしまった…、とこのベラベラ喋る口を縫い付けてやりたくなった。
そこの緑の精霊さん!
今はパチパチ拍手するところじゃないからー!
(あぁぁ、兄様が早くに教えてくれてたら!)
母様は金髪を後ろにお団子で1つにまとめて前髪は長く片方で右に垂れている。
うん、般若モードだ。
これが天女モードの時はハーフアップなのだ。
般若モードになる時は、すぐに機嫌が悪くなったのを察知した緑の精霊達が(きゅぴーん!という顔をして)ふよふよ~と下に垂らしている髪を持ち、ハーフアップのお団子に巻きついて一つにまとめる。どうやって固定しているのかは、…謎だ。きっと小さな回旋でも起こしているのだろう。
出来上がったら精霊達がパチパチ~と拍手をして、他の子が母様の頬にキスをしたりしている。
母様はすごい美人だからなんて美しい光景。
母様が般若モードでなければ、だけど。
しかもなんで機嫌によって髪型をいじるのかも謎だ。
マナも消費していないらしい。
自分の使役する精霊に愛されてる人は、このように呼ばなくても側に居て干渉してくる。
それは母様も自分に寄り添ってくれる存在がいてくれると分かっているから、大切に思っている気持ちが伝わっているのだろう。
しかしー。
汗なんかかいてないのに、汗を拭うマネをしていたり、隣の子とハイタッチをしてる姿が悶絶するほど可愛い
「いつまで立っているの?」
紅茶を優雅に飲みながら、ニッコリと笑いかけてくる。笑ってるけど、目の奥が笑っていない。
(ひえぇ、ごめんなさい!でもその声量でカップが揺れないなんて、さすが母様です!)
母様の前に座ると、メイドが私にもミルクティを入れてくれる。
猫舌だからすぐに飲まず、少しでも冷めるのを待つ。
すると、カップが浮き上がり、口許にグイグイ押し付けられた。
クスクスと笑う緑の精霊に、こぼれるこぼれる熱い熱い熱い!と思いながらも優雅に一口飲む。
ありがとう、あとは自分で飲むね、と目で伝えてカップを持つ。
その子はニコニコと母様の方へ行き、指をくるくるして、母様の前髪とティスプーンをゆらゆら揺らす。
母様は私の様子を伺っていて私の目線で、ひとりでに動くスプーンが精霊によるものだと理解し、ぎこちなく微笑んでお礼を言った。
精霊さんも母様に声を掛けてもらえてはしゃいでおります。と伝えると、そうですの、とますます笑みを深めた。
ゴホンと咳き込み、それより、と母様が言った。
「来週、ラーシャの誕生パーティーに貴女は出席は控えるようにと伝えようと思い、呼んだのです」
思わず、グラスとソーサーをぶつけてしまい、音を立ててしまう。
それに対して、いつもなら厳しく指導が入る母様は何も言わない。
「え、でも、今回私は参加…」
いきなりのことで戸惑い、母様の次の言葉を待たずに喋り出してしまった。
いえ、すみません、続けて下さい、と伝えると母様はため息をついた。
「王族が参加するということが先ほど知らされました」
兄の同級生である皇太子様は親しくしていると聞いているが今回は地方への視察で不参加だと聞いていた。というか、その視察に合わせて誕生パーティの日程を組んだのだけどー。
そういう事情なら、不参加が妥当だ。
「そうなのですね、分かりました。私は参加致しません」
(まぁ仕方ないよね。私が病弱じゃないって知られたら、だめなんだし)
正直、病弱の令嬢のふりをするのも疲れるので不参加は願ったり叶ったりだ。
何しよっかなーと鼻歌を吹きたい気分だがそれをグッと堪えた。それを母様は参加できないことへのショックだと勘違いしたみたいで私を気遣ってくれた。
「……今度、母と一緒に、ガーデンでも行きましょうか」
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そんなカフェに母様からお誘いが!やっほーい!
「ええ!行きたいです!断然そっちの方が嬉しいです!」
よく見たら、母様の髪の毛もハーフアップになってて、天女モードだ。手放しで喜んでしまった。
のが悪かった。
「ふふ、その元気さはパーティに参加できなくて暗くなっていたのではなさそうね。では、ガーデンに行く為にお勉強を普段の倍増やしましょうね」
あー、やってしまった…、とこのベラベラ喋る口を縫い付けてやりたくなった。
そこの緑の精霊さん!
今はパチパチ拍手するところじゃないからー!
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