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そして私たちは
これから 3
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まだ興奮しているのか肩で息をしているのをなんとか深呼吸して宥めた。
お見苦しいところをお見せしてしまいすみませんでした、と伝えるとあの人はスッと立ち上がった。
「言いたいことはそれで全部なのかな…?」
下から覗いてる形になるのに、髪の毛で表情が見えない。
ーあなたは何を思っているの。
あの人からの言葉を待つ。
髪の毛の隙間から、何か溢れてくるのが見える。
ーあれは
※
そして、そこからは急激に物事が進むことになるが、その時はまだ分からなかった。
後からもう少し私はよく考えればよかったと後悔するし、なぜ私は動けなかったのかを後悔している。
そうすれば、あの人はー。
少し前。
門の前では騒ぎが起こっていた。
メイド達と執事はホールに控えており、もう少しで強制的にご退室になるルーブル家の三男を待っていた。
もともと話し合いする時間も半刻ほどと決めていたため、その時間になれば何が何でも追い出せと当主からことつかっていた。
執事は腕時計に目をやり、胸に溜まっていた息を吐く。
幼い頃からお嬢様を見てきてここまで胸の内を吐露することはなかった。いつも周囲から求められる役割を把握していて、それをなんなくクリアされるお姿に感銘を受けていた。ワガママを言うこともなく、どんなにキツイ指導であっても弱音を吐くことはなかった。
ー今回のことは、初めてなのだ。涙も、激情も。今お二人は何をお話しされているのだろうか…。
外で何か怒鳴り声が聞こえてきた。それと、女の金切り声。聞き覚えのない声だった。
「何が起こっているのか、すぐに確認して下さい」
執事がメイドに伝えると、そのメイドはすぐに玄関を開けたー。
と、何かが転がり込んできた。
咄嗟のことに息が詰まるも、すぐにそれはあの女だと分かったが、なぜ、ここにー。
「ユーリはどこ?」
失礼な態度と乱れた髪、汚れたドレスに執事は眉を細める。しかしクラベル家のご長女。
失礼には失礼を返すことなんてできない。
「申し訳ございませんが…」
ガチャン!と奥で音がする。
女がすぐに視線をやるのをみて執事はすぐにしまった、と思った。気付かれたー。
女から感じる嫌な気配に、これはもう押さえるしかないと本能で思い行動に移すのと、女がかけ出すのは同じタイミングだった。
女は、聞いていたよりも身体が身軽で素早かったー。
ーくそっ、やはりあの評判は嘘だったのか。あの報告書通り足は健全だったー。
それでも、手は女を掴みーかけた。
そして、鮮血が飛び散った。
メイドの悲鳴が上がり、腕が灼熱に燃えたような気がする。手の甲の激痛に耐えて、それでもこの手を離さないと思い力を込めるも、力が入らないし、血で滑る。
「誰か止めろ、早く!」
無我夢中で叫び、焦りが胸に広がる。
女の先はメイドがおらず、全員が自分より後ろの玄関にいた。
靴も履いていない女は、追い掛けるどのメイドより早くて。
ーお嬢様っ!お逃げ下さい!お嬢様!
腕の止血もせず右腕をダラリと下げ、叫びながら執事も駆け出した。
お見苦しいところをお見せしてしまいすみませんでした、と伝えるとあの人はスッと立ち上がった。
「言いたいことはそれで全部なのかな…?」
下から覗いてる形になるのに、髪の毛で表情が見えない。
ーあなたは何を思っているの。
あの人からの言葉を待つ。
髪の毛の隙間から、何か溢れてくるのが見える。
ーあれは
※
そして、そこからは急激に物事が進むことになるが、その時はまだ分からなかった。
後からもう少し私はよく考えればよかったと後悔するし、なぜ私は動けなかったのかを後悔している。
そうすれば、あの人はー。
少し前。
門の前では騒ぎが起こっていた。
メイド達と執事はホールに控えており、もう少しで強制的にご退室になるルーブル家の三男を待っていた。
もともと話し合いする時間も半刻ほどと決めていたため、その時間になれば何が何でも追い出せと当主からことつかっていた。
執事は腕時計に目をやり、胸に溜まっていた息を吐く。
幼い頃からお嬢様を見てきてここまで胸の内を吐露することはなかった。いつも周囲から求められる役割を把握していて、それをなんなくクリアされるお姿に感銘を受けていた。ワガママを言うこともなく、どんなにキツイ指導であっても弱音を吐くことはなかった。
ー今回のことは、初めてなのだ。涙も、激情も。今お二人は何をお話しされているのだろうか…。
外で何か怒鳴り声が聞こえてきた。それと、女の金切り声。聞き覚えのない声だった。
「何が起こっているのか、すぐに確認して下さい」
執事がメイドに伝えると、そのメイドはすぐに玄関を開けたー。
と、何かが転がり込んできた。
咄嗟のことに息が詰まるも、すぐにそれはあの女だと分かったが、なぜ、ここにー。
「ユーリはどこ?」
失礼な態度と乱れた髪、汚れたドレスに執事は眉を細める。しかしクラベル家のご長女。
失礼には失礼を返すことなんてできない。
「申し訳ございませんが…」
ガチャン!と奥で音がする。
女がすぐに視線をやるのをみて執事はすぐにしまった、と思った。気付かれたー。
女から感じる嫌な気配に、これはもう押さえるしかないと本能で思い行動に移すのと、女がかけ出すのは同じタイミングだった。
女は、聞いていたよりも身体が身軽で素早かったー。
ーくそっ、やはりあの評判は嘘だったのか。あの報告書通り足は健全だったー。
それでも、手は女を掴みーかけた。
そして、鮮血が飛び散った。
メイドの悲鳴が上がり、腕が灼熱に燃えたような気がする。手の甲の激痛に耐えて、それでもこの手を離さないと思い力を込めるも、力が入らないし、血で滑る。
「誰か止めろ、早く!」
無我夢中で叫び、焦りが胸に広がる。
女の先はメイドがおらず、全員が自分より後ろの玄関にいた。
靴も履いていない女は、追い掛けるどのメイドより早くて。
ーお嬢様っ!お逃げ下さい!お嬢様!
腕の止血もせず右腕をダラリと下げ、叫びながら執事も駆け出した。
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