私が猫になってから

フジ

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私を呼んだのは

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誰?とにかく会わなくちゃいけない、私を呼ぶのは誰なの、

とてつもない焦燥感が体を巡り、必死に方へ駆ける。
熱い、身体が燃えているからか、サウナにいるようなムワッとした熱さが絡みついてきた。

多分身体が燃え尽きたら私も消えるのだろう。

そうハッキリと感じた。


その前にー、と強く思う。でも何が?いや、何を?

ビュンビュンと景色が変わり、早く早く早く、と駆けてついたのは、自宅だった。


(え、家?)

何故今、家なのか。意味がわからない。それより1秒でも息子と夫の側にいたい。消えるなら、せめて消える間際まで2人の側に居たかった。火葬場に戻ろうとするも足が家の敷地を跨いだ。

(なん、で?)

何があるのだと言うのか、自分のことなのに、大きな力が働いているようで、その強制力が怖かった。

扉をすり抜け、リビングにやってきた。

(何があると言うのー)

何か変わった事があるかきょかろきょろと確認するも何も変わった事がない。




ちりりん、と優しい鈴の音が聞こた。

「にゃーお」

瞳孔が開き黄色の瞳が見えなくなったミミがテーブルに居た。

その瞳と目が合ったその瞬間に分かった。

私が何でここに来たかを。


そして、ついさっき強く想ったことを、思い出した。

(だめ、だめよー、ミミ、だめ)


「にゃー」

ミミの声につられるように、足が動く。

嫌だ、嫌だ、確かにあの2人の側に居たいって思ったけれど。

ミミを犠牲にしたい訳ではない、ミミも大事な家族なのだ。

それなのに、足が勝手にミミの方への向かう。

ミミは逃げない、まるでそうなる事が本望だと言うふうに。


(嫌だよ、ミミ!私は、消えていい、消えていいから!)
身体が熱い、熱くて息が荒いのか、それともこの状況に精神が参っているのが原因か。





心とは裏腹に、私の手は、ミミの頭を撫でた。


そして、なだれ込んできた感情に呑まれる。


私が死んで、陽介が夜通し泣きその顔をペロペロ舐めていた時のもう居ないんだと分かったとてつもない哀しみ。そして寂しさ。
ダイエットに付き合って、と猫じゃらしで遊んで楽しさ。いつもソファで一緒に寛いでいた、穏やかな気持ち。
ーそして、赤ちゃんの時の、ミルクやおシモの世話をしてくれた時の愛情に。


言葉には残せない、でも、感情が確かにそこにはあって。
そんな風に感じて側に居てくれてたのか、と。

胸が詰まって、涙が溢れる。



「にゃーん」



だから、いいんだよーと言われてる気がした。



(ミミ…ミミ、ミミ)


ミミの名前を呼んで、優しく抱き締めた。


(本当に、ありがとう、ありがとうっーっ)



大好きな飼い主の腕に抱かれて、気持ちよさそうに目を細めてゴロゴロと喉を鳴らし、甘えるようににゃーお、と高く鳴いた。









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