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第十三話「新たなる鼓動」
第三章「この手がつかむもの」・④
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「・・・ッ‼ 各班緊急離脱‼ No.021から離れろッ‼」
背筋に走った悪寒に急かされて・・・気が付けば、そう指示していた。
──「何かとてつもない攻撃が来る」と、本能で理解したのだ。
「ラビット3‼ No.021の中央の首めがけて撃て‼」
『りょ、了解!』
切り札たる一撃を易々と使う事に、気後れがないと言えば嘘になるが・・・
今からNo.021がしようとしている攻撃は、そうまでしてでも止めなければならないと・・・私は直感した。
『発射・・・しますっ!』
そして、鎌首をもたげるNo.021の中央の首へ向けて、一直線に放たれた水色の光線は──
着弾の寸前で、ヤツの巨大な右腕によって防がれる。
「なっ・・・⁉ 見もせずに防御しただと・・・⁉」
当然、威力は先程証明された通りで、右腕についた「眼」ともども、その体表を大きく抉り取る事には成功するが・・・
貫通は敵わず、敢え無くすぐさま再生されてしまった。
<くっ・・・‼>
こちらと同様に、今のNo.021にただならぬものを感じたのか、No.011は慌てた様子で街中の瓦礫を浮かせ、それらを流星群のようにぶつけていく。
・・・しかし、やはりダメージらしいダメージは与えられていない。
<グルアアアアアアァァァァアアッッ‼>
一方のNo.009は、狙われているのが自分であるのを理解した上で、真っ向から受けて立つ事にしたらしく──
雄叫びを伴い、No.021の正面から得意の突進を仕掛けた。
・・・周囲に展開している各班の撤退は、まだ完了していない。
No.009が左右に移動せず、そのまま突進してくれたのは不幸中の幸いと言え──いや・・・まさか・・・理解した上でそうした・・・のか・・・?
疑問に思いながら・・・答えはどこからも返って来ず──
代わりに訪れたのは、モニターに映る景色全てを染める・・・紫色の、烈しい光だった。
<アアアァァァアアアハハハハハハハァァアア────ッッ‼>
No.021の全身から中央の首へと集まっていた怪光は──その頭部、そして口腔を通じて、一気に体外へと放出される。
・・・それは、昨日見た「火炎」ではなく・・・「熱線」とでも言うべき、光の奔流そのものの形を取っていた。
<ッッ⁉ グルアアァァアアアアアアアアッ・・・‼>
必然的に、ヤツの正面にいたNo.009は、この光の直撃を受ける事となったのだが──
驚くべき事に・・・放たれた熱線は、展開された水色の障壁とぶつかり合った上で・・・No.009の突進の勢いを相殺するどころか、反対にその巨体を押し返してしまったのである。
<・・・! こ、ん、のぉ・・・っ‼>
仲間の危機をいち早く察し、No.011は真っ赤な左瞳を光らせる。
直後、No.021の中央の頭が赤い光に包まれ・・・その鼻先が上方へと向けられた。
口腔から放たれる熱線も、つられて射線が逸らされた訳だが・・・しかし。
<アアアァアアハハハハァ───ッッ‼>
<くぅっ、うぅぅ・・・っ‼>
どうやら・・・まだ全快でないNo.011の方は、パワー不足を起こしているらしい。
赤い光の拘束から逃れようと、駄々っ子のように振られる首を抑えきれていないのが見て取れる。
・・・そして、十数秒に及んだせめぎ合いの末に・・・・・・
<・・・っ‼ きゃあああああああああああっっ‼>
暴れ続けるNo.021の首が、運悪くNo.011の方へと向けられ──放たれ続けていた熱線は、その白磁の巨体を飲み込んでしまった。
赤い光の障壁によって、何とか直撃は免れたようだが・・・
その威力を殺し切る事が出来ず、No.011は突き飛ばされるようにして、背後の高層ビルへとその身を埋没する。
・・・皮肉にも、昨日の光景の繰り返しのようだ。
さらに、不幸な事に───
「ッ‼ しまっ・・・」
拘束を解かれたNo.021の首が、再びNo.009へと向けられる途中で──
いくつかのビルと共に、<ジャッカロープ>の3号機がその光に薙ぎ払われてしまったのである。
『そん・・・な・・・っ‼』
右耳に、顔を青くしているのであろうサラの、震えた声が届く。
・・・<ジャッカロープ>には、No.022からの攻撃を想定して、随伴する護衛部隊を付けていた。
サブモニターに目を向けると・・・彼らの通信だけが、途絶しているのが判ってしまった。
<ルアアアアアァァァアアア・・・・・・ッッ‼>
その死を悼む暇もなく──再び熱線に晒されたNo.009の叫びが、スピーカー越しに響き渡る。
水色の障壁の輝きが瞬く間に失われていくのを見て、残された時間が少ない事を悟った。
私は、全ての無力感と後悔を強引に飲み込み──端末に向かって叫ぶ。
「ハウンド2! ハウンド3! <圧縮砲>だ! 今ならヤツの頭を正確に狙える‼」
『『『『アイ・マムッ‼』』』』
最大の危機を、最大のチャンスへと変えられるのは・・・今この時をおいて他にない。
「ラビット1! <ジャッカロープ>の再充填まであとどのくらいだ!」
『残り・・・430秒です・・・!』
やはり、こちらは間に合いそうにない、か・・・・・・
あと少し、No.021を釘付けに出来ればと必死に頭を捻るものの、妙案は浮かばず・・・
一方で、モニターの中では・・・水色の障壁が、遂に、消え失せようとしていた。
<ルルルァ・・・‼ ルアアァァアアアアァァァ・・・・・・‼>
そして──緑の巨体が、熱と光の奔流に飲み込まれようとした、その時───
突然、No.009の前方に・・・新たに赤い光の壁が現出する。
<──ハァ・・・ッ! ハァ・・・ッ! 時間稼ぎは・・・任せて頂戴・・・!>
次いで、司令室に届いた「声」を聴いて・・・否応なく、全員が奮い立った。
『助かるぜ・・・! 惚れちまいそうだッ!』
すかさず、竜ヶ谷少尉が吹っ切れた調子で軽口を放つ。
・・・モニターを注視すれば、No.021の首に残っていた紫の光も、見るからにその光量を失いつつあった。
おそらく・・・熱線の照射も、もってあと数秒だろう。
「間に、合え・・・・・・ッ‼」
願うように、祈るように・・・届くように・・・・・・
食い縛った歯の隙間から、思わずそんな言葉が零れた──次の瞬間──
『──チャージ完了ッ‼ グプタ少尉! 真ん中のは任せたぜ‼』
『アイ・マムッ! カウント・・・3・2・1───ッ‼』
・・・そこからは、本当に一瞬の出来事だった。
<ジャッカロープ>と同様に、細長く変形した<アルミラージ・タンクⅡ>のパラボラ部分から、鋭く放たれた二筋の光条は・・・
それぞれが、狙った場所に迷いなく到達する。
グプタ少尉の放ったものは、中央の頭部を──
竜ヶ谷少尉の放ったものは、その首の根元に噛み付いていた左右の頭部を──
ほとんど同時に、消し飛ばしてみせた。
<<<・・・・・・・・・・・・・・・>>>
こうして・・・つい先程まで狂ったように嗤っていたそれらは、断末魔さえ上げずに沈黙した。
根元を貫通した光線によって、中央の首はちぎれて落ち・・・
残った左右の首も、その先端を失ったために、重力に従い項垂れて・・・
最後に、フッと全身の「眼」から光が消えると、黒い巨体は・・・大地に、倒れた。
『───っしゃああああっっ‼ ユーリャ! 見よったかっ‼』
『・・・うるさい』
そして、いの一番に叫んだ竜ヶ谷少尉と、平時と変わらぬユーリャ少尉の声を合図に──
オープンチャンネルには、属する組織の区別なく・・・皆の歓喜の声が溢れた。
「No.021の高エネルギー反応、減退していきます‼」
油断は大敵だと水を差そうとした所で、松戸少尉から吉報が入る。
思わず、力んだ身体が解れた感覚がしたが・・・あくまで、まだ終わりではない。
残った<ジャッカロープ>2基による、最大出力の圧縮メイザー光線照射で以て、ヤツを完全に消し去るまで・・・油断は禁物だろう。
そう考えつつ、サブモニターに目を向ければ、チャージ完了までの残り時間は200秒と出ていた。
戦いの終わりを実感しつつ・・・ふと、頭に浮かんだ疑問が口から零れる。
「今のは・・・荷電粒子砲だったのか・・・?」
その性質のせいか、はたまた、色合いのせいか・・・
威力は段違いではあるが、先程の熱線に、No.013が使っていた荷電粒子砲がだぶって見えていた。
『──いえ。発射直後から観測しておりましたが、磁場の類は計測されませんでした。現時点では、「何らかの熱エネルギーが収束・放射されたもの」・・・としか』
すると即座に、テリオから解答・・・いや、考察が返って来る。
「成程・・・人類にとって、いまだ未知の現象・・・という事か・・・・・・」
昨夜の時点で、誰かさんからNo.021とNo.022の放つ炎について「人智を超えた代物」だと説明を受けていたお陰か、良くも悪くも驚きは少なかった。
一方で・・・隣の柵山少尉は、険しい顔をしたまま先程の映像とにらめっこをしている。
こういう部分はやはり、研究課の人間という事なのだろうな。
『キリュウ隊長! <ジャッカロープ>1号機、チャージ完了致しました!』
と、そこで、ラビット1より通信が入る。
「・・・よし。2号機のチャージ完了前に、No.021の胸部に照準を──」
そして、つとめて冷静に指示を出そうとした、その瞬間。
『なんだ・・・あれは・・・・・・?』
歓喜に湧くオープンチャンネルに・・・突然、震えた声が届く。
『真昼なのに・・・星が・・・・・・ッ‼』
次いで聴こえたその言葉に、No.014の一件が脳裏を過って・・・背筋が冷える。
「・・・ッ‼ まさか───」
慌てて仮設司令室のテントから飛び出し、空を仰ぎ見ると──
驚くべき事に・・・そこには・・・2つの太陽が、燦然と輝いていたのだ。
<そんな・・・⁉ 有り得ない・・・っ‼>
No.011の愕然とした様子の声に、司令室は凍りつく。
・・・ほんの、ほんの2、3分前だ・・・・・・
私達は・・・ギリギリの攻防を制して、何とか勝利を掴んだのだと・・・
この辛く苦しい戦いに、ようやく終止符を打つ事が出来るのだと・・・そう信じていたはずなのに・・・・・・
<<<アアアアアアァァァァハハハハハハハハハッッ‼>>>
天より降り注ぐ光を浴びて、たちまちに完全なる再生を遂げたNo.021は──
そんな私達の僅かばかりの希望を・・・全てを、嘲嗤っていた。
背筋に走った悪寒に急かされて・・・気が付けば、そう指示していた。
──「何かとてつもない攻撃が来る」と、本能で理解したのだ。
「ラビット3‼ No.021の中央の首めがけて撃て‼」
『りょ、了解!』
切り札たる一撃を易々と使う事に、気後れがないと言えば嘘になるが・・・
今からNo.021がしようとしている攻撃は、そうまでしてでも止めなければならないと・・・私は直感した。
『発射・・・しますっ!』
そして、鎌首をもたげるNo.021の中央の首へ向けて、一直線に放たれた水色の光線は──
着弾の寸前で、ヤツの巨大な右腕によって防がれる。
「なっ・・・⁉ 見もせずに防御しただと・・・⁉」
当然、威力は先程証明された通りで、右腕についた「眼」ともども、その体表を大きく抉り取る事には成功するが・・・
貫通は敵わず、敢え無くすぐさま再生されてしまった。
<くっ・・・‼>
こちらと同様に、今のNo.021にただならぬものを感じたのか、No.011は慌てた様子で街中の瓦礫を浮かせ、それらを流星群のようにぶつけていく。
・・・しかし、やはりダメージらしいダメージは与えられていない。
<グルアアアアアアァァァァアアッッ‼>
一方のNo.009は、狙われているのが自分であるのを理解した上で、真っ向から受けて立つ事にしたらしく──
雄叫びを伴い、No.021の正面から得意の突進を仕掛けた。
・・・周囲に展開している各班の撤退は、まだ完了していない。
No.009が左右に移動せず、そのまま突進してくれたのは不幸中の幸いと言え──いや・・・まさか・・・理解した上でそうした・・・のか・・・?
疑問に思いながら・・・答えはどこからも返って来ず──
代わりに訪れたのは、モニターに映る景色全てを染める・・・紫色の、烈しい光だった。
<アアアァァァアアアハハハハハハハァァアア────ッッ‼>
No.021の全身から中央の首へと集まっていた怪光は──その頭部、そして口腔を通じて、一気に体外へと放出される。
・・・それは、昨日見た「火炎」ではなく・・・「熱線」とでも言うべき、光の奔流そのものの形を取っていた。
<ッッ⁉ グルアアァァアアアアアアアアッ・・・‼>
必然的に、ヤツの正面にいたNo.009は、この光の直撃を受ける事となったのだが──
驚くべき事に・・・放たれた熱線は、展開された水色の障壁とぶつかり合った上で・・・No.009の突進の勢いを相殺するどころか、反対にその巨体を押し返してしまったのである。
<・・・! こ、ん、のぉ・・・っ‼>
仲間の危機をいち早く察し、No.011は真っ赤な左瞳を光らせる。
直後、No.021の中央の頭が赤い光に包まれ・・・その鼻先が上方へと向けられた。
口腔から放たれる熱線も、つられて射線が逸らされた訳だが・・・しかし。
<アアアァアアハハハハァ───ッッ‼>
<くぅっ、うぅぅ・・・っ‼>
どうやら・・・まだ全快でないNo.011の方は、パワー不足を起こしているらしい。
赤い光の拘束から逃れようと、駄々っ子のように振られる首を抑えきれていないのが見て取れる。
・・・そして、十数秒に及んだせめぎ合いの末に・・・・・・
<・・・っ‼ きゃあああああああああああっっ‼>
暴れ続けるNo.021の首が、運悪くNo.011の方へと向けられ──放たれ続けていた熱線は、その白磁の巨体を飲み込んでしまった。
赤い光の障壁によって、何とか直撃は免れたようだが・・・
その威力を殺し切る事が出来ず、No.011は突き飛ばされるようにして、背後の高層ビルへとその身を埋没する。
・・・皮肉にも、昨日の光景の繰り返しのようだ。
さらに、不幸な事に───
「ッ‼ しまっ・・・」
拘束を解かれたNo.021の首が、再びNo.009へと向けられる途中で──
いくつかのビルと共に、<ジャッカロープ>の3号機がその光に薙ぎ払われてしまったのである。
『そん・・・な・・・っ‼』
右耳に、顔を青くしているのであろうサラの、震えた声が届く。
・・・<ジャッカロープ>には、No.022からの攻撃を想定して、随伴する護衛部隊を付けていた。
サブモニターに目を向けると・・・彼らの通信だけが、途絶しているのが判ってしまった。
<ルアアアアアァァァアアア・・・・・・ッッ‼>
その死を悼む暇もなく──再び熱線に晒されたNo.009の叫びが、スピーカー越しに響き渡る。
水色の障壁の輝きが瞬く間に失われていくのを見て、残された時間が少ない事を悟った。
私は、全ての無力感と後悔を強引に飲み込み──端末に向かって叫ぶ。
「ハウンド2! ハウンド3! <圧縮砲>だ! 今ならヤツの頭を正確に狙える‼」
『『『『アイ・マムッ‼』』』』
最大の危機を、最大のチャンスへと変えられるのは・・・今この時をおいて他にない。
「ラビット1! <ジャッカロープ>の再充填まであとどのくらいだ!」
『残り・・・430秒です・・・!』
やはり、こちらは間に合いそうにない、か・・・・・・
あと少し、No.021を釘付けに出来ればと必死に頭を捻るものの、妙案は浮かばず・・・
一方で、モニターの中では・・・水色の障壁が、遂に、消え失せようとしていた。
<ルルルァ・・・‼ ルアアァァアアアアァァァ・・・・・・‼>
そして──緑の巨体が、熱と光の奔流に飲み込まれようとした、その時───
突然、No.009の前方に・・・新たに赤い光の壁が現出する。
<──ハァ・・・ッ! ハァ・・・ッ! 時間稼ぎは・・・任せて頂戴・・・!>
次いで、司令室に届いた「声」を聴いて・・・否応なく、全員が奮い立った。
『助かるぜ・・・! 惚れちまいそうだッ!』
すかさず、竜ヶ谷少尉が吹っ切れた調子で軽口を放つ。
・・・モニターを注視すれば、No.021の首に残っていた紫の光も、見るからにその光量を失いつつあった。
おそらく・・・熱線の照射も、もってあと数秒だろう。
「間に、合え・・・・・・ッ‼」
願うように、祈るように・・・届くように・・・・・・
食い縛った歯の隙間から、思わずそんな言葉が零れた──次の瞬間──
『──チャージ完了ッ‼ グプタ少尉! 真ん中のは任せたぜ‼』
『アイ・マムッ! カウント・・・3・2・1───ッ‼』
・・・そこからは、本当に一瞬の出来事だった。
<ジャッカロープ>と同様に、細長く変形した<アルミラージ・タンクⅡ>のパラボラ部分から、鋭く放たれた二筋の光条は・・・
それぞれが、狙った場所に迷いなく到達する。
グプタ少尉の放ったものは、中央の頭部を──
竜ヶ谷少尉の放ったものは、その首の根元に噛み付いていた左右の頭部を──
ほとんど同時に、消し飛ばしてみせた。
<<<・・・・・・・・・・・・・・・>>>
こうして・・・つい先程まで狂ったように嗤っていたそれらは、断末魔さえ上げずに沈黙した。
根元を貫通した光線によって、中央の首はちぎれて落ち・・・
残った左右の首も、その先端を失ったために、重力に従い項垂れて・・・
最後に、フッと全身の「眼」から光が消えると、黒い巨体は・・・大地に、倒れた。
『───っしゃああああっっ‼ ユーリャ! 見よったかっ‼』
『・・・うるさい』
そして、いの一番に叫んだ竜ヶ谷少尉と、平時と変わらぬユーリャ少尉の声を合図に──
オープンチャンネルには、属する組織の区別なく・・・皆の歓喜の声が溢れた。
「No.021の高エネルギー反応、減退していきます‼」
油断は大敵だと水を差そうとした所で、松戸少尉から吉報が入る。
思わず、力んだ身体が解れた感覚がしたが・・・あくまで、まだ終わりではない。
残った<ジャッカロープ>2基による、最大出力の圧縮メイザー光線照射で以て、ヤツを完全に消し去るまで・・・油断は禁物だろう。
そう考えつつ、サブモニターに目を向ければ、チャージ完了までの残り時間は200秒と出ていた。
戦いの終わりを実感しつつ・・・ふと、頭に浮かんだ疑問が口から零れる。
「今のは・・・荷電粒子砲だったのか・・・?」
その性質のせいか、はたまた、色合いのせいか・・・
威力は段違いではあるが、先程の熱線に、No.013が使っていた荷電粒子砲がだぶって見えていた。
『──いえ。発射直後から観測しておりましたが、磁場の類は計測されませんでした。現時点では、「何らかの熱エネルギーが収束・放射されたもの」・・・としか』
すると即座に、テリオから解答・・・いや、考察が返って来る。
「成程・・・人類にとって、いまだ未知の現象・・・という事か・・・・・・」
昨夜の時点で、誰かさんからNo.021とNo.022の放つ炎について「人智を超えた代物」だと説明を受けていたお陰か、良くも悪くも驚きは少なかった。
一方で・・・隣の柵山少尉は、険しい顔をしたまま先程の映像とにらめっこをしている。
こういう部分はやはり、研究課の人間という事なのだろうな。
『キリュウ隊長! <ジャッカロープ>1号機、チャージ完了致しました!』
と、そこで、ラビット1より通信が入る。
「・・・よし。2号機のチャージ完了前に、No.021の胸部に照準を──」
そして、つとめて冷静に指示を出そうとした、その瞬間。
『なんだ・・・あれは・・・・・・?』
歓喜に湧くオープンチャンネルに・・・突然、震えた声が届く。
『真昼なのに・・・星が・・・・・・ッ‼』
次いで聴こえたその言葉に、No.014の一件が脳裏を過って・・・背筋が冷える。
「・・・ッ‼ まさか───」
慌てて仮設司令室のテントから飛び出し、空を仰ぎ見ると──
驚くべき事に・・・そこには・・・2つの太陽が、燦然と輝いていたのだ。
<そんな・・・⁉ 有り得ない・・・っ‼>
No.011の愕然とした様子の声に、司令室は凍りつく。
・・・ほんの、ほんの2、3分前だ・・・・・・
私達は・・・ギリギリの攻防を制して、何とか勝利を掴んだのだと・・・
この辛く苦しい戦いに、ようやく終止符を打つ事が出来るのだと・・・そう信じていたはずなのに・・・・・・
<<<アアアアアアァァァァハハハハハハハハハッッ‼>>>
天より降り注ぐ光を浴びて、たちまちに完全なる再生を遂げたNo.021は──
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