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第十一話「キノコ奇想曲」
第二章「ハヤトの長い午後」・⑦
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※ ※ ※
<ムゥーッ‼>
<ムムー‼>
<ムム~ッ‼>
「う、うわわぁっ⁉」
諸悪の根源を追い詰めたと思った直後・・・
予想だにしていなかった光景に面食らい、唖然としてしまっていた僕は──蜘蛛の子を散らすように脇をすり抜けて出ていくキノコずきんたちを、あっけなく取り逃がしてしまう。
パニックに陥った頭で理解できたのは・・・彼女ら(彼ら?)は大きさや格好がまるでコピーしたかのようにそっくりで・・・先程まで追いかけていたのがどの個体だったのか、もはや判別がつかなくなってしまったという事だけだった。
・・・強いて言うなら、頭の上の傘から生えている小さなキノコには、多少種類のバラつきがあったように見受けられたけど・・・
逆に言うと、それくらいしか違いがなかったのだ。
「・・・・・・シルフィ」
『なに~?』
脳内で情報を整理しながら、顔の横にいる妖精に声をかける。
「何て言うか・・・今のキノコたちの・・・「本体」みたいな・・・それだけ倒せば全部おしまい!的なのって・・・どこかにいたりしない・・・?」
『ん~~特にいないと思うよ? 昨日ティータが「一つの生命体」だって言ってたし。さすがにそういうお約束はフィクションだけじゃない?』
「・・・・・・で、ですよねぇ・・・」
御伽噺の申し子のような存在に言われても全く腑に落ちないけど・・・
とりあえず、僕の儚い希望が一瞬にして否定されてしまったのは確かだった。現実はかくも厳しい。
「あぁ~~~もうっ! 一体どうすればいいんだ・・・‼」
・・・もはやあのキノコを何とかする方法は、周囲を完全封鎖して火炎放射器か何かで胞子ごと焼却するとか、そういうバイオレンスなものしか残されていないのだろうか・・・・・・
などと、極端な考えしか浮かばなくなっていたところで──
<ピンポンパンポーン>
突然、外から聴き慣れたメロディが飛び込んでくる。園内放送前のアナウンス音だ。
『いぇ~いっ♪ みなさんお元気ですかぁ~~っ!』
次いで、ハイテンションな女性の声が響き渡って──
同時に、この放送がみーちゃんによるものであり・・・彼女もまた、キノコの影響下にあるのだと理解する。
『ご来場の皆さまにご案内いたしま~すっ♪ このあと15時から~なんと! みんな大好きライズマンの活躍が見られるステージが始まっちゃいますよ~♪ お楽しみに~~♪』
「・・・ッ‼」
「しまった」と感じた時には、全てが遅かった。
僕にはキノコを追いかけるより先にやるべき事があったと・・・今更ながら気付く。
こうなる前にたった一言、「今日のステージは中止です」と園内放送をしてさえいれば・・・!
慌てて時計を見ると──現時刻は14時40分。もはや、幾許の猶予もない。
「・・・・・・行かなくちゃ・・・っ!」
自責の念を、今だけはぐっと飲み込んで──僕は決断した。
『いやいや~・・・ふつーに考えて皆あんな感じなんだし、誰も観に来ないでしょ~』
即座にシルフィが僕を嗜める。
正直、彼女の意見は尤もだと思う。・・・けど、それでも───
「「開演します」って言ったからには、演らなくちゃならないんだ。・・・たとえ正気を失ったままだとしても・・・観に来るお客さんがいるかも知れない以上、僕は行くよ」
山積みになっている問題を放り出して行くなんて・・・愚かだという自覚はある。
でも、ティータの言葉通りなら、今のみーちゃんは「欲望のまま」に行動した結果、ライズマンステージをやろうとしているという事になる。
だからきっと、僕が来るまではずっと場を繋ぎ続けるに違いない。
そして・・・その場にひとりでも、ライズマンを待っている人がいるなら──
僕は、行かなくてはならない。
『・・・ハヤトって、ほんと仕事バカだよね~・・・ついでに、バカ真面目』
すると、シルフィが「観念したよ」とばかりに溜め息を吐く。
「あはは・・・昔、ハルにも同じ事言われたよ」
『・・・じゃあやっぱ今のナシ~』
「仮にも僕の親友なんだけどなぁ・・・」
苦笑してから・・・ふぅと一つ息を吐き、気合を入れ直した。
今、スーツはワンダーシアターの控室にある。ダッシュで向かえば5分だ。
ひとりで着るのは手間だけど、出来ない事はない。15時には間に合うはず。
倉木兄弟やエミリーさんがどういう状態かは判らないけど、最悪グリーティング形式でお客さんの所を回るとか、イベントとしての体裁を保つ方法はいくらでもある。
とにかく、スーツを着た上でその場にいる事が重要だ。
「よし・・・っ!」
今すべき事を整理して、腹を決める。
・・・スーツを着てステージに立つ事で、何かが解決する訳じゃないけど・・・何もせずに立ち尽くしているよりは、幾分かマシなはずだ。
そして、ワンダーシアターへ向かおうと、給湯室に背を向けたところで──
突然、ガタガタ!と背後から物音がする。
<ムゥ~~ッ!>
何事かと振り返ると・・・流し台下の収納から、キノコずきんが3人 ( 体?)、中に入っていたのであろう布巾やらお茶っ葉の缶やらと一緒に転がりながら出てくる。
まだ残っていたのか⁉ と驚き後ずさる・・・が、こちらには気づいていないらしい。
キノコずきんたちは、中身をひっくり返して床に散らばってしまったお茶っ葉や、カラフルな色のスポンジをしきりに見つめ、観察するのに夢中だった。
昨日、クロに触った個体に対して、ティータが「好奇心が強く表れている」と表現していた事を思い出す。
・・・このキノコずきんたちには、もしかしたらその性質が強く反映されているのかも知れないな、と感じた。
と、そこで・・・お茶っ葉を観察していた個体が、意図せず洗剤の入ったボトルを倒し、中の液体が隣にいた個体にかかってしまう。
すると・・・・・・
<ムゥッ⁉>
<ムゥ~⁉>
<ムムーッ⁉>
同時に、その場にいた全員が「悲鳴」を上げ、一つ目に涙を浮かべた。
・・・最も、リアクションをしたのは傘についている目玉だけで、デフォルメされた少女の顔のような部分は無反応だ。
どうやら、あくまで目玉の部分が本体という事らしい。
「もしかして・・・除菌効果が効いた・・・のかな?」
『怪獣でも、キノコは菌なんだね~』
各個体の感覚を全員が共有しているのは、この姿でも変わらないようだ。
「・・・もしかして、除菌スプレー撒くだけで全部解決したりするんじゃ・・・⁉」
暗雲が立ち込めているように見えた現状に、一筋の光が差した───
<<<ムムムウゥ~~~ッッ‼>>>
かに見えた、次の瞬間・・・
憤慨した様子のキノコずきんたちは、おしくらまんじゅうでもするかのように寄り集まると・・・突然、そのシルエットを解いてみせた。
「えぇっ⁉」
少女のような形をしていたそれらは、細い糸──「菌糸」の集合体だったのだ。
解けた三体分の糸は、ひとりでに動いて撚り集まると・・・僅か数秒で、身長180センチはあろうかという大男へと変身した。・・・頭部はやはり、一つ目のキノコだ。
ただし、先程の姿と違って衣服状のものは纏っておらず、全身が黒褐色の筋肉に包まれた、文字通りの「キノコ怪人」といった風貌をしている。
「・・・ッ!」
そして、その迫力に思わずたじろぎ、退がった足がドアに当たって音を立て──
<ピムムムゥ・・・!>
次の瞬間、ぎょろりと剥かれた一つ目が・・・僕の姿を捉えた。
まずい!と慌てて部屋から飛び出し、即座にドアを閉めて距離を取る。
・・・実際どうかは判らないけど、キノコ怪人の見た目は凄まじく強そうで・・・
すぐにでもこの場を立ち去るべきだと、早鐘を打つ心臓が急かしていた。
「・・・・・・い、今はとにかく・・・スーツを着るのが先決だよね!」
そして、急いで出口に向かおうと、体を反転させて───
「────ハヤトさん・・・みいつけた♡ ・・・うふふふふ・・・・・・」
廊下の先で、幽鬼のように佇んでいるクロと、目が合ってしまった。
・・・そうだった・・・そもそも僕は今、追いかけっこの途中だったんだ・・・っ‼
思わず頭を抱えると、彼女の後ろから更に2つの影が現れる。
「ハヤト、姉ちゃんが悪かったよ。ハラへってたんだよな? アタシがきちんと食わせてやるから・・・あむ。ほほはひふひへほほ・・・・・・」
「おおおぉぉにいいぢゃあああいなあああやあぁぁらぁあああ~~~っっ‼」
カノンは何故か雑草を咥えたままこちらへ迫って来ており、ティータに至ってはもはや何を言っているかすら判らず、端正な顔が涙と鼻水でぐしゃぐしゃだった。
───僕は即座に、自分がどうすべきかを判断した。
「・・・・・・みんな・・・・・・ごめぇぇんッッ‼」
全速力で、駆け出す。
・・・三人が塞いでいる出口の方角とは、逆の方向に。
「ああぁぁぁぁ~~‼ もおおおおぉぉぉぉ~~っっ‼」
追いかけてくる三人の足音を背中越しに聴きながら・・・何もかもが上手くいかない無力感を、叫び声に変えて吐き出す。
彼女たちのうち誰か一人にでも捕まれば、次こそ逃げられないのは明白だ。
かと言って、助けを求めようにも、園内にいる全員が正気を失っている現状では難しいだろう。
そして、開演の時間までは・・・残り20分を切っている。
「どうすればいいんだああああぁぁぁ~~~っ‼」
・・・間違いなく、自分史上最大のピンチが今・・・この身に降りかかっていた───
~第三章へつづく~
<ムゥーッ‼>
<ムムー‼>
<ムム~ッ‼>
「う、うわわぁっ⁉」
諸悪の根源を追い詰めたと思った直後・・・
予想だにしていなかった光景に面食らい、唖然としてしまっていた僕は──蜘蛛の子を散らすように脇をすり抜けて出ていくキノコずきんたちを、あっけなく取り逃がしてしまう。
パニックに陥った頭で理解できたのは・・・彼女ら(彼ら?)は大きさや格好がまるでコピーしたかのようにそっくりで・・・先程まで追いかけていたのがどの個体だったのか、もはや判別がつかなくなってしまったという事だけだった。
・・・強いて言うなら、頭の上の傘から生えている小さなキノコには、多少種類のバラつきがあったように見受けられたけど・・・
逆に言うと、それくらいしか違いがなかったのだ。
「・・・・・・シルフィ」
『なに~?』
脳内で情報を整理しながら、顔の横にいる妖精に声をかける。
「何て言うか・・・今のキノコたちの・・・「本体」みたいな・・・それだけ倒せば全部おしまい!的なのって・・・どこかにいたりしない・・・?」
『ん~~特にいないと思うよ? 昨日ティータが「一つの生命体」だって言ってたし。さすがにそういうお約束はフィクションだけじゃない?』
「・・・・・・で、ですよねぇ・・・」
御伽噺の申し子のような存在に言われても全く腑に落ちないけど・・・
とりあえず、僕の儚い希望が一瞬にして否定されてしまったのは確かだった。現実はかくも厳しい。
「あぁ~~~もうっ! 一体どうすればいいんだ・・・‼」
・・・もはやあのキノコを何とかする方法は、周囲を完全封鎖して火炎放射器か何かで胞子ごと焼却するとか、そういうバイオレンスなものしか残されていないのだろうか・・・・・・
などと、極端な考えしか浮かばなくなっていたところで──
<ピンポンパンポーン>
突然、外から聴き慣れたメロディが飛び込んでくる。園内放送前のアナウンス音だ。
『いぇ~いっ♪ みなさんお元気ですかぁ~~っ!』
次いで、ハイテンションな女性の声が響き渡って──
同時に、この放送がみーちゃんによるものであり・・・彼女もまた、キノコの影響下にあるのだと理解する。
『ご来場の皆さまにご案内いたしま~すっ♪ このあと15時から~なんと! みんな大好きライズマンの活躍が見られるステージが始まっちゃいますよ~♪ お楽しみに~~♪』
「・・・ッ‼」
「しまった」と感じた時には、全てが遅かった。
僕にはキノコを追いかけるより先にやるべき事があったと・・・今更ながら気付く。
こうなる前にたった一言、「今日のステージは中止です」と園内放送をしてさえいれば・・・!
慌てて時計を見ると──現時刻は14時40分。もはや、幾許の猶予もない。
「・・・・・・行かなくちゃ・・・っ!」
自責の念を、今だけはぐっと飲み込んで──僕は決断した。
『いやいや~・・・ふつーに考えて皆あんな感じなんだし、誰も観に来ないでしょ~』
即座にシルフィが僕を嗜める。
正直、彼女の意見は尤もだと思う。・・・けど、それでも───
「「開演します」って言ったからには、演らなくちゃならないんだ。・・・たとえ正気を失ったままだとしても・・・観に来るお客さんがいるかも知れない以上、僕は行くよ」
山積みになっている問題を放り出して行くなんて・・・愚かだという自覚はある。
でも、ティータの言葉通りなら、今のみーちゃんは「欲望のまま」に行動した結果、ライズマンステージをやろうとしているという事になる。
だからきっと、僕が来るまではずっと場を繋ぎ続けるに違いない。
そして・・・その場にひとりでも、ライズマンを待っている人がいるなら──
僕は、行かなくてはならない。
『・・・ハヤトって、ほんと仕事バカだよね~・・・ついでに、バカ真面目』
すると、シルフィが「観念したよ」とばかりに溜め息を吐く。
「あはは・・・昔、ハルにも同じ事言われたよ」
『・・・じゃあやっぱ今のナシ~』
「仮にも僕の親友なんだけどなぁ・・・」
苦笑してから・・・ふぅと一つ息を吐き、気合を入れ直した。
今、スーツはワンダーシアターの控室にある。ダッシュで向かえば5分だ。
ひとりで着るのは手間だけど、出来ない事はない。15時には間に合うはず。
倉木兄弟やエミリーさんがどういう状態かは判らないけど、最悪グリーティング形式でお客さんの所を回るとか、イベントとしての体裁を保つ方法はいくらでもある。
とにかく、スーツを着た上でその場にいる事が重要だ。
「よし・・・っ!」
今すべき事を整理して、腹を決める。
・・・スーツを着てステージに立つ事で、何かが解決する訳じゃないけど・・・何もせずに立ち尽くしているよりは、幾分かマシなはずだ。
そして、ワンダーシアターへ向かおうと、給湯室に背を向けたところで──
突然、ガタガタ!と背後から物音がする。
<ムゥ~~ッ!>
何事かと振り返ると・・・流し台下の収納から、キノコずきんが3人 ( 体?)、中に入っていたのであろう布巾やらお茶っ葉の缶やらと一緒に転がりながら出てくる。
まだ残っていたのか⁉ と驚き後ずさる・・・が、こちらには気づいていないらしい。
キノコずきんたちは、中身をひっくり返して床に散らばってしまったお茶っ葉や、カラフルな色のスポンジをしきりに見つめ、観察するのに夢中だった。
昨日、クロに触った個体に対して、ティータが「好奇心が強く表れている」と表現していた事を思い出す。
・・・このキノコずきんたちには、もしかしたらその性質が強く反映されているのかも知れないな、と感じた。
と、そこで・・・お茶っ葉を観察していた個体が、意図せず洗剤の入ったボトルを倒し、中の液体が隣にいた個体にかかってしまう。
すると・・・・・・
<ムゥッ⁉>
<ムゥ~⁉>
<ムムーッ⁉>
同時に、その場にいた全員が「悲鳴」を上げ、一つ目に涙を浮かべた。
・・・最も、リアクションをしたのは傘についている目玉だけで、デフォルメされた少女の顔のような部分は無反応だ。
どうやら、あくまで目玉の部分が本体という事らしい。
「もしかして・・・除菌効果が効いた・・・のかな?」
『怪獣でも、キノコは菌なんだね~』
各個体の感覚を全員が共有しているのは、この姿でも変わらないようだ。
「・・・もしかして、除菌スプレー撒くだけで全部解決したりするんじゃ・・・⁉」
暗雲が立ち込めているように見えた現状に、一筋の光が差した───
<<<ムムムウゥ~~~ッッ‼>>>
かに見えた、次の瞬間・・・
憤慨した様子のキノコずきんたちは、おしくらまんじゅうでもするかのように寄り集まると・・・突然、そのシルエットを解いてみせた。
「えぇっ⁉」
少女のような形をしていたそれらは、細い糸──「菌糸」の集合体だったのだ。
解けた三体分の糸は、ひとりでに動いて撚り集まると・・・僅か数秒で、身長180センチはあろうかという大男へと変身した。・・・頭部はやはり、一つ目のキノコだ。
ただし、先程の姿と違って衣服状のものは纏っておらず、全身が黒褐色の筋肉に包まれた、文字通りの「キノコ怪人」といった風貌をしている。
「・・・ッ!」
そして、その迫力に思わずたじろぎ、退がった足がドアに当たって音を立て──
<ピムムムゥ・・・!>
次の瞬間、ぎょろりと剥かれた一つ目が・・・僕の姿を捉えた。
まずい!と慌てて部屋から飛び出し、即座にドアを閉めて距離を取る。
・・・実際どうかは判らないけど、キノコ怪人の見た目は凄まじく強そうで・・・
すぐにでもこの場を立ち去るべきだと、早鐘を打つ心臓が急かしていた。
「・・・・・・い、今はとにかく・・・スーツを着るのが先決だよね!」
そして、急いで出口に向かおうと、体を反転させて───
「────ハヤトさん・・・みいつけた♡ ・・・うふふふふ・・・・・・」
廊下の先で、幽鬼のように佇んでいるクロと、目が合ってしまった。
・・・そうだった・・・そもそも僕は今、追いかけっこの途中だったんだ・・・っ‼
思わず頭を抱えると、彼女の後ろから更に2つの影が現れる。
「ハヤト、姉ちゃんが悪かったよ。ハラへってたんだよな? アタシがきちんと食わせてやるから・・・あむ。ほほはひふひへほほ・・・・・・」
「おおおぉぉにいいぢゃあああいなあああやあぁぁらぁあああ~~~っっ‼」
カノンは何故か雑草を咥えたままこちらへ迫って来ており、ティータに至ってはもはや何を言っているかすら判らず、端正な顔が涙と鼻水でぐしゃぐしゃだった。
───僕は即座に、自分がどうすべきかを判断した。
「・・・・・・みんな・・・・・・ごめぇぇんッッ‼」
全速力で、駆け出す。
・・・三人が塞いでいる出口の方角とは、逆の方向に。
「ああぁぁぁぁ~~‼ もおおおおぉぉぉぉ~~っっ‼」
追いかけてくる三人の足音を背中越しに聴きながら・・・何もかもが上手くいかない無力感を、叫び声に変えて吐き出す。
彼女たちのうち誰か一人にでも捕まれば、次こそ逃げられないのは明白だ。
かと言って、助けを求めようにも、園内にいる全員が正気を失っている現状では難しいだろう。
そして、開演の時間までは・・・残り20分を切っている。
「どうすればいいんだああああぁぁぁ~~~っ‼」
・・・間違いなく、自分史上最大のピンチが今・・・この身に降りかかっていた───
~第三章へつづく~
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