272 / 325
第十一話「キノコ奇想曲」
第二章「ハヤトの長い午後」・⑦
しおりを挟む
※ ※ ※
<ムゥーッ‼>
<ムムー‼>
<ムム~ッ‼>
「う、うわわぁっ⁉」
諸悪の根源を追い詰めたと思った直後・・・
予想だにしていなかった光景に面食らい、唖然としてしまっていた僕は──蜘蛛の子を散らすように脇をすり抜けて出ていくキノコずきんたちを、あっけなく取り逃がしてしまう。
パニックに陥った頭で理解できたのは・・・彼女ら(彼ら?)は大きさや格好がまるでコピーしたかのようにそっくりで・・・先程まで追いかけていたのがどの個体だったのか、もはや判別がつかなくなってしまったという事だけだった。
・・・強いて言うなら、頭の上の傘から生えている小さなキノコには、多少種類のバラつきがあったように見受けられたけど・・・
逆に言うと、それくらいしか違いがなかったのだ。
「・・・・・・シルフィ」
『なに~?』
脳内で情報を整理しながら、顔の横にいる妖精に声をかける。
「何て言うか・・・今のキノコたちの・・・「本体」みたいな・・・それだけ倒せば全部おしまい!的なのって・・・どこかにいたりしない・・・?」
『ん~~特にいないと思うよ? 昨日ティータが「一つの生命体」だって言ってたし。さすがにそういうお約束はフィクションだけじゃない?』
「・・・・・・で、ですよねぇ・・・」
御伽噺の申し子のような存在に言われても全く腑に落ちないけど・・・
とりあえず、僕の儚い希望が一瞬にして否定されてしまったのは確かだった。現実はかくも厳しい。
「あぁ~~~もうっ! 一体どうすればいいんだ・・・‼」
・・・もはやあのキノコを何とかする方法は、周囲を完全封鎖して火炎放射器か何かで胞子ごと焼却するとか、そういうバイオレンスなものしか残されていないのだろうか・・・・・・
などと、極端な考えしか浮かばなくなっていたところで──
<ピンポンパンポーン>
突然、外から聴き慣れたメロディが飛び込んでくる。園内放送前のアナウンス音だ。
『いぇ~いっ♪ みなさんお元気ですかぁ~~っ!』
次いで、ハイテンションな女性の声が響き渡って──
同時に、この放送がみーちゃんによるものであり・・・彼女もまた、キノコの影響下にあるのだと理解する。
『ご来場の皆さまにご案内いたしま~すっ♪ このあと15時から~なんと! みんな大好きライズマンの活躍が見られるステージが始まっちゃいますよ~♪ お楽しみに~~♪』
「・・・ッ‼」
「しまった」と感じた時には、全てが遅かった。
僕にはキノコを追いかけるより先にやるべき事があったと・・・今更ながら気付く。
こうなる前にたった一言、「今日のステージは中止です」と園内放送をしてさえいれば・・・!
慌てて時計を見ると──現時刻は14時40分。もはや、幾許の猶予もない。
「・・・・・・行かなくちゃ・・・っ!」
自責の念を、今だけはぐっと飲み込んで──僕は決断した。
『いやいや~・・・ふつーに考えて皆あんな感じなんだし、誰も観に来ないでしょ~』
即座にシルフィが僕を嗜める。
正直、彼女の意見は尤もだと思う。・・・けど、それでも───
「「開演します」って言ったからには、演らなくちゃならないんだ。・・・たとえ正気を失ったままだとしても・・・観に来るお客さんがいるかも知れない以上、僕は行くよ」
山積みになっている問題を放り出して行くなんて・・・愚かだという自覚はある。
でも、ティータの言葉通りなら、今のみーちゃんは「欲望のまま」に行動した結果、ライズマンステージをやろうとしているという事になる。
だからきっと、僕が来るまではずっと場を繋ぎ続けるに違いない。
そして・・・その場にひとりでも、ライズマンを待っている人がいるなら──
僕は、行かなくてはならない。
『・・・ハヤトって、ほんと仕事バカだよね~・・・ついでに、バカ真面目』
すると、シルフィが「観念したよ」とばかりに溜め息を吐く。
「あはは・・・昔、ハルにも同じ事言われたよ」
『・・・じゃあやっぱ今のナシ~』
「仮にも僕の親友なんだけどなぁ・・・」
苦笑してから・・・ふぅと一つ息を吐き、気合を入れ直した。
今、スーツはワンダーシアターの控室にある。ダッシュで向かえば5分だ。
ひとりで着るのは手間だけど、出来ない事はない。15時には間に合うはず。
倉木兄弟やエミリーさんがどういう状態かは判らないけど、最悪グリーティング形式でお客さんの所を回るとか、イベントとしての体裁を保つ方法はいくらでもある。
とにかく、スーツを着た上でその場にいる事が重要だ。
「よし・・・っ!」
今すべき事を整理して、腹を決める。
・・・スーツを着てステージに立つ事で、何かが解決する訳じゃないけど・・・何もせずに立ち尽くしているよりは、幾分かマシなはずだ。
そして、ワンダーシアターへ向かおうと、給湯室に背を向けたところで──
突然、ガタガタ!と背後から物音がする。
<ムゥ~~ッ!>
何事かと振り返ると・・・流し台下の収納から、キノコずきんが3人 ( 体?)、中に入っていたのであろう布巾やらお茶っ葉の缶やらと一緒に転がりながら出てくる。
まだ残っていたのか⁉ と驚き後ずさる・・・が、こちらには気づいていないらしい。
キノコずきんたちは、中身をひっくり返して床に散らばってしまったお茶っ葉や、カラフルな色のスポンジをしきりに見つめ、観察するのに夢中だった。
昨日、クロに触った個体に対して、ティータが「好奇心が強く表れている」と表現していた事を思い出す。
・・・このキノコずきんたちには、もしかしたらその性質が強く反映されているのかも知れないな、と感じた。
と、そこで・・・お茶っ葉を観察していた個体が、意図せず洗剤の入ったボトルを倒し、中の液体が隣にいた個体にかかってしまう。
すると・・・・・・
<ムゥッ⁉>
<ムゥ~⁉>
<ムムーッ⁉>
同時に、その場にいた全員が「悲鳴」を上げ、一つ目に涙を浮かべた。
・・・最も、リアクションをしたのは傘についている目玉だけで、デフォルメされた少女の顔のような部分は無反応だ。
どうやら、あくまで目玉の部分が本体という事らしい。
「もしかして・・・除菌効果が効いた・・・のかな?」
『怪獣でも、キノコは菌なんだね~』
各個体の感覚を全員が共有しているのは、この姿でも変わらないようだ。
「・・・もしかして、除菌スプレー撒くだけで全部解決したりするんじゃ・・・⁉」
暗雲が立ち込めているように見えた現状に、一筋の光が差した───
<<<ムムムウゥ~~~ッッ‼>>>
かに見えた、次の瞬間・・・
憤慨した様子のキノコずきんたちは、おしくらまんじゅうでもするかのように寄り集まると・・・突然、そのシルエットを解いてみせた。
「えぇっ⁉」
少女のような形をしていたそれらは、細い糸──「菌糸」の集合体だったのだ。
解けた三体分の糸は、ひとりでに動いて撚り集まると・・・僅か数秒で、身長180センチはあろうかという大男へと変身した。・・・頭部はやはり、一つ目のキノコだ。
ただし、先程の姿と違って衣服状のものは纏っておらず、全身が黒褐色の筋肉に包まれた、文字通りの「キノコ怪人」といった風貌をしている。
「・・・ッ!」
そして、その迫力に思わずたじろぎ、退がった足がドアに当たって音を立て──
<ピムムムゥ・・・!>
次の瞬間、ぎょろりと剥かれた一つ目が・・・僕の姿を捉えた。
まずい!と慌てて部屋から飛び出し、即座にドアを閉めて距離を取る。
・・・実際どうかは判らないけど、キノコ怪人の見た目は凄まじく強そうで・・・
すぐにでもこの場を立ち去るべきだと、早鐘を打つ心臓が急かしていた。
「・・・・・・い、今はとにかく・・・スーツを着るのが先決だよね!」
そして、急いで出口に向かおうと、体を反転させて───
「────ハヤトさん・・・みいつけた♡ ・・・うふふふふ・・・・・・」
廊下の先で、幽鬼のように佇んでいるクロと、目が合ってしまった。
・・・そうだった・・・そもそも僕は今、追いかけっこの途中だったんだ・・・っ‼
思わず頭を抱えると、彼女の後ろから更に2つの影が現れる。
「ハヤト、姉ちゃんが悪かったよ。ハラへってたんだよな? アタシがきちんと食わせてやるから・・・あむ。ほほはひふひへほほ・・・・・・」
「おおおぉぉにいいぢゃあああいなあああやあぁぁらぁあああ~~~っっ‼」
カノンは何故か雑草を咥えたままこちらへ迫って来ており、ティータに至ってはもはや何を言っているかすら判らず、端正な顔が涙と鼻水でぐしゃぐしゃだった。
───僕は即座に、自分がどうすべきかを判断した。
「・・・・・・みんな・・・・・・ごめぇぇんッッ‼」
全速力で、駆け出す。
・・・三人が塞いでいる出口の方角とは、逆の方向に。
「ああぁぁぁぁ~~‼ もおおおおぉぉぉぉ~~っっ‼」
追いかけてくる三人の足音を背中越しに聴きながら・・・何もかもが上手くいかない無力感を、叫び声に変えて吐き出す。
彼女たちのうち誰か一人にでも捕まれば、次こそ逃げられないのは明白だ。
かと言って、助けを求めようにも、園内にいる全員が正気を失っている現状では難しいだろう。
そして、開演の時間までは・・・残り20分を切っている。
「どうすればいいんだああああぁぁぁ~~~っ‼」
・・・間違いなく、自分史上最大のピンチが今・・・この身に降りかかっていた───
~第三章へつづく~
<ムゥーッ‼>
<ムムー‼>
<ムム~ッ‼>
「う、うわわぁっ⁉」
諸悪の根源を追い詰めたと思った直後・・・
予想だにしていなかった光景に面食らい、唖然としてしまっていた僕は──蜘蛛の子を散らすように脇をすり抜けて出ていくキノコずきんたちを、あっけなく取り逃がしてしまう。
パニックに陥った頭で理解できたのは・・・彼女ら(彼ら?)は大きさや格好がまるでコピーしたかのようにそっくりで・・・先程まで追いかけていたのがどの個体だったのか、もはや判別がつかなくなってしまったという事だけだった。
・・・強いて言うなら、頭の上の傘から生えている小さなキノコには、多少種類のバラつきがあったように見受けられたけど・・・
逆に言うと、それくらいしか違いがなかったのだ。
「・・・・・・シルフィ」
『なに~?』
脳内で情報を整理しながら、顔の横にいる妖精に声をかける。
「何て言うか・・・今のキノコたちの・・・「本体」みたいな・・・それだけ倒せば全部おしまい!的なのって・・・どこかにいたりしない・・・?」
『ん~~特にいないと思うよ? 昨日ティータが「一つの生命体」だって言ってたし。さすがにそういうお約束はフィクションだけじゃない?』
「・・・・・・で、ですよねぇ・・・」
御伽噺の申し子のような存在に言われても全く腑に落ちないけど・・・
とりあえず、僕の儚い希望が一瞬にして否定されてしまったのは確かだった。現実はかくも厳しい。
「あぁ~~~もうっ! 一体どうすればいいんだ・・・‼」
・・・もはやあのキノコを何とかする方法は、周囲を完全封鎖して火炎放射器か何かで胞子ごと焼却するとか、そういうバイオレンスなものしか残されていないのだろうか・・・・・・
などと、極端な考えしか浮かばなくなっていたところで──
<ピンポンパンポーン>
突然、外から聴き慣れたメロディが飛び込んでくる。園内放送前のアナウンス音だ。
『いぇ~いっ♪ みなさんお元気ですかぁ~~っ!』
次いで、ハイテンションな女性の声が響き渡って──
同時に、この放送がみーちゃんによるものであり・・・彼女もまた、キノコの影響下にあるのだと理解する。
『ご来場の皆さまにご案内いたしま~すっ♪ このあと15時から~なんと! みんな大好きライズマンの活躍が見られるステージが始まっちゃいますよ~♪ お楽しみに~~♪』
「・・・ッ‼」
「しまった」と感じた時には、全てが遅かった。
僕にはキノコを追いかけるより先にやるべき事があったと・・・今更ながら気付く。
こうなる前にたった一言、「今日のステージは中止です」と園内放送をしてさえいれば・・・!
慌てて時計を見ると──現時刻は14時40分。もはや、幾許の猶予もない。
「・・・・・・行かなくちゃ・・・っ!」
自責の念を、今だけはぐっと飲み込んで──僕は決断した。
『いやいや~・・・ふつーに考えて皆あんな感じなんだし、誰も観に来ないでしょ~』
即座にシルフィが僕を嗜める。
正直、彼女の意見は尤もだと思う。・・・けど、それでも───
「「開演します」って言ったからには、演らなくちゃならないんだ。・・・たとえ正気を失ったままだとしても・・・観に来るお客さんがいるかも知れない以上、僕は行くよ」
山積みになっている問題を放り出して行くなんて・・・愚かだという自覚はある。
でも、ティータの言葉通りなら、今のみーちゃんは「欲望のまま」に行動した結果、ライズマンステージをやろうとしているという事になる。
だからきっと、僕が来るまではずっと場を繋ぎ続けるに違いない。
そして・・・その場にひとりでも、ライズマンを待っている人がいるなら──
僕は、行かなくてはならない。
『・・・ハヤトって、ほんと仕事バカだよね~・・・ついでに、バカ真面目』
すると、シルフィが「観念したよ」とばかりに溜め息を吐く。
「あはは・・・昔、ハルにも同じ事言われたよ」
『・・・じゃあやっぱ今のナシ~』
「仮にも僕の親友なんだけどなぁ・・・」
苦笑してから・・・ふぅと一つ息を吐き、気合を入れ直した。
今、スーツはワンダーシアターの控室にある。ダッシュで向かえば5分だ。
ひとりで着るのは手間だけど、出来ない事はない。15時には間に合うはず。
倉木兄弟やエミリーさんがどういう状態かは判らないけど、最悪グリーティング形式でお客さんの所を回るとか、イベントとしての体裁を保つ方法はいくらでもある。
とにかく、スーツを着た上でその場にいる事が重要だ。
「よし・・・っ!」
今すべき事を整理して、腹を決める。
・・・スーツを着てステージに立つ事で、何かが解決する訳じゃないけど・・・何もせずに立ち尽くしているよりは、幾分かマシなはずだ。
そして、ワンダーシアターへ向かおうと、給湯室に背を向けたところで──
突然、ガタガタ!と背後から物音がする。
<ムゥ~~ッ!>
何事かと振り返ると・・・流し台下の収納から、キノコずきんが3人 ( 体?)、中に入っていたのであろう布巾やらお茶っ葉の缶やらと一緒に転がりながら出てくる。
まだ残っていたのか⁉ と驚き後ずさる・・・が、こちらには気づいていないらしい。
キノコずきんたちは、中身をひっくり返して床に散らばってしまったお茶っ葉や、カラフルな色のスポンジをしきりに見つめ、観察するのに夢中だった。
昨日、クロに触った個体に対して、ティータが「好奇心が強く表れている」と表現していた事を思い出す。
・・・このキノコずきんたちには、もしかしたらその性質が強く反映されているのかも知れないな、と感じた。
と、そこで・・・お茶っ葉を観察していた個体が、意図せず洗剤の入ったボトルを倒し、中の液体が隣にいた個体にかかってしまう。
すると・・・・・・
<ムゥッ⁉>
<ムゥ~⁉>
<ムムーッ⁉>
同時に、その場にいた全員が「悲鳴」を上げ、一つ目に涙を浮かべた。
・・・最も、リアクションをしたのは傘についている目玉だけで、デフォルメされた少女の顔のような部分は無反応だ。
どうやら、あくまで目玉の部分が本体という事らしい。
「もしかして・・・除菌効果が効いた・・・のかな?」
『怪獣でも、キノコは菌なんだね~』
各個体の感覚を全員が共有しているのは、この姿でも変わらないようだ。
「・・・もしかして、除菌スプレー撒くだけで全部解決したりするんじゃ・・・⁉」
暗雲が立ち込めているように見えた現状に、一筋の光が差した───
<<<ムムムウゥ~~~ッッ‼>>>
かに見えた、次の瞬間・・・
憤慨した様子のキノコずきんたちは、おしくらまんじゅうでもするかのように寄り集まると・・・突然、そのシルエットを解いてみせた。
「えぇっ⁉」
少女のような形をしていたそれらは、細い糸──「菌糸」の集合体だったのだ。
解けた三体分の糸は、ひとりでに動いて撚り集まると・・・僅か数秒で、身長180センチはあろうかという大男へと変身した。・・・頭部はやはり、一つ目のキノコだ。
ただし、先程の姿と違って衣服状のものは纏っておらず、全身が黒褐色の筋肉に包まれた、文字通りの「キノコ怪人」といった風貌をしている。
「・・・ッ!」
そして、その迫力に思わずたじろぎ、退がった足がドアに当たって音を立て──
<ピムムムゥ・・・!>
次の瞬間、ぎょろりと剥かれた一つ目が・・・僕の姿を捉えた。
まずい!と慌てて部屋から飛び出し、即座にドアを閉めて距離を取る。
・・・実際どうかは判らないけど、キノコ怪人の見た目は凄まじく強そうで・・・
すぐにでもこの場を立ち去るべきだと、早鐘を打つ心臓が急かしていた。
「・・・・・・い、今はとにかく・・・スーツを着るのが先決だよね!」
そして、急いで出口に向かおうと、体を反転させて───
「────ハヤトさん・・・みいつけた♡ ・・・うふふふふ・・・・・・」
廊下の先で、幽鬼のように佇んでいるクロと、目が合ってしまった。
・・・そうだった・・・そもそも僕は今、追いかけっこの途中だったんだ・・・っ‼
思わず頭を抱えると、彼女の後ろから更に2つの影が現れる。
「ハヤト、姉ちゃんが悪かったよ。ハラへってたんだよな? アタシがきちんと食わせてやるから・・・あむ。ほほはひふひへほほ・・・・・・」
「おおおぉぉにいいぢゃあああいなあああやあぁぁらぁあああ~~~っっ‼」
カノンは何故か雑草を咥えたままこちらへ迫って来ており、ティータに至ってはもはや何を言っているかすら判らず、端正な顔が涙と鼻水でぐしゃぐしゃだった。
───僕は即座に、自分がどうすべきかを判断した。
「・・・・・・みんな・・・・・・ごめぇぇんッッ‼」
全速力で、駆け出す。
・・・三人が塞いでいる出口の方角とは、逆の方向に。
「ああぁぁぁぁ~~‼ もおおおおぉぉぉぉ~~っっ‼」
追いかけてくる三人の足音を背中越しに聴きながら・・・何もかもが上手くいかない無力感を、叫び声に変えて吐き出す。
彼女たちのうち誰か一人にでも捕まれば、次こそ逃げられないのは明白だ。
かと言って、助けを求めようにも、園内にいる全員が正気を失っている現状では難しいだろう。
そして、開演の時間までは・・・残り20分を切っている。
「どうすればいいんだああああぁぁぁ~~~っ‼」
・・・間違いなく、自分史上最大のピンチが今・・・この身に降りかかっていた───
~第三章へつづく~
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる