264 / 325
第十一話「キノコ奇想曲」
第一章「あるいはキノコでいっぱいの日」・④
しおりを挟む
何を以てそんな結論に達したのかが判らず、思わず叫ぶように聞き返してしまう。
ティータは考えを纏めるためか・・・少し沈黙を置いてから、解説してくれた。
「まず・・・復活した段階で、あのキノコの怪獣は間違いなくさっきよりも思考に「具体性」が出ていたの。つまり──増えた後の方が、頭が良くなってるのよ」
「・・・!」
「増えた理由としては、ハヤトの危惧した通り、雷のせいでしょうね。おそらく・・・体組織が電気的な刺激を受けて活性化して、成長を促したんだと思うわ。偶然だけど、私の鱗粉と同じような効果をもたらしてしまったみたい」
そこまで説明してから、ティータは結論を述べる。
「そして、あの怪獣は多分──体全体が「脳」で、全ての個体同士が繋がっているんだわ」
「・・・あァン? どーゆーこった?」
カノンは全くピンと来ていなかったけど・・・僕は何となく理解する事が出来た。
昔、世界最大の「生物」はキノコの一種だと聞いた事がある。森の中に群生しているそれは、大きさにして東京ドーム200個分くらいの面積があったそうだ。
もしあのキノコの怪獣同士が、何かで繋がっていて、意思を伝達し合っているすれば──
個体数・・・即ち脳の体積が増したから頭が良くなったというのは、充分頷ける。
「さすがハヤト。理解が早くて助かるわ♪」
さて・・・いつもならこうして怪獣の事が判ったところで、どうやって相手を倒すのかを考えるところなんだけど───
「・・・あれ? でも今回って・・・・・・」
「・・・あぁ、確かに。それもそうね」
僕の思考を視たティータも、同じ結論に至ったらしい。
考えが間違ってない事を確信して・・・今まさにキノコの怪獣と一戦を交えようとしているネイビーの巨体に向かって、声をかけた。
「クロ! ライジングフィストだ!」
<? ・・・グオオオオオオォォォォォッッ‼>
彼女はお願いした通り、すぐに右手を構えてくれた。
全身に赤いラインが走って、それが一点へと集中していく───
そう・・・彼女の体内に流れている・・・高熱が、だ。
<ピムウウゥンッ⁉>
<ピムムムッ⁉>
<ピピピイィッッ‼>
・・・当たり前だけど・・・キノコは高熱に弱い。焼けちゃうから。
いくら巨大でも、それは変わらない。
そして、怪獣たちは思考を共有している訳だから・・・1体が高熱を怖がれば、当然、全員が怖がってしまう。
つまり──クロがライジングフィストを構えただけで、4体の怪獣は一瞬にして戦意を喪失してしまったのだ。
・・・思惑通りにいったとは言え、あまりの呆気なさに拍子抜けしてしまう。
<グオオオォォォォォッッ!>
「あ、クロ~! もういいわよ~! 向こうは降参みたいだから!」
<・・・・・・グルル・・・>
戦る気満々だったクロが意気消沈したのを、申し訳ない気持ちで見届けた後──
隣のティータが喉に手を当て、「キュルルル」と高い音を発しているのが聴こえた。
おそらく、前にオラティオンと会話した時にやっていたやつだ。
<・・・・・・ピム?>
<ピムムム・・・!>
<ピピィッ! ピィムムンッ!>
話しかけられた事に気付いて、キノコの怪獣が反応する。
・・・全員で思考を共有しているだけあって、皆一様に騒がしく動いていた。
そして、数分の後──ティータがふぅと息を吐く。
「どうやらこの子たち・・・いえ、この子は、一種の仮死状態で眠っていたところを、クロとカノンの存在を察知して目覚めてしまっただけみたい。誰も存在に気付けなかったのは、生命活動が希薄になっていたのが原因のようね」
「そうだったんだ・・・何だか悪い事しちゃったね・・・」
胸を撫で下ろしつつ、若干の罪悪感に苛まれた。
「それと、さっきの予想通り、この子は個体同士が見えないくらい細い糸・・・菌糸?と言ったかしら。それで繋がっている、一つの生命体で間違いないみたい」
成程、と口にしたところで・・・俄に、怪獣に動きがあった。
<ムムムウ?>
増えた3体のうち、最も小さな個体──先程から、他の個体よりも反応が鈍いように見えたものだ──が、所在なさげにしているクロへと近づいていったのだ。
<グオォ・・・ッ⁉>
そして、クロが反応するより早く、そのネイビーの体に触れると───
<ムムムウゥ~~~~ッ‼>
当然ながら、柄の先を火傷してしまったようで・・・・・・
一つ目から大粒の涙を流しながら、慌てて退散していった。
「・・・でも、個々の反応には差があるように見えるね」
同一の生物にしては──という素朴な疑問に、ティータが仮説を提示してくれた。
「そこはおそらく人格の差と言うより、個々の体に感情のどの部分がどれくらい分配されているか・・・の差じゃないかしら。あくまで予想だけれど」
ティータは、焦げた部分をさすっている怪獣を見つめながら、少し微笑む。
「・・・やっぱり、悪意は視えないわね。どうやら怖がりながらも触ってケガをするあたり、あの個体には怪獣の「好奇心」の部分が強く表れているようね」
『ふ~~ん。キノコなのに変なの~~』
するとシルフィがふわりと飛び回りながら、会話に入ってきた。
「あら。好奇心は生物にとって欠かせない要素よ? 危険に飛び込まなければ、何が危険かも判らない・・・学習する事こそ、知性ある者の喜びだわ」
『・・・そんなものかな~?』
ティータの言う事は尤もだけど、シルフィは怪訝な面持ちのままだ。
まぁ・・・彼女は以前、クロに「真実から目を背き続けるのが悪い事だとは思わない」とか、「自分にとって良い事だけを覚えていればいいんだよ」とまで言ってたし・・・
自分から危険な目に遭おうとする気持ちはイマイチ理解出来ない・・・いや、したくないんだろう。
ティータは考えを纏めるためか・・・少し沈黙を置いてから、解説してくれた。
「まず・・・復活した段階で、あのキノコの怪獣は間違いなくさっきよりも思考に「具体性」が出ていたの。つまり──増えた後の方が、頭が良くなってるのよ」
「・・・!」
「増えた理由としては、ハヤトの危惧した通り、雷のせいでしょうね。おそらく・・・体組織が電気的な刺激を受けて活性化して、成長を促したんだと思うわ。偶然だけど、私の鱗粉と同じような効果をもたらしてしまったみたい」
そこまで説明してから、ティータは結論を述べる。
「そして、あの怪獣は多分──体全体が「脳」で、全ての個体同士が繋がっているんだわ」
「・・・あァン? どーゆーこった?」
カノンは全くピンと来ていなかったけど・・・僕は何となく理解する事が出来た。
昔、世界最大の「生物」はキノコの一種だと聞いた事がある。森の中に群生しているそれは、大きさにして東京ドーム200個分くらいの面積があったそうだ。
もしあのキノコの怪獣同士が、何かで繋がっていて、意思を伝達し合っているすれば──
個体数・・・即ち脳の体積が増したから頭が良くなったというのは、充分頷ける。
「さすがハヤト。理解が早くて助かるわ♪」
さて・・・いつもならこうして怪獣の事が判ったところで、どうやって相手を倒すのかを考えるところなんだけど───
「・・・あれ? でも今回って・・・・・・」
「・・・あぁ、確かに。それもそうね」
僕の思考を視たティータも、同じ結論に至ったらしい。
考えが間違ってない事を確信して・・・今まさにキノコの怪獣と一戦を交えようとしているネイビーの巨体に向かって、声をかけた。
「クロ! ライジングフィストだ!」
<? ・・・グオオオオオオォォォォォッッ‼>
彼女はお願いした通り、すぐに右手を構えてくれた。
全身に赤いラインが走って、それが一点へと集中していく───
そう・・・彼女の体内に流れている・・・高熱が、だ。
<ピムウウゥンッ⁉>
<ピムムムッ⁉>
<ピピピイィッッ‼>
・・・当たり前だけど・・・キノコは高熱に弱い。焼けちゃうから。
いくら巨大でも、それは変わらない。
そして、怪獣たちは思考を共有している訳だから・・・1体が高熱を怖がれば、当然、全員が怖がってしまう。
つまり──クロがライジングフィストを構えただけで、4体の怪獣は一瞬にして戦意を喪失してしまったのだ。
・・・思惑通りにいったとは言え、あまりの呆気なさに拍子抜けしてしまう。
<グオオオォォォォォッッ!>
「あ、クロ~! もういいわよ~! 向こうは降参みたいだから!」
<・・・・・・グルル・・・>
戦る気満々だったクロが意気消沈したのを、申し訳ない気持ちで見届けた後──
隣のティータが喉に手を当て、「キュルルル」と高い音を発しているのが聴こえた。
おそらく、前にオラティオンと会話した時にやっていたやつだ。
<・・・・・・ピム?>
<ピムムム・・・!>
<ピピィッ! ピィムムンッ!>
話しかけられた事に気付いて、キノコの怪獣が反応する。
・・・全員で思考を共有しているだけあって、皆一様に騒がしく動いていた。
そして、数分の後──ティータがふぅと息を吐く。
「どうやらこの子たち・・・いえ、この子は、一種の仮死状態で眠っていたところを、クロとカノンの存在を察知して目覚めてしまっただけみたい。誰も存在に気付けなかったのは、生命活動が希薄になっていたのが原因のようね」
「そうだったんだ・・・何だか悪い事しちゃったね・・・」
胸を撫で下ろしつつ、若干の罪悪感に苛まれた。
「それと、さっきの予想通り、この子は個体同士が見えないくらい細い糸・・・菌糸?と言ったかしら。それで繋がっている、一つの生命体で間違いないみたい」
成程、と口にしたところで・・・俄に、怪獣に動きがあった。
<ムムムウ?>
増えた3体のうち、最も小さな個体──先程から、他の個体よりも反応が鈍いように見えたものだ──が、所在なさげにしているクロへと近づいていったのだ。
<グオォ・・・ッ⁉>
そして、クロが反応するより早く、そのネイビーの体に触れると───
<ムムムウゥ~~~~ッ‼>
当然ながら、柄の先を火傷してしまったようで・・・・・・
一つ目から大粒の涙を流しながら、慌てて退散していった。
「・・・でも、個々の反応には差があるように見えるね」
同一の生物にしては──という素朴な疑問に、ティータが仮説を提示してくれた。
「そこはおそらく人格の差と言うより、個々の体に感情のどの部分がどれくらい分配されているか・・・の差じゃないかしら。あくまで予想だけれど」
ティータは、焦げた部分をさすっている怪獣を見つめながら、少し微笑む。
「・・・やっぱり、悪意は視えないわね。どうやら怖がりながらも触ってケガをするあたり、あの個体には怪獣の「好奇心」の部分が強く表れているようね」
『ふ~~ん。キノコなのに変なの~~』
するとシルフィがふわりと飛び回りながら、会話に入ってきた。
「あら。好奇心は生物にとって欠かせない要素よ? 危険に飛び込まなければ、何が危険かも判らない・・・学習する事こそ、知性ある者の喜びだわ」
『・・・そんなものかな~?』
ティータの言う事は尤もだけど、シルフィは怪訝な面持ちのままだ。
まぁ・・・彼女は以前、クロに「真実から目を背き続けるのが悪い事だとは思わない」とか、「自分にとって良い事だけを覚えていればいいんだよ」とまで言ってたし・・・
自分から危険な目に遭おうとする気持ちはイマイチ理解出来ない・・・いや、したくないんだろう。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――
EPIC
SF
日本国の戦闘団、護衛隊群、そして戦闘機と飛行場基地。続々異世界へ――
とある別の歴史を歩んだ世界。
その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。
第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる――
大規模な演習の最中に異常現象に巻き込まれ、未知なる世界へと飛ばされてしまった、日本国陸隊の有事官〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟と、各職種混成の約1個中隊。
そこは、剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する世界であった。
そんな世界で手探りでの調査に乗り出した日本国隊。時に異世界の人々と交流し、時に救い、時には脅威となる存在と苛烈な戦いを繰り広げ、潜り抜けて来た。
そんな彼らの元へ、陸隊の戦闘団。海隊の護衛艦船。航空隊の戦闘機から果ては航空基地までもが、続々と転移合流して来る。
そしてそれを狙い図ったかのように、異世界の各地で不穏な動きが見え始める。
果たして日本国隊は、そして異世界はいかなる道をたどるのか。
未知なる地で、日本国隊と、未知なる力が激突する――
注意事項(1 当お話は第2部となります。ですがここから読み始めても差して支障は無いかと思います、きっと、たぶん、メイビー。
注意事項(2 このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。
注意事項(3 部隊単位で続々転移して来る形式の転移物となります。
注意事項(4 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。かなりなんでも有りです。
注意事項(5 小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる