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第十話「運命の宿敵 後編」
第一章「獰猛なる紫の雷王‼ 恐怖の地上侵攻作戦‼」・⑧
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「く、クソッ! 取れない‼ 取れないぞクソッッ‼」
ホコリを払うように、何度も何度も乱暴に服を払っていらっしゃいましたが・・・コケは一向に落ちる気配がありませんでした。
「早く服を脱げ! そのままじゃ狙われるぞ‼」
「~~~ッ‼ クソッ! クソぉッ‼ どうしてっ! このぉッッ‼」
背中に背負った通信機が邪魔をして隊服が脱げず・・・彼はパニックに陥っていました。
そして・・・焦りからか、彼は通信機を地面に落としてしまわれたのです。
その時には視界が真っ暗でしたので、ガシャン!と大きな音を立てた事しか判りませんでしたが・・・
「し、しまっ・・・」
<ガアアアァ───ッ‼>
直後──その方の声が、悲鳴に変わった事だけは判りました。
「ちくしょおおおおぉぉぉぉぉッッ‼ ナメんじゃねええええぇぇぇぇぇッッ‼」
・・・きっとそこで・・・ぷつん、と・・・何かが切れてしまったのでしょう。
隊員の方々の緊張は頂点に達し、抑えきれない感情が堰を切ったように溢れ出して・・・
隊の数名が、ガラムの声のした方へ向かって、半狂乱になりながら銃を乱射し始めたのです。
「止めろ‼ 落ち着け‼ 全員撃ち方止め───」
ジャグジット中尉は、何とか彼らを収めようとしましたが・・・その途中で───
「う、ぐっ・・・!」
突然、苦悶の声を上げられたのです。
・・・後で判った事でしたが、中尉が先程懸念されていた通り──
誰かの撃った弾が壁に跳弾して、ジャグジット中尉の腹部に当たってしまったのです。
「隊長・・・!」
偶然側に居たお姉さまが、咄嗟に事態を理解して、中尉の体を支えられました。
「ぐうぅ・・・ッ‼ 全員走れ‼ 今は逃げるんだッ‼」
腹部を抑えながら・・・中尉は必死に叫ばれていらっしゃいました。
・・・その時、振り返った私が見たのは──
銃弾が起こす火花の中で、先程まで通信機を背負っていた方の死体を、ガラムたちが何処かへ引っ張っていく光景でした・・・・・・
そしてその後・・・無我夢中で走り続ける中で──
ジャグジット中尉の体が、限界を迎えようとしていたのです。
「・・・ハァ・・・ハァ・・・・・・!」
一度足を止めて、隊員の方が慌てて傷口を塞ぎ、止血をしましたが・・・
既にかなりの量の血を失っておられたようで・・・ライトで照らされたお顔は真っ青でした。
「ハァ・・・ハァ・・・お、俺の事は・・・置いていけ・・・ッ‼」
そして、息を切らしながら、何度も「自分を置いていけ」「お前たちだけでも逃げろ」とうわ言のように仰った後・・・しばらくして、気を失ってしまわれました。
「隊長ぉっ‼」
皆さん必死になって中尉に呼びかけられましたが、意識が戻る様子はありませんでした。
そこで・・・オリバー少尉が、声を上げられたのです。
「・・・ジャグジットの願いを叶えてやろう。・・・私たちだけでも生き残るんだ!」
その言葉は・・・進むべき標を失った方々にとっては、まさに希望そのものだったのでしょう。
一度は肩を落とした隊員の方々は、涙を拭いながら立ち上がりました。
・・・ですが、その中に一人・・・オリバー少尉の意思に背く方がいたのです。
「・・・・・・キリュウ少尉。何をしている」
お姉さまは中尉の腕を肩に回し、気絶して重たくなった体を担ぎ上げられました。
その場にいた誰もが、暗黙のうちに置き去りにしようとした中尉を──お姉さまだけは、見捨てなかったのです。
「助かる命なら・・・助けるだけです」
「・・・・・・」
短く答えたお姉さまの姿に、誰もが驚きを隠せませんでしたが・・・・・・
同時に、誰もその意見や態度を詰る事はしませんでした。
「・・・・・・勝手にしろ。一度落ち着ける場所を探すぞ」
オリバー少尉はその時・・・とても不満げな顔をされていらっしゃいました。
ですが、お姉さまが部下たちの尊敬の念を集めるジャグジット中尉を助けようとしている以上、表立って叱責する事も出来なかったのでしょう。
・・・こうして、中尉の負傷によって隊長代理となったオリバー少尉を先頭に、私達は洞窟の更に奥へと進み──
気付けば、先程ガラムと交戦した場所よりもさらに広く、そこかしこに大きな岩が転がっている空間におりました。
・・・今思えば、この「地底世界」にどこか似ていたかも知れません。
そして、大きな岩と岩の間に身を潜めるようにして荷物を下ろし、そこをベースキャンプとしました。
ジャグジット中尉は・・・まだ気を失われたままでしたわ。
「・・・やはり、外部との通信は無理だな・・・。ひとまず、帰路を確保するのが優先だろう」
少尉は今後の方針を提案し、各々に役割を割り振っていきました。
この時点で・・・調査隊の人数は十人。
負傷した中尉と非戦闘員である私を除けば、動く事の出来る人員は8人にまで減っておりました。
最初にガラムに襲われた方は機動部隊員の方でしたので、このうち正規の隊員はお姉さまとオリバー少尉の二人だけになっていました。
・・・ですが・・・・・・
「副隊長。偵察を出すのは賛成ですが、二人一組では危険です。ヤツらはただの獣ではありません。せめて四人は出さなければ──」
「キリュウ少尉! 貴様の意見は聞いていない!」
お二人の意見は、真っ向から対立していました。
・・・と言うより、オリバー少尉に他人の意見を聞く気がなかったという方が正しかった気もしますが・・・
そして、僅かな間に、彼の強情は度を越し始め──
「では副隊長、偵察任務には私が・・・」
「いや。キリュウ少尉は大好きな隊長の付添いを頼む。美人に世話された方がジャグジットも嬉しいだろうからな!」
「・・・アイ・サー」
つい先程ガラムを無力化したお姉さまを、偵察任務に出す事にすら反対されたのです。
オリバー少尉は、お姉さまの提案を却下したいというただそれだけのために、合理性に欠ける判断を下し──結局、警備課の方が二人、偵察任務に選出されました。
・・・あるいは少尉は、ベースキャンプの守りを手薄にする方が嫌だったのかも知れません。
今となっては・・・それを確かめる術はありませんが・・・・・・
警備課の方が偵察に向かわれた後、お姉さまはオリバー少尉に言いつけられた通り、ジャグジット中尉の看病をされておいででした。
ガラムたちに見つからないよう、一切の照明が無い中、手探りで、です。
・・・一方、私は・・・何もしておりませんでした。比喩ではなく、そのままの意味で。
限界を超えて走らされて、体が悲鳴を上げていたせいなのか・・・ただでさえ敏感になっていた「人の死」を再び間近で見てしまったせいなのか・・・・・・
立ち上がる事も出来ず、暗闇をぼんやり眺めておりました。
・・・勿論、当時の私は「自分は何事にも興味がない」と信じて疑っておりませんでしたので、自分の心身が疲れているなどとは想像もしなかった訳ですが・・・・・・
そんな私を見かねて、お姉さまが声をかけて下さったんです。
「・・・心配するな。君は我々が責任を持って家に帰す」
「・・・・・・」
その声が私に向けられたのだと自覚してから、無気力に振り返ると──
夜目に慣れた視界に、薄ぼんやりと燃えるような赤い瞳が浮かび上がって・・・・・・私にはそれが、何か特別なものに見えたんです。
普段は、誰に視線を向けられようと、特に何も思わなかったはずでしたのに──どうしてか、その鋭くもどこか優しい眼差しに・・・私の心はざわつきました。
出発前に、ジャグジット中尉から「半分日本人の女の子同士、仲良くな!」などと声をかけられた気がしますが、混血同士だからと仲良くする謂われもないと──その時の私は、差し伸べて頂いた手を振り払ったのです。
「別に、構いませんわ。私の事は・・・置いていって下さっても──」
「・・・・・・何?」
おそらく、恥知らずにもそう口にした私の目は・・・濁っていたと思います。
顔をしかめたお姉さまに・・・いえ、キリュウ少尉に、私は重ねて申し上げました。
「私の命なんて、どうなろうと構いませんわ。・・・興味、ありませんもの・・・・・・」
──今考えれば、失われるはずではなかった調査隊の方の命が2つも散ってしまった後で、口にしていい言葉ではありませんでした。
するとお姉さまは・・・私の服の襟を勢いよく掴んで、引き寄せられました。
「・・・私の目を見ろ」
「・・・・・・」
私は従わず、目を逸らしたままでいました。
・・・もう一度、あの赤い瞳を見たら・・・何か・・・その時の私が支えにしている何かが、根本から崩れ去ってしまう──
そんな予感がして・・・怖くてたまらなかったんです。
「フン・・・不貞腐れてる甘ったれの顔だな」
そう吐き捨てて、お姉さまは手を離されました。
そして、これまた恥ずかしい事に・・・生まれてこの方そのような乱暴をされた経験がなかったものですから・・・考えるより前に、負け惜しみが口を衝いて出てしまったのです。
「・・・・・・あなたに・・・私の気持ちなんて──」
「判らんな」
ですが、そんな甘えた言葉を、お姉さまは許しませんでした。
「まだ出来る事があるのに立ち止まってしまう者の気持ちなど・・・判りたくもない」
・・・心臓が、どくん、と跳ねました。
私が必死に目を背け続けている「私自身」を・・・見透かされた気がして・・・・・・
ホコリを払うように、何度も何度も乱暴に服を払っていらっしゃいましたが・・・コケは一向に落ちる気配がありませんでした。
「早く服を脱げ! そのままじゃ狙われるぞ‼」
「~~~ッ‼ クソッ! クソぉッ‼ どうしてっ! このぉッッ‼」
背中に背負った通信機が邪魔をして隊服が脱げず・・・彼はパニックに陥っていました。
そして・・・焦りからか、彼は通信機を地面に落としてしまわれたのです。
その時には視界が真っ暗でしたので、ガシャン!と大きな音を立てた事しか判りませんでしたが・・・
「し、しまっ・・・」
<ガアアアァ───ッ‼>
直後──その方の声が、悲鳴に変わった事だけは判りました。
「ちくしょおおおおぉぉぉぉぉッッ‼ ナメんじゃねええええぇぇぇぇぇッッ‼」
・・・きっとそこで・・・ぷつん、と・・・何かが切れてしまったのでしょう。
隊員の方々の緊張は頂点に達し、抑えきれない感情が堰を切ったように溢れ出して・・・
隊の数名が、ガラムの声のした方へ向かって、半狂乱になりながら銃を乱射し始めたのです。
「止めろ‼ 落ち着け‼ 全員撃ち方止め───」
ジャグジット中尉は、何とか彼らを収めようとしましたが・・・その途中で───
「う、ぐっ・・・!」
突然、苦悶の声を上げられたのです。
・・・後で判った事でしたが、中尉が先程懸念されていた通り──
誰かの撃った弾が壁に跳弾して、ジャグジット中尉の腹部に当たってしまったのです。
「隊長・・・!」
偶然側に居たお姉さまが、咄嗟に事態を理解して、中尉の体を支えられました。
「ぐうぅ・・・ッ‼ 全員走れ‼ 今は逃げるんだッ‼」
腹部を抑えながら・・・中尉は必死に叫ばれていらっしゃいました。
・・・その時、振り返った私が見たのは──
銃弾が起こす火花の中で、先程まで通信機を背負っていた方の死体を、ガラムたちが何処かへ引っ張っていく光景でした・・・・・・
そしてその後・・・無我夢中で走り続ける中で──
ジャグジット中尉の体が、限界を迎えようとしていたのです。
「・・・ハァ・・・ハァ・・・・・・!」
一度足を止めて、隊員の方が慌てて傷口を塞ぎ、止血をしましたが・・・
既にかなりの量の血を失っておられたようで・・・ライトで照らされたお顔は真っ青でした。
「ハァ・・・ハァ・・・お、俺の事は・・・置いていけ・・・ッ‼」
そして、息を切らしながら、何度も「自分を置いていけ」「お前たちだけでも逃げろ」とうわ言のように仰った後・・・しばらくして、気を失ってしまわれました。
「隊長ぉっ‼」
皆さん必死になって中尉に呼びかけられましたが、意識が戻る様子はありませんでした。
そこで・・・オリバー少尉が、声を上げられたのです。
「・・・ジャグジットの願いを叶えてやろう。・・・私たちだけでも生き残るんだ!」
その言葉は・・・進むべき標を失った方々にとっては、まさに希望そのものだったのでしょう。
一度は肩を落とした隊員の方々は、涙を拭いながら立ち上がりました。
・・・ですが、その中に一人・・・オリバー少尉の意思に背く方がいたのです。
「・・・・・・キリュウ少尉。何をしている」
お姉さまは中尉の腕を肩に回し、気絶して重たくなった体を担ぎ上げられました。
その場にいた誰もが、暗黙のうちに置き去りにしようとした中尉を──お姉さまだけは、見捨てなかったのです。
「助かる命なら・・・助けるだけです」
「・・・・・・」
短く答えたお姉さまの姿に、誰もが驚きを隠せませんでしたが・・・・・・
同時に、誰もその意見や態度を詰る事はしませんでした。
「・・・・・・勝手にしろ。一度落ち着ける場所を探すぞ」
オリバー少尉はその時・・・とても不満げな顔をされていらっしゃいました。
ですが、お姉さまが部下たちの尊敬の念を集めるジャグジット中尉を助けようとしている以上、表立って叱責する事も出来なかったのでしょう。
・・・こうして、中尉の負傷によって隊長代理となったオリバー少尉を先頭に、私達は洞窟の更に奥へと進み──
気付けば、先程ガラムと交戦した場所よりもさらに広く、そこかしこに大きな岩が転がっている空間におりました。
・・・今思えば、この「地底世界」にどこか似ていたかも知れません。
そして、大きな岩と岩の間に身を潜めるようにして荷物を下ろし、そこをベースキャンプとしました。
ジャグジット中尉は・・・まだ気を失われたままでしたわ。
「・・・やはり、外部との通信は無理だな・・・。ひとまず、帰路を確保するのが優先だろう」
少尉は今後の方針を提案し、各々に役割を割り振っていきました。
この時点で・・・調査隊の人数は十人。
負傷した中尉と非戦闘員である私を除けば、動く事の出来る人員は8人にまで減っておりました。
最初にガラムに襲われた方は機動部隊員の方でしたので、このうち正規の隊員はお姉さまとオリバー少尉の二人だけになっていました。
・・・ですが・・・・・・
「副隊長。偵察を出すのは賛成ですが、二人一組では危険です。ヤツらはただの獣ではありません。せめて四人は出さなければ──」
「キリュウ少尉! 貴様の意見は聞いていない!」
お二人の意見は、真っ向から対立していました。
・・・と言うより、オリバー少尉に他人の意見を聞く気がなかったという方が正しかった気もしますが・・・
そして、僅かな間に、彼の強情は度を越し始め──
「では副隊長、偵察任務には私が・・・」
「いや。キリュウ少尉は大好きな隊長の付添いを頼む。美人に世話された方がジャグジットも嬉しいだろうからな!」
「・・・アイ・サー」
つい先程ガラムを無力化したお姉さまを、偵察任務に出す事にすら反対されたのです。
オリバー少尉は、お姉さまの提案を却下したいというただそれだけのために、合理性に欠ける判断を下し──結局、警備課の方が二人、偵察任務に選出されました。
・・・あるいは少尉は、ベースキャンプの守りを手薄にする方が嫌だったのかも知れません。
今となっては・・・それを確かめる術はありませんが・・・・・・
警備課の方が偵察に向かわれた後、お姉さまはオリバー少尉に言いつけられた通り、ジャグジット中尉の看病をされておいででした。
ガラムたちに見つからないよう、一切の照明が無い中、手探りで、です。
・・・一方、私は・・・何もしておりませんでした。比喩ではなく、そのままの意味で。
限界を超えて走らされて、体が悲鳴を上げていたせいなのか・・・ただでさえ敏感になっていた「人の死」を再び間近で見てしまったせいなのか・・・・・・
立ち上がる事も出来ず、暗闇をぼんやり眺めておりました。
・・・勿論、当時の私は「自分は何事にも興味がない」と信じて疑っておりませんでしたので、自分の心身が疲れているなどとは想像もしなかった訳ですが・・・・・・
そんな私を見かねて、お姉さまが声をかけて下さったんです。
「・・・心配するな。君は我々が責任を持って家に帰す」
「・・・・・・」
その声が私に向けられたのだと自覚してから、無気力に振り返ると──
夜目に慣れた視界に、薄ぼんやりと燃えるような赤い瞳が浮かび上がって・・・・・・私にはそれが、何か特別なものに見えたんです。
普段は、誰に視線を向けられようと、特に何も思わなかったはずでしたのに──どうしてか、その鋭くもどこか優しい眼差しに・・・私の心はざわつきました。
出発前に、ジャグジット中尉から「半分日本人の女の子同士、仲良くな!」などと声をかけられた気がしますが、混血同士だからと仲良くする謂われもないと──その時の私は、差し伸べて頂いた手を振り払ったのです。
「別に、構いませんわ。私の事は・・・置いていって下さっても──」
「・・・・・・何?」
おそらく、恥知らずにもそう口にした私の目は・・・濁っていたと思います。
顔をしかめたお姉さまに・・・いえ、キリュウ少尉に、私は重ねて申し上げました。
「私の命なんて、どうなろうと構いませんわ。・・・興味、ありませんもの・・・・・・」
──今考えれば、失われるはずではなかった調査隊の方の命が2つも散ってしまった後で、口にしていい言葉ではありませんでした。
するとお姉さまは・・・私の服の襟を勢いよく掴んで、引き寄せられました。
「・・・私の目を見ろ」
「・・・・・・」
私は従わず、目を逸らしたままでいました。
・・・もう一度、あの赤い瞳を見たら・・・何か・・・その時の私が支えにしている何かが、根本から崩れ去ってしまう──
そんな予感がして・・・怖くてたまらなかったんです。
「フン・・・不貞腐れてる甘ったれの顔だな」
そう吐き捨てて、お姉さまは手を離されました。
そして、これまた恥ずかしい事に・・・生まれてこの方そのような乱暴をされた経験がなかったものですから・・・考えるより前に、負け惜しみが口を衝いて出てしまったのです。
「・・・・・・あなたに・・・私の気持ちなんて──」
「判らんな」
ですが、そんな甘えた言葉を、お姉さまは許しませんでした。
「まだ出来る事があるのに立ち止まってしまう者の気持ちなど・・・判りたくもない」
・・・心臓が、どくん、と跳ねました。
私が必死に目を背け続けている「私自身」を・・・見透かされた気がして・・・・・・
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