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第四話「蘇る伝説」
第三章「激突‼ ヴァニラス対レイガノン‼」・⑥
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※ ※ ※
「テリオ! スキャニングと熱源探知!」
『完了済みです。次の角を左。長い通路に出ます。500メートル圏内に熱源なし』
新手を蹴散らし、<ヘルハウンド・チェイサー>で「灰色の男」の後を追っていくと──この無機質な白い通路へと辿り着いた。
テリオのガイドに従い、右手にM9を握ったまま、ハンドルを左に切る。
ここに至るまでに十人は撃って来たが・・・まさか誰にも知られること無く、砂漠の下にこんな広さの施設を造り上げるとは・・・
考えていた以上に、敵の規模は大きいらしい。
一体どこの国の仕業だ・・・と思考を巡らせていると、通路の終わりが見えて来た。
奥はアスファルトで舗装された空間になっており、両側には装甲車が数台控えている。
そして──そのうちの一台に乗り込む、白衣の端が見えた。
「・・・今の、ヤツか?」
『さすがにそこまでは何とも』
優秀だが、万能というわけではないか。
装甲車が発進するのが見えて・・・迷ったが、追いかける事にした。
あの「灰色の男」・・・放っておくと、とんでもない事をしでかしそうな気がしてたまらない。
救出任務が最優先ではあるが、ネイト大尉以下第四分隊に、柵山少尉も付いているのだ。
──私は、私に出来る最善の事をしよう。
舗道のさらに奥がなだらかな勾配になっており、その先から太陽の光が差し込んでいた。
装甲車が外へ出たのが見えて、その背中を追おうとしたところで──カタカタと、金属の擦れる音が聞こえた。
目を向ければ、シャッターが降りて通路を塞ごうとしている。
右手のM9を太腿のホルスターへ戻し、車体後部の「シールド・ブレイカー」を手に取った。
スピードはそのまま、降りきったシャッターに向けて発砲する・・・まだ足りない。
連続でスピン・コッキング。三発目を打ち込んだところで、ひしゃげたシャッターの数カ所から明かりが漏れたのが見えた。
車体へ「シールド・ブレイカー」を戻し、両手でしっかりとハンドルを握る。
「ヘルメットをしておけよ!」
『冗談がお上手。・・・行きます』
メーターが振り切れ──車体がさらに加速して───
ガシャン! と大きな音を立て、シャッターを突き破り外に出た。
勾配を登り切って砂漠に着地すると、風紋を蹂躙するように轍を作って走る装甲車が見えた。
「逃げた事を後悔させてやる・・・!」
アクセルをフルスロットルに。荒れ地をも容易に踏破する車体は、あっという間に装甲車へ追いついた。
再び「シールド・ブレイカー」を手に、リアへ向けて発砲。外装がへこむ。
「テリオ。車内に通信は繋げられるか?」
『・・・チャンネルに介入できません。セキュリティがやけに強固ですね』
ならば、無理矢理にでも止まってもらう事にする。
再装填し、タイヤを狙って発砲・・・ゴムの表面が弾け飛ぶが、なお走り続ける。
「さすがに戦闘用タイヤか・・・」
本当はもう少し穏便に行きたかったが・・・。
「シールド・ブレイカー」を戻し──代わりに、左手で「ニードル・シューター」を手に取った。
起爆センサーのモードを「高熱・高エネルギー」から、「衝撃」に切り替える。
<ヘルハウンド・チェイサー>のスピードを抑えて、少し距離を取り──2発連続で発射。
・・・ややあって、数メートル先で爆発が起き、つんのめった装甲車が前転して、天板から砂地に突っ込んだ。
「・・・さて。ようやくゆっくりお喋りできるな」
最後まで油断せず、「エレクトリック・ガン」を構えて車体を覗き込むと・・・
「う、うぅぅ・・・」
運転席に座る武装した男の他には・・・白衣を着たアジア人が一人・・・・・・
目的の人物がいない事に舌打ちした直後──後方から、プロップローターの回転音が耳に届いて、自分の判断ミスを確信した。
「・・・・・・やられたな」
音がした方を見やると、地面からせり出てきた発着台から、垂直離着陸機が飛び立っていく。
すると同時に──ひっくり返った装甲車の車載端末が起動し、ヤツの声が聴こえた。
『───「共に在れ」』
「ッッ‼」
「灰色の男」の声に違いない。
暗号めいた不可解なセリフを聞くや否や、車に乗っていた男たちが我先にと銃を取り出した。
「動くなっ! 抵抗すると撃──」
そう言いかけて・・・直後に発砲音が、2つ。
自分で銃を咥えた男たちが、一瞬のためらいも見せずに引き金を引いたのである。
「・・・・・・」
絶句して、嫌な沈黙に支配された。
ほんの少し離れたところでは二体のジャガーノートが戦っているはずだが・・・どこか、聞こえるはずの喧騒も遠かった。
『いやはや。してやられました。まさか基地を放棄する羽目になるとは・・・JAGDにも貴女のような優秀な人材がいらっしゃるのですね』
沈黙を破るように──いや、踏みにじるように、「灰色の男」の声が届く。
「・・・せいぜい今は悔しがっていろ。近いうちに、私に捕まっておかなかった事を泣いて後悔するだろう。私より「尋問」が得意な連中が、後に控えているからな」
『フフフ。それは恐ろしい・・・では、捕まらないように逃げ隠れする事にしましょう』
楽しそうに、男は笑った。
しかし、その声はどこか乾いている。感情が無いと言うより、生気が感じられないのだ。
髪や瞳だけでなく──魂すらも、「灰色」───
「・・・・・・貴様は、誰だ」
陳腐な質問が、口をついて出た。
『────私は、プロフェッサー』
さらに陳腐な答えが、端末から返ってきた。
「役職ではなく・・・誰だ、と訊いている」
『──では、それでいきましょう。私の名前は、「プロフェッサー・フー」──』
どこまでも人をコケにした態度で、男はまた笑った。
『以後、お見知りおきを。それでは、またお逢いしましょう』
「次に私と会った時が、貴様の最期だ」
そう言って、悔し紛れに装甲車の外装を蹴飛ばそうとして──
『・・・おっと、言い忘れるところでした。あの基地は、あと15分で自爆します。お仲間を助けるのであれば、急いだ方がよろしいかと・・・では』
最後にそう言い残すと、車載端末の電源が落ちた。
「・・・・・・本当に・・・ふざけたヤツめ・・・」
してやられっ放しだが、「灰色の男」──プロフェッサーの言葉が本当なら、自爆までもう時間がない。
「テリオ! 急いで施設へ戻るぞ!」
慌ただしく<ヘルハウンド・チェイサー>のシートに跨って、来た道を飛ばした。
「テリオ! スキャニングと熱源探知!」
『完了済みです。次の角を左。長い通路に出ます。500メートル圏内に熱源なし』
新手を蹴散らし、<ヘルハウンド・チェイサー>で「灰色の男」の後を追っていくと──この無機質な白い通路へと辿り着いた。
テリオのガイドに従い、右手にM9を握ったまま、ハンドルを左に切る。
ここに至るまでに十人は撃って来たが・・・まさか誰にも知られること無く、砂漠の下にこんな広さの施設を造り上げるとは・・・
考えていた以上に、敵の規模は大きいらしい。
一体どこの国の仕業だ・・・と思考を巡らせていると、通路の終わりが見えて来た。
奥はアスファルトで舗装された空間になっており、両側には装甲車が数台控えている。
そして──そのうちの一台に乗り込む、白衣の端が見えた。
「・・・今の、ヤツか?」
『さすがにそこまでは何とも』
優秀だが、万能というわけではないか。
装甲車が発進するのが見えて・・・迷ったが、追いかける事にした。
あの「灰色の男」・・・放っておくと、とんでもない事をしでかしそうな気がしてたまらない。
救出任務が最優先ではあるが、ネイト大尉以下第四分隊に、柵山少尉も付いているのだ。
──私は、私に出来る最善の事をしよう。
舗道のさらに奥がなだらかな勾配になっており、その先から太陽の光が差し込んでいた。
装甲車が外へ出たのが見えて、その背中を追おうとしたところで──カタカタと、金属の擦れる音が聞こえた。
目を向ければ、シャッターが降りて通路を塞ごうとしている。
右手のM9を太腿のホルスターへ戻し、車体後部の「シールド・ブレイカー」を手に取った。
スピードはそのまま、降りきったシャッターに向けて発砲する・・・まだ足りない。
連続でスピン・コッキング。三発目を打ち込んだところで、ひしゃげたシャッターの数カ所から明かりが漏れたのが見えた。
車体へ「シールド・ブレイカー」を戻し、両手でしっかりとハンドルを握る。
「ヘルメットをしておけよ!」
『冗談がお上手。・・・行きます』
メーターが振り切れ──車体がさらに加速して───
ガシャン! と大きな音を立て、シャッターを突き破り外に出た。
勾配を登り切って砂漠に着地すると、風紋を蹂躙するように轍を作って走る装甲車が見えた。
「逃げた事を後悔させてやる・・・!」
アクセルをフルスロットルに。荒れ地をも容易に踏破する車体は、あっという間に装甲車へ追いついた。
再び「シールド・ブレイカー」を手に、リアへ向けて発砲。外装がへこむ。
「テリオ。車内に通信は繋げられるか?」
『・・・チャンネルに介入できません。セキュリティがやけに強固ですね』
ならば、無理矢理にでも止まってもらう事にする。
再装填し、タイヤを狙って発砲・・・ゴムの表面が弾け飛ぶが、なお走り続ける。
「さすがに戦闘用タイヤか・・・」
本当はもう少し穏便に行きたかったが・・・。
「シールド・ブレイカー」を戻し──代わりに、左手で「ニードル・シューター」を手に取った。
起爆センサーのモードを「高熱・高エネルギー」から、「衝撃」に切り替える。
<ヘルハウンド・チェイサー>のスピードを抑えて、少し距離を取り──2発連続で発射。
・・・ややあって、数メートル先で爆発が起き、つんのめった装甲車が前転して、天板から砂地に突っ込んだ。
「・・・さて。ようやくゆっくりお喋りできるな」
最後まで油断せず、「エレクトリック・ガン」を構えて車体を覗き込むと・・・
「う、うぅぅ・・・」
運転席に座る武装した男の他には・・・白衣を着たアジア人が一人・・・・・・
目的の人物がいない事に舌打ちした直後──後方から、プロップローターの回転音が耳に届いて、自分の判断ミスを確信した。
「・・・・・・やられたな」
音がした方を見やると、地面からせり出てきた発着台から、垂直離着陸機が飛び立っていく。
すると同時に──ひっくり返った装甲車の車載端末が起動し、ヤツの声が聴こえた。
『───「共に在れ」』
「ッッ‼」
「灰色の男」の声に違いない。
暗号めいた不可解なセリフを聞くや否や、車に乗っていた男たちが我先にと銃を取り出した。
「動くなっ! 抵抗すると撃──」
そう言いかけて・・・直後に発砲音が、2つ。
自分で銃を咥えた男たちが、一瞬のためらいも見せずに引き金を引いたのである。
「・・・・・・」
絶句して、嫌な沈黙に支配された。
ほんの少し離れたところでは二体のジャガーノートが戦っているはずだが・・・どこか、聞こえるはずの喧騒も遠かった。
『いやはや。してやられました。まさか基地を放棄する羽目になるとは・・・JAGDにも貴女のような優秀な人材がいらっしゃるのですね』
沈黙を破るように──いや、踏みにじるように、「灰色の男」の声が届く。
「・・・せいぜい今は悔しがっていろ。近いうちに、私に捕まっておかなかった事を泣いて後悔するだろう。私より「尋問」が得意な連中が、後に控えているからな」
『フフフ。それは恐ろしい・・・では、捕まらないように逃げ隠れする事にしましょう』
楽しそうに、男は笑った。
しかし、その声はどこか乾いている。感情が無いと言うより、生気が感じられないのだ。
髪や瞳だけでなく──魂すらも、「灰色」───
「・・・・・・貴様は、誰だ」
陳腐な質問が、口をついて出た。
『────私は、プロフェッサー』
さらに陳腐な答えが、端末から返ってきた。
「役職ではなく・・・誰だ、と訊いている」
『──では、それでいきましょう。私の名前は、「プロフェッサー・フー」──』
どこまでも人をコケにした態度で、男はまた笑った。
『以後、お見知りおきを。それでは、またお逢いしましょう』
「次に私と会った時が、貴様の最期だ」
そう言って、悔し紛れに装甲車の外装を蹴飛ばそうとして──
『・・・おっと、言い忘れるところでした。あの基地は、あと15分で自爆します。お仲間を助けるのであれば、急いだ方がよろしいかと・・・では』
最後にそう言い残すと、車載端末の電源が落ちた。
「・・・・・・本当に・・・ふざけたヤツめ・・・」
してやられっ放しだが、「灰色の男」──プロフェッサーの言葉が本当なら、自爆までもう時間がない。
「テリオ! 急いで施設へ戻るぞ!」
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