6 / 72
6、王太子レオンと王太子妃エリザベス
しおりを挟む「エリザベス。どうした? 今日は、独身貴族の子供ばかりだから行かない。と言ってなかったか?」
レオンは、無駄に甘い声で色気たっぷりに、隣にいる妻に質問を投げかけた。
「ふっ。本当に、お前は色気が常に駄々漏れだな。感服する。世の女性は、お前に色気を習うのが一番の近道ではないかな」
あえて質問には答えず。麗しい夫を冷めた目で見ながら、夫のエメラルドの瞳と、黒曜石といわれている自分の瞳を合わせた。
「周りの人間がお前のブリザードで固まっている」
「平和ぼけしている貴族の坊々には、丁度いい刺激だと感じるが」
「怒るな」
「私が、怒っていると。成る程、分かっているなら、あれをなんとかしろ。
何故、狼の群れの中にうさぎを入れる? 正気か? なんだ、あれは?? 食べられたいのか??」
今のエリザベスは、本当に恐い…。
レオンの言葉は決して冗談ではなく、本当に周りの年若い青年が涙目になっている。
エリザベスは、恐ろしく美人である。レオンの横に並んでもまったく見劣りせず。長身であるレオンと目線がほぼ同じ。
ワインレッドのドレスは、ぴったりと身体の線にそっていて、エリザベスの豊満な肉体をこれでもか!! という具合に主張している。
腰近くまで入ったスリットは、美しい曲線美をさらに強調。
エルティーナの言葉通りに圧巻である。
二人も子供を産んだとは思えない体型であり、そんなエリザベスを人々は人間か? と思っている…絶対に口には出さないが…。
「言い訳になるが。別に俺がエルに、あれを着ろと言ったわけではないからな。
それに、エル自ら、狼の群れに入りたいと言ったんだ。それとなく、注意はしたがな……」
「……エルティーナは、なぜ急にあんなドレスを? エルティーナの侍女達が、今日のエルティーナ様はいつもと違う!!! と可愛くはしゃぎながら話すから、見に来たんだ」
「……発言が、色男だな……。しかし…なるほど、エリザベスのその姿は、エルの侍女達の仕業かな」
「お前の発言は、中年オヤジだな」
「……褒めているんだが。中年オヤジは心外だ。俺はまだ二十八歳だ。まぁ、その姿は変な気分になるから、あまりすすんで着ないでもらえると嬉しい……。
すぐにベッドに入れるなら、別だか……結構……股間がキツい…」
「……お前は、オープンにエロいな…」
レオンほどの色男を夢中にさせるのが、自分だと感じると、さすがのエリザベスも嬉しくて堪らない。
舞踏会にいるエルティーナを見る為に、嫌々着たドレスではあったが…。心の中で、エルティーナの侍女に礼を言う。
思考が色事にならないよう微妙に表情が険しくなっているレオンにわざとらしく、腕を絡ませ、胸を押しつける。今夜が楽しみ!と思いながら。
レオンにとっては、いい迷惑である。
夫の逞しい筋肉質の腕を張り出た胸の谷間に押し付けながらも、青年貴族の中にいるエルティーナに目を向ける。
レオンに聞いても仕方がないから込み入って話さないが、エルティーナの気持ちをどうしても知りたかった。
(「本当にそんな何の魅力もない坊々貴族でいいのか…?」)
エルティーナにとって、アレンは〝男〟ではないのか。
どう考えてもエルティーナの相手はアレンが一番お似合いとしか思えない。疑問は尽きないが、例えエリザベスであっても二人の関係を問い質すのは不可能。
エリザベスは元騎士だからこそ空気をよんでしまう。
アレンとエルティーナ、二人の関係は絶対に聞いてはならない。そんな空気をレオンにもアレンにも、そしてエルティーナにも感じたからだ。
0
お気に入りに追加
392
あなたにおすすめの小説
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!
高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。
7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。
だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。
成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。
そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る
【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】

王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
【本編完結・番外編不定期更新】
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~
藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――
子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。
彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。
「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」
四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。
そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。
文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!?
じれじれ両片思いです。
※他サイトでも掲載しています。
イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。

傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました
みん
恋愛
伯爵家の長女シルフィーは、5歳の時に魔力暴走を起こし、その時の記憶を失ってしまっていた。そして、そのせいで魔力も殆ど無くなってしまい、その時についてしまった傷痕が体に残ってしまった。その為、領地に済む祖父母と叔母と一緒に療養を兼ねてそのまま領地で過ごす事にしたのだが…。
ゆるっと設定なので、温かい気持ちで読んでもらえると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる