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6、王太子レオンと王太子妃エリザベス
しおりを挟む「エリザベス。どうした? 今日は、独身貴族の子供ばかりだから行かない。と言ってなかったか?」
レオンは、無駄に甘い声で色気たっぷりに、隣にいる妻に質問を投げかけた。
「ふっ。本当に、お前は色気が常に駄々漏れだな。感服する。世の女性は、お前に色気を習うのが一番の近道ではないかな」
あえて質問には答えず。麗しい夫を冷めた目で見ながら、夫のエメラルドの瞳と、黒曜石といわれている自分の瞳を合わせた。
「周りの人間がお前のブリザードで固まっている」
「平和ぼけしている貴族の坊々には、丁度いい刺激だと感じるが」
「怒るな」
「私が、怒っていると。成る程、分かっているなら、あれをなんとかしろ。
何故、狼の群れの中にうさぎを入れる? 正気か? なんだ、あれは?? 食べられたいのか??」
今のエリザベスは、本当に恐い…。
レオンの言葉は決して冗談ではなく、本当に周りの年若い青年が涙目になっている。
エリザベスは、恐ろしく美人である。レオンの横に並んでもまったく見劣りせず。長身であるレオンと目線がほぼ同じ。
ワインレッドのドレスは、ぴったりと身体の線にそっていて、エリザベスの豊満な肉体をこれでもか!! という具合に主張している。
腰近くまで入ったスリットは、美しい曲線美をさらに強調。
エルティーナの言葉通りに圧巻である。
二人も子供を産んだとは思えない体型であり、そんなエリザベスを人々は人間か? と思っている…絶対に口には出さないが…。
「言い訳になるが。別に俺がエルに、あれを着ろと言ったわけではないからな。
それに、エル自ら、狼の群れに入りたいと言ったんだ。それとなく、注意はしたがな……」
「……エルティーナは、なぜ急にあんなドレスを? エルティーナの侍女達が、今日のエルティーナ様はいつもと違う!!! と可愛くはしゃぎながら話すから、見に来たんだ」
「……発言が、色男だな……。しかし…なるほど、エリザベスのその姿は、エルの侍女達の仕業かな」
「お前の発言は、中年オヤジだな」
「……褒めているんだが。中年オヤジは心外だ。俺はまだ二十八歳だ。まぁ、その姿は変な気分になるから、あまりすすんで着ないでもらえると嬉しい……。
すぐにベッドに入れるなら、別だか……結構……股間がキツい…」
「……お前は、オープンにエロいな…」
レオンほどの色男を夢中にさせるのが、自分だと感じると、さすがのエリザベスも嬉しくて堪らない。
舞踏会にいるエルティーナを見る為に、嫌々着たドレスではあったが…。心の中で、エルティーナの侍女に礼を言う。
思考が色事にならないよう微妙に表情が険しくなっているレオンにわざとらしく、腕を絡ませ、胸を押しつける。今夜が楽しみ!と思いながら。
レオンにとっては、いい迷惑である。
夫の逞しい筋肉質の腕を張り出た胸の谷間に押し付けながらも、青年貴族の中にいるエルティーナに目を向ける。
レオンに聞いても仕方がないから込み入って話さないが、エルティーナの気持ちをどうしても知りたかった。
(「本当にそんな何の魅力もない坊々貴族でいいのか…?」)
エルティーナにとって、アレンは〝男〟ではないのか。
どう考えてもエルティーナの相手はアレンが一番お似合いとしか思えない。疑問は尽きないが、例えエリザベスであっても二人の関係を問い質すのは不可能。
エリザベスは元騎士だからこそ空気をよんでしまう。
アレンとエルティーナ、二人の関係は絶対に聞いてはならない。そんな空気をレオンにもアレンにも、そしてエルティーナにも感じたからだ。
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