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35、年頃の乙女の悩み
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「姫様ぁー! わしの授業に堂々と遅れてくるだけでも許し難いのに。
何かな? そのいちゃちゃな姿は!? はぁ!? 麗しき学問を習う姿勢が見えん!!」
「ジュダ様! これは遊んでいたのではなく、謁見の間でお話しを聞いていて、それで…これは……」
「謁見の間で話を聞いて、なんでそうなっとるんじゃぁぁぁぁーーー」
硬そうな教鞭を振り回しているジュダは、エルティーナとアレンを見て怒り狂っている。
「可愛い嫁がいない、独り身のわしへの当て付けか! ええぃ! アレン!!」
無表情でエルティーナを抱き上げているアレンに悪態をつくも、軽く無視だ。エルティーナに文句を言うだけでなく、アレンにまで攻撃するジュダに今度はエルティーナがキレる。
「むかっ ジュダ様、当て付けではありませんわ。私、腰が抜けているのです。それでアレンが仕方なく、し・か・た・な・く、抱っこしているのです。
だいたいジュダ様に可愛いお嫁さんがいても、アレンみたいに片腕で抱っこはできないわ。ジュダ様は腕力がないもの ふんっ!」
偉そうなエルティーナの態度に、ナシルがまったをかける。
「姫様!!! ジュダ様、申し訳ございません。あの…あまり血圧が上がる怒り方はいけません。紅茶を飲みましょう。クキラ紅茶を!!」
ナシルは凄い早さでジュダに紅茶を差し出す。そしてエルティーナには、さっさと椅子に座って貰うべく用意をする。
ナシルは、動き回りながらアレンをちらっと見る。
本当に口数が少なく淡白な方だと…。先ほどの会話も耳に入っているはずだが、肯定も否定もしない。ナシルにとってアレンは未知な生物のようで、終始何を考えているか分からない方だった…。
エルティーナ様を大切にされているのは分かるから、安心はできる。しかし見た目も硬質で冷たい感じだから…近寄りがたい。
そこで突如起こった珍事件に驚愕。「抱っこって!? 始めて見たわ!? 何事!?」と。
エルティーナは、着痩せするタイプで細く見えがちだが、胸もお尻もあり過ぎるほど十分ある。であるから以外に重いはず。そのエルティーナを軽々と片腕で抱く姿は、幻でも見せられているのか? と感じて当然。
アレンは騎士らしく、洋服の上からでもかなりいい身体をしていると分かる。見目だけでなく身体能力も神がかっているのだ。
もう人でなく本当に神なのかも…しれないとナシルは声に出さないが強く思う。
そしてエルティーナがなかなか結婚できないのは、アレンとレオンのせいだと。
通常の基準が高すぎるのだ。基準が高くなってしまったエルティーナが気の毒でならない。
紅茶を飲んで落ち着いたジュダが、ちょうど椅子に降ろされたエルティーナを見る。
ジュダはお爺様というお歳なので、産まれた時から見ているエルティーナは孫みたいなもの。ついつい悪気なく揶揄ってしまう。
太ったなとか。顔にクマがあるとか。お腹がでてるとか。背が高いやら低いやら。最早エルティーナを揶揄うのが趣味となっていた。
ジュダがエルティーナの身体の事に対して発言しても、性的な目で見てないのが普通に分かるからか、今までは軽い言い合いで終わっていた。
だが好きな人の前では綺麗で可愛くいたいと思う、エルティーナの乙女な気持ちがジュダに分かるわけもなく、失言をぶちかますのだった。
「姫様。姫様は意外に…というか、かなり胸も尻も大きい。
ほれっ、わしなんて、椅子の半分くらいなのに…姫様は、ほぼ開いてない。普通の娘さんより重量感があるはずじゃ。そんな姫様を片腕で抱き上げるアレンは力持ちじゃな。
驚きじゃ。重くなかったか? 腕は痺れてないのか?」
ジュダのあり得ない暴言に、ナシル、クキラが目を剥く。
「…あ、あの…私…少し…忘れ物を…隣りの部屋にあった気がするので、とって参ります」
エルティーナはテーブルの端を掴み、ぐっと力を入れて立った。
立ってから走った。皆の前で涙がでるのを誤魔化す為に。
ちょうど、その隣り部屋から出てきたメーラルが驚愕する。
エルティーナが突進してきたからだ。「うわ!?」っという言葉と共に、出てきたメーラルごとエルティーナは隣り部屋に入っていった。
「なんじゃぁ?」というジュダの間抜けな声にナシルとクキラは怒髪天を衝く。アレンにいたっては殺気である。
「ジュダ様!! なんて事おっしゃるのですか!!! 言って良い事。悪い事の冗談が、分からないのですかっ!?」
ナシルがジュダに怒りをぶつける!!
「なっ。たかが侍女の分際でわしに意見するのか!!」
部屋の中にジュダの怒号がとぶ。普段礼儀をしっかり尽くすナシル。でも乳母でもあるナシルはエルティーナの悩みも理解していて、これには黙っている事が出来なかった。
エルティーナはジュダの核心をつく言動がたまらなく恥ずかしく悲しくて。アレンだけには聞いてほしくなかった。
アレンに初めから女として見向きもされてないエルティーナは、今まで自身の身体を恥ずかしいと思ってなかった。
見せる相手はいないし、アレンはエルティーナに今まで一切触れてこなかったから、他の令嬢より多少不恰好な体型でも気にもとめてなかった。
そんな自分でも忘れていた事をジュダに改めて言われ、エルティーナはもうどうしたらいいか分からなくて、隣り部屋に飛び込んでしまった。
恥ずかしくて情けなくて隣部屋に飛び込んだはいい。しかし恐ろし言い合いが隣りから聞こえ、エルティーナの肝が冷える。
(「駄目、駄目、皆に迷惑がかかる! 私の馬鹿!!」)
エルティーナは隣りの部屋から逃げてきたのに、また凄い勢いでドアを開けて空気が半端なく悪いその場に突入した。
「ご、ごめんなさい。忘れ物なんて無かったわ。ジュダ様、お待たせして申し訳ございません。授業よろしくお願い致します」
エルティーナが室内の空気を払拭すべく、可愛く微笑んでみせた。
ジュダ自身も少し言い過ぎたと思っていたので、先ほどまでの事は触れずに授業を始める。それからは、普通に楽しく笑いながら時は流れていった。
「今日は、ここまでじゃ。姫様の記憶力の悪さには呆れるわ」
「うっ。ごめんなさい…。他国の言葉は話せるけど…書くとなると難しくて。でもジュダ様の授業で語学を習いだしてから、これでもまだ書けるし文章を読めるようになりました。
この間、お兄様にも褒めてもらいました!!」
「流石、わしじゃ。まぁでも、姫様の発音は国ごとの微妙な発音の違いも完璧じゃから。それは凄いぞ」
「ありがとうございます! 書けるようにも、頑張りますね!」
背筋を伸ばし、キリッとするエルティーナにジュダは目線を外し、頬をぽりぽりとかいている。
「…姫様。さっきはすまんかったな」
「えっ。あっ大丈夫です。私も過剰に反応してしまい、申し訳ございません」
「わしは、貶したわけじゃないからの。褒めたんじゃ。枯れ木みたいな身体より、姫様みたいな方が女性らしくて、わしは好きじゃからな」
「ふふ。ありがとうございます!!」
エルティーナとジュダは微笑み合って、ほのぼのとした感じで授業は終了した。
ジュダが部屋を出て、それまで席を外していたアレンが戻ってきた。
「アレンはお昼食べた?」
「はい。騎士団の食堂で済ませました」
「私、今日はもう夜までずっと部屋にいるつもりなの。アレンは騎士団の方に行って大丈夫よ。
謁見の間で聞けなかったお父様の報告を、夕食で聞くと思うの。また、それくらいの時間に迎へに来てくれる?」
「かしこまりました」
アレンの返事を聞いた後。この頃のエルティーナの我が儘と手のかかる行動で、アレンの身体に負担をかけていた出来事を謝らなきゃと思いアレンを見上げる。
「…アレン、…あの…腕は大丈夫??」
「エルティーナ様…?」
アレンの答えが聞きたくなくて、エルティーナはアレンの言葉に被せた。
「私、その…人より多少…太ってて。最近忘れてて…色々アレンに負担をかけていた事に…ジュダ様の一件で気づいて。
本当にごめんなさい!!
一応、気をつけているつもり? なのだけど…なかなか痩せなくて…。だから、これから気をつけるわ!! 話はそれだけ!!」
言いながら、エルティーナは必死に涙を我慢していた。でももう、たっぷりブラウンの瞳には涙の膜がはっていて…。
アレンは「違います」と言いたくとも、エルティーナに何一つも言葉を言わして貰えず、部屋を後にするしかなかった。
何かな? そのいちゃちゃな姿は!? はぁ!? 麗しき学問を習う姿勢が見えん!!」
「ジュダ様! これは遊んでいたのではなく、謁見の間でお話しを聞いていて、それで…これは……」
「謁見の間で話を聞いて、なんでそうなっとるんじゃぁぁぁぁーーー」
硬そうな教鞭を振り回しているジュダは、エルティーナとアレンを見て怒り狂っている。
「可愛い嫁がいない、独り身のわしへの当て付けか! ええぃ! アレン!!」
無表情でエルティーナを抱き上げているアレンに悪態をつくも、軽く無視だ。エルティーナに文句を言うだけでなく、アレンにまで攻撃するジュダに今度はエルティーナがキレる。
「むかっ ジュダ様、当て付けではありませんわ。私、腰が抜けているのです。それでアレンが仕方なく、し・か・た・な・く、抱っこしているのです。
だいたいジュダ様に可愛いお嫁さんがいても、アレンみたいに片腕で抱っこはできないわ。ジュダ様は腕力がないもの ふんっ!」
偉そうなエルティーナの態度に、ナシルがまったをかける。
「姫様!!! ジュダ様、申し訳ございません。あの…あまり血圧が上がる怒り方はいけません。紅茶を飲みましょう。クキラ紅茶を!!」
ナシルは凄い早さでジュダに紅茶を差し出す。そしてエルティーナには、さっさと椅子に座って貰うべく用意をする。
ナシルは、動き回りながらアレンをちらっと見る。
本当に口数が少なく淡白な方だと…。先ほどの会話も耳に入っているはずだが、肯定も否定もしない。ナシルにとってアレンは未知な生物のようで、終始何を考えているか分からない方だった…。
エルティーナ様を大切にされているのは分かるから、安心はできる。しかし見た目も硬質で冷たい感じだから…近寄りがたい。
そこで突如起こった珍事件に驚愕。「抱っこって!? 始めて見たわ!? 何事!?」と。
エルティーナは、着痩せするタイプで細く見えがちだが、胸もお尻もあり過ぎるほど十分ある。であるから以外に重いはず。そのエルティーナを軽々と片腕で抱く姿は、幻でも見せられているのか? と感じて当然。
アレンは騎士らしく、洋服の上からでもかなりいい身体をしていると分かる。見目だけでなく身体能力も神がかっているのだ。
もう人でなく本当に神なのかも…しれないとナシルは声に出さないが強く思う。
そしてエルティーナがなかなか結婚できないのは、アレンとレオンのせいだと。
通常の基準が高すぎるのだ。基準が高くなってしまったエルティーナが気の毒でならない。
紅茶を飲んで落ち着いたジュダが、ちょうど椅子に降ろされたエルティーナを見る。
ジュダはお爺様というお歳なので、産まれた時から見ているエルティーナは孫みたいなもの。ついつい悪気なく揶揄ってしまう。
太ったなとか。顔にクマがあるとか。お腹がでてるとか。背が高いやら低いやら。最早エルティーナを揶揄うのが趣味となっていた。
ジュダがエルティーナの身体の事に対して発言しても、性的な目で見てないのが普通に分かるからか、今までは軽い言い合いで終わっていた。
だが好きな人の前では綺麗で可愛くいたいと思う、エルティーナの乙女な気持ちがジュダに分かるわけもなく、失言をぶちかますのだった。
「姫様。姫様は意外に…というか、かなり胸も尻も大きい。
ほれっ、わしなんて、椅子の半分くらいなのに…姫様は、ほぼ開いてない。普通の娘さんより重量感があるはずじゃ。そんな姫様を片腕で抱き上げるアレンは力持ちじゃな。
驚きじゃ。重くなかったか? 腕は痺れてないのか?」
ジュダのあり得ない暴言に、ナシル、クキラが目を剥く。
「…あ、あの…私…少し…忘れ物を…隣りの部屋にあった気がするので、とって参ります」
エルティーナはテーブルの端を掴み、ぐっと力を入れて立った。
立ってから走った。皆の前で涙がでるのを誤魔化す為に。
ちょうど、その隣り部屋から出てきたメーラルが驚愕する。
エルティーナが突進してきたからだ。「うわ!?」っという言葉と共に、出てきたメーラルごとエルティーナは隣り部屋に入っていった。
「なんじゃぁ?」というジュダの間抜けな声にナシルとクキラは怒髪天を衝く。アレンにいたっては殺気である。
「ジュダ様!! なんて事おっしゃるのですか!!! 言って良い事。悪い事の冗談が、分からないのですかっ!?」
ナシルがジュダに怒りをぶつける!!
「なっ。たかが侍女の分際でわしに意見するのか!!」
部屋の中にジュダの怒号がとぶ。普段礼儀をしっかり尽くすナシル。でも乳母でもあるナシルはエルティーナの悩みも理解していて、これには黙っている事が出来なかった。
エルティーナはジュダの核心をつく言動がたまらなく恥ずかしく悲しくて。アレンだけには聞いてほしくなかった。
アレンに初めから女として見向きもされてないエルティーナは、今まで自身の身体を恥ずかしいと思ってなかった。
見せる相手はいないし、アレンはエルティーナに今まで一切触れてこなかったから、他の令嬢より多少不恰好な体型でも気にもとめてなかった。
そんな自分でも忘れていた事をジュダに改めて言われ、エルティーナはもうどうしたらいいか分からなくて、隣り部屋に飛び込んでしまった。
恥ずかしくて情けなくて隣部屋に飛び込んだはいい。しかし恐ろし言い合いが隣りから聞こえ、エルティーナの肝が冷える。
(「駄目、駄目、皆に迷惑がかかる! 私の馬鹿!!」)
エルティーナは隣りの部屋から逃げてきたのに、また凄い勢いでドアを開けて空気が半端なく悪いその場に突入した。
「ご、ごめんなさい。忘れ物なんて無かったわ。ジュダ様、お待たせして申し訳ございません。授業よろしくお願い致します」
エルティーナが室内の空気を払拭すべく、可愛く微笑んでみせた。
ジュダ自身も少し言い過ぎたと思っていたので、先ほどまでの事は触れずに授業を始める。それからは、普通に楽しく笑いながら時は流れていった。
「今日は、ここまでじゃ。姫様の記憶力の悪さには呆れるわ」
「うっ。ごめんなさい…。他国の言葉は話せるけど…書くとなると難しくて。でもジュダ様の授業で語学を習いだしてから、これでもまだ書けるし文章を読めるようになりました。
この間、お兄様にも褒めてもらいました!!」
「流石、わしじゃ。まぁでも、姫様の発音は国ごとの微妙な発音の違いも完璧じゃから。それは凄いぞ」
「ありがとうございます! 書けるようにも、頑張りますね!」
背筋を伸ばし、キリッとするエルティーナにジュダは目線を外し、頬をぽりぽりとかいている。
「…姫様。さっきはすまんかったな」
「えっ。あっ大丈夫です。私も過剰に反応してしまい、申し訳ございません」
「わしは、貶したわけじゃないからの。褒めたんじゃ。枯れ木みたいな身体より、姫様みたいな方が女性らしくて、わしは好きじゃからな」
「ふふ。ありがとうございます!!」
エルティーナとジュダは微笑み合って、ほのぼのとした感じで授業は終了した。
ジュダが部屋を出て、それまで席を外していたアレンが戻ってきた。
「アレンはお昼食べた?」
「はい。騎士団の食堂で済ませました」
「私、今日はもう夜までずっと部屋にいるつもりなの。アレンは騎士団の方に行って大丈夫よ。
謁見の間で聞けなかったお父様の報告を、夕食で聞くと思うの。また、それくらいの時間に迎へに来てくれる?」
「かしこまりました」
アレンの返事を聞いた後。この頃のエルティーナの我が儘と手のかかる行動で、アレンの身体に負担をかけていた出来事を謝らなきゃと思いアレンを見上げる。
「…アレン、…あの…腕は大丈夫??」
「エルティーナ様…?」
アレンの答えが聞きたくなくて、エルティーナはアレンの言葉に被せた。
「私、その…人より多少…太ってて。最近忘れてて…色々アレンに負担をかけていた事に…ジュダ様の一件で気づいて。
本当にごめんなさい!!
一応、気をつけているつもり? なのだけど…なかなか痩せなくて…。だから、これから気をつけるわ!! 話はそれだけ!!」
言いながら、エルティーナは必死に涙を我慢していた。でももう、たっぷりブラウンの瞳には涙の膜がはっていて…。
アレンは「違います」と言いたくとも、エルティーナに何一つも言葉を言わして貰えず、部屋を後にするしかなかった。
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