18 / 72
18、散歩
しおりを挟む
いたたまれないまま、アレン特製スープを完食した ちょうどその時、来訪者を告げる為ナシルがエルティーナに声をかけた。
「エルティーナ様…」
「?? 何かしら、ナシル」
エルティーナがナシルに用件を聞くため、ナシルが入ってきたドアの方に顔を向けた時。
間髪入れずに部屋に乱入してきたのは、王太子レオンだった。
「やぁ! エル!! …となんでアレンがここにいる…。ここは、エルのプライベートスペースだぞ」
「レオン。兄といえど、エルティーナ様のプライベートスペースに案内なして、無断に入ってくるのは無作法だと思うが」
公式の場では、二人はきっちり互いの関係性を理解し、アレン・メルタージュ。レオン・ボルタージュ殿下。とフルネームで距離を置いた呼び方、そして話し方をする。
だが、もともと互いに身分を隠し、騎士見習いとして騎士団寮で共に過ごした後、元の身分に戻る前、アレンがエルティーナの護衛騎士に抜擢された。
レオンも、まさかアレンが宰相メルタージュ侯爵の息子だとは思わず、アレンをエルティーナの護衛騎士に推薦したのだった。
アレンがエルティーナの護衛をする事になった為、普通あるべき主従ではなく昔からの友人といった感じになっていた。
両者色々思う事はあるが…。
しかし、突然入ってきた兄にも、プライベートスペースにアレンが居る事の不思議が、まったくわかっていないエルティーナは、会話の意図する内容がよく分からない。
それよりも…。
(「…はぁ~あぁぁぁぁん。美しいわ~なんて素敵なのかしら~ぅふんぅぅぅ」)
「………エル…………拝むな………」
「………………………」
「…はっ! ごめんなさい……。無意識なの。悪気はないのよ。アレンとお兄様が並ぶとあまりに神々しくて、拝まずにはいられないのよ!! 眼福ものなのよ!! ほら、キーナ達も拝んでるわっ」
「………」
「………」
なんとも言えない表情のレオンとアレンを見て、嫌がられているんだとエルティーナの肩が落ちる。
「…えっと、嫌…なのよね…。ごめんなさい。アレンとお兄様のお姿は、私の中で別格で、特別で、本当に大好きだから……」
「エルティーナ様がされたいのであれば、拝むなりなんなりと、是非。私は全く気になりません」
「…おいっ!!」
基本がエルティーナ中心の考えであるアレンのあまりの変わり身の早さに、レオンは突っ込まずにはいられなかった。
「…いいの? …嫌じゃないの?」
「はい、嫌ではございません。むしろ光栄です。エルティーナ様の好む見た目で良かったです」
優しく柔らかく、微笑むアレン。
エルティーナもとても嬉しくて、アレンに可愛く微笑んだ。
はじまった二人の世界…。
「……おい…二人の世界に入るな……。エル、今日は一緒に王都に降りてみないか? 一日、体があいたんだ」
「まあ!!! 本当ですか!? 素敵!! お兄様とご一緒できるなんて、いつ以来かしら!!! 感動だわ!!!」
「あぁ…いつ以来か、分からないぐらいだな。馬車じゃなく、騎乗で行かないか? 今日は天気もいい。風をきるのは気持ちいいぞ」
「うそぉ!!! お兄様の馬に乗せていただけるの!? 行くわ、行く!! 絶対、行くわ!!!」
「エルティーナ様、私もお供いたします」
「えっ!? ……アレンも…一緒に行ってくれるの…?」
「もちろんです。エルティーナ様の護衛騎士は、私ですので。
後、ついでにレオンの護衛も兼ねてです。それと…レオンの馬もなかなかの軍馬ですが、私の馬は軍馬でも気性が荒くなく穏やかですので、エルティーナ様は私と相乗り致しましょう」
「ぅおいっ!!! アレン!!!」
「いゃぁっっったぁっ!!! 凄いわ! 本当に!? わぁ!! 夢みたいだわっ!!!
早く、早く、着替えないと!!! 待っていらして!!! ナシル、ナシル、早く、来て!! ! 早く!!」
急かすエルティーナに、笑いを堪えながらナシルはすぐに動く。
「エルティーナ様、お待ちくださいませ!!」必死に後を追う侍女達。
凄い勢いで、衣装部屋に突入していったエルティーナが何故か戻ってきた。
「…どうされましたか?」アレンがエルティーナに優しく促す。
「アレン…あの…ね…スープ、ありがとう!!!」
屈託のない笑顔はエルティーナらしい。可愛らしい唇から小さな歯が見える。
エルティーナの仕ぐさ一つ一つが、アレンの身体を癒していく…。
アレンは先ほどの、スプーンの一件を思い出して、もう一度恍惚と浸るのだった。
「エルティーナ様…」
「?? 何かしら、ナシル」
エルティーナがナシルに用件を聞くため、ナシルが入ってきたドアの方に顔を向けた時。
間髪入れずに部屋に乱入してきたのは、王太子レオンだった。
「やぁ! エル!! …となんでアレンがここにいる…。ここは、エルのプライベートスペースだぞ」
「レオン。兄といえど、エルティーナ様のプライベートスペースに案内なして、無断に入ってくるのは無作法だと思うが」
公式の場では、二人はきっちり互いの関係性を理解し、アレン・メルタージュ。レオン・ボルタージュ殿下。とフルネームで距離を置いた呼び方、そして話し方をする。
だが、もともと互いに身分を隠し、騎士見習いとして騎士団寮で共に過ごした後、元の身分に戻る前、アレンがエルティーナの護衛騎士に抜擢された。
レオンも、まさかアレンが宰相メルタージュ侯爵の息子だとは思わず、アレンをエルティーナの護衛騎士に推薦したのだった。
アレンがエルティーナの護衛をする事になった為、普通あるべき主従ではなく昔からの友人といった感じになっていた。
両者色々思う事はあるが…。
しかし、突然入ってきた兄にも、プライベートスペースにアレンが居る事の不思議が、まったくわかっていないエルティーナは、会話の意図する内容がよく分からない。
それよりも…。
(「…はぁ~あぁぁぁぁん。美しいわ~なんて素敵なのかしら~ぅふんぅぅぅ」)
「………エル…………拝むな………」
「………………………」
「…はっ! ごめんなさい……。無意識なの。悪気はないのよ。アレンとお兄様が並ぶとあまりに神々しくて、拝まずにはいられないのよ!! 眼福ものなのよ!! ほら、キーナ達も拝んでるわっ」
「………」
「………」
なんとも言えない表情のレオンとアレンを見て、嫌がられているんだとエルティーナの肩が落ちる。
「…えっと、嫌…なのよね…。ごめんなさい。アレンとお兄様のお姿は、私の中で別格で、特別で、本当に大好きだから……」
「エルティーナ様がされたいのであれば、拝むなりなんなりと、是非。私は全く気になりません」
「…おいっ!!」
基本がエルティーナ中心の考えであるアレンのあまりの変わり身の早さに、レオンは突っ込まずにはいられなかった。
「…いいの? …嫌じゃないの?」
「はい、嫌ではございません。むしろ光栄です。エルティーナ様の好む見た目で良かったです」
優しく柔らかく、微笑むアレン。
エルティーナもとても嬉しくて、アレンに可愛く微笑んだ。
はじまった二人の世界…。
「……おい…二人の世界に入るな……。エル、今日は一緒に王都に降りてみないか? 一日、体があいたんだ」
「まあ!!! 本当ですか!? 素敵!! お兄様とご一緒できるなんて、いつ以来かしら!!! 感動だわ!!!」
「あぁ…いつ以来か、分からないぐらいだな。馬車じゃなく、騎乗で行かないか? 今日は天気もいい。風をきるのは気持ちいいぞ」
「うそぉ!!! お兄様の馬に乗せていただけるの!? 行くわ、行く!! 絶対、行くわ!!!」
「エルティーナ様、私もお供いたします」
「えっ!? ……アレンも…一緒に行ってくれるの…?」
「もちろんです。エルティーナ様の護衛騎士は、私ですので。
後、ついでにレオンの護衛も兼ねてです。それと…レオンの馬もなかなかの軍馬ですが、私の馬は軍馬でも気性が荒くなく穏やかですので、エルティーナ様は私と相乗り致しましょう」
「ぅおいっ!!! アレン!!!」
「いゃぁっっったぁっ!!! 凄いわ! 本当に!? わぁ!! 夢みたいだわっ!!!
早く、早く、着替えないと!!! 待っていらして!!! ナシル、ナシル、早く、来て!! ! 早く!!」
急かすエルティーナに、笑いを堪えながらナシルはすぐに動く。
「エルティーナ様、お待ちくださいませ!!」必死に後を追う侍女達。
凄い勢いで、衣装部屋に突入していったエルティーナが何故か戻ってきた。
「…どうされましたか?」アレンがエルティーナに優しく促す。
「アレン…あの…ね…スープ、ありがとう!!!」
屈託のない笑顔はエルティーナらしい。可愛らしい唇から小さな歯が見える。
エルティーナの仕ぐさ一つ一つが、アレンの身体を癒していく…。
アレンは先ほどの、スプーンの一件を思い出して、もう一度恍惚と浸るのだった。
0
お気に入りに追加
390
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】お姉様の婚約者
七瀬菜々
恋愛
姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。
残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。
サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。
誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。
けれど私の心は晴れやかだった。
だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。
ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
【完結】この胸が痛むのは
Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」
彼がそう言ったので。
私は縁組をお受けすることにしました。
そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。
亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。
殿下と出会ったのは私が先でしたのに。
幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです……
姉が亡くなって7年。
政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが
『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。
亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……
*****
サイドストーリー
『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。
こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。
読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです
* 他サイトで公開しています。
どうぞよろしくお願い致します。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる