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23、挨拶
しおりを挟むダリアの姿にポカンとするハクリとルル。
大事な伴侶であるフェリックスの両親だから、問いになかなか答えなくともダリアは怒りはしない。
むしろ、やっと女性体になれ、身体の具合を実感していた。股間にあったブツがなくなったら、大変動きやすい。そして歩きやすい。
「私には必要ないモノでしたわ」と一人深く納得したくらいだ。
「ハクリ様、ルル様。私、少し王宮まで用事がございます。フェリックス様は……眠っていらっしゃるので、起こさないでくださいませ。
とても可愛がってくださったので、お身体の休息が必要です」
全ての人を虜にする天使の微笑を浮かべながら、話す内容が非常に生々しい。
ダリアの姿は気を抜くと涎が垂れる程の美貌だし、声はいつまでも聴いていたいほど甘い。しかし我が子(フェリックス)の性行為の色々はあまり聞きたくない。
「そ、そう…。ダリア様は……ちょっとびっくりするぐらい綺麗になり過ぎだね」
「ありがとうございます。ハクリ様はお口が上手です。流石フェリックス様のお父様ですわ」
ふふっ。とまた人を駄目にしてしまうような微笑をダリアは浮かべている。がハクリは「あれ?」と目があまり笑ってないダリアに意識がむく。
女の機微に驚くほど精通しているハクリだからこそ、気づいた。ダリアがはじめに発言した言葉である《用事》に、ふと疑問がよぎる。
「ダリア様、用事とは?」
「シェルバー王へのご挨拶と、私のフェリックス様をまだ諦めないライバル達に、妻としてご挨拶をと。
ご挨拶しても、まだ話を理解してくださらない場合には、完膚なきまで叩き潰しますわ」
「………」
「………」
シェルバー王への挨拶はギリギリ理解出来る。
ミミルに引き続きフェリックスまでも、フェア国への移住。元がシェルバー国の国民といえども、その身はすでに妖精族。
神に一番近いとされる妖精族と同じ悠久の時を過ごし、フェリックスは長い長い命を繋いでいくのだ。
そう、王への挨拶までは理解出来るが、その後の台詞だ。
百発百中、誰もがダリアの姿を見れば諦めるだろう。
フェリックスの過去に関係があった女や、現在も妻の座につこうと虎視眈々と狙っている女は非常に多い。諦める以前に問答無用で消し炭にされはしないかとハクリの頭に不安が過ぎる。
(あぁ、ダリア様がブチ切れて、王宮が血の海にならなければいいけどね…)
過去といえども、妖精族の嫉妬と独占欲は常識を逸脱していると、ハクリは身に染みて知っている。
過去妖精族と関わりを持つ事になったあの事件。
ダリアの両親がシェルバー王国で暴れた話だ。紆余曲折あるが、はやい話が、何も知らない蟷螂獣人が凛音を妄想の中だけで(あくまで想像上)穢したくらいで、妖精王エティエンヌフューベルは暴走した。
目につく所は火の海にし、魔力で人体を潰して、極め付け地震をひきおこした。
純愛、溺愛、一途、など、もはや可愛い。まさに狂愛。妖精王エティエンヌフューベルは狂っている。
ダリアが父エティエンヌフューベルのようにならないといい。そう願うしかない。
ハクリはフェリックスを叩き起こす選択をしたいが、同じ男とし、そして父としても、かなりハードな性行為をやり遂げた息子には、休息して欲しい。
(女は尽きたことないけど、フェリックスは性に関しては淡白なタイプだから、一晩ずっとはちょっと…大丈夫か…心配だな…)
フェリックスの体力にかけるしかない。ダリア様がヤバくなれば、身体に鞭打っても王宮へいってもらいたい。
ひとまずは、ダリア様の言葉通りに動こうとハクリは自身で納得した。
ダリアの伴侶となったフェリックスは、見た目はそのままであるが、もう父(ハクリ)や母(ルル)とは違う生物になったのだ。
叩き潰しに行くと宣言するダリアに顔面蒼白な二人。(あら、嫌われてしまうわ)とダリアは気づき、冷静さを取り戻し常識的に考えて発言をする。
「シェルバー国には、父からも書簡が届くと思いますが、ひとまずは私からも挨拶したいのです。
貴重な戦力と素晴らしい人材をミミルお姉様に引きつぎ、フェリックス様までフェア国に連れていく事になりますので。
それも嫌味のごとく、妖精王絡みで奪っていくのですから…シェルバー王に恨まれそうですわ」
巨乳を両手で押しつぶしながら、悲しげに俯くダリアはそれはもう儚げで、胸を握り潰してくる。
妖精族の天然タラシに、女の性になったダリアの傾国の美貌が入り、ハクリもルルも骨抜きだ。
「そ、そうね、そうだわ。ダリアちゃんの美しい姿を披露しなくちゃね!」
「我が王も、驚かれるだろうな…僕達も一緒に行こうか?」
ハクリは流石年齢を重ねても無駄に色男。フェリックスとは違う魅力だ。別に断る必要はないが、女の戦いに男はいらない。
「ハクリ様、ありがとうございます。ですが、必要ございません。私はご挨拶をさせて頂くだけですもの」
挨拶=ぶっ飛ばす、ではないか?とハクリとルルは硬直している。
「ハクリ様、ルル様、いってまいります」
ダリアは誰もが見惚れる笑顔で、手を振って家を出る。
「「王宮の皆々様は、大丈夫かな(かしら)」」
ハクリとルルの声が静かなリビングに同時に響きわたった。
***
王宮は嵐の前の静けさとなっていた。フェリックスが出勤してこない。
フェリックスは女がわんさか群がる男であるが、同性からも非常に人気。
基本真面目で女よりも、友人や上司、同僚、部下を大切にする傾向にある為だ。そんな基本的に真面目で面倒見のよいフェリックスの無断欠勤は、ありえない。
『何があったのか?』『事件に巻き込まれたか?』など、彼が所属している部署、情報管轄部実戦部隊の皆々様を心配の渦に巻き込んでいた。
同性の上司や同僚、部下は、主にフェリックスの体調を気にしていたが、女性らは違う。ギリギリと歯軋りが聞こえてくる始末だ。
本能で察しているのか、第六感という感なのかは分からないが、ほぼフェリックスに好意ある女が「絶対に女関係だ!」と怒り狂いながら推測していた。
そして静まる部署内に、ダリアという爆弾は投下された。
仕事もだが、一番恋多き部署である情報管轄部。女もそして男も、今から地獄をみるのだ。
***
ダリアは挨拶をと、フェリックスが務めている情報管轄部を目指す。
シェルバー国の正門。いわゆる王宮へ入る立派な門の前にダリアはいた。
「門番様、おはようございます。私、ダリアと申します。夫(注 フェリックスはすでにダリアの中では夫)が体調不良(ダリアが満足するまで性行為を強要された為)で今日の出勤が出来ず。
私が夫(まだ正式に夫婦ではない)の代わりに休みの報告にまいりました。上司の方々と国王にご挨拶をと…通ってかまいませんか?」
門番は四人。皆が皆、騎士であり屈強な戦士と言われる男達だが、ダリアの美貌に夢現。
話す内容は頭には入るが、あまりの人知を超えた美貌すぎて理解が出来ない。
「あの…皆様? 聞こえてますか?」
「………」×4
全く返答がなくダリアをガン見。ダリアの顔を見つつ、視線が下に降りていく。ふるふると揺れる胸部を目玉が溢れ落ちそうなほど見開きながら、ウグゥ、ゴクンッと、唾を飲む。
減るものではないし、見たいなら見ればいい。思考回路が妖精族らしくおかしいダリアはしばし沈黙。フェリックスが一緒にいたなら、門番達は間違いなく蹴り倒されていただろう。
「あら?」
身体を舐め回すように見る四人の股間部が、立派にテント張りになっていく。皆の男性器を目視し、貧相過ぎてダリアはなんの興味もない。
ダリアにとって興味がある男性器は、フェリックスただ一人であるが、フェリックスと張り合える立派な巨根であれば、比べる対象としては多少なり興味がある。
父や兄だ。今のところそれ以外には興味なし。
四人のうちの一人が、「あっ…あっ…」と涎を垂らしながら腰が上下に揺れている。
「まぁ!微妙!」
勃起しながらダリアの顔と胸元を、行ったり来たりする男四人のわかりやすい姿に、ダリアは「まぁ…」と呆れた。
(小さいわ、なんて貧相で小さいのかしら。これではフェリックス様の素晴らしいイチモツと比べるにも、あまりにも失礼だわ…)
どちらが失礼かといえば、ダリアが一番失礼だ。ダリアの母である凛音がおれば「はしたないっ。男の人の股間を見るのはやめなさい!」と注意しただろう。
「……では、皆様忙しそうですので、失礼致しますね」
ダリアは門番を無視し、王宮内に入った。
「入ってよし」と言葉をもらってないダリアはもはや侵入者。しかし自由人=妖精族であり、異世界人(地球人)の母である凛音の遺伝子は、極めて低いとしかいえないほど、ザ・妖精族のダリア。
行きたいところに行くのは、ダリアの脳内では当然の事であった。
王宮内には人が沢山働いている。道ゆく人に聞けばダリアが目指すフェリックス(夫)が所属している情報管轄部実戦部隊の場所も分かる。
そこはいち早く情報が入り、国を動かす重要な部署だが、婚活の場所としても一等。当然ダリアもそうだと知っている。
情報管轄部署には、フェリックスが所属する荒事が基本の実戦部隊と、女の花形事務職と分かれている。フェリックスが誰よりもモテるのは当然。
身体の関係があった女がいたとしても仕方ない。
仕方ないと頭では理解しているし、それこそフェリックスには詰め寄れない。
ダリアにとって性行為はじめてだが、フェリックスは違う。年齢も年齢であるし当然といえば当然なのだが、身体を繋げた時、何度も「申し訳ない」と辛そうに謝られた。
大丈夫です。気にしておりません。と笑ってはいたが、嫉妬はする。
(あら、あら、どうしてかしら…興奮して身体が少し暑いです…これ以上脱げないので、我慢ですわ)
ダリアが通った回廊は、無残な姿に変わっていく。彼女の思い出し怒りから無意識に放った青炎が、物体を燃やし溶かしていくのだ。
人を溶かすのは犯罪。と理解しているダリアは無意識下でも青炎を人に当てたりはしない。
八つ当たりされた壁がとろりと液体のように姿を変え、回廊に設置された置物のレリーフはすでに水のように原型を留めず、色がついた水溜りと化していた。
「そこの女性の方、お仕事中に失礼致します。情報管轄部署はどちらでしょうか?」
突然声をかけられた地味な女性は、ダリアに釘付け。まさか自分が声をかけられるとは思っていなかった。
「え? 私? あ、あの情報管轄部?」
もれなくダリアの色気ある肉体美に硬直(興奮勃起)する男性陣に目も合わさないダリアは、比較的無難で常識ありそうな女性に声をかけた。
(あざと可愛い女は私の敵、クールビューティ系も私の敵。
違うわね、全ての女、フェリックス様に色目を使う方は敵ですわ)
顔は笑っているがダリアの脳内は嫉妬で怒り狂っていた。
室内温度が急上昇。灼熱地獄のようになっていく。汗水流す王宮勤めの皆々様は、静かに成り行きを見守る。
「そう、情報管轄部です。ご存知でしょうか?」
「青い炎…」
「まぁ!!失礼致しました。つい夫の過去の女達を思うと、身体が熱くなって。人には当たってないはずですが、大丈夫でしょうか?」
「あ。だ、大丈夫です…私は…」
彼女は大丈夫だろうが、回廊は悲惨な状況で、男達は興奮勃ちし、使いものにならない。
恐怖と性欲とは同じ部類か?とダリアから声をかけられた地味な女性はゴクリと唾を飲んだ。
「少し落ち着きましたわ。お騒がせし、申し訳ございません」
「いえ… 情報管轄部署はちょうどこの上あたりです。そこの階段を登って頂くといいかと思います」
「ありがとうございます。それはそうとお姉様、前髪は切った方が良いです。綺麗な瞳の色ですから、隠すのはもったいないです」
ニコッと笑って、ダリアは先を進む。
「前髪……微笑んだ…え、女神? 白昼夢?」
背後から女性の声が回廊に響くが、ダリアの耳には入らない。
(ふぅ…私とした事が、恥ずかしいですわ。フェリックス様の過去の、過・去・の女達が沢山集まる部署はこちらね。
色々、青炎で溶かしてしまったのは…後で弁償するとして、さあ、妻として最初の挨拶が肝心よ)
ダリアは優雅に歩きながら目的地に到着した。
「失礼致します」
鈴を転がしたような、それでいて澄んでいて凛とした声が、情報管轄部署内に響き渡る。
皆が声の方に意識を向ける。「あれ? 天国?」と思わずにはおれない。
まずダリアの服装は場違い。
真っ白のシルクの布地は身体にそって流れ、裸体よりも生々しい印象を皆々様にあたえ。
息を吸うだけで揺れ動く柔らかそうな大きな乳房、細い首、ウエストはシルクリボンで軽く縛られているがあまりの細さに二度見する。
足は全く見えないからこそ、さらにあばきたいと思わす性欲を見事に引き出していた。
剥き出しの腕や首は、ぬけるように透明感があり、白磁の肌は吸い付きたくなる衝動に駆られる。実際行動に起こせば、フェリックス以外の生き物は灰の未来しかない。
「こちらの部署の責任者の方は、いらっしゃいますか?」
綺麗な黒髪は母譲りだったが、薄紫色の瞳や顔のパーツは全て父似。そう、生き物の限界を超えた美しさなのである。
生きている人ではあり得ないほどの美貌をもつ人(ダリア)が、上品よく微笑んだなら、パタパタと何人かが失神。
ダリアの色気に負けず、正気を保っている面々は、己の唯一の“番い”がいる伴侶ラブの人のみ。
部署の一番入り口近くにいたのは、犬族なのに熊みたいな人であるフェリックスの上司であり、このシェルバー王国騎士団を率いる団長だった。
赤茶色の刈り上げた短い髪と濃い髭がさらに熊のように見え、182センチの身長、体重は110キロと大柄。38歳とまだまだ若く精力旺盛の男。
余談であるが、団長の好みの女性は、小柄で身体の凹凸が少なくあざと可愛いキュルン系。
妻はポメラニアン種。自慢の娘もポメラニアン種。よって生物の限界をいく作り上げられたプロポーションのダリアは好みの真逆。幼い頃の見目のダリアだと、ガチのタイプだっただろう。そんな男である。
「あ、ダ、ダリア様!?」
団長のでかい声が部署内に響き渡る。
「団長様、こんにちは。夫がお世話になっているのでご挨拶をと思いまして」
ダリアの顔は蕩けるように美しいが、真実を知る(恐ろしい妖精族の王 エティエンヌフューベルの娘がフェリックスの番いだった件)団長は背中に冷たい汗が流れていた。
出来れば二度と会いたくなかった。
「あ、挨拶?」
「夫(絶対に夫と言いたい)の体調を鑑みて、今日はお休みを頂きたく。私が代わりに挨拶にまいりました」
「え、あいつが…体調…不良?」
恐々と発言する団長にダリアが「ふふっ」と笑いながら一言。
「体調不良とまではいいません。朝まで休まずでしたので、少し深く眠っているのですわ」
「ひっ、丸一日中!?」
背後から引きつった声が聞こえてきた。団長ではなく聞き覚えある声に、ダリアはくるりと身体を回転させた。
「まぁ! アダルブレヒト様! ご機嫌いかがですか? 奥様は?」
幼馴染の女性を一途に思うアダルブレヒトは、フェリックスの友人という事を除いても、ダリアの中では尊敬に値する人。
最初からダリアをダリアとしてみており、性的な目ではいっさい見てこず。
病弱な幼馴染を愛しているアダルブレヒトは、ダリアの中ではいい男とランクされていた。
アダルブレヒトは頭を下げた。
「元気にしています!! 飯も沢山食えるようになりました!!」
「頭を下げないでください。良かったです」
良い事をし、フェリックス様の友人の番様を助けられたと、気持ちがふわふわとする。そんな気持ちいい思いを消したのは、知らない女達。
彼女らは勝ち誇ったようにダリアへ声をかけてくる。
「あら、何かしら、突然。胸がでかいだけで、まだ子供じゃない」
「やだぁぁー、お子ちゃまが大人の仕事場に何の用事ぃ?」
二人の女はどちらも美人だ。あくまで一般的な美しさで、ダリアと比べるのは恥ずかしいと客観的に見れば分かる。
しかし頭が少し弱いお嬢様な二人は、客観的に己とダリアを比べる事が出来ない。だからこの発言なのだ。
「うわぁぁぁ…」アダルブレヒトは両手で顔を覆い。
団長は己の部下である二人に、ビクビクしながら一応止めに入る。
「お、お前たち、やめないか。失礼じゃないか…」
「失礼ですって?団長。彼女こそ失礼で礼儀知らずです!見てください、宝石も何も付けてないわ。王宮には制服ないしは正装で入ると知らないのかしら?」
金髪碧眼のクールビューティっぽい女性が、ダリアの身なりを笑い出す。すると後方から、女性達の馬鹿にした忍び笑いが部署内に響き渡る。
この部署内で働いている女にとって、美人は敵。
「お、お前らな!!」
焦りながら注意勧告をしようとするが、鼻で笑われる。
「クスクスクスっ、もう、団長ぉ」
「ふふふっ、団長たらっ」
「皆様、団長が怒ってるみたいよ、クスクスクスっ」
女を全面に出し、女豹のような女達には流石の団長もどうしてこの場を収めるか分からない。騙される一等の男が団長だ。女の汚さには疎すぎた。そして精神攻撃に弱い。
団長の静止の声は、部署内の女性陣の小さな笑い声にかき消される。
もう一人の女性。金髪金眼のぶりっとした女性がダリアを小馬鹿にする。
「ねえ、あなた。その見た目でも、男性からギフト貰えないのぉ? よほど血統が悪いのぉ?
ま、私は、曽祖母が王族に連なる血統だったから、引くて数多なんだけどね。宝石って重いから、一個しかつけれないのぉ」
前屈みになりわざわざダリアにネックレスを見せつけてくる。
間延びした甘ったれた声が、一般的な男性には受けが良いのだろう。彼女は自信満々だ。そして、血統ならと、金髪碧眼の女性も胸を張って宣言する。
「私のおじいさまは現宰相なのよ。今日も一緒にランチの予定なの」
見せつけてくる彼女達の自慢(自分が思っている)の身体、とくに豊かな乳房はダリアよりかろうじて大きいので、あからさまに胸を揺らしている。
胸は確かに大きいが、バストのトップとアンダーの差、ウエストの細さがダリアと彼女達とは天と地ほど違う。ダリアからすれば何も羨ましくない。
極め付けが、血統がどうのと語り出した。
妖精王エティエンヌフューベルの実子であり、妖精であることが、すでにこの世界では“宝石”そのものだ。
そしてダリア自身が、至高の宝玉と言われる“妖精族の涙”をその身から出せる。妖精族の中でも、より奇跡に近い身であるからこそ、彼女達の発言は茶番劇でしかない。
あまりの馬鹿馬鹿しい自慢に、興味が失せていた。
基本的に妖精族は自己中だ。もう要はないとばかりにくるりと背を向け来た道を戻ろうとしたダリアの耳に、間延びした感に触る声が入ってくる。
「まさかぁ、あなた、フェリックスが目当てぇ?」
金髪金眼の女が勝ち誇ったように発言する。アダルブレヒトと団長だけが、戦いのゴングが鳴り響いたように感じていた。
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