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2、二年ぶりの再会
しおりを挟むシェルバー王国の街スータに到着し、だだっ広く広がる大草原を抜け、どこまでも続く舗装も何もされていない土の道。
一応、母の護衛も兼ねているダリアは、かなり至近距離で歩く。
「……ダリア、あのね、近いわ」
「お母様を守る為にはこれくらいがベストです。お父様ならもっと近いですわ」
「エティエンヌフューベル様と一緒にしなくていいわよ」
何故かダリアから離れたがる母にピタリとくっつき、少しの会話をしながら歩けばすぐに目的地へ着いた。
どこにでもある普通の一軒家。されどダリアからすれば、もう飛び上がりたいほどの素敵が詰まった家だ。
カラン カラン。と呼び鈴を鳴らせば、すぐに扉が開く。
「待っていたわ!!!」
「ルル!!!」
硬く抱き合う凛音とルルを微笑ましく見る男性はハクリだ。元プレイボーイらしい柔和で優しい雰囲気のハクリは、ダリアの尊敬するフェリックスを彷彿とさせ、ウットリ見てしまう。
何度もいうが。ダリアはウットリ見ているつもりであっても、ハクリには無表情で見つめらているとしか見えない。
ダリアの表情筋は何故か死んでいるので、楽しいが皆に伝わらない。しかしフェリックスは稀代の色男だからこそ、ダリアの感情を汲んでくれる。
ソワソワしながら部屋の中をチラチラ見るが、フェリックスはいないようだ。
(今日も、フェリックス様は不在なのね…もうニ年もお会いしてないわ…。避けられている?いえ、避けられるほど交流もないし…)
寂しくて胸が痛いが、それも顔には出ない為、ダリアの気持ちはいつもスルーされる。
「久しぶり、凛音」
「ハクリさん、お久しぶりです!」
「流石というか、凛音は全く歳をとらないね。あれから26年もたつのに、まるであの時のままだ。いや若干若返ってるよね?」
「私はもう妖精族みたいなものですから。だってこんな大きな子供がいるのよ?」
「凛音は凄いわよ、だって妖精族は一人っ子が多いのに、4人産んだのでしょう? ちょっと色々、恐いわ」
「やだ、4人くらいっ!! 出来るならまだ欲しいわよ」
ふん!!と鼻息荒く答えた母にハクリ様とルル様は、きっと、いえドン引きしている。
「………そ、頑張ってね」とハクリが。
「………うん、過去の記録を塗り替えたらいいわよ、凛音」とルルが。
そう、下2人は少し歳が離れているから、ダリアとそこまで関わりがない。無表情が怖いのかあまり、近づいてこないのだ。
抱き上げようとしたら、ギャン泣きされた。
(羽根を毟ったりは、お父様にしかしないのに。失礼しちゃうわ)
ルル様が作られたという大変美味しいケーキと紅茶を頂き、会話は盛り上がる。
口数少ないダリアはいつも、モクモクと食べ、スゥと紅茶を嗜む。
「……美味しいかしら?」
会話に一切入らないダリアを気にかけてくれるルル様。流石フェリックス様の母君、素晴らしく素敵です。
沢山の賛辞を脳内で贈るも、凛音、ルル、ハクリには、無表情で隙無く機械人形のようにダリアは見える。
静かに食べるダリアは、うるさい自分達に機嫌を悪くしているのでは?と思っているのだ。
「とても美味しいです」
話が終了した。
「…ダリア、帰ろうか?」
「まだ大丈夫ですよ。お父様はしばらく、のたうち回っている事です。迎えはまだまだ先になります」
「…妖精王が、のたうち回って、えっ?」
ハクリが先を聞きたくないような、それでも聞きたいような、不思議な表情を浮かべ訪ねてくる。
「はい、なかなか、なかなか、いつまでたってもお母様と離れないので、ルル様、ハクリ様をお待たせするのは失礼かと思い。
お父様の玉袋を潰れない程度に握りしめてきました。しばらく激痛で歩けないと思いますから、迎えはまだ先ですわ」
シーーーーン。静まりかえる室内と、ハクリにいたっては軽く股間をガードしている。
皆が硬直してもダリアの心は、たった一つを求める。
(まだ、待ちたい!!今日こそは一目だけでも、フェリックス様にお会いしたい!!!)
エティエンヌフューベルにはいい迷惑だ。
無表情で座るダリアにも話をふるが、基本的に無表情の為話が終わる。でもやはり久しぶりに会うと話が盛り上がる盛り上がる。
あたりが暗くなっても、まだ四人(実際は三人しか話していない)は懐かしい会話から最新情報まで、熱く語り合っていた。
***
夜道を歩きながら、舌打ちが出る。
「臭っ、なんだあの香水。犬族の癖してよくあんな臭い香水をつけるな。最悪…」
フェリックスは自身にまとわりついた香水の香りに、苛立ちを感じていた。
今日は早く家には帰れない。次に彼女…いや女でも男でもないが、見た目は女性にしか見えない為、女性だ。
その彼女に会えば自分はどうなるか分からない。
誰でもいいと誘ったのが悪かった。皆が国一番の美人だというから会った。まぁまぁ良い体だから一晩相手をするつもりだったが、一晩は無理だった。
相手が満足だと思ったくらいで、早々に離れた。
「何が美人だ、何が良い体だ、あの程度で偉そうに。美人と名乗るならダリアくらい、」
思わず無意識で比べて撃沈する。
「…馬鹿か俺は、ダリアは特別だ。美しいに決まっている」
今日は凛音様が来る日だ。その日はいつもダリアも一緒だ。絶対に会ってはいけない。手の届かない妖精族に恋をするのは毛の生え揃わないガキであるし、イタイ妄想だ。
カラン カラン。
「ただいま。帰っ、…」
香水の香りに鼻がやられて気づかなかった。一気に体温が上がる。
こちらを静かに見る絶世の美女に、魂を引き抜かれた。
「あら、おかえりなさい。今日は遅かったのね。フェリックス、匂い凄いわよ…、全くいつも女の子を取っ替え引っ換え、誰に似たんだか」
フェリックスに嫌味を放ちながら、キッ!!とハクリを睨む。
「えっ、とルル。今は僕、関係ないよね?」
「フェリックスくん、おかえりなさい」
凛音はハクリとルルの夫婦喧嘩勃発するのを防ぐ為に、わざと明るく会話に乱入した。
そして、ダリアはというと、心は喜びに踊り狂っていた。
(カッコいいです!素敵です!フェリックス様、最高です!!)
フェリックスは父ハクリと同じく王宮騎士。シェルバー王国騎士団の制服が大変似合っている。
フェリックスのシルバーに輝く肩まである髪に、とろりとした濃い金色の瞳をより美しくみせる黒を基調とした服。
金の刺繍や金のカフス、帯剣しているサーベルの鞘も彼の魅力を最大限に引き出していた。
ダリアは大興奮だが、皆から見れば相変わらずの無表情だったが…。
それでも行動と会話をしてみるのは、大変な進歩だろう。ダリアはさっさと椅子から立ち上がり尊敬するフェリックスに挨拶をするのだ。
「フェリックス様、おかえりなさいませ。お久しぶりですね。今日は大変美味しいケーキと紅茶を頂きました」
振り返るだけでダリアの巨乳はたふんたふんと、揺れる。二年ぶり…なのだが、これは強烈。色気が凄い、ここまでくると目の保養を通り越して目の毒だ。
妖精族の二年はここまで変わるのか!?フェリックスはわざわざ抱きたくもない女を抱いて遊び、時間を潰した自分が馬鹿馬鹿しく思えてならない。
(惚れない訳ないか、これじゃぁ、仕方ない)一生分の目の保養をさせて貰えたと思ったらいいと、開き直った。
「凛音様、ダリア、お久しぶりです。香水の匂いは、申し訳ないです。俺も自分が臭いですから、すぐに落としてまいります、失礼致しますね」
フェリックスは柔らかく微笑んだ後、シャワーを浴びに奥の部屋に入っていく。
もちろん戻る気はない。シャワーが終わればそのまま二階の自室に上がるつもりだった。
シャワー室でフェリックスは脱力感に襲われていた。
「はぁぁぁ、まじでアレ何?」
ボソッと出る言葉に、意味のない苛立ちを感じる。
(タイプとかない。男でダリアに見惚れない奴は玉無しだな。
しばらく自慰には困らないよ。けしからん程デカいし、柔らかそうな胸…俺のデカさでも挟めそうだった……。
でも、ダリアは男になりたいんだったな。男かぁ…勿体無い…男になるんだよなぁ…ぁぁ、勿体無い…)
「ぁ、勃った…」
フェリックスは悪いと思いながらも、ダリアの鈴の鳴るような声に、真っ白な肌、そして手から溢れそうなタワワな胸部を思い出して、イキリ勃った男根を握りしめ上下にストロークさせ、射精を促す。
「はっ、はっ、はっ、…………ンッ………」
ビュクッビュクッビュクッ……ビジュ…ビュクッ
「…絶対にさっきより出たな」
煩くて臭い香水女を忘れ、絶世の美女をオカズに出来てスッキリしたフェリックスは、適当に下半身だけタオルで拭き、上半身は裸体のままトラウザーズだけ履いて風呂場を出た。
扉を開けて硬直する。
「…ダリア?」
先程までオカズにした、絶世の美女が立っていた。
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