19 / 95
14部
たまにはこんな日も
しおりを挟む
雪が降り積もるある日のことである。城の周りはムサカの魔法で温度調節されていたので、城の侍女達も大勢城にとどまっていた。街に住んでいる者もいるのだが、寒いし雪が降っているので城からの行き来が大変なのである。戦士達は街の皆さんのため建物の雪下ろしや、食べ物の調達が困難な家庭には食べ物を配ったりと大忙し、ミカエル達もゆりといちゃいちゃする間もなく働いている。とてもじゃないが城から街への道を雪かきなどできないと思っていたが、なんとヴォルフがやってくれたので、みなありがたく思っていた。
「王妃、話を聞いてください」
そんな頃、ミカエルがゆりの部屋にやってきた。
「さっき西の街の見回りをしていたんですが、よくわからないんですが、なぜか女性に拝まれました」
「拝まれた?」
「その女性は私にすごく感謝してると言って泣きながら拝んでいました」
「……そうなんだ」
「どうやら土の祭りの時みたいですよ」
「ああ。あの時の!」
「おかげで結婚できましたって言ってましたよ」
「そうなんだ。よかったな。そういえば、オレンジの木は大丈夫かしら」
「一応布で覆ってますがね。今度行ったときに確認してみますね」
「お願いね」
(ミカエルの男ガーベラ様、ミカエルの声で歌とかも聴いてみたい。ハインリヒの声に負けないくらいうまいはず)
「ところで、私に来た神様って……」
「男ガーベラ様? もう半端なくいい男で性格もよくて、そして絶倫。多分、いや絶対に絶倫。愛欲の神様だから」
「絶倫、うらやましいですね」
ミカエルは真面目に言っていた。
この国では絶倫の男は尊敬される。
「私としては男ガーベラ様の信者を増やしたい。今のところ私の侍女くらいしか信者がいないから」
「私も男ガーベラ様に会ってみたいな」
「歌も楽器も上手なんだよねー。歌を聴きたいなー」
などと言っていたらミカエルの肩がぴくりと揺れた。
「では希望に応えて」
などと言っている。
「えー本当にガーベラ様ですか!? やったー!」
ゆりは大喜びだった。
ゆりは自分だけが楽しむんじゃもったいないので、城の広間で歌ってもらうことにした。手が開いた侍女達もやってきている。ミカエルに入った男ガーベラはハープを弾きながら歌を歌っていた。
「この図、新鮮!」
侍女達はうっとりと聴いている。
(ミカエルの声でも、やっぱりいい!)
「星の瞬き ふたりを包んで
言葉じゃ足りない 想い溢れる
君の温もり そっと抱きしめて
夜明けまで 夢の中 ふたりで
道の向こう 見える景色
ふたりの歩幅 重ねて進もう
小さな幸せ 集めてく
未来の地図 君と描いて
かわいいあなた いつまでも愛してる
どんな時も 僕がそばにいるから
君の笑顔 未来を輝かせて
この愛を 永遠に守りたい」
男ガーベラは三曲ほど歌ってくれた。
ゆりも侍女達も泣きながら拍手しまくった。
「最高に素敵です!」
「ガーベラ様の石像が欲しいです!」
「全世界の女性にガーベラ様を見せたい!」
ゆりと侍女はその後も男ガーベラの話で盛り上がった。
その後、ラクシュミからミカエルに思念が来た。
―城で歌ってたって本当か? 私の侍女が見たらしいぞ
―え? 記憶にないですが
―ハープもすごく上手だったらしいぞ
―ハープ? 弾いたことはないですよ
―……だよな
ラクシュミはその話をゆりにしなかったので、真相は謎のまま、終わったのだった。
「王妃、話を聞いてください」
そんな頃、ミカエルがゆりの部屋にやってきた。
「さっき西の街の見回りをしていたんですが、よくわからないんですが、なぜか女性に拝まれました」
「拝まれた?」
「その女性は私にすごく感謝してると言って泣きながら拝んでいました」
「……そうなんだ」
「どうやら土の祭りの時みたいですよ」
「ああ。あの時の!」
「おかげで結婚できましたって言ってましたよ」
「そうなんだ。よかったな。そういえば、オレンジの木は大丈夫かしら」
「一応布で覆ってますがね。今度行ったときに確認してみますね」
「お願いね」
(ミカエルの男ガーベラ様、ミカエルの声で歌とかも聴いてみたい。ハインリヒの声に負けないくらいうまいはず)
「ところで、私に来た神様って……」
「男ガーベラ様? もう半端なくいい男で性格もよくて、そして絶倫。多分、いや絶対に絶倫。愛欲の神様だから」
「絶倫、うらやましいですね」
ミカエルは真面目に言っていた。
この国では絶倫の男は尊敬される。
「私としては男ガーベラ様の信者を増やしたい。今のところ私の侍女くらいしか信者がいないから」
「私も男ガーベラ様に会ってみたいな」
「歌も楽器も上手なんだよねー。歌を聴きたいなー」
などと言っていたらミカエルの肩がぴくりと揺れた。
「では希望に応えて」
などと言っている。
「えー本当にガーベラ様ですか!? やったー!」
ゆりは大喜びだった。
ゆりは自分だけが楽しむんじゃもったいないので、城の広間で歌ってもらうことにした。手が開いた侍女達もやってきている。ミカエルに入った男ガーベラはハープを弾きながら歌を歌っていた。
「この図、新鮮!」
侍女達はうっとりと聴いている。
(ミカエルの声でも、やっぱりいい!)
「星の瞬き ふたりを包んで
言葉じゃ足りない 想い溢れる
君の温もり そっと抱きしめて
夜明けまで 夢の中 ふたりで
道の向こう 見える景色
ふたりの歩幅 重ねて進もう
小さな幸せ 集めてく
未来の地図 君と描いて
かわいいあなた いつまでも愛してる
どんな時も 僕がそばにいるから
君の笑顔 未来を輝かせて
この愛を 永遠に守りたい」
男ガーベラは三曲ほど歌ってくれた。
ゆりも侍女達も泣きながら拍手しまくった。
「最高に素敵です!」
「ガーベラ様の石像が欲しいです!」
「全世界の女性にガーベラ様を見せたい!」
ゆりと侍女はその後も男ガーベラの話で盛り上がった。
その後、ラクシュミからミカエルに思念が来た。
―城で歌ってたって本当か? 私の侍女が見たらしいぞ
―え? 記憶にないですが
―ハープもすごく上手だったらしいぞ
―ハープ? 弾いたことはないですよ
―……だよな
ラクシュミはその話をゆりにしなかったので、真相は謎のまま、終わったのだった。
166
お気に入りに追加
331
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。
アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。
いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。
だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・
「いつわたしが婚約破棄すると言った?」
私に飽きたんじゃなかったんですか!?
……………………………
たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな
しげむろ ゆうき
恋愛
卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく
しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ
おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる