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14部
お見舞い
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「ララちゃーん」
「あっ親方ー!」
馬車にひかれた雷の巫女ララが結構元気になった頃、お見舞いが解禁されて、工房の親方が見舞いにやってきた。
「おっ? なんだよ。元気そうじゃないか。俺達ララちゃんが馬車にひかれて重態だって聞いたからよ、ほんとびっくりしたんだぜ。元気そうでよかったよ」
親方はララに花束を渡しながら涙ぐんでいた。
「ところで本当に馬車にひかれたのか?」
それさえも疑わしいほど、ララは元気そうだった。
「ひかれました。ものすごく痛かったです。王族の方々が私に回復魔法をいっぱい使ってくださったみたいなんです」
「そうか。そりゃよかったよ。まったく、さっと逃げなきゃだめだぜ」
「本当にどんくさいですよね」
ララは自分でもそう思いつつ、腑に落ちないことも実はあった。ララは運動神経はそう悪くはない。魔力はなかったが、体力はそれなりにあると自分でも思っていたし、足もわりと速いほうだった。
(あれがわざとやられた事故だとしたら、もしかしたら魔法で足止めとかされてた可能性もあるかもなあ)
実はそうも思っていたが、だれにも伝えてはいなかった。今はもう相手を恨んでもいない。魔力が高い者達は小さい頃からかなりの訓練をするという。ぽっと出のララが魔力を持ち、しかも巫女になったのだから、腹立たしいも無理はない。殺そうとするのはやりすぎではあるが。
「ララちゃんが巫女になってびっくりで、魔力をもらってびっくりで、次に馬車にひかれてびっくりだよ。あんまりびっくりさせないでくれよ」
「私がたくらんだわけじゃないですもん。それよりも、手紙は読んでくれました?」
「お、おおそれで俺も来たのよ。ガーベラ様が来てくださったなんて本当なのか?」
「本当なんですよ。もうむっちゃくちゃいい匂いでしたよ」
ララは頬を紅潮させていた。
「本当かよ。いいなあ。よかったなあ」
親方はうらやましげにあごひげに触っていた。
「ハロルド様も一緒だって本当か?」
「はい。そうです。それでガーベラ様なんですけどね、胸が、やっぱり胸がすごくて、でも上品なんです。服もちょっと透けそうな感じで、でも透けてなくて、顔ももちろん超綺麗で、まつげが長くて、瞳も綺麗で、唇も綺麗でした」
ララはハロルドのことは完全にスルーしていた。ここ雷獣の国では、どちらかといえばハロルドよりもライオネルの方が信仰されている。ハロルドが来てくれたことにはもちろん感謝しまくっていたが、今はガーベラのことを親方に伝えたかったのだった。
「その上声がものすごくかわいいんです」
「いいなあ。俺も直にガーベラ様に会ってみたいぜ。この前ソル様に会えたけど、目元が隠れてたろう? 石像とか作れって言われても、ちょっと困ってるんだよな」
「そうですね。目元が隠れてましたもんね。でも、ガーベラ様譲りの綺麗なおめめが隠れてるんでしょうね。うふふ」
「ははは、ところで、それ切り絵だろ? 結構いいな」
親方はベッドサイドに飾ってあった切り絵に目を向けていた。
「そうでしょう? お見舞いにどなたかがくださったんですが、名がある方の作品なんでしょうかね」
「あんまり見たことはないがな。それでハロルド様はどうだった?」
「もちろんかっこよかったですよ。背が高くて、筋肉質で、でもムキムキすぎてなくて。ガーベラ様と並んでいると、美男美女、ありがとうございますって感じでした。どうして一緒に来てくださったのかわからないんですけど、ガーベラ様が頼んだんでしょうかね。想像よりも優しい神様でしたよ。ハロルド様ってもっと怖いイメージでしたが」
「へーよかったな。実物はすごいんだろうなあ」
「そりゃもうすごかったです」
「最近ガーベラ様の男版の石像を作ってくれないかって個人的に頼まれてるんだが、イメージできないんだよなあ」
親方は困ったように腕を組んでいた
「ガーベラ様男版ですか。ディアメラ様の恋人になったとかいうお話の」
「そうだよ。なんとかイメージして彫ってくれって言われたんだが、イメージできねえよなあ」
「そうですよねえ。やっぱりガーベラ様は女の方がいいですよねえ」
ララはガーベラの胸が大好きなので、男よりも女版ガーベラを推してしまうのも無理はなかった。
扉がノックされて、外にいた者が顔を見せた。ララの病室の前には、護衛が朝から晩までいて、見舞客の持ち物検査もしているらしい。ちなみに、今はララの本当に知り合いしかここには来ることができない。
「巫女様、殿下のお見舞いです」
「おっそれじゃもう俺は行くわ。じゃあな、元気になれよ」
「はい。今日は会えてうれしかったです」
親方は去って行き、代わりに第2王子ランカンが従者らしき二人を伴って入って来た。
「やあ巫女、元気かな」
「はい、殿下のおかげですっかり元気です。もう退院してもいいくらいです」
「ははは。まあもうちょっとここで我慢して。今日は俺の友人達も連れてきた。元学友のこっちがチャド、こっちがアーロンだ」
ランカンは後ろにいた二人の男をララに紹介した。
「ララです。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
チャドとアーロンは二人そろって頭を下げた。今日はランカンがアーロンに妹を直に会わせてやりたいと思って連れてきたのだった。
「思ったより元気そうだね。よかった」
ラフな金髪、ちょっと軽薄そうなイメージ漂うチャドが言った。
「元気ですよ。あれ、こちらの方、見たことがあるような……この前の合唱コンクールにいらしてなかったですか?」
ララがアーロンに聞いた。
「はい、行きました。学校の視察で」
アーロンが答えた。
「やっぱりそうですか。私あの日招待客の受付だったので覚えてるんです」
「受付でしたね」
「初対面かと思ったら違うのか」
ランカンはちょっと拍子抜けしていた。
「学校の視察で行きました。父もいろいろな行事の見学に行ってますよ。父はカルロスです」
「知ってます。カルロス様は毎回劇発表会の最前列に座っていらっしゃいますよね。劇がものすごくお好きなんですよね。そうおっしゃってました」
「そうです。父は、劇がすごく好きなもので、ちなみに運動会も好きです」
「運動会にもいらしてくださってますよね。応援にも毎回熱が入ってて、ものすごく運動会が好きなんだなってみんなで言ってました」
「ぶっ」
チャドが思わず吹きだしていた。
ランカンがベッドサイドの切り絵に目を留めた。チャドもそれに気づいて「あ、これ……いってっ」
チャドはお尻をおさえていた。ララはキョトンとしている。
「俺はこの作家のライオネル様の切り絵を持ってる。執務室に飾ってるんだ」
ランカンが言った。
「え? 本当ですか? やっぱり有名な方なんですか?」
ララが目を輝かせて聞いた。
「本人は趣味でやってるだけみたいだが、なかなか芸術的だよな」
「はい。一目みて感動しました。とってもステキだから。殿下は作家の方をご存じなんですか?」
「この男だ」
ランカンはアーロンを指していた。
「え!?」
アーロンは顔に手を当てていた。
「アーロン様、天才じゃないですか。ガーベラ様の他の切り絵があったら見せてください!」
ララは真面目に頼んでいたのだった。
三人は城にあるランカンの執務室に戻った。
「まさかあっさり暴露されるとは……」
アーロンはランカンを睨んでいた。
「別にいいじゃないか。すごい趣味なんだからさ。父上の執務室には、ダーナ様の切り絵があるじゃん。父上もあれお気に入りだよ」
「お前俺には攻撃したくせに、殿下にも攻撃しろ」
チャドが恨めしげに言った。
「それにしても、カルロス様、ララちゃんのこと気にしすぎじゃない? 別に里子に出さなくてよかったんじゃねえ?」
チャドが続けて言った。
「それについては、なかなか難しい問題なんだ。できることなら、自分達で育てたかったと思う」
アーロンが言った。アーロンとララは50歳ほど年が離れている。両親は、しばらく子供ができなかったからもう無理だと思っていた。そんな時ララが生まれた。魔力持ちの親は子供が産まれると、魔力の鑑定を受ける。ララには魔力がないと判定された。
「やっぱり将来的ないじめとか気にしてるのかな」
チャドが言った。
「昔いろいろ事件があったからな」
一族の中でも上位にある者の子供達は学園に通い、家が遠い者は寮で生活する。親が上位ならば、子供に魔力がなくとも学園に入ることはできるのだが、学園の中でいじめがあり、それが元で様々な事件などが起こった。いくら教師が目を光らせてもそういう事件はなくならず、かといって一般の平民の子供が通う学校に入れると、それはそれで難しいのだった。
「小さい頃、バートランドも目のことを気にしてたもんな。僕本当は父様の子供じゃないのかなって。もしバートランドが長男だったら、里子に出されていたかもしれないな。王族の長男なのに金目じゃないし、王位を継げないってキツイだろ?」
ランカンが言った。
「ま、今ではあいつの方が楽しそうだけどな。巫女が元気になったら、屋敷に招待するんだろ? カルロス卿、喜ぶかな」
先ほど病室で、アーロンはそういう約束をしてしまったのだった。アーロンの切り絵を見せるためである。
「どうしましょう。正直困ってるんですが」
「ま、いいじゃないか」
「俺もいっていい?」
チャドが聞いた。
「絶対だめ」
「カルロス様がうろたえる様子を見たいんだけどなあ」
「父に殴られるぞ」
「俺も行きたい」
ランカンも言った。
「だめですよ。どうしよう。まずは・・・掃除か? 彼女の好きな食べ物もリサーチしなければ」
アーロンはぶつぶつ言っている。
「そうだ。おっぱいプリンを真似て作ってあげたら? 喜ぶんじゃねえ?」
チャドが言った。
「変態だろ。絶対やめろよ。兄だと名乗る前に話もしてくれなくなるぞ」
ランカンが言った。
「自分にも一般的常識くらいあります。ガーベラ様の胸について語り合うなら、10回ほど会ってからじゃないと」
「じゅう・・・いやもっとだろ」
「15回ですか?」
「そもそも女の子とする話じゃないぞ」
「アーロンと巫女ちゃんの会話、聴きてえー」
とチャド。
果たしてガーベラ様の胸の話題になるのかどうか。
「気になりすぎる。その日だけ使用人として雇ってくれよ」
「いやだ」
即答したアーロンだった。
「あっ親方ー!」
馬車にひかれた雷の巫女ララが結構元気になった頃、お見舞いが解禁されて、工房の親方が見舞いにやってきた。
「おっ? なんだよ。元気そうじゃないか。俺達ララちゃんが馬車にひかれて重態だって聞いたからよ、ほんとびっくりしたんだぜ。元気そうでよかったよ」
親方はララに花束を渡しながら涙ぐんでいた。
「ところで本当に馬車にひかれたのか?」
それさえも疑わしいほど、ララは元気そうだった。
「ひかれました。ものすごく痛かったです。王族の方々が私に回復魔法をいっぱい使ってくださったみたいなんです」
「そうか。そりゃよかったよ。まったく、さっと逃げなきゃだめだぜ」
「本当にどんくさいですよね」
ララは自分でもそう思いつつ、腑に落ちないことも実はあった。ララは運動神経はそう悪くはない。魔力はなかったが、体力はそれなりにあると自分でも思っていたし、足もわりと速いほうだった。
(あれがわざとやられた事故だとしたら、もしかしたら魔法で足止めとかされてた可能性もあるかもなあ)
実はそうも思っていたが、だれにも伝えてはいなかった。今はもう相手を恨んでもいない。魔力が高い者達は小さい頃からかなりの訓練をするという。ぽっと出のララが魔力を持ち、しかも巫女になったのだから、腹立たしいも無理はない。殺そうとするのはやりすぎではあるが。
「ララちゃんが巫女になってびっくりで、魔力をもらってびっくりで、次に馬車にひかれてびっくりだよ。あんまりびっくりさせないでくれよ」
「私がたくらんだわけじゃないですもん。それよりも、手紙は読んでくれました?」
「お、おおそれで俺も来たのよ。ガーベラ様が来てくださったなんて本当なのか?」
「本当なんですよ。もうむっちゃくちゃいい匂いでしたよ」
ララは頬を紅潮させていた。
「本当かよ。いいなあ。よかったなあ」
親方はうらやましげにあごひげに触っていた。
「ハロルド様も一緒だって本当か?」
「はい。そうです。それでガーベラ様なんですけどね、胸が、やっぱり胸がすごくて、でも上品なんです。服もちょっと透けそうな感じで、でも透けてなくて、顔ももちろん超綺麗で、まつげが長くて、瞳も綺麗で、唇も綺麗でした」
ララはハロルドのことは完全にスルーしていた。ここ雷獣の国では、どちらかといえばハロルドよりもライオネルの方が信仰されている。ハロルドが来てくれたことにはもちろん感謝しまくっていたが、今はガーベラのことを親方に伝えたかったのだった。
「その上声がものすごくかわいいんです」
「いいなあ。俺も直にガーベラ様に会ってみたいぜ。この前ソル様に会えたけど、目元が隠れてたろう? 石像とか作れって言われても、ちょっと困ってるんだよな」
「そうですね。目元が隠れてましたもんね。でも、ガーベラ様譲りの綺麗なおめめが隠れてるんでしょうね。うふふ」
「ははは、ところで、それ切り絵だろ? 結構いいな」
親方はベッドサイドに飾ってあった切り絵に目を向けていた。
「そうでしょう? お見舞いにどなたかがくださったんですが、名がある方の作品なんでしょうかね」
「あんまり見たことはないがな。それでハロルド様はどうだった?」
「もちろんかっこよかったですよ。背が高くて、筋肉質で、でもムキムキすぎてなくて。ガーベラ様と並んでいると、美男美女、ありがとうございますって感じでした。どうして一緒に来てくださったのかわからないんですけど、ガーベラ様が頼んだんでしょうかね。想像よりも優しい神様でしたよ。ハロルド様ってもっと怖いイメージでしたが」
「へーよかったな。実物はすごいんだろうなあ」
「そりゃもうすごかったです」
「最近ガーベラ様の男版の石像を作ってくれないかって個人的に頼まれてるんだが、イメージできないんだよなあ」
親方は困ったように腕を組んでいた
「ガーベラ様男版ですか。ディアメラ様の恋人になったとかいうお話の」
「そうだよ。なんとかイメージして彫ってくれって言われたんだが、イメージできねえよなあ」
「そうですよねえ。やっぱりガーベラ様は女の方がいいですよねえ」
ララはガーベラの胸が大好きなので、男よりも女版ガーベラを推してしまうのも無理はなかった。
扉がノックされて、外にいた者が顔を見せた。ララの病室の前には、護衛が朝から晩までいて、見舞客の持ち物検査もしているらしい。ちなみに、今はララの本当に知り合いしかここには来ることができない。
「巫女様、殿下のお見舞いです」
「おっそれじゃもう俺は行くわ。じゃあな、元気になれよ」
「はい。今日は会えてうれしかったです」
親方は去って行き、代わりに第2王子ランカンが従者らしき二人を伴って入って来た。
「やあ巫女、元気かな」
「はい、殿下のおかげですっかり元気です。もう退院してもいいくらいです」
「ははは。まあもうちょっとここで我慢して。今日は俺の友人達も連れてきた。元学友のこっちがチャド、こっちがアーロンだ」
ランカンは後ろにいた二人の男をララに紹介した。
「ララです。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
チャドとアーロンは二人そろって頭を下げた。今日はランカンがアーロンに妹を直に会わせてやりたいと思って連れてきたのだった。
「思ったより元気そうだね。よかった」
ラフな金髪、ちょっと軽薄そうなイメージ漂うチャドが言った。
「元気ですよ。あれ、こちらの方、見たことがあるような……この前の合唱コンクールにいらしてなかったですか?」
ララがアーロンに聞いた。
「はい、行きました。学校の視察で」
アーロンが答えた。
「やっぱりそうですか。私あの日招待客の受付だったので覚えてるんです」
「受付でしたね」
「初対面かと思ったら違うのか」
ランカンはちょっと拍子抜けしていた。
「学校の視察で行きました。父もいろいろな行事の見学に行ってますよ。父はカルロスです」
「知ってます。カルロス様は毎回劇発表会の最前列に座っていらっしゃいますよね。劇がものすごくお好きなんですよね。そうおっしゃってました」
「そうです。父は、劇がすごく好きなもので、ちなみに運動会も好きです」
「運動会にもいらしてくださってますよね。応援にも毎回熱が入ってて、ものすごく運動会が好きなんだなってみんなで言ってました」
「ぶっ」
チャドが思わず吹きだしていた。
ランカンがベッドサイドの切り絵に目を留めた。チャドもそれに気づいて「あ、これ……いってっ」
チャドはお尻をおさえていた。ララはキョトンとしている。
「俺はこの作家のライオネル様の切り絵を持ってる。執務室に飾ってるんだ」
ランカンが言った。
「え? 本当ですか? やっぱり有名な方なんですか?」
ララが目を輝かせて聞いた。
「本人は趣味でやってるだけみたいだが、なかなか芸術的だよな」
「はい。一目みて感動しました。とってもステキだから。殿下は作家の方をご存じなんですか?」
「この男だ」
ランカンはアーロンを指していた。
「え!?」
アーロンは顔に手を当てていた。
「アーロン様、天才じゃないですか。ガーベラ様の他の切り絵があったら見せてください!」
ララは真面目に頼んでいたのだった。
三人は城にあるランカンの執務室に戻った。
「まさかあっさり暴露されるとは……」
アーロンはランカンを睨んでいた。
「別にいいじゃないか。すごい趣味なんだからさ。父上の執務室には、ダーナ様の切り絵があるじゃん。父上もあれお気に入りだよ」
「お前俺には攻撃したくせに、殿下にも攻撃しろ」
チャドが恨めしげに言った。
「それにしても、カルロス様、ララちゃんのこと気にしすぎじゃない? 別に里子に出さなくてよかったんじゃねえ?」
チャドが続けて言った。
「それについては、なかなか難しい問題なんだ。できることなら、自分達で育てたかったと思う」
アーロンが言った。アーロンとララは50歳ほど年が離れている。両親は、しばらく子供ができなかったからもう無理だと思っていた。そんな時ララが生まれた。魔力持ちの親は子供が産まれると、魔力の鑑定を受ける。ララには魔力がないと判定された。
「やっぱり将来的ないじめとか気にしてるのかな」
チャドが言った。
「昔いろいろ事件があったからな」
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「小さい頃、バートランドも目のことを気にしてたもんな。僕本当は父様の子供じゃないのかなって。もしバートランドが長男だったら、里子に出されていたかもしれないな。王族の長男なのに金目じゃないし、王位を継げないってキツイだろ?」
ランカンが言った。
「ま、今ではあいつの方が楽しそうだけどな。巫女が元気になったら、屋敷に招待するんだろ? カルロス卿、喜ぶかな」
先ほど病室で、アーロンはそういう約束をしてしまったのだった。アーロンの切り絵を見せるためである。
「どうしましょう。正直困ってるんですが」
「ま、いいじゃないか」
「俺もいっていい?」
チャドが聞いた。
「絶対だめ」
「カルロス様がうろたえる様子を見たいんだけどなあ」
「父に殴られるぞ」
「俺も行きたい」
ランカンも言った。
「だめですよ。どうしよう。まずは・・・掃除か? 彼女の好きな食べ物もリサーチしなければ」
アーロンはぶつぶつ言っている。
「そうだ。おっぱいプリンを真似て作ってあげたら? 喜ぶんじゃねえ?」
チャドが言った。
「変態だろ。絶対やめろよ。兄だと名乗る前に話もしてくれなくなるぞ」
ランカンが言った。
「自分にも一般的常識くらいあります。ガーベラ様の胸について語り合うなら、10回ほど会ってからじゃないと」
「じゅう・・・いやもっとだろ」
「15回ですか?」
「そもそも女の子とする話じゃないぞ」
「アーロンと巫女ちゃんの会話、聴きてえー」
とチャド。
果たしてガーベラ様の胸の話題になるのかどうか。
「気になりすぎる。その日だけ使用人として雇ってくれよ」
「いやだ」
即答したアーロンだった。
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