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14部
王妃を〇〇する会
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「今日は皆さん集まっていただきありがとうございます。王妃を愛でる会を開きたいと思います」
立ち上がって宣言していたのはシャナーンである。
「王妃を愛でる会? ただの宴会じゃないのか?」
聞いたのはハインリヒである。
「王妃を愛でる会です」
「王妃を愛でる……王妃はいないが」
ミカエルが言った。
ここはシャナーンの屋敷の客間である。長机の周りにイシュタールを抜かしたゆりの恋人達が座っていた。そして、その場にはなぜか他の者達も座っていた。男達にとってはかなり気まずい相手である。この者達のせいで、男達はかなり緊張していた。
(一体どうやって呼んだんだろう?)
(シャナーンに聞いても教えてくれないんだ)
男達は思念で会話しあっている。
なんだかうれしげな顔で座っていたのはグレンだった。その隣には仏頂ずらのハロルドが座っている。
「なんだって? 実にくだらん。何かと思えばそんな用とは……」
ハロルドはぶつぶつ言っていた。
「あの、私が呼んだのは、グレン様とラーズ様だったんですが……」
シャナーンが遠慮がちに言っていた。
(だからどうやって呼んだんだ?)
男達は心の中でつっこんでいる。
「ラーズなんか呼ぶ必要は全くない!」
「ハロルド様、不機嫌でいるなら帰ってくださいよ。せっかく、ガーベラ様を愛でる機会なんですから」
グレンが言った。
「ガーベラって」
「皆さんもう知っているようなので言いますけど、ガーベラ様のどこがいいかって、もう全部いいんです。全部かわいい。話す言葉全部かわいいんですよ!」
グレンが熱を入れて言っていた。
「わかります。王妃が言うことは全部かわいいですよね。もう何十年経っても変わらない。初めて出会った時から、ずっとかわいいです」
シャナーンが激しく同意していた。
ミカエルとフリットは、(グレン様ってシャナーンと同じ系統だな)と思っていた。ヴィラとジュノー、ミルキダスは、(グレン様、王妃にぞっこんだな)と思っている。そしてカールは王妃の凄さをしみじみと感じていた。
「他の皆さんも意見をどうぞ」
シャナーンは他の男達に促している。男達は顔を見回していた。
「王妃は……タフなところが素晴らしいと思う」
ハインリヒが言った。
「うん、それに常に前向きだ。出産で大変だったのに、次の日にはけろっとして次の妊娠を考えてたりするからな」
ミカエルが言った。
「私は、ずっと恋人よって言ってくださるのがとてもうれしいです」
ミルキダスが言った。
「私は、王妃のおかげで生きているのが楽しくなりましたよ」
フリットが言った。
「そうですね。私もですよ」
とヴィラ。
「王妃はずっと城にいても、面白いことがいろいろ起きるんですよね。王妃が来てからずっと楽しかったですよ」
ジュノーの言葉に男達はうなずいていた。
「私もそうです。もう一人のガーベラ様が、私の神の生まで変えてくれた」
グレンが言った。
「ガーベラ様は優しい。優しくてかわいいです」
(かわいい連呼だな)
男達はそう思っていた。
(何をすればここまでメロメロになるんだか)
ヴィラはそう思っている。
「ハロルド様もなんだかんだ言ってガーベラ様にベタ惚れですものね」
グレンが言うとハロルドは眉をひそめ、「そんなことはない」と言ったが、「いや、まあ好きは好きだ」と言い直した。
(ハロルド様素直!)
ミカエルは感動している。
「反応が面白いが、あの女は私のことをすごいと全く思ってない。抱いてやった後も、ものすごく淡々としてる。次の日にはすっかり忘れてるんじゃないかと思うくらいだ」
(王妃らしー)
と男達は心の中でつっこんでいた。
「それが、王妃のすごい所なのです。王妃は歴史上最高の巫女ですから」
シャナーンは拳を握りしめて言っていた。
「あ、そうだ。その節は、儀式をしていただきありがとうございました」
ミカエルがそのことを思い出して礼を言った。
「ありがとうございます」
男達は声を合わせて頭を下げた。
「ラーズが先だったがな」
ハロルドがぼそっと言った。
ちょっと空気が重くなったところで、グレンが、「私、この前ガーベラ様と手型を取り合ったんですよ」と空気を変えた。
「私の宝物です。永遠に、壁に飾っていようと思います」
「そうですか。王妃も喜びますね」
とシャナーン。
「あ、そうだ。アシュランが手か足か送らなかったか?」
ハロルドが思い出したように言った。
「アシュラン様の足が来ましたよ」
ミカエルが答えた。
「やっぱりな」
「おかげで博物館は毎日列を作ってます」
フリットが言った。
「ガーベラ様が純真な心の持ち主だから、アシュラン様も協力したんでしょう」
とグレン。
「いや、いらないと言われて癪に触ったとか言ってたぞ。なんか盗み聞いたらしい」
ハロルドの言葉に、グレンが「言い方がきっとかわいかったんですよ」と言った。
「いや、いらないにかわいいも何もないだろ」
「かわいかったからアシュラン様が協力したに決まっているじゃないですか」
「そうかな?」
「きっとそうです」
「きっとそうですね」
グレンの言葉にシャナーンも同意していた。
ハインリヒは、(まさか聞かれたのあの時の会話じゃないだろうな)とドキドキしていた。
「ところで、ガーベラ様の好きな食べ物ってお米の他に何かありますか?」
グレンが男達に聞いていた。
「海の食べ物とか好きですよ。うちには海がないので。ハロルド様がイカとかカニとか持って来てくださったときも、王妃は大喜びしてました」
ミカエルが言った。
「おかげであれから神殿にカニが供えられるようになったそうだ」
とハロルド。
男達はつい、神殿に供えられるカニを想像している。
「カニに喜ぶガーベラ様、かわいかっただろうなあ」
とグレン。
グレンの想像はゆりなのかガーベラ姿なのか、男達はどっちだろうとそう思った。
「食べ物一つで大喜びするところが、無邪気でかわいいですよね」
とシャナーン。
「あんなに無邪気な方は他にいません」
とグレン。
ゆりが無邪気なだけではないのを知っているミカエル達は黙っている。わざわざグレンの前で言うことでもない。
「王妃を愛でる会」はお開きになった。
「グレン様、王妃のかわいさについてもっと語りませんか?」
「語りましょう」
シャナーンとグレンは二次会をする気らしい。
「あほらしい。私は帰る」
ハロルドは席を立ち、男達は立って頭を下げた。
「本日はありがとうございます」
男達はお礼を言ってハロルドを見送ったのだった。
立ち上がって宣言していたのはシャナーンである。
「王妃を愛でる会? ただの宴会じゃないのか?」
聞いたのはハインリヒである。
「王妃を愛でる会です」
「王妃を愛でる……王妃はいないが」
ミカエルが言った。
ここはシャナーンの屋敷の客間である。長机の周りにイシュタールを抜かしたゆりの恋人達が座っていた。そして、その場にはなぜか他の者達も座っていた。男達にとってはかなり気まずい相手である。この者達のせいで、男達はかなり緊張していた。
(一体どうやって呼んだんだろう?)
(シャナーンに聞いても教えてくれないんだ)
男達は思念で会話しあっている。
なんだかうれしげな顔で座っていたのはグレンだった。その隣には仏頂ずらのハロルドが座っている。
「なんだって? 実にくだらん。何かと思えばそんな用とは……」
ハロルドはぶつぶつ言っていた。
「あの、私が呼んだのは、グレン様とラーズ様だったんですが……」
シャナーンが遠慮がちに言っていた。
(だからどうやって呼んだんだ?)
男達は心の中でつっこんでいる。
「ラーズなんか呼ぶ必要は全くない!」
「ハロルド様、不機嫌でいるなら帰ってくださいよ。せっかく、ガーベラ様を愛でる機会なんですから」
グレンが言った。
「ガーベラって」
「皆さんもう知っているようなので言いますけど、ガーベラ様のどこがいいかって、もう全部いいんです。全部かわいい。話す言葉全部かわいいんですよ!」
グレンが熱を入れて言っていた。
「わかります。王妃が言うことは全部かわいいですよね。もう何十年経っても変わらない。初めて出会った時から、ずっとかわいいです」
シャナーンが激しく同意していた。
ミカエルとフリットは、(グレン様ってシャナーンと同じ系統だな)と思っていた。ヴィラとジュノー、ミルキダスは、(グレン様、王妃にぞっこんだな)と思っている。そしてカールは王妃の凄さをしみじみと感じていた。
「他の皆さんも意見をどうぞ」
シャナーンは他の男達に促している。男達は顔を見回していた。
「王妃は……タフなところが素晴らしいと思う」
ハインリヒが言った。
「うん、それに常に前向きだ。出産で大変だったのに、次の日にはけろっとして次の妊娠を考えてたりするからな」
ミカエルが言った。
「私は、ずっと恋人よって言ってくださるのがとてもうれしいです」
ミルキダスが言った。
「私は、王妃のおかげで生きているのが楽しくなりましたよ」
フリットが言った。
「そうですね。私もですよ」
とヴィラ。
「王妃はずっと城にいても、面白いことがいろいろ起きるんですよね。王妃が来てからずっと楽しかったですよ」
ジュノーの言葉に男達はうなずいていた。
「私もそうです。もう一人のガーベラ様が、私の神の生まで変えてくれた」
グレンが言った。
「ガーベラ様は優しい。優しくてかわいいです」
(かわいい連呼だな)
男達はそう思っていた。
(何をすればここまでメロメロになるんだか)
ヴィラはそう思っている。
「ハロルド様もなんだかんだ言ってガーベラ様にベタ惚れですものね」
グレンが言うとハロルドは眉をひそめ、「そんなことはない」と言ったが、「いや、まあ好きは好きだ」と言い直した。
(ハロルド様素直!)
ミカエルは感動している。
「反応が面白いが、あの女は私のことをすごいと全く思ってない。抱いてやった後も、ものすごく淡々としてる。次の日にはすっかり忘れてるんじゃないかと思うくらいだ」
(王妃らしー)
と男達は心の中でつっこんでいた。
「それが、王妃のすごい所なのです。王妃は歴史上最高の巫女ですから」
シャナーンは拳を握りしめて言っていた。
「あ、そうだ。その節は、儀式をしていただきありがとうございました」
ミカエルがそのことを思い出して礼を言った。
「ありがとうございます」
男達は声を合わせて頭を下げた。
「ラーズが先だったがな」
ハロルドがぼそっと言った。
ちょっと空気が重くなったところで、グレンが、「私、この前ガーベラ様と手型を取り合ったんですよ」と空気を変えた。
「私の宝物です。永遠に、壁に飾っていようと思います」
「そうですか。王妃も喜びますね」
とシャナーン。
「あ、そうだ。アシュランが手か足か送らなかったか?」
ハロルドが思い出したように言った。
「アシュラン様の足が来ましたよ」
ミカエルが答えた。
「やっぱりな」
「おかげで博物館は毎日列を作ってます」
フリットが言った。
「ガーベラ様が純真な心の持ち主だから、アシュラン様も協力したんでしょう」
とグレン。
「いや、いらないと言われて癪に触ったとか言ってたぞ。なんか盗み聞いたらしい」
ハロルドの言葉に、グレンが「言い方がきっとかわいかったんですよ」と言った。
「いや、いらないにかわいいも何もないだろ」
「かわいかったからアシュラン様が協力したに決まっているじゃないですか」
「そうかな?」
「きっとそうです」
「きっとそうですね」
グレンの言葉にシャナーンも同意していた。
ハインリヒは、(まさか聞かれたのあの時の会話じゃないだろうな)とドキドキしていた。
「ところで、ガーベラ様の好きな食べ物ってお米の他に何かありますか?」
グレンが男達に聞いていた。
「海の食べ物とか好きですよ。うちには海がないので。ハロルド様がイカとかカニとか持って来てくださったときも、王妃は大喜びしてました」
ミカエルが言った。
「おかげであれから神殿にカニが供えられるようになったそうだ」
とハロルド。
男達はつい、神殿に供えられるカニを想像している。
「カニに喜ぶガーベラ様、かわいかっただろうなあ」
とグレン。
グレンの想像はゆりなのかガーベラ姿なのか、男達はどっちだろうとそう思った。
「食べ物一つで大喜びするところが、無邪気でかわいいですよね」
とシャナーン。
「あんなに無邪気な方は他にいません」
とグレン。
ゆりが無邪気なだけではないのを知っているミカエル達は黙っている。わざわざグレンの前で言うことでもない。
「王妃を愛でる会」はお開きになった。
「グレン様、王妃のかわいさについてもっと語りませんか?」
「語りましょう」
シャナーンとグレンは二次会をする気らしい。
「あほらしい。私は帰る」
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