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13部 番外編
かわいい猫(35話)
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オルガの神殿にいた猫はまだ子猫だった。ガーベラは黒い猫を抱っこして、サントスの元に飛んだ。
「みてみて、サントス、子猫ちゃんが出て来たの!」
ガーベラは農園にいたサントスに子猫を見せに行った。
「子猫? わあ、かわいいな」
近くにいたネルも近づいてきた。
「わあ、この猫どうしたの?」
「多分神気から出て来たのよ。オルガの神殿で生まれたの」
ガーベラはネルに子猫を渡した。
「かわいい!」
「足に何かついてるね」
サントスは猫の足に触れていた。
「ほんとだ。神器? もしかして飛べたりして?」
「すごいなあ」
サントスは細かいことは気にせずに、猫をなでていた。
「ニャン」
「かわいい~~~男の子ですね」
「リーファはいる? 仲良くしてくれるかしら」
「リーファは昼間は全然いないですよ。すぐどこかに遊びに行っちゃうんです」
ネルが答えた。
「そうなの。ねえ、サントス、この子の食べ物もお願いできる?」
「もちろんですよ。まだミルクがいいかな。ちょっと待っていてくださいね」
サントスはうれしげに去って行った。
「最近動物がいっぱいで楽しいですね」
とネルも喜んでいる。
「そうね。猫系がたくさんできたわね。レオちゃんとも仲良くできればいいけれど」
ネルが子猫を降ろすと、子猫はたっとそこらを走り回った。そしてチョウチョを追いかけている。
「かわゆい」
「かわいいわねー」
「キュリアを呼んできます!」
「うん」
ネルはあわてて去って行った。
「名前は何がいいかしらねえ。黒いから、クロ?」
ネルとキュリアのネーミングセンスは、ガーベラ譲りのようである。
サントスが戻ってきて、器にミルクをついで猫にあげてみた。猫はぺろぺろとミルクを飲んでいる。そしてキュリアもやってきた。
「ほんとに子猫だわ。かわゆい!! いいなあ。私も子猫のお世話がしたいな」
「じゃあこの子の世話をしたら?」
ガーベラがあっさり言った。
「え? いいの?」
「オルガは動物の世話とか多分しないし、まだ赤ちゃんだから誰かが世話した方がいいし、私はよくわからないから」
「じゃあ私の神殿に連れていってもいいの?」
「いいわよ」
「時々ここに連れてきてね」
ネルが言った。
「うん!」
「何か名前を決めてあげて」
「黒いからクロ?」
「そうよね。クロがいいかな」
とネルも賛成し、やはり名前は「クロ」に決まった。
キュリアは喜んで子猫をハロルドの神殿に連れて帰った。サントスからミルクももらって帰っている。
ジェイクが神殿に戻ってきて、キュリアが黒い塊を抱っこしているのに気がついた。
「それなあに?」
「子猫よ。今寝てるの。かわいいでしょ?」
「猫?」
ジェイクは子猫をのぞきこんだ。確かに猫っぽい。
「ん? 足に何かついてない?」
「うん。ついてるみたい。もしかしたら、大きくなったら飛べるのかも」
「へーそりゃすごいね」
「ああ、ヒルデリア様にもおみせしたいな」
「上に行く? つれて行ってあげるよ」
「うん」
キュリアはカゴに布を敷いて猫を入れて、ジェイクの後ろに乗ってペガサスで雲の上の神殿に行った。
「ヒルデリア様、見てください。かわいい猫が生まれたんですよ」
キュリアはうれしそうにヒルデリアに猫を見せに行った。
「猫? まあ、なんと小さい猫か。かわいらしいのう」
子猫は目を開けて、カゴから出て来た。ヒルデリアの部屋には神獣トルメンタもいた。
「ニャン」
子猫は興味深げにトルメンタを見上げている。トルメンタは顔を寄せて、ぺろっと子猫の頬をなでた。
「かわいいですね」
「足に何かついておるのう」
ヒルデリアが子猫の足を見た。
「神器、この猫は神獣か?」
「オルガ様の神獣か、お母様との神獣か、よくわからないですけど、お母様が見つけたんですよ。私に世話していいって」
「そうか」
「大きくなったら飛べるかもしれないですね」
キュリアはとにかくうれしそうで、ヒルデリアも笑顔で「そうなったらよいな」などと返していた。
「アシュラン様にも見てもらいましょう」
キュリアは猫を抱っこしてアシュランの間の方に移動した。
「本当にキュリア様はかわいらしいですね。ぼっちゃんの子供とは思えないほどかわいい」
神獣トルメンタはこんなことを言っていた。
「女の子はよいなあ。本当に和む」
とヒルデリア。
「ところで、あの子猫、普通の猫なのだろうか?」
ヒルデリアがトルメンタに聞いていた。
「愚問ですよ。主。神器がある時点で、普通の猫ではありません」
「確かにそうじゃ」
ヒルデリアは「ほほほ」と笑っていた。
キュリアはアシュランにもかわいい子猫を見せていた。アシュランは「ほほー」と子猫を眺めて、裏のグレンを呼んでいた。
「グレン見てみろ、お前と似たような神器をつけてるぞ。この猫」
「え?」
グレンは猫の後ろ足を見てちょっとぎょっとしていたが、平常心のまま、「はあ、そうですか?」などと言っていた。
「お前がいい匂いをしているのと何か関係があるんじゃないか?」
アシュランは横目でグレンを見ている。
「…………」
グレンの顔はさすがにこわばり、キュリアが「どういうことですか?」と笑顔で聞いていた。
「こっちのことだ。確かにかわいい猫だな。猫っていうか、猫、かな」
「猫です」
「そうか。まあいいか」
キュリアは「それでは」と子猫を連れて去って行った。
アシュランは顎に手をあてている。
「猫ではないんですか?」
グレンが聞いた。
「猫だとしたら、すごくでかい猫になりそうな気がする。まあいい。お前はやっぱり昼間っからガーベラとひっついてたんだろ」
「いえ、そんなことは」
グレンは逃げ腰で、さっさと裏に引っ込んでしまった。
夕方、自分の神殿で寝ている黒い猫を見たハロルドも、鋭く何かを察していた。
(あの女、今日こっちに来たんじゃないのか? オルガの元に行ったんだな。全く……)
ハロルドは苦々しい表情でかわいい子猫を見下ろしていたのだった。
「みてみて、サントス、子猫ちゃんが出て来たの!」
ガーベラは農園にいたサントスに子猫を見せに行った。
「子猫? わあ、かわいいな」
近くにいたネルも近づいてきた。
「わあ、この猫どうしたの?」
「多分神気から出て来たのよ。オルガの神殿で生まれたの」
ガーベラはネルに子猫を渡した。
「かわいい!」
「足に何かついてるね」
サントスは猫の足に触れていた。
「ほんとだ。神器? もしかして飛べたりして?」
「すごいなあ」
サントスは細かいことは気にせずに、猫をなでていた。
「ニャン」
「かわいい~~~男の子ですね」
「リーファはいる? 仲良くしてくれるかしら」
「リーファは昼間は全然いないですよ。すぐどこかに遊びに行っちゃうんです」
ネルが答えた。
「そうなの。ねえ、サントス、この子の食べ物もお願いできる?」
「もちろんですよ。まだミルクがいいかな。ちょっと待っていてくださいね」
サントスはうれしげに去って行った。
「最近動物がいっぱいで楽しいですね」
とネルも喜んでいる。
「そうね。猫系がたくさんできたわね。レオちゃんとも仲良くできればいいけれど」
ネルが子猫を降ろすと、子猫はたっとそこらを走り回った。そしてチョウチョを追いかけている。
「かわゆい」
「かわいいわねー」
「キュリアを呼んできます!」
「うん」
ネルはあわてて去って行った。
「名前は何がいいかしらねえ。黒いから、クロ?」
ネルとキュリアのネーミングセンスは、ガーベラ譲りのようである。
サントスが戻ってきて、器にミルクをついで猫にあげてみた。猫はぺろぺろとミルクを飲んでいる。そしてキュリアもやってきた。
「ほんとに子猫だわ。かわゆい!! いいなあ。私も子猫のお世話がしたいな」
「じゃあこの子の世話をしたら?」
ガーベラがあっさり言った。
「え? いいの?」
「オルガは動物の世話とか多分しないし、まだ赤ちゃんだから誰かが世話した方がいいし、私はよくわからないから」
「じゃあ私の神殿に連れていってもいいの?」
「いいわよ」
「時々ここに連れてきてね」
ネルが言った。
「うん!」
「何か名前を決めてあげて」
「黒いからクロ?」
「そうよね。クロがいいかな」
とネルも賛成し、やはり名前は「クロ」に決まった。
キュリアは喜んで子猫をハロルドの神殿に連れて帰った。サントスからミルクももらって帰っている。
ジェイクが神殿に戻ってきて、キュリアが黒い塊を抱っこしているのに気がついた。
「それなあに?」
「子猫よ。今寝てるの。かわいいでしょ?」
「猫?」
ジェイクは子猫をのぞきこんだ。確かに猫っぽい。
「ん? 足に何かついてない?」
「うん。ついてるみたい。もしかしたら、大きくなったら飛べるのかも」
「へーそりゃすごいね」
「ああ、ヒルデリア様にもおみせしたいな」
「上に行く? つれて行ってあげるよ」
「うん」
キュリアはカゴに布を敷いて猫を入れて、ジェイクの後ろに乗ってペガサスで雲の上の神殿に行った。
「ヒルデリア様、見てください。かわいい猫が生まれたんですよ」
キュリアはうれしそうにヒルデリアに猫を見せに行った。
「猫? まあ、なんと小さい猫か。かわいらしいのう」
子猫は目を開けて、カゴから出て来た。ヒルデリアの部屋には神獣トルメンタもいた。
「ニャン」
子猫は興味深げにトルメンタを見上げている。トルメンタは顔を寄せて、ぺろっと子猫の頬をなでた。
「かわいいですね」
「足に何かついておるのう」
ヒルデリアが子猫の足を見た。
「神器、この猫は神獣か?」
「オルガ様の神獣か、お母様との神獣か、よくわからないですけど、お母様が見つけたんですよ。私に世話していいって」
「そうか」
「大きくなったら飛べるかもしれないですね」
キュリアはとにかくうれしそうで、ヒルデリアも笑顔で「そうなったらよいな」などと返していた。
「アシュラン様にも見てもらいましょう」
キュリアは猫を抱っこしてアシュランの間の方に移動した。
「本当にキュリア様はかわいらしいですね。ぼっちゃんの子供とは思えないほどかわいい」
神獣トルメンタはこんなことを言っていた。
「女の子はよいなあ。本当に和む」
とヒルデリア。
「ところで、あの子猫、普通の猫なのだろうか?」
ヒルデリアがトルメンタに聞いていた。
「愚問ですよ。主。神器がある時点で、普通の猫ではありません」
「確かにそうじゃ」
ヒルデリアは「ほほほ」と笑っていた。
キュリアはアシュランにもかわいい子猫を見せていた。アシュランは「ほほー」と子猫を眺めて、裏のグレンを呼んでいた。
「グレン見てみろ、お前と似たような神器をつけてるぞ。この猫」
「え?」
グレンは猫の後ろ足を見てちょっとぎょっとしていたが、平常心のまま、「はあ、そうですか?」などと言っていた。
「お前がいい匂いをしているのと何か関係があるんじゃないか?」
アシュランは横目でグレンを見ている。
「…………」
グレンの顔はさすがにこわばり、キュリアが「どういうことですか?」と笑顔で聞いていた。
「こっちのことだ。確かにかわいい猫だな。猫っていうか、猫、かな」
「猫です」
「そうか。まあいいか」
キュリアは「それでは」と子猫を連れて去って行った。
アシュランは顎に手をあてている。
「猫ではないんですか?」
グレンが聞いた。
「猫だとしたら、すごくでかい猫になりそうな気がする。まあいい。お前はやっぱり昼間っからガーベラとひっついてたんだろ」
「いえ、そんなことは」
グレンは逃げ腰で、さっさと裏に引っ込んでしまった。
夕方、自分の神殿で寝ている黒い猫を見たハロルドも、鋭く何かを察していた。
(あの女、今日こっちに来たんじゃないのか? オルガの元に行ったんだな。全く……)
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