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第12巻番外編
ラクアの妹達(12部18話以降)
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水の神ラクアには3人の妹達がいる。3人とも妖精で産まれたのは同じ時、姿も顔立ちも似ているが、見分けがつかないほどそっくりというわけでもない。髪型も微妙に違うし、性格だって違う。水の妖精は他にもいるが、ラクアが妹だと思っているのはこの3人だけである。
遙か昔、神々が最初に産まれた頃、ラクアは産まれた。当時まだ神は少なく、人間も存在していない。神々も自分がなぜこの地に産まれたのか、分からなかった頃である。妖精もいなかったために産まれた神々は一つの神殿に住んでいた。当時神々の心にあったのは「孤独」という感情であり、まずは、自分達の仲間を増やしたいと思っていた。ラクアもそうだったが、どうすれば仲間が増えるのか。ラクアは自分が産まれた泉で他の誰かが産まれるのを待ったが、しばらくしてもだれも産まれず、孤独にさいなまれたラクアは初めて涙を流し、その涙が泉に落ちたとき、泉の水がぼこぼこと泡立ち、そこから3人の妖精が誕生した。3人はラクアの孤独を癒やし、ラクアは「妹達」と呼んで3人を可愛がった。
この3人の妹達、今まで好きな男がいなかったわけではないが、いずれも長続きしていない。「ラクアが可愛がりすぎているせいじゃないか?」と神の国では密かに言われていたが、強く美しい兄がいつも側にいるために、他の男が見劣りして見えてしまうせいかもしれない。海の妖精達とひっつけようと、海側からの要請もあったが、それもうまくいかなかった。
「みんな同じ顔に見えてしまうのよねえ」
「お兄様と、その他って感じなのよね」
「そうね。私達、普通の恋愛は無理かも」
3人もそう思っていた。
「さては、妹、といいながら、3人に手をつけてるんじゃないか?」
海側はそう勘ぐっていたし、噂にもなっていた。
「失礼な。僕は妹に手は出していない」
実際ラクアは妹達に手はつけてはいない。
「だが、感情操作はしているだろ。他の男にとられるのが嫌なんだ」
こんなことをラクアに言ったのはアシュランだった。
「感情操作? そんなことを考えたこともなかったが、確かにしているかもしれない。だが、それの何がいけない?
妹達は僕の孤独を癒やすために産まれてきたんだから、ずっと僕の側にいなきゃいけない」
ついにラクアが認めた。
「それを傲慢というんだぞ」
「傲慢で結構だね。彼女達の役割は僕を支えることだ。男と恋に落ちることじゃない。僕から離れるなんて許さない」
これがラクアの本音であったので、妹達が男とうまくいくはずはなかった。ラクアのこういう感情も、ラクア自身がガーベラと仲良くなり、長い間を共に過ごすうちに薄れてはいっている。そしてさらに自分の娘達が産まれて、さらに妹達に対する独占欲は薄れていたが、妹達は相変わらず「兄とその他」くらいの認識しか男に対してもてなかった。
ところが、その感情が覆る日がやってきた。
「ねえねえ、ガーベラ様が男になったらしいわよ」
「見に行ってみましょう!」
そんな話を聞いた水の妖精達は、興味にかられてガーベラを見に行った。そこで激しい衝撃を受けてしまった。3人は初めてラクア以上に綺麗だと思う男に会ってしまった。今まで他の神々を見てもなんとも思わなかったというのに、愛欲の神の力は強烈なのである。
「やあ、アビー、ヴェレ、ヘッサ、君たちにも会えてうれしいよ」
男になったガーベラはにこやかに3人に声をかけた。
「ガーベラ様!!」
「なんてかわいいんだろう。我慢できない。口づけさせておくれ」
「ああ……」
3人は一瞬でガーベラの虜になってしまったのだった。
「ガーベラは男になっても凄まじいな。妹達を一瞬で虜にしてしまうなんて……」
ラクアは男になったガーベラに不快感はもたなかった。
「妹に手をだしてもガーベラに怒らないんだ。意外だな」
ラーズはそうラクアに言った。
「自分でも驚いているが、考えてみれば一時のことだし、むしろいいことかもしれない」
「何がいいことなんだ?」
「妹達は一時でも楽しめるし、あのガーベラを好きになったら、その後他の男はますます大根くらいにしか見えないだろう?」
ラクアはにやりとしていた。
「こっわ」
こうしてラクアの妹達は、一時男になったガーベラに熱烈に恋をしたのだった。ガーベラは女に戻ってしまったが、恋の炎は急激に鎮火することはなく、他の女性同様、妹達の心の中でもくすぶっていた。妹達は海側に出かけていき、帰って来た時には大きな水晶玉を持っていた。自分の想い人を写すことができる水晶玉で、3人は水晶玉に男ガーベラを写してはうっとりしている。
女になったガーベラはどうしても男の自分の姿がみたくて、その水晶玉を見せてもらった。だが自分でみても「へー」といった感じである。
「この男がそんなに魅力的だったんだ?」
「はい!」
3人は口をそろえて答えた。
「そっか。ラクアはよく怒らなかったね」
ガーベラは小声で3人に聞いた。
「実は怒ってたんじゃない?」
「怒ってなかったですわ。むしろほのぼのしてました」
「ほんとう? 信じられない」
「それよりもガーベラ様、お願いがあるんです」
3人はせつない表情を向けていた。
「なに?」
「実は海側には一時性転換することができる薬があるんですって」
「でも一度使ったら100年は同じ者に使えないらしくて」
「100年後くらいにその薬を飲んで男になってください」
「え?」
3人は泣きそうな表情でガーベラをみていたので、ガーベラは、「100年後くらいなら、まあいいかな」という気になった。
「やった。ありがとうございます」
「楽しみだわー」
3人はうれしそうだ。
「男になったらいろんな女性をくどきそうだけど、それでもいいんだ?」
「私達にかまってくださるならいいです」
「一人だけのものになるのはやです」
「そっか、じゃあその時にはまたハーレムを作ろうかな」
「きゃはー」
3人ははしゃいでいたので、ついガーベラも悪乗りしていた。
「何の話をしてるの?」
ラクアが近づいてきた。
「3人とも生き生きしてるなあと思って」
「恋の力だね。これを機に異性に興味を持つのもいいね」
ラクアはにこやかにそう言っていた。思いもかけない言葉にガーベラはぎょっとしている。
3人が神殿から去った後、ガーベラはラクアに、「さっきのこと本気じゃないんでしょ?」と聞いてみた。
「うん、本気じゃないよ」
ラクアは笑顔で答えた。
「ラクアったら」
「だって、大根に恋なんてしようがないだろ? ははは」
ラクアは笑ってそう言った。
「大根?」
ガーベラにはその意味はわからなかったのだった。
遙か昔、神々が最初に産まれた頃、ラクアは産まれた。当時まだ神は少なく、人間も存在していない。神々も自分がなぜこの地に産まれたのか、分からなかった頃である。妖精もいなかったために産まれた神々は一つの神殿に住んでいた。当時神々の心にあったのは「孤独」という感情であり、まずは、自分達の仲間を増やしたいと思っていた。ラクアもそうだったが、どうすれば仲間が増えるのか。ラクアは自分が産まれた泉で他の誰かが産まれるのを待ったが、しばらくしてもだれも産まれず、孤独にさいなまれたラクアは初めて涙を流し、その涙が泉に落ちたとき、泉の水がぼこぼこと泡立ち、そこから3人の妖精が誕生した。3人はラクアの孤独を癒やし、ラクアは「妹達」と呼んで3人を可愛がった。
この3人の妹達、今まで好きな男がいなかったわけではないが、いずれも長続きしていない。「ラクアが可愛がりすぎているせいじゃないか?」と神の国では密かに言われていたが、強く美しい兄がいつも側にいるために、他の男が見劣りして見えてしまうせいかもしれない。海の妖精達とひっつけようと、海側からの要請もあったが、それもうまくいかなかった。
「みんな同じ顔に見えてしまうのよねえ」
「お兄様と、その他って感じなのよね」
「そうね。私達、普通の恋愛は無理かも」
3人もそう思っていた。
「さては、妹、といいながら、3人に手をつけてるんじゃないか?」
海側はそう勘ぐっていたし、噂にもなっていた。
「失礼な。僕は妹に手は出していない」
実際ラクアは妹達に手はつけてはいない。
「だが、感情操作はしているだろ。他の男にとられるのが嫌なんだ」
こんなことをラクアに言ったのはアシュランだった。
「感情操作? そんなことを考えたこともなかったが、確かにしているかもしれない。だが、それの何がいけない?
妹達は僕の孤独を癒やすために産まれてきたんだから、ずっと僕の側にいなきゃいけない」
ついにラクアが認めた。
「それを傲慢というんだぞ」
「傲慢で結構だね。彼女達の役割は僕を支えることだ。男と恋に落ちることじゃない。僕から離れるなんて許さない」
これがラクアの本音であったので、妹達が男とうまくいくはずはなかった。ラクアのこういう感情も、ラクア自身がガーベラと仲良くなり、長い間を共に過ごすうちに薄れてはいっている。そしてさらに自分の娘達が産まれて、さらに妹達に対する独占欲は薄れていたが、妹達は相変わらず「兄とその他」くらいの認識しか男に対してもてなかった。
ところが、その感情が覆る日がやってきた。
「ねえねえ、ガーベラ様が男になったらしいわよ」
「見に行ってみましょう!」
そんな話を聞いた水の妖精達は、興味にかられてガーベラを見に行った。そこで激しい衝撃を受けてしまった。3人は初めてラクア以上に綺麗だと思う男に会ってしまった。今まで他の神々を見てもなんとも思わなかったというのに、愛欲の神の力は強烈なのである。
「やあ、アビー、ヴェレ、ヘッサ、君たちにも会えてうれしいよ」
男になったガーベラはにこやかに3人に声をかけた。
「ガーベラ様!!」
「なんてかわいいんだろう。我慢できない。口づけさせておくれ」
「ああ……」
3人は一瞬でガーベラの虜になってしまったのだった。
「ガーベラは男になっても凄まじいな。妹達を一瞬で虜にしてしまうなんて……」
ラクアは男になったガーベラに不快感はもたなかった。
「妹に手をだしてもガーベラに怒らないんだ。意外だな」
ラーズはそうラクアに言った。
「自分でも驚いているが、考えてみれば一時のことだし、むしろいいことかもしれない」
「何がいいことなんだ?」
「妹達は一時でも楽しめるし、あのガーベラを好きになったら、その後他の男はますます大根くらいにしか見えないだろう?」
ラクアはにやりとしていた。
「こっわ」
こうしてラクアの妹達は、一時男になったガーベラに熱烈に恋をしたのだった。ガーベラは女に戻ってしまったが、恋の炎は急激に鎮火することはなく、他の女性同様、妹達の心の中でもくすぶっていた。妹達は海側に出かけていき、帰って来た時には大きな水晶玉を持っていた。自分の想い人を写すことができる水晶玉で、3人は水晶玉に男ガーベラを写してはうっとりしている。
女になったガーベラはどうしても男の自分の姿がみたくて、その水晶玉を見せてもらった。だが自分でみても「へー」といった感じである。
「この男がそんなに魅力的だったんだ?」
「はい!」
3人は口をそろえて答えた。
「そっか。ラクアはよく怒らなかったね」
ガーベラは小声で3人に聞いた。
「実は怒ってたんじゃない?」
「怒ってなかったですわ。むしろほのぼのしてました」
「ほんとう? 信じられない」
「それよりもガーベラ様、お願いがあるんです」
3人はせつない表情を向けていた。
「なに?」
「実は海側には一時性転換することができる薬があるんですって」
「でも一度使ったら100年は同じ者に使えないらしくて」
「100年後くらいにその薬を飲んで男になってください」
「え?」
3人は泣きそうな表情でガーベラをみていたので、ガーベラは、「100年後くらいなら、まあいいかな」という気になった。
「やった。ありがとうございます」
「楽しみだわー」
3人はうれしそうだ。
「男になったらいろんな女性をくどきそうだけど、それでもいいんだ?」
「私達にかまってくださるならいいです」
「一人だけのものになるのはやです」
「そっか、じゃあその時にはまたハーレムを作ろうかな」
「きゃはー」
3人ははしゃいでいたので、ついガーベラも悪乗りしていた。
「何の話をしてるの?」
ラクアが近づいてきた。
「3人とも生き生きしてるなあと思って」
「恋の力だね。これを機に異性に興味を持つのもいいね」
ラクアはにこやかにそう言っていた。思いもかけない言葉にガーベラはぎょっとしている。
3人が神殿から去った後、ガーベラはラクアに、「さっきのこと本気じゃないんでしょ?」と聞いてみた。
「うん、本気じゃないよ」
ラクアは笑顔で答えた。
「ラクアったら」
「だって、大根に恋なんてしようがないだろ? ははは」
ラクアは笑ってそう言った。
「大根?」
ガーベラにはその意味はわからなかったのだった。
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