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新作小話
城の休憩室にて(11部50話以降)
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「あーこの部屋ぬくいですね」
「ああ」
ここは王が休憩に使っている部屋である。昼下がり、暇になったのでラクシュミは休憩室でくつろぎ、ミカエルがやってきた。雪が降るほどではないがまだまだ外は寒い。ラクシュミの向かい側のソファには、ブタラのモモがのっかっていた。
「モモちゃんを相手にお酒を飲んでるんですか?」
ミカエルは笑っている。
「ブタラも寒いのは苦手なんだろう」
「なんかぬくそうなの着てますね」
モモは今毛糸の服を着せてもらっていた。だれが編んだのだろうか。服屋で頼んだのかもしれない。ミカエルがモモの横に座ると、モモはミカエルにぴったりひっついてきたので、ミカエルはモモの頭をなでていた。モモは気持ち良さそうに目を細めている。
「モモちゃんは蛇以上の待遇じゃないですか」
「ゆりみたいな顔で来るものだからむげにできないんだ」
「ふふっ確かに。モモちゃんにも彼氏をあげたいけどなあ。子供いっぱい産んじゃいそうだからだめかな」
「だめだ。ブタラの城になってしまうだろ」
「ですよね」
モモが赤ちゃんを産んでも感情的に食べることはできないだろう。となれば、ここで飼うことになってしまう。一匹ならともかく、5匹10匹ともなると城で飼うわけにもいかない。
「ところで王妃のことなんですが……王妃はすっかりハロルド様達まで儀式要員に入れてしまってますが、いいんでしょうかねえ……」
「いいもなにも、私が何を言ったところでもはや無駄のような気がする」
ラクシュミはあきらめモードである。ゆりがハロルドとラーズを相手に儀式をやろうとしたと皆信じていたのだった。
「ゆりのことだから、あと10年もしないうちに、数人の神様と儀式をやってるんじゃないか?」
「女蛇さん、そっちの方が喜んじゃうじゃないですか。我々の立場はどうなるんです」
ミカエルはラクシュミの言葉を冗談にとらなかった。本当にそうなりそうで怖い。
「まあ、がんばれ」
「ひどい。王は儀式をしないからいいですけどねえ。我々はあれ以来最後までしてないんですからね」
「そうなのか。でも楽しんでるんだからいいじゃないか」
「いいですけどねえ……」
「神が数人で儀式……考えただけで怖いが、ラーズにハロルド、次はだれがきそうなんだ?」
「さあ、イシュタールの希望はサラディン様ですけどね。ジンラ様まで来ちゃったらどうします?」
「聖地でもそんなに神が集まらないんじゃないか?」
ラクシュミは笑いながら言っていた。
「そりゃそうですよ」
「あんまりやりすぎるとアシュランから何か言われるんじゃないか? ほどほどでやめとかないと。その前にお前達がもっとがんばらないから神様まで出てきてるんだろ。マンネリ気味ならちょっとメンバーを変えてみるか」
「いえいえ、いつも新鮮ですよ」
ミカエルはあわてている。
「本当かあ? ゆりの方はお前達に飽きてるんじゃないのか?」
「そんなことないですよ」
「赤い月が終わったら、みんなにがんばるように言っといてくれ。ゆりが変な気を起こさないように」
「はあ」
コンコンと扉をノックする音が聞こえて、扉があいた。やってきたのはゆりだった。
「この部屋あったかい。あ、モモちゃんまでいるの?」
ゆりはラクシュミの横に座った。
「ゆり、ミカエル達に飽きたんじゃないか?」
ラクシュミはゆりに直接聞いていた。
「え? 飽きてないよ」
「ほんとか? 儀式がマンネリだから神様とまでしたがってるんだろ」
「違うわよ。みんなとは新鮮よ。最近は変化したらみんなの性格が変わってきてるし。ミカエルの蛇様は子作りしか興味がないから私に何かする気はないっていうのよ。でも冷たいミカエルもちょっとぐっとくるっていうか、冷たいんだけど、私がすがるとしょうがないなあ、みたいに優しくしてくれたりして、そういうところがいいの。逆にフリットの蛇様は危ないくらいにぐいぐい来るんだけど、それはまあそれで新鮮みたいな」
ゆりは恥ずかしげに言っていた。
「そうか、飽きてないんならいいが……」
「いつも新鮮気分よ」
「それならよかった。神様はいいから男達の相手をしてやれ」
「王様の相手もしたい」
「赤い月にな」
「来月ね。楽しみだなあ……」
ゆりの顔がうっとりしてきた。ゆりは妊娠中なので、本当ならば赤い月は関係ないのだが、それでも相手をするのはラクシュミの愛情なのだろう。
「王妃が元気な内は、この国は安泰ですね」
ミカエルは微笑んで言っていた。
「あまり元気すぎても困るんだが、頼むからほどほどにな」
「うん」
ゆりは元気よくうなずいていたのだった。
「ああ」
ここは王が休憩に使っている部屋である。昼下がり、暇になったのでラクシュミは休憩室でくつろぎ、ミカエルがやってきた。雪が降るほどではないがまだまだ外は寒い。ラクシュミの向かい側のソファには、ブタラのモモがのっかっていた。
「モモちゃんを相手にお酒を飲んでるんですか?」
ミカエルは笑っている。
「ブタラも寒いのは苦手なんだろう」
「なんかぬくそうなの着てますね」
モモは今毛糸の服を着せてもらっていた。だれが編んだのだろうか。服屋で頼んだのかもしれない。ミカエルがモモの横に座ると、モモはミカエルにぴったりひっついてきたので、ミカエルはモモの頭をなでていた。モモは気持ち良さそうに目を細めている。
「モモちゃんは蛇以上の待遇じゃないですか」
「ゆりみたいな顔で来るものだからむげにできないんだ」
「ふふっ確かに。モモちゃんにも彼氏をあげたいけどなあ。子供いっぱい産んじゃいそうだからだめかな」
「だめだ。ブタラの城になってしまうだろ」
「ですよね」
モモが赤ちゃんを産んでも感情的に食べることはできないだろう。となれば、ここで飼うことになってしまう。一匹ならともかく、5匹10匹ともなると城で飼うわけにもいかない。
「ところで王妃のことなんですが……王妃はすっかりハロルド様達まで儀式要員に入れてしまってますが、いいんでしょうかねえ……」
「いいもなにも、私が何を言ったところでもはや無駄のような気がする」
ラクシュミはあきらめモードである。ゆりがハロルドとラーズを相手に儀式をやろうとしたと皆信じていたのだった。
「ゆりのことだから、あと10年もしないうちに、数人の神様と儀式をやってるんじゃないか?」
「女蛇さん、そっちの方が喜んじゃうじゃないですか。我々の立場はどうなるんです」
ミカエルはラクシュミの言葉を冗談にとらなかった。本当にそうなりそうで怖い。
「まあ、がんばれ」
「ひどい。王は儀式をしないからいいですけどねえ。我々はあれ以来最後までしてないんですからね」
「そうなのか。でも楽しんでるんだからいいじゃないか」
「いいですけどねえ……」
「神が数人で儀式……考えただけで怖いが、ラーズにハロルド、次はだれがきそうなんだ?」
「さあ、イシュタールの希望はサラディン様ですけどね。ジンラ様まで来ちゃったらどうします?」
「聖地でもそんなに神が集まらないんじゃないか?」
ラクシュミは笑いながら言っていた。
「そりゃそうですよ」
「あんまりやりすぎるとアシュランから何か言われるんじゃないか? ほどほどでやめとかないと。その前にお前達がもっとがんばらないから神様まで出てきてるんだろ。マンネリ気味ならちょっとメンバーを変えてみるか」
「いえいえ、いつも新鮮ですよ」
ミカエルはあわてている。
「本当かあ? ゆりの方はお前達に飽きてるんじゃないのか?」
「そんなことないですよ」
「赤い月が終わったら、みんなにがんばるように言っといてくれ。ゆりが変な気を起こさないように」
「はあ」
コンコンと扉をノックする音が聞こえて、扉があいた。やってきたのはゆりだった。
「この部屋あったかい。あ、モモちゃんまでいるの?」
ゆりはラクシュミの横に座った。
「ゆり、ミカエル達に飽きたんじゃないか?」
ラクシュミはゆりに直接聞いていた。
「え? 飽きてないよ」
「ほんとか? 儀式がマンネリだから神様とまでしたがってるんだろ」
「違うわよ。みんなとは新鮮よ。最近は変化したらみんなの性格が変わってきてるし。ミカエルの蛇様は子作りしか興味がないから私に何かする気はないっていうのよ。でも冷たいミカエルもちょっとぐっとくるっていうか、冷たいんだけど、私がすがるとしょうがないなあ、みたいに優しくしてくれたりして、そういうところがいいの。逆にフリットの蛇様は危ないくらいにぐいぐい来るんだけど、それはまあそれで新鮮みたいな」
ゆりは恥ずかしげに言っていた。
「そうか、飽きてないんならいいが……」
「いつも新鮮気分よ」
「それならよかった。神様はいいから男達の相手をしてやれ」
「王様の相手もしたい」
「赤い月にな」
「来月ね。楽しみだなあ……」
ゆりの顔がうっとりしてきた。ゆりは妊娠中なので、本当ならば赤い月は関係ないのだが、それでも相手をするのはラクシュミの愛情なのだろう。
「王妃が元気な内は、この国は安泰ですね」
ミカエルは微笑んで言っていた。
「あまり元気すぎても困るんだが、頼むからほどほどにな」
「うん」
ゆりは元気よくうなずいていたのだった。
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