17 / 19
溺れる者は藁をも掴む
17 旅路
しおりを挟む
王都の近くのジュプスン領まで、凄く大所帯だった。
無理もない。
世間に堂々とユアン様の嫁行列を見せつけなくてはいけない。
途中の宿屋では、大盤振る舞いで、チップが飛び交った。
馬車は正直、速度は出ない。
それでも、『のんびりしすぎだろうっ!』
ってくらいにゆっくり進んだ。
公爵本人も馬に乗って沿道に手を振る。
沿道の人が見送る中を、行列は賑やかに進む。
ジュプスン公爵家の旗と、ベンデン公爵家の旗を掲げた者が先頭で。
飾り付けられた馬も、馬車も豪華だ。
もちろん、他の貴族や王族に隙を見せない為だ。
到着したジュプスン領の城は至れり尽くせりのもてなしで、行かせたくない。というのが見え見えだった。
結局、王都からジュプスン領を出立するまでに七日もかかった。
予定オーバーだ。
正直、ウェイドは、やれやれと溜息をついた。
別れを惜しむジュプスン公爵様と、その召使い達に手を振って、ようやく嫁行列は出発した。
ジュプスン城で、荷物は半分に減った。
どうせ"受け渡し"なのだ。
この行列は、ベンデン領でユアン様を受け渡したらとんぼ返りする。
だからジュプスン様の兵の他は王弟殿下の兵ばかりだ。
純粋なベンデンの兵はウェイドのみで、そのまま領内に待機した兵と合流するつもりだ。
ふと気がつくと、王弟殿下の兵は年寄りばかりだ。
年寄りと言っても筋肉は締まり、何の不足も無い。
経験豊富なしたたかな老兵という頼もしさがある。
今まで、初めての挨拶はしたけれど、顔を見る事も無かったユアン様。
これからの旅で野営も含めて接触が増える。
まぁ、ゆっくりとその本性を見極めるつもりだ。
別れの挨拶の時。
自室に呼ばれた。
ジュプスン公爵様がウェイドに頭を下げた。
公爵様がしていいはずも無く、ウェイドはびっくりしたが、そこにいたのは高位貴族では無く子供を案じる父親だった。
「ユアンは大柄な者を怖がる。
すまんが気遣ってくれ。」
怖がる?
……だから俺が立ち上がった時、後退りしたのか。
そして兵が年寄りばかりなのはその為か。
「人見知りでほとんど屋敷から出なかった。
馬車も乗り慣れていない。
進みがゆっくりでも許してやってくれ。」
んん?夜な夜な街に出てると噂されてたがな。
~~まあ、見極めるつもりだ。
「御安心下さい。御守り致します。」
ウェイドは、きっかり騎士の礼をとって誓った。
領地から離れて行く。
大きな街道を進むと、だんだん路は舗装されていないガタガタ路になっていく。
道もところどころ狭くなって、両脇の森がぐっと辺りに立ち塞がるように暗い。
賊や魔獣の気配が湧き上がってくる。
そして、たまに護衛兵と戦闘がある。
宿場町が無い場合には野営となる。
それについてもユアン様は何の文句も言わなかった。
野営を立ち上げると、パーシヴァルどのが、慌しく身体を拭く水や夕食を用意する。
「大丈夫なの?水は足りてる?」
伺うと、馬車の中から小さな声がする。
「水が足りないのに身体を拭くなんてしなくていいからね。僕はこうやって馬車の中でごろごろしてるだけなんだから。
水も食料も働いてる人を優先してね。」
デューク。
おまえの嫁は、性格もいいみたいだ。
無理もない。
世間に堂々とユアン様の嫁行列を見せつけなくてはいけない。
途中の宿屋では、大盤振る舞いで、チップが飛び交った。
馬車は正直、速度は出ない。
それでも、『のんびりしすぎだろうっ!』
ってくらいにゆっくり進んだ。
公爵本人も馬に乗って沿道に手を振る。
沿道の人が見送る中を、行列は賑やかに進む。
ジュプスン公爵家の旗と、ベンデン公爵家の旗を掲げた者が先頭で。
飾り付けられた馬も、馬車も豪華だ。
もちろん、他の貴族や王族に隙を見せない為だ。
到着したジュプスン領の城は至れり尽くせりのもてなしで、行かせたくない。というのが見え見えだった。
結局、王都からジュプスン領を出立するまでに七日もかかった。
予定オーバーだ。
正直、ウェイドは、やれやれと溜息をついた。
別れを惜しむジュプスン公爵様と、その召使い達に手を振って、ようやく嫁行列は出発した。
ジュプスン城で、荷物は半分に減った。
どうせ"受け渡し"なのだ。
この行列は、ベンデン領でユアン様を受け渡したらとんぼ返りする。
だからジュプスン様の兵の他は王弟殿下の兵ばかりだ。
純粋なベンデンの兵はウェイドのみで、そのまま領内に待機した兵と合流するつもりだ。
ふと気がつくと、王弟殿下の兵は年寄りばかりだ。
年寄りと言っても筋肉は締まり、何の不足も無い。
経験豊富なしたたかな老兵という頼もしさがある。
今まで、初めての挨拶はしたけれど、顔を見る事も無かったユアン様。
これからの旅で野営も含めて接触が増える。
まぁ、ゆっくりとその本性を見極めるつもりだ。
別れの挨拶の時。
自室に呼ばれた。
ジュプスン公爵様がウェイドに頭を下げた。
公爵様がしていいはずも無く、ウェイドはびっくりしたが、そこにいたのは高位貴族では無く子供を案じる父親だった。
「ユアンは大柄な者を怖がる。
すまんが気遣ってくれ。」
怖がる?
……だから俺が立ち上がった時、後退りしたのか。
そして兵が年寄りばかりなのはその為か。
「人見知りでほとんど屋敷から出なかった。
馬車も乗り慣れていない。
進みがゆっくりでも許してやってくれ。」
んん?夜な夜な街に出てると噂されてたがな。
~~まあ、見極めるつもりだ。
「御安心下さい。御守り致します。」
ウェイドは、きっかり騎士の礼をとって誓った。
領地から離れて行く。
大きな街道を進むと、だんだん路は舗装されていないガタガタ路になっていく。
道もところどころ狭くなって、両脇の森がぐっと辺りに立ち塞がるように暗い。
賊や魔獣の気配が湧き上がってくる。
そして、たまに護衛兵と戦闘がある。
宿場町が無い場合には野営となる。
それについてもユアン様は何の文句も言わなかった。
野営を立ち上げると、パーシヴァルどのが、慌しく身体を拭く水や夕食を用意する。
「大丈夫なの?水は足りてる?」
伺うと、馬車の中から小さな声がする。
「水が足りないのに身体を拭くなんてしなくていいからね。僕はこうやって馬車の中でごろごろしてるだけなんだから。
水も食料も働いてる人を優先してね。」
デューク。
おまえの嫁は、性格もいいみたいだ。
0
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説
異世界転移? いいえ、純正品の神子ですが、塩対応はどうかと思います。
猫宮乾
BL
社畜の僕は、時空の歪みの向こうに連れていかれた。そこは星庭の世界というらしい。てっきり異世界転移したのだと思っていたら、周囲が言う。「いえいえ、元々この世界からあちらに逃して秘匿していただけで、貴方は本物の神子様です!」※異世界ファンタジーBLです。
姉が結婚式から逃げ出したので、身代わりにヤクザの嫁になりました
拓海のり
BL
芳原暖斗(はると)は学校の文化祭の都合で姉の結婚式に遅れた。会場に行ってみると姉も両親もいなくて相手の男が身代わりになれと言う。とても断れる雰囲気ではなくて結婚式を挙げた暖斗だったがそのまま男の家に引き摺られて──。
昔書いたお話です。殆んど直していません。やくざ、カップル続々がダメな方はブラウザバックお願いします。やおいファンタジーなので細かい事はお許しください。よろしくお願いします。
タイトルを変えてみました。
ド天然アルファの執着はちょっとおかしい
のは
BL
一嶌はそれまで、オメガに興味が持てなかった。彼らには托卵の習慣があり、いつでも男を探しているからだ。だが澄也と名乗るオメガに出会い一嶌は恋に落ちた。その瞬間から一嶌の暴走が始まる。
【アルファ→なんかエリート。ベータ→一般人。オメガ→男女問わず子供産む(この世界では産卵)くらいのゆるいオメガバースなので優しい気持ちで読んでください】
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる