好きもの令息と不能公爵の白い結婚

たまとら

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不能公爵

9 パパの嘆き

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デュークは王弟の次男だ。

公爵家は国内に三つある。
建国と同時に生まれた。
二つは建国に協力してくれた大勢力を臣従させるために爵位を与えたものだ。
残りひとつは王族の分家の為だ。

王弟は侯爵として、成人した次男に公爵を渡した。

次男のデュークは見た目が良い。
しかも文武両道で、さらに性格も長男を盛り上げるという、なんとも有り難い子供だった。
もう、王弟は目の中に入れても痛くないだろうって感じに可愛がっていた。

爵位を授けるにあたって、そりゃ王都に近くて、ギリ日帰りも出来る領地がいいなぁ♡
と、お花畑のように思っていたら、
成人後の御前会議に出席してぶちあげられた。

「わたしは王国を守らなくてはいけません。辺境伯と手を取り合って、夷狄に対する為に国境沿いを頂きたい!」

なんですとー!
聞いてないよぉ!
パパ、聞いてないよぉ!

叫んでも、王様が許可してしたらそりゃ、覆せない。
泣く泣く馬車で一か月はかかる領地を与える事にした。



~~おかしい。
可愛いデュークがおかしい。

王弟は悶々と悩んだ。

あんなに素直でにこにこしていたデュークが。
誕生日のパーティーでは顔が死んでいた。
綺麗な令息にも表情は固く、にこりともしなかった。
まるで氷の壁になったようだ。

それから、どれだけお膳立てしても。
どれだけ送り込んでも。
誰とも甘くなってかない。
成人前、素直に受けてた閨教育も、実地直前でバッサリ切った。

え~実地だぞ、実地。
教育と銘打ってやり放題なんだぞ。
うっふんあっはんのパラダイスだぞ。


以来、浮いた噂どころか。
領地を堅固に防護させて、自分の寝室に入り込む者を徹底的に排除している。

夜会では、そりゃイケメンだからいろんな子息にコナ掛けられるのを、舌打ちして拒絶している。
ベッドに入り込んだ者も叩き出しているらしい。


そしてそれからもう十年以上経って…
ついたあだ名が"不能公爵"だ。

なんで?

自慢の可愛いデュークが、よりにもよって"不能"なんて…



いつもの恒例のデビュタント前の子息を集めた夜会の為に、デュークを領地から呼び出した。
ああ、これ何回め?
正直、今度こそいいコを見つけてくれ!
という下心のあるお見合いを兼ねた夜会だ。
いつのまにか半分の年の子になっちゃってたけどね。


その夜、デュークのベッドの中に果敢に忍んだ子息がいたらしい。
よし。オッケー!
やっちまえばこっちのもんだ!
と、思ったけれど。


「ん…寒くってぇ…」

と、悩ましくくねるコに、

「寒いなら熱湯風呂だな。」

と、どっかのお笑いの様なコトをマジ顔で宣言して。
ぐつぐつ煮える風呂に突き出そうとしてギャン泣きさせた顛末を、お付きのウェイドから聞いた。
くらりと目眩がした。



デュークは見目が良い。
しかも公爵だ。
超優良物件なのに…。

デュークはもうすぐ30になる。
30になっちまうんだよぉ。
そしてパパだって一緒に年取ってるんだよぉ。

「なんであんなに可愛いかったデュークに嫁がいないんだっ!
なんでセックスしないんだよっ!
私は可愛い孫が欲しい。
可愛い孫を抱っこしたいんだよぉ‼︎」


思わず魂からの声が出た。



その言葉を聞いてウェイドは、心の中でダラダラと汗を流していた。
そして心のなで五体投地からの土下座をかましていた。

さーせん。
さーせん。

俺のせいです。

ウェイドは心の中で泣いていた。
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