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好きもの令息
5 攫われる 上
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ユアンは五歳の時、攫われた。
ユアンはリアル天使だった。
ハニーブロンドの巻き毛は、後光のように艶々している。
光の加減で紫に見える薔薇色の瞳は、ちょっと垂れ気味で。
幼児の時から、そのずば抜けた可愛いらしさは、家族からも使用人からもリアル天使として溺愛されていた。
よちよち歩くさまは、『く~っ‼︎』と見る人をジタバタさせる程に可愛い。
ぷっくりしたほっぺは桃のようだ。
ぷるんとしたちょっとあひる口な唇は、噛みつきたいほどに可愛い。
その口元にある黒子は、ちょっとゾクゾクとしたイケナイ感情を揺さぶってくる。
じっとこっちを曇りなき眼で見つめる瞳に吸い込まれそうで。
あどけない顔なのに…何故か、
いや、俺、ロリじゃ無いから。
頭の中でそんな呪文が浮かんでくる。
~~つまり、何故かどことなく色っぽいのだ。
ユアンが純粋無垢だからこそのギャップ。
愕然と自分を恥じさせる、その色香。
その危うさを家族が自覚したのは、ユアンが元気に外にも走り回る様になり、おかしな手紙がきだしてからだった。
『天使よ。俺はここにいる。』
そんなメッセージと共に、小さな包みが届く様になった。
中には人形の手や頭が切り離されて入っていて、凄く気味が悪い。
『天使よ。もうすぐ会える。』
どんどん加速するその手紙に家族は恐怖した。
家は公爵家。
やんごとないユアンは、護衛付きでしか外に出れなくなっていた。
決して媚びてる訳じゃないのに、小首を傾げると
『ぐっ‼︎』と詰まる様な色香が溢れる。
追いかけっこで頬が上気すると、目もうるうるする。
自覚のない色香に家族は戸惑った。
この天使はちょっとヤバい。
家族や使用人は、まだ幼いユアンにやたらと舞い込む釣書に閉口した。
しっかりガードしないと、変なヤツを惹きつける。
それでもユアンは天真爛漫で、兄様と甘い物が大好きで。
庭で走り回って遊んでいた。
その日。
『もういいかぁい?』
サナラが大木の幹に顔を伏せたまま問いかけた。
『まぁ~だだよぉ~』
幼いユアンは大きな声で答え。
髪を肩で揺らしながら、庭の茂みのあいだを走り出した。
兄様もパーシヴァルもローダも、方々に走り去っていく。
親戚の子供達と庭でピクニックをしてから、隠れんぼを始めた。
公爵家の庭は広い。
大人達はにこにことガーデンテーブルでお茶をしている。
いつも走り回る芝生から、あまり行かない立木の林に走り込んで、ユアンはこっそりと向こうを伺った。
この木の影は見つからないぞ。
愉快でお腹の底から笑いが起こる。
だめ、笑ったら見つかっちゃう。
声を殺す為に手でお口に蓋をして、木の影にしゃがみ込んだ。
『ローダ!みぃつけたあ‼︎』
あ、ローダ見つかった。
ふふ、きっと僕が一番だ。
上手く隠れちゃうよ。
ペキッ。
小枝を踏む乾いた音がした。
見つかった⁉︎
笑いながら降り向こうとした時。
口元にツンとする何かが押し当てられた。
ユアンは暴れる前に気が遠くなって行った。
ユアンはリアル天使だった。
ハニーブロンドの巻き毛は、後光のように艶々している。
光の加減で紫に見える薔薇色の瞳は、ちょっと垂れ気味で。
幼児の時から、そのずば抜けた可愛いらしさは、家族からも使用人からもリアル天使として溺愛されていた。
よちよち歩くさまは、『く~っ‼︎』と見る人をジタバタさせる程に可愛い。
ぷっくりしたほっぺは桃のようだ。
ぷるんとしたちょっとあひる口な唇は、噛みつきたいほどに可愛い。
その口元にある黒子は、ちょっとゾクゾクとしたイケナイ感情を揺さぶってくる。
じっとこっちを曇りなき眼で見つめる瞳に吸い込まれそうで。
あどけない顔なのに…何故か、
いや、俺、ロリじゃ無いから。
頭の中でそんな呪文が浮かんでくる。
~~つまり、何故かどことなく色っぽいのだ。
ユアンが純粋無垢だからこそのギャップ。
愕然と自分を恥じさせる、その色香。
その危うさを家族が自覚したのは、ユアンが元気に外にも走り回る様になり、おかしな手紙がきだしてからだった。
『天使よ。俺はここにいる。』
そんなメッセージと共に、小さな包みが届く様になった。
中には人形の手や頭が切り離されて入っていて、凄く気味が悪い。
『天使よ。もうすぐ会える。』
どんどん加速するその手紙に家族は恐怖した。
家は公爵家。
やんごとないユアンは、護衛付きでしか外に出れなくなっていた。
決して媚びてる訳じゃないのに、小首を傾げると
『ぐっ‼︎』と詰まる様な色香が溢れる。
追いかけっこで頬が上気すると、目もうるうるする。
自覚のない色香に家族は戸惑った。
この天使はちょっとヤバい。
家族や使用人は、まだ幼いユアンにやたらと舞い込む釣書に閉口した。
しっかりガードしないと、変なヤツを惹きつける。
それでもユアンは天真爛漫で、兄様と甘い物が大好きで。
庭で走り回って遊んでいた。
その日。
『もういいかぁい?』
サナラが大木の幹に顔を伏せたまま問いかけた。
『まぁ~だだよぉ~』
幼いユアンは大きな声で答え。
髪を肩で揺らしながら、庭の茂みのあいだを走り出した。
兄様もパーシヴァルもローダも、方々に走り去っていく。
親戚の子供達と庭でピクニックをしてから、隠れんぼを始めた。
公爵家の庭は広い。
大人達はにこにことガーデンテーブルでお茶をしている。
いつも走り回る芝生から、あまり行かない立木の林に走り込んで、ユアンはこっそりと向こうを伺った。
この木の影は見つからないぞ。
愉快でお腹の底から笑いが起こる。
だめ、笑ったら見つかっちゃう。
声を殺す為に手でお口に蓋をして、木の影にしゃがみ込んだ。
『ローダ!みぃつけたあ‼︎』
あ、ローダ見つかった。
ふふ、きっと僕が一番だ。
上手く隠れちゃうよ。
ペキッ。
小枝を踏む乾いた音がした。
見つかった⁉︎
笑いながら降り向こうとした時。
口元にツンとする何かが押し当てられた。
ユアンは暴れる前に気が遠くなって行った。
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