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花を爪紅に塗った足先は美しい。
一本づつ口に含むと、柔らかな花の香りがする。
時に歯を立てながら、ゆっくりとねぶる。
相手の呼吸が早くなるのを口の端で笑った。
ふくらはぎの裏を舐め上げる。
薄い肉だ。
筋肉も無い。
ただこの寝屋に送り込む為に世話をされ、香油で揉み上げた肌は、とても心地よい。
そのままももの裏を舐めていく。
自分の唾液が銀の筋となって、体に跡をつけていく。

胸の飾りは、見場良く見せる為だろう。
爪紅のように薄桃色に塗られ、さっき舐めた為に色の筋が脇腹や首筋へと跡になっている。
尻の肉も薄い。
薬を盛られているだろう体は熱く、こちらの動きに過剰に反応している。
隠された蕾を晒す。
そこにも紅が塗られていた。

‥‥興醒めだ。

コレを仕込んだ奴。
馬鹿だろう。
それともそいつはそんな性癖なのか。

紅を塗られた淫猥なその孔に、いきなり自分のペニスを押し込む。
自分で解して寝屋にはべっているとはいえ、いきなりの行為は痛いだろう。
こいつが悪い訳じゃ無いのにな。

そう思いながらも止まらない。
がつがつ腰を振って奥に進む。
ひぃひぃ上がる声が少し耳障りだ。
あの慎ましやかな神子が、そんな声を上げる訳が無い。
だか、もし俺の下であげてくれたなら…。

腰の動きに仰け反って、敷布に黒い髪が散らばる。

よく、こいつを見つけて来た。
多胡理タゴリ家の勢力に感嘆する。
そう、とろける筈の俺の意識が何処か冷たい。
多胡理タゴリの爺様は、俺がこいつに夢中になり、何も考えられなくなると思ってる。
馬鹿馬鹿しい。

まあ、確かに黒髪は魅力的だ。
普段奉仕されることしかないこの俺が、こうやって相手を舐めるほどに。

下で喘ぐ男の髪を鷲掴む。

黒髪。珍しい。
黒は穢れの色として忌避される。
産まれたら水に還されるのも多いから、隠される。
探し出すには金と力がいる筈だ。

これは俺のおもちゃとして差し出された。
頬には神子と同じ紋様を描いてある。
この紛い物に俺が溺れると思っているのか。

自分への侮りが下腹を熱くする。
激しい動きについてこれずに、下の男が軋んだ声を上げた。

うるさい。

とっさに喉を鷲掴む。
驚いて開かれた目は翡翠色で。
あの黒曜石の様なきらきらした目とは似つかない。

馬鹿にしやがって。

動きを止めないまま力を込める。
抱えた脚がばたつくのを肘に力を入れて押さえる。
体重を乗せるように力を入れると、ぐっと孔が締まった。
ろくに食べれてないだろう細い首がごきりと鳴る。
締めつけのキツさに思わず放つと、やがて体中が弛緩した。

「おい。」

外の護衛を呼ぶ。
慌てて入って来た護衛は、息絶えたソレに、神力を注いだ。
ソレから咳き込む音がする。


侍女に汚れを拭かせながら、侍従の小言を聞く。

伊佐我イサガミコト様。殺したら穢れが産まれるじゃありませんか。程々にして下さい。」

「ふん。だから直ぐに呼んだだろう。
ソイツにもう少し肉をつけろ。
そうしたらもう少しここにいてやる。」

「かしこまりました。皇子のお望みどおりに」

果樹酒を差し出され、それをあおりながら伊佐我イサガは寝屋を出る。

面白くない。
第二皇子と一緒に、第一の加具土を上手く嵌めたのに、覆された。
第二は水牢に押し込まれて、消息不明だ。
俺はこうやって、多胡理タゴリの爺様の館に押し込められている。


ああ、神子に会いたい。
神子が眠っているという噂は本当だろうか。
だが、眠っていたとしても、本当の伴侶である俺が行ったら、目を覚ます筈だ。

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