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結婚したい男
30 ディサロ 恋慕と執着
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上へ下への大騒ぎだった。
ディサロはじっと気配を鎮めて大人達を見ていた。
『不吉な色!』
『領主一族なのに』
そんな言葉が行き交っている。
一通り聞き終わって、ざわざわする竜騎士達に質問する。
「大切な竜の命を守ったのに、いけない事なの?」
かしましく騒いでいた彼等は、子供の、しかも王子の前だと言うことを思い出して極まり悪げに目を逸らした。
「いえ、そうではなくて…」
自然の理というものがありまして…
あんな小さな竜体では生き延びるかもわかりませんし…
対の片割れが死ぬのはとても…
領主一族は竜騎士にはなれませんから…
いろいろ聞いたけれど。
ディサロにとって納得出来るものは無かった。
ただあの子がルカという名前だという事を知った。
王都に戻って、母上にルカの事を話した。
とてもとても綺麗だと力説するディサロに、
あらあらおませさん。
それは初恋よぉ♡
素敵だわぁ。
と、にっこり抱き締めて下さった。
長子相続のこの国は、はっきり言って第二のディサロは王太子に何かあった時のスペアだ。
それから解放されるのは王太子が子供を作って、後継が出来た時だ。
恋を自覚したディサロは、ルカを伴侶にしたいと願った。
フェルベーツ家の力も飛竜も、王家はとても欲しているからそれはすんなり通ると思っていた。
~~でも。
「竜持ちですよ。しかも白い」
「万が一のときは、王宮に竜の部屋を作るおつもりですか?」
「臭くて、とても会議なぞは出来ませんなぁ」
古手の執行部に鼻で笑われた。
竜の匂いは日向の様でいい匂いだ。
貴様らの腐った魂の匂いや、それを誤魔化す香水の匂いの方がどれだけ臭いか!
万が一…つまり王太子が儚くなって、第二王子が繰り上がる事だ。
ソレを堂々と言ってのけるのか、この不敬者めがっ‼︎
子供のディサロにとって、海千山千の上級貴族は忌々しさの塊だった。
老害の壁にぶち当たったディサロは、壁は直撃するものでは無いとすぐに悟った。
壁はその力を利用するものだ。
自分の将来の為に。
王太子が子供を作れば臣籍降下出来る。
ルカにプロポーズ出来る。
その一念でディサロは今まで"神童"と言われた自分を捨てた。
目立たず、優秀で控えめな普通の第二皇子という地位を手にした。
王太子が妃を迎えた頃、アッシュバルト伯が没した。
密かに情報を集めていたディサロは、その領地が後継がおらず、フェルベーツ領の隣なのを知っていた。
臣籍降下してその領地をいただきたい。
王にそれを願った。
長い恋心を知っている王は、それでも王太子妃が妊娠するまで待つ様に。
その間、領主は不在にしておくから。
と、約束してくれた。
…長い。
永いくらいだ。
しかもその密約は表に出せない。
美しく成長したルカは、風のようで炎のようだ。
眩しくて愛おしくて、切なくてたまらない。
ただ、エルメだけを見て他の男に目もくれないのが救いだ。
せめて卒業パーティーでもう少し待っていて欲しいと告げたかった。
王太子妃が妊娠した。
安定期に入るまでは公言出来ないが、あと少しだから…
そしたらパーティーは欠席だった。
送ったカードに返事は来ない。
わかってる。
カードは山の様に来て、開いてもいないのだろう。
馬鹿馬鹿しい、お見合いのガーデンパーティーで。
やっと会えたと思ったら。
マデウス伯父に拐われた。
この絶望。
この地獄。
もう、狂ってしまうかもしれない…
いや、奪う!
嫌がられようと。
泣かれようと。
国を捨てようと。
……もう、我慢出来ない。
ルカとエルメと一緒ならどこへでもいける。
そう思った時に。
ルカは自分で伯父の手から飛び出していた。
もう、待たない。
王太子妃は安定期に入った。
ようやく王から臣籍降下の許可が降りた。
もう、待たない。
ごめんねルカ。
ごめんねエルメ。
私は何があろうと君たちを離しはしないよ。
ディサロはじっと気配を鎮めて大人達を見ていた。
『不吉な色!』
『領主一族なのに』
そんな言葉が行き交っている。
一通り聞き終わって、ざわざわする竜騎士達に質問する。
「大切な竜の命を守ったのに、いけない事なの?」
かしましく騒いでいた彼等は、子供の、しかも王子の前だと言うことを思い出して極まり悪げに目を逸らした。
「いえ、そうではなくて…」
自然の理というものがありまして…
あんな小さな竜体では生き延びるかもわかりませんし…
対の片割れが死ぬのはとても…
領主一族は竜騎士にはなれませんから…
いろいろ聞いたけれど。
ディサロにとって納得出来るものは無かった。
ただあの子がルカという名前だという事を知った。
王都に戻って、母上にルカの事を話した。
とてもとても綺麗だと力説するディサロに、
あらあらおませさん。
それは初恋よぉ♡
素敵だわぁ。
と、にっこり抱き締めて下さった。
長子相続のこの国は、はっきり言って第二のディサロは王太子に何かあった時のスペアだ。
それから解放されるのは王太子が子供を作って、後継が出来た時だ。
恋を自覚したディサロは、ルカを伴侶にしたいと願った。
フェルベーツ家の力も飛竜も、王家はとても欲しているからそれはすんなり通ると思っていた。
~~でも。
「竜持ちですよ。しかも白い」
「万が一のときは、王宮に竜の部屋を作るおつもりですか?」
「臭くて、とても会議なぞは出来ませんなぁ」
古手の執行部に鼻で笑われた。
竜の匂いは日向の様でいい匂いだ。
貴様らの腐った魂の匂いや、それを誤魔化す香水の匂いの方がどれだけ臭いか!
万が一…つまり王太子が儚くなって、第二王子が繰り上がる事だ。
ソレを堂々と言ってのけるのか、この不敬者めがっ‼︎
子供のディサロにとって、海千山千の上級貴族は忌々しさの塊だった。
老害の壁にぶち当たったディサロは、壁は直撃するものでは無いとすぐに悟った。
壁はその力を利用するものだ。
自分の将来の為に。
王太子が子供を作れば臣籍降下出来る。
ルカにプロポーズ出来る。
その一念でディサロは今まで"神童"と言われた自分を捨てた。
目立たず、優秀で控えめな普通の第二皇子という地位を手にした。
王太子が妃を迎えた頃、アッシュバルト伯が没した。
密かに情報を集めていたディサロは、その領地が後継がおらず、フェルベーツ領の隣なのを知っていた。
臣籍降下してその領地をいただきたい。
王にそれを願った。
長い恋心を知っている王は、それでも王太子妃が妊娠するまで待つ様に。
その間、領主は不在にしておくから。
と、約束してくれた。
…長い。
永いくらいだ。
しかもその密約は表に出せない。
美しく成長したルカは、風のようで炎のようだ。
眩しくて愛おしくて、切なくてたまらない。
ただ、エルメだけを見て他の男に目もくれないのが救いだ。
せめて卒業パーティーでもう少し待っていて欲しいと告げたかった。
王太子妃が妊娠した。
安定期に入るまでは公言出来ないが、あと少しだから…
そしたらパーティーは欠席だった。
送ったカードに返事は来ない。
わかってる。
カードは山の様に来て、開いてもいないのだろう。
馬鹿馬鹿しい、お見合いのガーデンパーティーで。
やっと会えたと思ったら。
マデウス伯父に拐われた。
この絶望。
この地獄。
もう、狂ってしまうかもしれない…
いや、奪う!
嫌がられようと。
泣かれようと。
国を捨てようと。
……もう、我慢出来ない。
ルカとエルメと一緒ならどこへでもいける。
そう思った時に。
ルカは自分で伯父の手から飛び出していた。
もう、待たない。
王太子妃は安定期に入った。
ようやく王から臣籍降下の許可が降りた。
もう、待たない。
ごめんねルカ。
ごめんねエルメ。
私は何があろうと君たちを離しはしないよ。
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