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そして新たな婚活

27 おっと、プロポーズ

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ディサロ王子が王位継承権を放棄した。
しかも臣下に降格する。
さらにお隣りさんになる⁉︎

いきなり与えられた情報で、ルカはパシリと固まった。
子供のようにまんまるな目に、にっこりと笑い掛けるとディサロはルカの持つティーカップをそっと外した。

口元にまで持っていってたティーカップが、固まったおかげで斜めになっていた。
そのカップをテーブルに戻すと、ルカの手をそっと握りしめた。

「公式に拝命はまだですが。
気が急いてきてしまったんですよ。」

ルカの指をそっと自分の唇にあてる。
……ルカはさらに固まる。


けっこう訓練していてもルカの指先は細い。
それに比べて、おとなしく優雅だと思っていたディサロの指が、太くてごつごつして剣だこさえある乾いたものだということにルカは初めて気がついた。


エルメを呼んで欲しい。
といわれ、ルカは父様に助けを求める様に視線を投げた。

ルカと視線が合うと、父様は口を一文字にして頷く。
不本意でっす‼︎
と、その顔が言っている。
でも、呼べ。と。



自分の手をとるディサロ。
今までのスカした雰囲気はどこいった。

今のディサロは忠犬の着ぐるみを脱ぎ捨てて、直接的な熱視線を真っ直ぐ向けている。

……なんか、悪い予感がする…

戸惑うルカを真っ直ぐに見て、ディサロはうっとりと笑った。

「アッシュバルトを頂きたいと、三年前から申しておりました。それがようやく叶って嬉しくて。
まだまだ手続きも山の様にあるのに、堪え切れずに貴方の父上にお願いしてやって来てしまいました。」

話が飲み込めなくてキョトンとするルカ。



振動が近づいてくる。
ずん ずん と、腹の底に響くその足音はエルメのもので。
その姿を目の端にとらえて、ルカの表情がふわりと弛んだ。

"ドウシタノ?"

"ごめん、わからない"

エルメのエメラルドの複眼が好奇心でキラキラ光る。
何が何だか分からなくても。
分かりたくなくて考え無いようにしてみても。
エルメがいるから平気♡
そんな気持ちで力が抜けるのを、ディサロはじっと見つめていた。


「エルメ様」

ルカの手を離さずに。
エスコートしながら庭へと踏み出す。
芝生のふくりとした足触りで進む。
二人はそのままエルメの前まで歩いた。

エルメの白い頭の前に立つと。
ようやくディサロはルカの手を離した。
そして流れる様にボウ、アンド、スクレープをみせた。
流石王子だ。
なんて優雅で美しい、お手本のような礼。

礼を受けてエルメの目が虹色に輝く。

「エルメ様。貴方に見届けて頂きたいのです。よろしくお願いします。」


そう言うと、ディサロはルカに向き合うと片膝をついて顔を上げた。
うっとりと微笑みながら手を差し伸べてくる。


うひょっい‼︎

と、ルカは固まった。

なに、このポーズ!
これは、
このポーズは、
かの有名なドラマチックプロポーズのポーズではっ!


しかも。

ディサロは、今。
100%の蕩けたロイヤルスマイルを炸裂させていた。

今までイケメンだけどなんか、地味⁉︎
と思ってたディサロが。

尻尾振ってる大型犬みたいだ。
と思ってたディサロが。

確実に安全牌だ。
と思ってたディサロが。

しゅるりと背筋を伸ばし、誰憚る事なく容赦なくイケメン攻撃を仕掛けている!
隠し持ってたその武器を大上段に振り上げている。

薔薇がっ

背後に薔薇が見える‼︎

しかもソレがちかちかと光っている。
ひらひらと花弁が舞い踊っている。

~~幻想⁉︎

この全力イケメンによる幻想なのかっ!
やばい。
まずい。
なんか飲み込まれる‼︎



ぐげっ。
と、引き攣るルカの手をそっと握り込むと。
ディサロはその色気全開の眼差しでひたりと見つめながら声を上げた。


「どうぞ。私と結婚して下さい。」



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