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そして新たな婚活

25 現実が待っている

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ああ、領地おウチに帰りたい。

そんな郷愁のため息を吐くルカに、周りは冷たい。

一人でさっさと帰っちゃおうかな。
と言ったルカにHAHAHAと、声が上がった。
それも一斉に。

はい。
一人で(マルロ込みだけど)王都まで行くと言っちゃあ、後戻り出来ない程にやらかしてしまいました。

"一人で"という言葉には、もう集中砲火で
『じっとしていろ!』『帰りは一緒だ!』
と、大砲が打たれる。

だいたい現実逃避しているけれど。
領地には兄様という新たな説教魔人が、仁王立ちしてまってるんだよね。
前門の虎後門の狼って、感じ?



あのお見合いパーティーで、なんちゃら子爵の子息と、なんとか伯爵の子息が見事カップリングしたそうで。
三組も婚約したらしい。

そして父様は、ご機嫌な王様に隣のアッシュバルトの領主が決まるかも♡って匂わされ。
ネコじゃらされるがごとくに王宮に行っている。
日参というか、もう通勤してる。

王様はルカとマデウスが結局破局となっても、何故かご機嫌はいいらしい。
おかげで領地にも帰れずに。



た・い・く・つ‼︎


エルメとただただいちゃついてたら。

『せっかくですから、その耳を周知して頂きましょう!』
と、マルロに遊びに行くことを勧められた。

あ~んな絶望的な顔してたのに。
どうせその耳で生きてくなら、利用しましょう!と、言い出して。

"破局"
"傷心だから放って置いてね"
を、前面に押し出す方向らしい。

まぁ……
有りだな、それっ‼︎
いいじゃん!

面倒くささが軽減するなら、なんでもするぞっ!

~~と、いうわけで従者の皆様に磨かれた。
耳を目立つ様に髪を結い上げる。
暴れたらバラけるから、としてなきゃいけないような、複雑で芸術的に結い上げられた。

もちろん耳は剥き出し。
目立つ様にドレスは落ち着いたものに。

そしてサロンだ本屋だ。お土産屋だ。
と、かつて無いほどにふらふら買い物ざんまいだ。
それが毎日続くと、もうヒールの靴で足裏じんじんで。馬車の中でもう帰りたい。
と呟いた。



愛想笑いと伏せ目で乗り切る。
ああ、やっぱ王都って無理。

午前に起きてエルメと過ごして。
それからすぐに磨かれる。
王都の貴族社会って、朝食の為に着替え。
昼食用に着替え。お散歩用に着替え。
お出掛けする時にも着替え。
あと、お茶会だの夜会だの夕食だの、と。
着替えだけで、わけわかんない。
領地にいる時は古い訓練着で朝から晩まで過ごしていたから、着せ替え人形になるだけでライフがガリガリ削られた気がした。




◇◇様のお茶会で、儚げに"しばらく領地に篭ります。恋はこりごりですわ"を、なんとか演じて帰って来た。

そして屋敷の馬車溜まりに、見慣れない馬車があるのに気がついた。


辺境伯としてブイブイ言わせてるフェルベーツの馬車は基本、剛健だ。
他の貴族への建前で、ルカが今使ってるのは華美だけど。
他のは『護送車かーい!』
と、思われるほどにゴツい。

湧いた魔獣の中を突っ切る事も考えて、剣や弓では太刀打ち出来ない素材と結界で。
フェルベーツの紋章がばばーんと主張していなければ、威圧と怪しさ満点のものだ。

それに見劣りしない。
一見質素でシンプルに見えるが、ただモノでは無い感のその馬車。


そして、紋章はアッシュバルト伯⁉︎

そう、お隣りで。
領主不在で宙に浮いてた、
アッシュバルトのものだった。



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