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結婚が降りかかってきました

10 お見合いパーティー

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王宮へは馬車で向かった。
フェルベーツ家の紋章を掲げた豪華な馬車だ。
前方に騎士が四人馬に乗り、後方の馬車には護衛や従者達が乗っている。

馬車の内部は広々として、父様とその秘書官のバザルトと、ルカとマルロがいるだけなので余裕があった。

正装の父様はナイスミドルだ。
かっこよくてちょっと見惚れた。
ルカは執事とマルロが話し込んで衣装を決めた。
ルカの意見は、"動きやすいもの"一択だから。

浅葱色で柔らかいドレープをつけた、ちょっと甘めなものだ。
踵まで覆っても深いスリットで動きやすい。
下のズボンはちょっと色が濃いめだ。
その衣装は瑠璃色の瞳によく映え、複雑に結い上げて一筋垂らした苺のような髪が、まるで宝石の冠に見える。
その出来上がりに、マルロはうんと頷いた。


正門から入って降車場で降りる。
そこには沢山の馬車が順に停まって案内されていた。


庭は植え込みで飾ったり、四阿のあるものでは無く騎士団の謁見や壮行会の時に使う開けた場所だった。
かなりの人数を呼ぶために、広い。

テーブルや椅子、ガーデンパラソルが立ち並び、360度護衛が見張れるようになっている。

いくつかのシェードではすでに貴族達が固まって情報交換をしているらしかった。

ルカは案内された時、四方八方からの視線に少し怯んだ。
値踏みされてるのがわかる。

無理もない。
ここは自分という商品をいかに上手く競り落とそうとする戦いの場なのだから。
沢山の子息達が、火花を散らしてより良い伴侶を探すのだ。


父様にエスコートされながら、王様へと進んで挨拶をする。
やはりディサロ王子が待っていた。


父様は宰相様達と領地の話をするといって王様にくっついている。
頑張れ!増員だ!



王子にすっと腕を出されたのでつかまる。
にっこりと微笑むと、ディサロ王子の耳が赤く染まった。

自意識過剰かもしれないけれど、王子は僕を意識している。
穏やかな視線は、前から真っ直ぐこっちを見ていた。
今回、王様に背中を押されているかもしれないけど。
やっぱり、その目は熱い。

「卒業しても、しばらく王都にいると思ってたのに、パーティーにも出ずに領地に帰られたのに驚きましたよ。」

「すいません。エルメが帰りたがったものですから。」

嘘です。
いたら逃げれない招待状が届くからです。

「今回は少しゆっくり出来るのですか?よろしかったら御案内したい場所があるのですが。」


ルカをエスコートしながらディサロ王子はあちこちのテーブルを巡る。
ひょっとして牽制に近いのかもしれない。
いつもはガツガツ来てた貴族達が、王子の前で、やけにおとなしい。

ついでと言うなら、王子狙いの子弟が目を三角にしているけど、気にしない。

王子の防波堤は完璧だ。

ああ、王子。
プリンススマイルは無敵じゃん。
話術でもやんわりと煙にまく。
一緒にいると、すんごく楽。



でも、王子とルカ。
ニコイチをセットで数えられそうなこの姿は、ちょっとまずいかもしれない。
早めにフラグを折らないと。


ああ、色恋抜きで。
結婚とか抜きで付き合えたらいいのにな。

そんな事をぼんやり考え。
結婚の資格が無い事を、いつ暴露したらいいんだろうと考え。

あ、ディサロ様、ショックを受けるかも…
なんて考えてたら。

背後からいきなりグイッと抱き込まれた。



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