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辺境で大暴れ
5 食べても美味しくありません。
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ぴるるるるる… と、声がする。
口の中に唾が湧いてきた。
耳にはガッガッとでかいノック音。
胃と頭は…。
信じられない程の飢餓感で胃液を吐きそうだ。
一つ目の卵がガキッと割れた。
中から青っぽいぬらぬらしたモノが転げ落ちて来る。
ソレはぴるるるると鳴きながら辺りを見渡す。
わかってた。
竜だよ竜。
腹減って気が狂いそうな竜。
暴力的な程の空腹感!
胃がぎゅっとなって涎が出る。
竜の飢餓感が俺を苛む。
キョロキョロしていた竜の仔は、はっとしたようにその大きな瞳を煌めかせた。
だっとこっちへ突進してきた。
喰われる!
ひいぃっと叫びかけた俺の手前で、赤い魔石に噛み付いた。
ーあれ?
もう一つの卵も孵り、青っぽい仔竜がぬらぬら転がるように出て来て、白い魔石に飛び付いた。
ーおや?
ベキベキと噛み砕く音がする。
ベチャベチャと喉を鳴らす音がする。
がつがつ音をさせて、瓦礫の山を鼻ずら掻き分けて、仔竜は魔石を貪り食う。
ー孵化したての竜は魔石を食べるのか。
なんか肉代表として、無視はちょっと肩透かしというか……。
胃のヒリヒリする飢餓感が治まった時、目の前の仔竜はほうっと息を吐いた。
途端に一匹の口からちっちゃい炎が揺れた。
赤い魔石を食べた奴だ。
もう一匹から白い息が出た。
氷の魔石を食ったのか。
腹の中で魔石が消化され、魔力が身体中に溢れたころ、仔竜はその被膜に覆われた翼をバサリと広げた。
瞳がオパールの様に煌めいている。
月の光の中でキラキラしたまま、鼻先を月に向け何度か羽ばたく。
そうだよね。
動物は生まれたらすぐ立つよね。
そうしなきゃ食べられちゃうし。
野生の竜が捕まらない訳がわかった。
すぐに飛び立つからだ。
ばさっばさっと翼が波打つ。
卵の中で美しく折り畳まれていたそれが、ふるふると広がって風を捕まえる。
あっという間もなく、二匹は消える様に月に向かって行った。
……助かった。
残されたキーランは、脱力のあまり腰を落とした。
ここはどこだろう。どうやって帰ろう。
思わず膝を抱いて座り込む。
ああ、……疲れた。
疲れでうとうとしかかった耳に、再びあのノック音が聞こえてきた。
口の中に唾が湧いてきた。
耳にはガッガッとでかいノック音。
胃と頭は…。
信じられない程の飢餓感で胃液を吐きそうだ。
一つ目の卵がガキッと割れた。
中から青っぽいぬらぬらしたモノが転げ落ちて来る。
ソレはぴるるるると鳴きながら辺りを見渡す。
わかってた。
竜だよ竜。
腹減って気が狂いそうな竜。
暴力的な程の空腹感!
胃がぎゅっとなって涎が出る。
竜の飢餓感が俺を苛む。
キョロキョロしていた竜の仔は、はっとしたようにその大きな瞳を煌めかせた。
だっとこっちへ突進してきた。
喰われる!
ひいぃっと叫びかけた俺の手前で、赤い魔石に噛み付いた。
ーあれ?
もう一つの卵も孵り、青っぽい仔竜がぬらぬら転がるように出て来て、白い魔石に飛び付いた。
ーおや?
ベキベキと噛み砕く音がする。
ベチャベチャと喉を鳴らす音がする。
がつがつ音をさせて、瓦礫の山を鼻ずら掻き分けて、仔竜は魔石を貪り食う。
ー孵化したての竜は魔石を食べるのか。
なんか肉代表として、無視はちょっと肩透かしというか……。
胃のヒリヒリする飢餓感が治まった時、目の前の仔竜はほうっと息を吐いた。
途端に一匹の口からちっちゃい炎が揺れた。
赤い魔石を食べた奴だ。
もう一匹から白い息が出た。
氷の魔石を食ったのか。
腹の中で魔石が消化され、魔力が身体中に溢れたころ、仔竜はその被膜に覆われた翼をバサリと広げた。
瞳がオパールの様に煌めいている。
月の光の中でキラキラしたまま、鼻先を月に向け何度か羽ばたく。
そうだよね。
動物は生まれたらすぐ立つよね。
そうしなきゃ食べられちゃうし。
野生の竜が捕まらない訳がわかった。
すぐに飛び立つからだ。
ばさっばさっと翼が波打つ。
卵の中で美しく折り畳まれていたそれが、ふるふると広がって風を捕まえる。
あっという間もなく、二匹は消える様に月に向かって行った。
……助かった。
残されたキーランは、脱力のあまり腰を落とした。
ここはどこだろう。どうやって帰ろう。
思わず膝を抱いて座り込む。
ああ、……疲れた。
疲れでうとうとしかかった耳に、再びあのノック音が聞こえてきた。
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