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ギルドでの討伐

2 レンはとっても悩んでいる

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ナヴァは忍者のようだ。
もの凄く綺麗に気配を殺す。
あんな注目度No.1な男の横で影の様に気配を出さないなんて、それはスキルって奴だろう。

ナヴァは前回の召喚の儀でやって来た異世界人だという噂もある。
そうだとしたら、ナヴァは立派に番と出逢って生きてるって訳だ。
ハズレな自分とは違うんだな。


レンはDランクだ。
ジャダと一緒だから討伐依頼も出来る。
一人だったらランクが届かなくて無理だ。
あと、野営も出来る。
もう少しでCにも上がれる。


レンは悶々と思い出していた。
何度も何度も頭の中であの光景がリピートする。

あの岩猿の群れを殲滅した時。
アオニアは血溜まりの中をナヴァに走り寄った。
大岩の上から掬うように抱き上げたその唇は、「大丈夫か」だの返り血で「汚れていないか」だのと形作っていた。
アオニアの青空の瞳は愛おしさで潤んでいる。
愛おしい。愛おしいと空気が波のようだ。
周りの凄惨な中に二人は互いだけを見ていた。
アオニアの目に他人は全く映っていない。
多分あの美しい男はサイコパス的に周りを見ているんだろう。
無機質で動く物体の中で、ナヴァだけが色のある姿なのかも知れない。


そんな事をぼんやり考えるけど。
一番の問題はもうすぐ一年ということだ。

そう、一年契約が終わる。
弟として甘えていたこの暮らしが終わる。

多分だけど、ジャダはレンを好いてる気がする。恋愛的な意味で。
アオニアの目と似たものをジャダが向けてる時がある。
ジャダに守られるたび。
ジャダに手を引かれるたび。
レンの何かが震える。喉の奥が甘酸っぱいもので溢れる。

わかってる。一年の契約が終わる話をしなきゃいけない。
わかってる。ジャダを解放しなきゃいけない。
わかってる。自分の気持ちがどんなものなのか、もっと考えなきゃいけない。
出来れば"異世界人"だの"子作り"だのの雑音無しに考えたいけれど。

"子作り"

ぶっ‼︎と脳内で何かが噴き出した。
ブルリと体が震える。

無理無理無理。やっぱり無理。

子作りって、ほら雄蕊が雌蕊となんちゃらかんちゃらだし。
こっちだと雄蕊と雄蕊もなんちゃらかんちゃらなのか?
それって、昔ハナを引き摺り込もうとして俺を殴り付けた奴みたいになるんだよな。
目がギンギンで血走って、欲望ダダ漏れでイっちゃう感じだろうな。

気持ち悪い。

好き、好きってちゅっちゅするのと訳が違うんだから絶対無理。

レンは覚えていた。
生臭い男の息と、ぬるっとした据えた匂い。
充血して嗜虐に溢れたあの濁った目。
殴られてぶちまけられた生ゴミの匂い。

いつも優しいジャダがあんな濁ったギラつきで迫ってきたら、絶対泣く。
泣いた挙句に顎を蹴り上げてバックれる事間違い無しだ。

汚い。
あんな目でねっとり見られたら体中が汚染されてしまう。
ジャダがあんな目をしたらもう立ち直れ無い気がする。
そしたらもう近くにいられなくなる。
そんな羽目にならないように、逃げよう。

「契約終了です!お疲れ様でした!」
とぶち上げて、
「ありがとうございました!じゃ。」
と叫んで逃げればいい。

魔法契約には終了を宣言しなきゃいけないし、
驚くジャダから身を翻して走ればいい。

…………ジャダは追いかけてくれるだろうか…



レンが最近考えるのは、契約終了についてだ。
何十回と驚くジャダを夢想し、
何百回と逃走経路を考える。

白昼夢のようなその考えはとりとめなく、心の隙間時間に深くなる。
そんな吐き気がする様な目で、見て欲しいのか欲しく無いのかわからなくなる。
レンのぐらぐらする心ははっきりしなかった。
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