足元に魔法陣が湧いて召喚されたら、異世界の婚活だった件

たまとら

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もう一人の異世界人

5 二人の未来

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アオニアの掌は大きい。
両手で挟まれるとナヴァの頭はすっぽり入る。
目の前にアオニアの顔がある。
その目はじっとナヴァを見て、その目に映った自分を見せつけられる。
自分が取るに足らないという証しのバーコードがくっきり見えて、たまらない気持ちになる。
そんな怯えを吸い尽くす様に、まぶたに頬にと唇が落とされる。

「ごめんね勃起に怖がらせたね。心配しなくていいよ。
君を辛い目に合わせたりはしないから。
君と一つになりたいと思ってる。でも今じゃ無いからね」

君はゆっくりと成長すれば良い。
こうして抱きしめているだけで私は満たされている。
だから一緒に成長していこう。愛してるよ。

耳元で囁く声がナヴァの薄い胸のドキドキと合わさって響く。
ああ、私たちは一つのものだ。こうしていると溶けて一つになるね。
その微笑みにナヴァはジンとした甘い痛みで自分のペニスが固くなったのを感じた。
こうなったのは初めてで、その戸惑いは羞恥と喜びがあった。
アオニアと心も体も一つになりたい。そう願った。


リンドルム担当官は、ナヴァの傷や爛れを回復師と再生師で癒した。
ナヴァのいた世界は女王を頂点にした完全な縦社会だ。
女王の子として産まれても上級と下級の扱いは天と地程に違う。
「人道的」とか「福利厚生」という観念は存在しない。
下級はその生命力が任務以外に費やされ無い様に、精巣や卵巣など不要な臓器は未成熟なままだった。
盲信的に従って働く為に不要な情報も与えられない。
ソレが必要だということさえ知らずに生涯を終えるまで働くのが下級だ。

前回までの召喚の儀の聴き取り調査記録でその事を知っているリンドルム担当官は、神殿へ要請して特殊な能力のある回復師を派遣させた。
それは成長を司る聖魔法が使える回復師だ。

おかげでナヴァは少し育った。
ただいきなりの成長は細胞膜が耐えられない。
少しずつ、ゆっくりとバランス良く成長させていく。

『半年に一度ほど全身に回復魔法をかけて成長させていけば、やがてナヴァの身体がアオニアを受け入れられる程に育つだろう。』
そう、リンドルム担当官は言った。


ナヴァに会えて、一緒にいられるだけでも女神に感謝している。
別の世界から渡って来てくれたナヴァを大事に育てたい。
アオニアは素直に頭を下げた。

「ただ、成長魔法を使える方は神殿の奥にしかおられませんのでねぇ。
まず王宮からの紹介状と、ん~ そのぉお布施がねぇ…」

アオニアは笑った。
家は豊かな領地持ちの上級貴族だ。
そしてその貴族社会から離れても、自分はその高額お布施を払いながらナヴァと生きるだけの腕はある。

神殿への紹介状を受け取りながら未来を考えるアオニアに
リンドルム担当官は今回の召喚の儀も綺麗に整った。と安堵した。
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