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ギルドと依頼とジャダと俺
11 異世界人は探されている
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ナヴァは木の上からレンを見ていた。
ジャダに抱えられて川に突っ込まれて、自分で洗い始めたのを見ていた。
靴を岸辺に放り投げて、服を脱ぐ。
こんな獣も敵も潜んでいるかもしれない場所で、大っぴらに脱ぎだした事に動揺した
川の水面が陽を反射する中で、彼は真っ裸で服を洗っている。
黒髪の中で銀色が乱反射して、しなやかな身体を見せつける様に眩しい。
薄いベージュのような、真珠のような、象牙のような肌色が見える。
黒髪がそこに筋を広げて流れていて、ああ綺麗だなとナヴァは思った。
当たりだ。
彼は召喚者だ。
良かった。
アオニアの役に立った。
ほっとしつつも、ナヴァは川の中の少年を睨みつける様に見た。
『番のいない異世界人を捕獲して来て欲しい』
裏ギルドが大金を出して依頼して来た。
ナヴァはその感知能力でなんとか対象者を突き止めた。
ああ、あの子は綺麗だ。
アオニアと並んだらさぞかし似合うだろう。
これが嫉妬という感情だと覚えたが、成る程苦しくて理不尽で訳がわからないモノだ
ナヴァはいまだにアオニアの愛を信じきれていなかった。
四年前の召喚でここに来た。
上級の娘嬢様の中に何故か自分が混ざっていた。
顔のバーコードでナヴァを見とった娘嬢様は、蔑んだ目で用事を命じてきた。
そうだナヴァは働き蟻の下級兵士として造られたのだ。
命令されて這いつくばって生きる下級兵士だ。
だから命じられてほっとした。
それが何故かあの美しいアオニアが跪いて番だと言ったのだ。
番。番。番。アオニアに請われて手をとった。
でも自分の内臓は子を成せる程の機能は無い。
アオニアに愛され、優しくされ、感情を教えられるた。
でも子供を設けることは無理だった。
回復魔法も再生魔法も、あらゆる事を試してくれた。
でも下級兵士には無駄な臓器は付属されて無いのだ。
アオニアに失望されたらと怯えて心が痛かった。
アオニアの一族は子供の為にもう一人妻を娶れと迫った。
そんな一族をアオニアは惜しげも無く捨てた。
番。番。番。ただの盲信だ。
でもなんだろう、この全てを許して、全てを認めて、ただひたすら愛してくれるこの繋がりは。
アオニアが好き。自分より大事。
あの子みたいに綺麗だといいのに。
あの子みたいに産める身体だといいのに。
ああ、アオニアがあの子を好きになったらどうしよう。
ナヴァは木の上から金色の神様のようなアオニアが、その子に声を掛けるのを見た。
そしてすぐに赤髪の男に布で覆われて抱き上げられるのを見た。
警戒心の無いその子供。
ちりちりと心が炙られるのを感じた。
これが嫉妬という底なし沼だという事をナヴァは苦々しく思った。
ジャダに抱えられて川に突っ込まれて、自分で洗い始めたのを見ていた。
靴を岸辺に放り投げて、服を脱ぐ。
こんな獣も敵も潜んでいるかもしれない場所で、大っぴらに脱ぎだした事に動揺した
川の水面が陽を反射する中で、彼は真っ裸で服を洗っている。
黒髪の中で銀色が乱反射して、しなやかな身体を見せつける様に眩しい。
薄いベージュのような、真珠のような、象牙のような肌色が見える。
黒髪がそこに筋を広げて流れていて、ああ綺麗だなとナヴァは思った。
当たりだ。
彼は召喚者だ。
良かった。
アオニアの役に立った。
ほっとしつつも、ナヴァは川の中の少年を睨みつける様に見た。
『番のいない異世界人を捕獲して来て欲しい』
裏ギルドが大金を出して依頼して来た。
ナヴァはその感知能力でなんとか対象者を突き止めた。
ああ、あの子は綺麗だ。
アオニアと並んだらさぞかし似合うだろう。
これが嫉妬という感情だと覚えたが、成る程苦しくて理不尽で訳がわからないモノだ
ナヴァはいまだにアオニアの愛を信じきれていなかった。
四年前の召喚でここに来た。
上級の娘嬢様の中に何故か自分が混ざっていた。
顔のバーコードでナヴァを見とった娘嬢様は、蔑んだ目で用事を命じてきた。
そうだナヴァは働き蟻の下級兵士として造られたのだ。
命令されて這いつくばって生きる下級兵士だ。
だから命じられてほっとした。
それが何故かあの美しいアオニアが跪いて番だと言ったのだ。
番。番。番。アオニアに請われて手をとった。
でも自分の内臓は子を成せる程の機能は無い。
アオニアに愛され、優しくされ、感情を教えられるた。
でも子供を設けることは無理だった。
回復魔法も再生魔法も、あらゆる事を試してくれた。
でも下級兵士には無駄な臓器は付属されて無いのだ。
アオニアに失望されたらと怯えて心が痛かった。
アオニアの一族は子供の為にもう一人妻を娶れと迫った。
そんな一族をアオニアは惜しげも無く捨てた。
番。番。番。ただの盲信だ。
でもなんだろう、この全てを許して、全てを認めて、ただひたすら愛してくれるこの繋がりは。
アオニアが好き。自分より大事。
あの子みたいに綺麗だといいのに。
あの子みたいに産める身体だといいのに。
ああ、アオニアがあの子を好きになったらどうしよう。
ナヴァは木の上から金色の神様のようなアオニアが、その子に声を掛けるのを見た。
そしてすぐに赤髪の男に布で覆われて抱き上げられるのを見た。
警戒心の無いその子供。
ちりちりと心が炙られるのを感じた。
これが嫉妬という底なし沼だという事をナヴァは苦々しく思った。
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