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押しかけ護衛はNoとは言えない
10 壁ドンの破壊力
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依頼書は壁にちょぼちょぼ残っている。
ピンに刺されて詫びしげに揺れていた。
クリスローの採取、地下暗渠の清掃、パンの売り子など…
レンはその場所を頭の中で地図に当てはめて楽しく見ていた。
ドン‼︎
レンの雀の様な動きが、突然頭の両横から突き出された腕に縫い止められた。
リーサルウェポンだ。
振り返るまでも無く、まるっきり知らない男がいきなり壁ドンしたのがわかった。
即座にレンの危機意識が発動して、鼻の呼吸を停止した。
頭の血管がどっくんどっくんと警報を鳴らす。
距離を取るために振り向きざまに壁に後頭部を押し付けた。
わかってた、リーサルウェポンだ。
わかってたけど、コレはあまりにもすげぇ!
口で呼吸してもそのリーサルウェポンは、鼻も目も口内の粘膜にもダイレクトに攻撃してきた。
刺激で潤む目で、レンは酒臭いギラついたおっさんを見上げた。
リーサルウェポン。
そう匂いだ。
殺人的な匂いだ。
まず冒険者ってほとんど風呂に入らない、服もパンツも滅多に洗わない。
浄化を使える奴も少ないし、使う気もない。
てゆうより、なぜ使わなきゃいけないのかとしか思わないだろう。
目の前のおっさんの服は汗で白い粉を噴いて、革鎧は汚れと変な汁で斑らなシミが出来ていた、勿論臭い。
そしてギトギトした顔は汚れで何層にもなってる
磨かれた泥団子のように酒焼けしてテカテカしている。
充血した目は白目を黄色に濁らせてこっちをみていた。
その匂いは言うなれば肉食獣の巣の中で貪り食べた獲物の残骸が腐った上に、大小垂れ流しで寝ていたら魚を放り込まれたから生臭さい。
というイメージで、レンの理性を真っ直ぐ攻撃してきた。
思えば王宮では浄化で掃除が行き届いていた。
かつてゴミ袋の中で暖を摂っていたレン達は、毎朝雑巾掛けするじいちゃんによって清潔というものをマスターしていた。
さらに言うなら日本人は地球で有名な偏執的潔癖症な民族だった。
つまり、そのあんまりな匂いはレンの動きを完璧に封じたのだ。
『ぼぅや可愛ぇなあ。一緒にオレらと飲まねえかあ』
ドンされて目の前にある口がそんな単語で動くたびに、口臭という毒霧が噴射される。
それが空気中に放たれてレンの身体に降り注ぎ、壁の反射によって全身が汚染されていく。
匂いという毒で細胞が壊死していくようだ。
しかもその濁った目は滴る欲を放っていた。
その欲は見間違えも無く性的なもので、レンは愕然とした。
今までハナをそんな目で見る纏い付く奴らを殴って来た。
小鹿の様に震えるハナに、「逃げろ」「叫べ」「蹴れ」と言って来たレンは
今産まれたての牛の様にぷるぷるしていた。
その濁った目の中に自分への加虐と性欲が浮かんでいる。
無理矢理組み敷いて暴れる身体を押さえつけて、悲鳴と血の中で犯してやりたい
そんな思念が目の中にべったりと張り付いていて
レンはその気持ちの悪さに動けなかった。
いつもなら鼻めがけて殴ってた。
金玉を蹴り上げていた。
ただそうする為には予備動作として息を吸わなくてはいけない。
レンの脳は自衛の為に身体を麻痺したように動かさず、口で呼吸させていた。
レンの目は涙目だ。
図らずも脱げたフードで晒された顔はふるふると庇護欲をそそる。
リーサルウェポン野郎がにんまりと笑いながら片手を肩から顎に伸ばそうとした時。
吹き付ける毒霧にぐぅと歯を食いしばったその時。
ハーブの匂いがふわっと流れて、目の前のリーサルウェポン野郎がグェッととんだ。
ピンに刺されて詫びしげに揺れていた。
クリスローの採取、地下暗渠の清掃、パンの売り子など…
レンはその場所を頭の中で地図に当てはめて楽しく見ていた。
ドン‼︎
レンの雀の様な動きが、突然頭の両横から突き出された腕に縫い止められた。
リーサルウェポンだ。
振り返るまでも無く、まるっきり知らない男がいきなり壁ドンしたのがわかった。
即座にレンの危機意識が発動して、鼻の呼吸を停止した。
頭の血管がどっくんどっくんと警報を鳴らす。
距離を取るために振り向きざまに壁に後頭部を押し付けた。
わかってた、リーサルウェポンだ。
わかってたけど、コレはあまりにもすげぇ!
口で呼吸してもそのリーサルウェポンは、鼻も目も口内の粘膜にもダイレクトに攻撃してきた。
刺激で潤む目で、レンは酒臭いギラついたおっさんを見上げた。
リーサルウェポン。
そう匂いだ。
殺人的な匂いだ。
まず冒険者ってほとんど風呂に入らない、服もパンツも滅多に洗わない。
浄化を使える奴も少ないし、使う気もない。
てゆうより、なぜ使わなきゃいけないのかとしか思わないだろう。
目の前のおっさんの服は汗で白い粉を噴いて、革鎧は汚れと変な汁で斑らなシミが出来ていた、勿論臭い。
そしてギトギトした顔は汚れで何層にもなってる
磨かれた泥団子のように酒焼けしてテカテカしている。
充血した目は白目を黄色に濁らせてこっちをみていた。
その匂いは言うなれば肉食獣の巣の中で貪り食べた獲物の残骸が腐った上に、大小垂れ流しで寝ていたら魚を放り込まれたから生臭さい。
というイメージで、レンの理性を真っ直ぐ攻撃してきた。
思えば王宮では浄化で掃除が行き届いていた。
かつてゴミ袋の中で暖を摂っていたレン達は、毎朝雑巾掛けするじいちゃんによって清潔というものをマスターしていた。
さらに言うなら日本人は地球で有名な偏執的潔癖症な民族だった。
つまり、そのあんまりな匂いはレンの動きを完璧に封じたのだ。
『ぼぅや可愛ぇなあ。一緒にオレらと飲まねえかあ』
ドンされて目の前にある口がそんな単語で動くたびに、口臭という毒霧が噴射される。
それが空気中に放たれてレンの身体に降り注ぎ、壁の反射によって全身が汚染されていく。
匂いという毒で細胞が壊死していくようだ。
しかもその濁った目は滴る欲を放っていた。
その欲は見間違えも無く性的なもので、レンは愕然とした。
今までハナをそんな目で見る纏い付く奴らを殴って来た。
小鹿の様に震えるハナに、「逃げろ」「叫べ」「蹴れ」と言って来たレンは
今産まれたての牛の様にぷるぷるしていた。
その濁った目の中に自分への加虐と性欲が浮かんでいる。
無理矢理組み敷いて暴れる身体を押さえつけて、悲鳴と血の中で犯してやりたい
そんな思念が目の中にべったりと張り付いていて
レンはその気持ちの悪さに動けなかった。
いつもなら鼻めがけて殴ってた。
金玉を蹴り上げていた。
ただそうする為には予備動作として息を吸わなくてはいけない。
レンの脳は自衛の為に身体を麻痺したように動かさず、口で呼吸させていた。
レンの目は涙目だ。
図らずも脱げたフードで晒された顔はふるふると庇護欲をそそる。
リーサルウェポン野郎がにんまりと笑いながら片手を肩から顎に伸ばそうとした時。
吹き付ける毒霧にぐぅと歯を食いしばったその時。
ハーブの匂いがふわっと流れて、目の前のリーサルウェポン野郎がグェッととんだ。
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