25 / 63
押しかけ護衛はNoとは言えない
6 恋と呼ぶものかもしれない
しおりを挟む
「風の魔法を足の下に廻せば、三階の窓から出入りできるな」
ボソッと言ったら、レンはすぐに食いついて来た。
すげぇよリンドルム様。
レンの事はお見通しってわけだ。
そのむちっと丸い特異な姿に、誰も喧嘩を売ったり馬鹿にしたり出来ないのは凄く良くわかった。いや、身に染みてわかった。
だってジャダが護衛に名乗り出た時、リンドルム様の糸目がきらっと光ったのだ。
サンドロは割と甘ったれだ。
少子化で厳しく躾けられててもおぼっちゃまで甘ちゃんだ。
でも真っ直ぐで、思い込んだら周りが見えなくなるけどいい奴だ。
一族の端の端の末端の俺にも、年齢が近いと頼ってくる。
今回は番探しだと言う事で、わけ知り顔の年寄りを嫌がって俺に護衛を依頼して来た。
で、お披露目会の一発目でやらかした訳だ。
領主と年寄り達に「お前が見張っていたろうが‼︎」と散々叱られたが、理不尽だと思う。
あの瞬殺に対処できる奴はこの世にいないぞ!いる訳ないぞっ‼︎
殴られた異世界人は顎も目もやられて、生死の境を彷徨ってるという。
なのに反省しないでむしろ不貞腐れているサンドロに、リンドルム様は番の記憶を見せた。何故か俺も一緒に。
多分この時には俺をレンに付けようと考えてたんだと思う。
記憶は…なんというか…心が痛かった。
大事な子供を虐げる奴がこの世にいるなんて信じられなかった。
自分で育てられないなら、欲しいと願う者にやればいい。
子供を求める者は山の様にいるはずだ。
こっちの世界に来て良かったじゃないかとすら思った。
そして何より、痩せこけて目をぎらつかせた子供が必死で妹を庇う姿が切なくて尊くて胸が一杯になった。
殴られても蹴られてもしがみついていくその子を、抱き締めてやりたくて涙がでそうだった。
そうして会ったレンは、銀の星をはらんだ藍色の目と煌めく様な黒曜石の目で俺をじっと見て会釈した。
なんだろう。その静かな視線が心の奥にぽちゃんと落ちて、うわんうわんと水紋を広げていく。
病み上がりの華奢な肩。両手で隠れそうな小さな顔。
あのギラついた獣の様な子供は何処にもいなかった。
まるでお伽話の王子のように、綺麗でおとなしくて静かな子供。
この子供に謝罪を受け入れてもらって、決められた罰則を出来るだけ軽くするのが俺の役目だ。
彼に希望を聞くと、目の中に銀の光が宿った。
「ハナを。」
「ハナの幸せを」
「ハナが」
言うたびに熱風が吹き付ける。
藍色の目から銀の光がこっちを飲み込む様にギラギラと渦巻いた。
ああ、あの子供だ。
飛び付いて噛み付く、獣の様なあの子供だ。
その銀の炎に心が粟立って波打って、嵐の様に揺れ動く。
なんだろうこの気持ち。
その炎に炙られて焼かれたいという憔悴感は
サンドロはハナを見て、「彼女だ」と思ったと言う。
このジリジリと焼ける感じは番とは違うと思う。
でも目を逸らせない。レンを守りたい。
異世界人は子供をつくれる。
魔素に晒されてない身体は、元気な子供を作れる。
番の現れなかったレンを求める声が、あちこちで怨嗟の様に上がっている。
嫌がっても攫ってしまえばこっちのものだと回廊で言ってる奴らがいた。
リンドルム様は怪しげだが公正な人だ。
王も女神の恩寵を折る事はしない。
王宮と縁のない者がレンを絶えず守れればいいのだ。
ジャダは己のしでかした罪に項垂れるサンドロと、領地にまで及ぶその罰を軽減させる為だと護衛を申し出た。
リンドルム様の目がむふんと満足そうに閃くのを見て、操作されているのを悟った。
そうだ、俺は本当は領地だのサンドロの事だの考えてはいない。
俺はこの子供が幸せになるのを見届けたいのだ。
ボソッと言ったら、レンはすぐに食いついて来た。
すげぇよリンドルム様。
レンの事はお見通しってわけだ。
そのむちっと丸い特異な姿に、誰も喧嘩を売ったり馬鹿にしたり出来ないのは凄く良くわかった。いや、身に染みてわかった。
だってジャダが護衛に名乗り出た時、リンドルム様の糸目がきらっと光ったのだ。
サンドロは割と甘ったれだ。
少子化で厳しく躾けられててもおぼっちゃまで甘ちゃんだ。
でも真っ直ぐで、思い込んだら周りが見えなくなるけどいい奴だ。
一族の端の端の末端の俺にも、年齢が近いと頼ってくる。
今回は番探しだと言う事で、わけ知り顔の年寄りを嫌がって俺に護衛を依頼して来た。
で、お披露目会の一発目でやらかした訳だ。
領主と年寄り達に「お前が見張っていたろうが‼︎」と散々叱られたが、理不尽だと思う。
あの瞬殺に対処できる奴はこの世にいないぞ!いる訳ないぞっ‼︎
殴られた異世界人は顎も目もやられて、生死の境を彷徨ってるという。
なのに反省しないでむしろ不貞腐れているサンドロに、リンドルム様は番の記憶を見せた。何故か俺も一緒に。
多分この時には俺をレンに付けようと考えてたんだと思う。
記憶は…なんというか…心が痛かった。
大事な子供を虐げる奴がこの世にいるなんて信じられなかった。
自分で育てられないなら、欲しいと願う者にやればいい。
子供を求める者は山の様にいるはずだ。
こっちの世界に来て良かったじゃないかとすら思った。
そして何より、痩せこけて目をぎらつかせた子供が必死で妹を庇う姿が切なくて尊くて胸が一杯になった。
殴られても蹴られてもしがみついていくその子を、抱き締めてやりたくて涙がでそうだった。
そうして会ったレンは、銀の星をはらんだ藍色の目と煌めく様な黒曜石の目で俺をじっと見て会釈した。
なんだろう。その静かな視線が心の奥にぽちゃんと落ちて、うわんうわんと水紋を広げていく。
病み上がりの華奢な肩。両手で隠れそうな小さな顔。
あのギラついた獣の様な子供は何処にもいなかった。
まるでお伽話の王子のように、綺麗でおとなしくて静かな子供。
この子供に謝罪を受け入れてもらって、決められた罰則を出来るだけ軽くするのが俺の役目だ。
彼に希望を聞くと、目の中に銀の光が宿った。
「ハナを。」
「ハナの幸せを」
「ハナが」
言うたびに熱風が吹き付ける。
藍色の目から銀の光がこっちを飲み込む様にギラギラと渦巻いた。
ああ、あの子供だ。
飛び付いて噛み付く、獣の様なあの子供だ。
その銀の炎に心が粟立って波打って、嵐の様に揺れ動く。
なんだろうこの気持ち。
その炎に炙られて焼かれたいという憔悴感は
サンドロはハナを見て、「彼女だ」と思ったと言う。
このジリジリと焼ける感じは番とは違うと思う。
でも目を逸らせない。レンを守りたい。
異世界人は子供をつくれる。
魔素に晒されてない身体は、元気な子供を作れる。
番の現れなかったレンを求める声が、あちこちで怨嗟の様に上がっている。
嫌がっても攫ってしまえばこっちのものだと回廊で言ってる奴らがいた。
リンドルム様は怪しげだが公正な人だ。
王も女神の恩寵を折る事はしない。
王宮と縁のない者がレンを絶えず守れればいいのだ。
ジャダは己のしでかした罪に項垂れるサンドロと、領地にまで及ぶその罰を軽減させる為だと護衛を申し出た。
リンドルム様の目がむふんと満足そうに閃くのを見て、操作されているのを悟った。
そうだ、俺は本当は領地だのサンドロの事だの考えてはいない。
俺はこの子供が幸せになるのを見届けたいのだ。
61
お気に入りに追加
149
あなたにおすすめの小説
前世である母国の召喚に巻き込まれた俺
るい
BL
国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。
攻略対象者やメインキャラクター達がモブの僕に構うせいでゲーム主人公(ユーザー)達から目の敵にされています。
慎
BL
───…ログインしました。
無機質な音声と共に目を開けると、未知なる世界… 否、何度も見たことがある乙女ゲームの世界にいた。
そもそも何故こうなったのか…。経緯は人工頭脳とそのテクノロジー技術を使った仮想現実アトラクション体感型MMORPGのV Rゲームを開発し、ユーザーに提供していたのだけど、ある日バグが起きる───。それも、ウィルスに侵されバグが起きた人工頭脳により、ゲームのユーザーが現実世界に戻れなくなった。否、人質となってしまい、会社の命運と彼らの解放を掛けてゲームを作りストーリーと設定、筋書きを熟知している僕が中からバグを見つけ対応することになったけど…
ゲームさながら主人公を楽しんでもらってるユーザーたちに変に見つかって騒がれるのも面倒だからと、ゲーム案内人を使って、モブの配役に着いたはずが・・・
『これはなかなか… 面白い方ですね。正直、悪魔が勇者とか神子とか聖女とかを狙うだなんてベタすぎてつまらないと思っていましたが、案外、貴方のほうが楽しめそうですね』
「は…!?いや、待って待って!!僕、モブだからッッそれ、主人公とかヒロインの役目!!」
本来、主人公や聖女、ヒロインを襲撃するはずの上級悪魔が… なぜに、モブの僕に構う!?そこは絡まないでくださいっっ!!
『……また、お一人なんですか?』
なぜ、人間族を毛嫌いしているエルフ族の先代魔王様と会うんですかね…!?
『ハァ、子供が… 無茶をしないでください』
なぜ、隠しキャラのあなたが目の前にいるんですか!!!っていうか、こう見えて既に成人してるんですがッ!
「…ちょっと待って!!なんか、おかしい!主人公たちはあっっち!!!僕、モブなんで…!!」
ただでさえ、コミュ症で人と関わりたくないのに、バグを見つけてサクッと直す否、倒したら終わりだと思ってたのに… 自分でも気づかないうちにメインキャラクターたちに囲われ、ユーザー否、主人公たちからは睨まれ…
「僕、モブなんだけど」
ん゙ん゙ッ!?……あれ?もしかして、バレてる!?待って待って!!!ちょっ、と…待ってッ!?僕、モブ!!主人公あっち!!!
───だけど、これはまだ… ほんの序の口に過ぎなかった。
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
○○に求婚されたおっさん、逃げる・・
相沢京
BL
小さな町でギルドに所属していた30過ぎのおっさんのオレに王都のギルマスから招集命令が下される。
といっても、何か罪を犯したからとかではなくてオレに会いたい人がいるらしい。そいつは事情があって王都から出れないとか、特に何の用事もなかったオレは承諾して王都へと向かうのだった。
しかし、そこに待ち受けていたのは―――・・
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・不定期
突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています
ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた
魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。
そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。
だがその騎士にも秘密があった―――。
その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる