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押しかけ護衛はNoとは言えない

4 たぎるモノよりたべるモノ

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レンは三階を部屋にした。
三階の天井は片側が斜めで観音開きの窓がある。
「風の魔法を足の下に廻せば、ここから出入りができるなぁ」
とジャダがボソッと呟いた事で、レンはカッケェ~と部屋に決めたのだ。
チョロいとジャダがほくそ笑んだ事は内緒だ。


陽に晒されて白っぽくなった玄関の木の扉を開けると、
右側に2階に続く細い階段があって、左側には作業場になっていた。
割とデカい作業場だ。
壁は隣と共用なので窓は無く、中庭から光がはいっている。
コレはこのあたりのスタンダードな作りらしい。
この一階の作業場を店舗にしたり、家畜を飼ってる人もいるそうだ。
この家は引退して田舎に帰ったお爺さんが薬草専門店をしていたらしい。
そのおかげでハーブの様な清々しい香りが染み付いていて、しかも匂いや音漏れしない様な陣が挽いてあるそうだ。

「この広さだと剣や魔法の練習ができるな」
と、ジャダが満足そうに言う。
慣れたらもっと広い訓練場に連れてってくれるそうだ。
冒険者ギルドという人参をぶら下げられているレンは、扱く気満々のジャダによろしく!と返した。


作業場の奥に井戸のある中庭を挟んで台所や食糧庫がある。
地下の貯蔵庫への階段も、揚げ扉であった。

中庭は家庭菜園をしていたのか、膝高までいろんなものが茂っている。

二階には客間も居間も寝室も水回りさえあるのに、ジャダは階段下の作業場の脇の小部屋を部屋にしている。
ベッド入れたらぎゅうぎゅうなのにと言ったら、「護衛ですからね」と返された。
まぁ、真面目人間に何言っても無駄だし、とりあえず慣れるまではと思う。

だいたい異世界人で番がいなくてフリーとか言っても
なんでこんな男一匹、護ったり隠れたりするのかわからない。
まぁこの世界の人の方がいろいろわかってるだろうから否とは言わないが。

そうしてレンの下町共同生活が始まった。


1日目
ストレッチして体術を訓練して、朝食を食べる。
魔力を練ったり剣の素振りしたり、地理を習ってからストレッチして昼食。
魔力の動かし方を習って、体術と勉強をおさらいしてから夕食。
そしたらもうクタクタで、風呂に入ってバッタリだ。

2日目。
3日目。

ここでレンは悲鳴を上げた。

言っておくが筋肉痛とかじゃ無い。
食事だ。
お約束通り食事だ。

早朝からパン売りが歩いてくる。
天秤棒で惣菜売りが呼び込みをしている。
その声がすると、ジャダは器を握って外に出る。

そう、こんなに脳味噌と筋肉を使っているのにその食事は、固いパンと材料も作る工程もわからない味も微妙な惣菜なのだ。
そしてジャダが作った何か刻んで干し肉を入れた塩辛い汁(スープとは認めない!)がもう3日出ている。
段々と生煮えの野菜に火が通って来たその汁は、煮詰まって塩っ辛さが倍増してきてレンはもう沢山だと叫んだのだ。
野菜とか発酵食品とか、身体に良いモノは何処だ‼︎

レンは日本人だ。
偏執的に美味を追及すると言われている日本人だ。
この味覚にダメージを与える様な、やっつけ感のある食べ物は何が何でも許せなかった。
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