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押しかけ護衛はNoとは言えない
1 ハナの卒業
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私、私ね
女神様に『何を望む?』って聞かれたときね
咄嗟に「幸せになりたい」って言ったの。
足元の変な絵に吸い込まれて、訳が分からなくって、死ぬかもって思ったらそう言ってた。
誰にも怖がらないで、大事にされて、笑っていたいって言ったの。
私、自分の事しか考えない馬鹿なの。
いっつも庇ってもらってたのに。
食べ物も真っ先にくれてたのに。
あの男に死ぬ程殴られても守ってくれてたのに。
私、私ね
自分の事しか考え無い、ヒキョウで馬鹿な女なんだ。
ごめんねぇ。
ごめんねぇ、レンちゃん。
私が行かないから修学旅行も我慢してたの知ってるのに。
私って酷い女だよねえ。
それなのに、レンちゃんを置いてこうとしてる。
あの人と一緒に行こうとしてるの。ごめんねぇ。
そうひくひく言って泣くハナをぎゅっと抱きしめる。
うん、馬鹿だ。馬鹿女だ。
「俺はハナが幸せになる様にって望んだ。
だからハナが幸せになりたいって自分から願うのはいっちゃん嬉しいよ。」
それがどうして分からないんだ、馬鹿ハナめ!
なりたいと前向く気持ちを後押し出来るって最高じゃん。
ぎゅっと抱き合ってると、とくんとくんと心音が聞こえて。
それが自分のと一つに重なって、一つの生き物みたいになっている。
あ、俺たち双子じゃん。
母親の胎の中から、こうしてくっ付いていたんだろうな。
蕩けるほどの安心で、泣いて汗ばんだ髪をゆるゆると梳いてやる。
母親に置いてかれた鍵の掛かったアパートで、いつもこうやってくっ付いてた。
あの頃は何も明るいものは無くて、
互いの体温だけが頼みの綱だった。
それが一切リセットされて此処に来たと思えば、未来は明るい筈だ。
「だから幸せになれよ。嫌なら絶対嫌だと言えよ。
自分なんかと諦めるなよ。
あっちもこっちも、ハナはひとりだけなんだからな。
自分で自分を大事にしろよ。あ、ついでにあの男も大事にな。」
ハナはうんうんと何度も頷いた。
出発前夜、吐き出す様にハナは泣いた。
思えば二人は離れたことが無い。
ハナは好きな男との新しい生活の期待と不安で情緒不安定になっている。
レンは泣いた目を冷やしてやる。
せっかくなら美人のままでサンドロさんに渡したい。
ハナはこんなふうにちょっと面倒くさいけど可愛い女だ。
そんなハナを守る役目は、もう終わりになるのだ。
ジャダに聞いたら、領地の人はからっと元気でおおらからしい。
送り出したら俺は身軽だ。
心配で、妬ましくて、ほっとするけど不安で…
複雑な気持ちが混ざり合う。
幼い頃のようにハナの背中をトントンしながら、"花嫁の父"ってこんな感じなんだろうなぁって思った。
それにしても…
ジャダにさん付けを拒否されて、護衛にと迫られて、きょどる俺に
「じゃ、一年と決めてはいかがですぅ?」
と、カールさんが助け船をだしてくれた。
ーー助け船だよな?
ジャダはサンドロさんの従兄弟で、領主一族なので、護衛期間が終わっても家に帰れるそうだ。
渋る俺に、
「このままだとアンパット家は異世界人への襲撃という不名誉で、大変なのですよ。ハナ様との婚姻の他に、被害を受けた方へ専属の護衛を手配したという免罪符が無いと、後々ちょっと可哀想なんですがねぇ」
それ、脅しに近い気がするぞ。
まぁ一年ならいいか。
今後のことで便宜をはかってもらうんだから、それくらいなら。
こうしてレンに押しかけ護衛が出来たのだった。
女神様に『何を望む?』って聞かれたときね
咄嗟に「幸せになりたい」って言ったの。
足元の変な絵に吸い込まれて、訳が分からなくって、死ぬかもって思ったらそう言ってた。
誰にも怖がらないで、大事にされて、笑っていたいって言ったの。
私、自分の事しか考えない馬鹿なの。
いっつも庇ってもらってたのに。
食べ物も真っ先にくれてたのに。
あの男に死ぬ程殴られても守ってくれてたのに。
私、私ね
自分の事しか考え無い、ヒキョウで馬鹿な女なんだ。
ごめんねぇ。
ごめんねぇ、レンちゃん。
私が行かないから修学旅行も我慢してたの知ってるのに。
私って酷い女だよねえ。
それなのに、レンちゃんを置いてこうとしてる。
あの人と一緒に行こうとしてるの。ごめんねぇ。
そうひくひく言って泣くハナをぎゅっと抱きしめる。
うん、馬鹿だ。馬鹿女だ。
「俺はハナが幸せになる様にって望んだ。
だからハナが幸せになりたいって自分から願うのはいっちゃん嬉しいよ。」
それがどうして分からないんだ、馬鹿ハナめ!
なりたいと前向く気持ちを後押し出来るって最高じゃん。
ぎゅっと抱き合ってると、とくんとくんと心音が聞こえて。
それが自分のと一つに重なって、一つの生き物みたいになっている。
あ、俺たち双子じゃん。
母親の胎の中から、こうしてくっ付いていたんだろうな。
蕩けるほどの安心で、泣いて汗ばんだ髪をゆるゆると梳いてやる。
母親に置いてかれた鍵の掛かったアパートで、いつもこうやってくっ付いてた。
あの頃は何も明るいものは無くて、
互いの体温だけが頼みの綱だった。
それが一切リセットされて此処に来たと思えば、未来は明るい筈だ。
「だから幸せになれよ。嫌なら絶対嫌だと言えよ。
自分なんかと諦めるなよ。
あっちもこっちも、ハナはひとりだけなんだからな。
自分で自分を大事にしろよ。あ、ついでにあの男も大事にな。」
ハナはうんうんと何度も頷いた。
出発前夜、吐き出す様にハナは泣いた。
思えば二人は離れたことが無い。
ハナは好きな男との新しい生活の期待と不安で情緒不安定になっている。
レンは泣いた目を冷やしてやる。
せっかくなら美人のままでサンドロさんに渡したい。
ハナはこんなふうにちょっと面倒くさいけど可愛い女だ。
そんなハナを守る役目は、もう終わりになるのだ。
ジャダに聞いたら、領地の人はからっと元気でおおらからしい。
送り出したら俺は身軽だ。
心配で、妬ましくて、ほっとするけど不安で…
複雑な気持ちが混ざり合う。
幼い頃のようにハナの背中をトントンしながら、"花嫁の父"ってこんな感じなんだろうなぁって思った。
それにしても…
ジャダにさん付けを拒否されて、護衛にと迫られて、きょどる俺に
「じゃ、一年と決めてはいかがですぅ?」
と、カールさんが助け船をだしてくれた。
ーー助け船だよな?
ジャダはサンドロさんの従兄弟で、領主一族なので、護衛期間が終わっても家に帰れるそうだ。
渋る俺に、
「このままだとアンパット家は異世界人への襲撃という不名誉で、大変なのですよ。ハナ様との婚姻の他に、被害を受けた方へ専属の護衛を手配したという免罪符が無いと、後々ちょっと可哀想なんですがねぇ」
それ、脅しに近い気がするぞ。
まぁ一年ならいいか。
今後のことで便宜をはかってもらうんだから、それくらいなら。
こうしてレンに押しかけ護衛が出来たのだった。
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