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番は特別らしい

12 三竦みのジレンマ 下

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サンドロは
「君の領地は今後の召喚の儀に参加する事はないだろう」
といい渡された時、愕然とした。
自分への罰では無く、家への罰でも無く、領地。
領地にはアンパット家に使える数多の貴族がいる。
その者達からも”異世界の番を迎えて子供を授かる”という夢を奪ってしまったのだ。
先細りの子孫は、他領に頭を下げて伴侶を貰い受けるしか無くなる。

重すぎる程の罰だが、それ程に重大だったのだ。
女神様からの召喚者の運命を変えてしまった。
その重さを理解できるサンドロは言い返す事も出来なかった。


「これには但し書きが一つある。
貴方がハナ様に真摯に愛を捧ぎ、認められて、一緒に領地に帰る事が出来たら、その罰は軽減される。」

そう、番が二人も出来ないなんて女神様も赦しはしない。
いつもふにゅんと締まりのないリンドルム担当官は有無を許さない空気をしている。
サンドロは勿論です!と答えるしかなかった。


「リンドルム様。私からの言葉をお許しください」

背後に壁のように立っていたジャダが、流れる動きで膝をついて頭を垂れた。

「許します」

「お願いします。俺にレン様の護衛をさせて下さい」

「ジャダ様が⁉︎」

「はい。何者からも命をかけて守り、望まぬ事はさせないと誓います」

ジャダは琥珀色の目を真っ直ぐ向けた。
一途な目だ。
ジャダも従兄弟とはいえ、領主一族に連なる者。
少子化の中で、サンドロと兄弟の様に育った者だ。

サンドロは一瞬唇を動かして、すぐにぎゅっと閉じた。
領地の貴族全てが儀式に参加出来ない事を緩和する提案だ。
その提案に意見を言う資格は自分には無かった。

カールはふむっと小首を傾げた。

ジャダの目は一途だ。
それは職務という色だけでは無いように見える。

カールはポケットに伸びた手を、ぬっと握る。
ジャダにはお披露目会が終わったという事が見えているのだろう。
そうなった後のいざこざも。
レンのどう転ぶかわからない立ち位置も。

カールの豊かな頬がむふんと揺れる。
有りだ。有り。
王宮の紐付きじゃ無い者。
護衛できる実力のある者。
考えたら、なんか適役じゃないかぁ。


ジャダは、その糸目と真っ直ぐに見つめ合った。
その目は自分の細胞までも透かされていようで、必死に耐えた。
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