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番は特別らしい
11 三竦みのジレンマ 上
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カール・リンドルムはぽよんとした下膨れの顔を揺らした。
なんやかやとハナは番に請われている。
あの様子だとサンドロ様は、自分の命よりハナを大事にするだろう。
残るはレンだ。
遂に彼の番は現れなかった。
カールは唸った。
性格は良い。見た目も良い。肝も据わっている。
自分を理不尽に殴った相手に妹を託す程に器も大きい。
なのに番は現れなかった。
番にはもう相手がいて、それを捨てる事が怖くて現れないのかもしれない。
魔石を取り込んでしまった体は、その波動も匂いも変わってしまった。
だから番は彼を認識出来ないのかもしれない。
レンの世界では番というものが無かったという。
……ああ、
カールは丸っこい手をポケットに入れて、ハッとして引き出した。
私の子供も産まれていたらあれくらいだ。
腹の中で石化してしまった子供。
ポケットの中でツルツルになる程に撫でていた石はもう無い。
レンに吸収されてしまった。
初級だが古参の治療師が、傷口を魔石の魔力で覆うのだと叫んだ時。
レンの波動は感じられないくらい微かだった。
王宮には宝石や魔石がじゃらじゃらとそれこそ山の様にあるのに、素のままの魔石は少ない。
加工されてキラキラと飾り立てるものばかりだ。
足りない!足りない‼︎
そう叫ぶ治療師に、それを差し出したのは職務からの事だったと思う。
そしてそれはレンに吸収されてしまった。
気になるのだ。レンの幸せが。
彼の過去を見た時から苦しくて苦しくて、私なら大事にするのにと痛みの様に思ってた。
異世界の若者。番のいない若者。
そんな隙だらけの美味しい餌に、愚か者が注目するのは当たり前だ。
お披露目会が終わって、意識の無いレンに番が現れなかったと言う話は野火の様に広がった。
求婚の釣り書と申し込みが降るように届いた。
自分の一族に元気な子供をと望む奴らが我も我もと湧いて来る。
馬鹿者共はどう勘違いしたのか、「じゃあ、順に子供を産んで貰えば良いのだ」と真面目に言う奴もいる。
ふざけるな。
そんな娼夫の様な立場にレンが甘んずる訳がない。
昔、他国で召喚した者が番の死で心が壊れた時に、つけ込んで無理矢理寄ってたかって子供を産ませようと飼育した者がいた。
女神様の怒りは七日七晩の天災を呼び、国は消え失せたと言う。
それを奴等は何故覚えていない。
どうしたら、レンの望む様にできるだろう。
カールは無意識のうちにポケットに手を入れて慌てて抜き出して、握り合わせて額に当てた。
心を落ち着けてくれる石が無い…
ああ、あの子供を護りたい。
なんやかやとハナは番に請われている。
あの様子だとサンドロ様は、自分の命よりハナを大事にするだろう。
残るはレンだ。
遂に彼の番は現れなかった。
カールは唸った。
性格は良い。見た目も良い。肝も据わっている。
自分を理不尽に殴った相手に妹を託す程に器も大きい。
なのに番は現れなかった。
番にはもう相手がいて、それを捨てる事が怖くて現れないのかもしれない。
魔石を取り込んでしまった体は、その波動も匂いも変わってしまった。
だから番は彼を認識出来ないのかもしれない。
レンの世界では番というものが無かったという。
……ああ、
カールは丸っこい手をポケットに入れて、ハッとして引き出した。
私の子供も産まれていたらあれくらいだ。
腹の中で石化してしまった子供。
ポケットの中でツルツルになる程に撫でていた石はもう無い。
レンに吸収されてしまった。
初級だが古参の治療師が、傷口を魔石の魔力で覆うのだと叫んだ時。
レンの波動は感じられないくらい微かだった。
王宮には宝石や魔石がじゃらじゃらとそれこそ山の様にあるのに、素のままの魔石は少ない。
加工されてキラキラと飾り立てるものばかりだ。
足りない!足りない‼︎
そう叫ぶ治療師に、それを差し出したのは職務からの事だったと思う。
そしてそれはレンに吸収されてしまった。
気になるのだ。レンの幸せが。
彼の過去を見た時から苦しくて苦しくて、私なら大事にするのにと痛みの様に思ってた。
異世界の若者。番のいない若者。
そんな隙だらけの美味しい餌に、愚か者が注目するのは当たり前だ。
お披露目会が終わって、意識の無いレンに番が現れなかったと言う話は野火の様に広がった。
求婚の釣り書と申し込みが降るように届いた。
自分の一族に元気な子供をと望む奴らが我も我もと湧いて来る。
馬鹿者共はどう勘違いしたのか、「じゃあ、順に子供を産んで貰えば良いのだ」と真面目に言う奴もいる。
ふざけるな。
そんな娼夫の様な立場にレンが甘んずる訳がない。
昔、他国で召喚した者が番の死で心が壊れた時に、つけ込んで無理矢理寄ってたかって子供を産ませようと飼育した者がいた。
女神様の怒りは七日七晩の天災を呼び、国は消え失せたと言う。
それを奴等は何故覚えていない。
どうしたら、レンの望む様にできるだろう。
カールは無意識のうちにポケットに手を入れて慌てて抜き出して、握り合わせて額に当てた。
心を落ち着けてくれる石が無い…
ああ、あの子供を護りたい。
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