7 / 63
異世界の事情
5 レンと新しいスタート
しおりを挟む
俺とハナは双子だ。
俺は男だからハナを守る。
俺は兄ちゃんだからハナを大事にする。と思ってた。
母ちゃんは綺麗で可愛いくてハナに似ている楽しい事が好きな鬼だ。
バカなのに夜露死苦という難しい漢字を好むから、俺達も蓮華と華美って言う変な名だ。
"お泊まりデート"にドアに鍵掛けて、パンを一つ投げ込んで二歳児を置いていく様な女だ。
もちろん何日も帰って来ない。
俺は泣くハナを慰めて、散らかるゴミから食べる物が無いか漁った。
父ちゃんは知らない。
時々新しい父ちゃんが出来るけど、大概ろくでなしだった。
母ちゃんの友達ってのがしょっちゅう来るけど、顔を見たら殴られるから、ハナと公園のタコ滑り台の下でいつもしゃがんでた。
ハナは怒鳴られるのに弱い。
大きな声で怒鳴られると震えて動けなくなる。
ハナはすっごく可愛い顔をしてるから、時々母ちゃんの友達が撫でてくる。
頭だけじゃ無く体も触ってくるから、気持ち悪くて隠す様にしている。
ある日そいつが母ちゃんのいない時にハナのパンツを脱がそうとした。
俺はそいつに噛み付いて、動けないハナを引っ張って逃げる。
いつもの公園に逃げようとした。
でもドアは鍵が掛かって開かない。
「クソガキがっ‼︎」
拳骨を喰らって飛んだ。
レンの体はドアに当たって散乱したゴミ袋に転がる。
わ~んと頭の中に羽音が湧く。
怖くて竦んだハナを掴むと、そいつは引きずる様に部屋に戻っていく。
レンは四つん這いのままに後を追うと、そいつのでかい尻に殴りかかった。
「このガキっ!」
腹に蹴りが入って
グボっと胃液が飛ぶ。
そのまま台所テーブルに突っ込んだ。
げぼげぼと体を丸めて息を吐く。
全身がどくんどくんと呻いている。
みるとそいつはハナを布団に突き飛ばしていた。
ハナはブルブル震えて声が出ない。
だめだ‼︎
だめだ‼︎ だめだっ!
熱いのと痛いのにがくがくしながら、テーブルの上のポットを掴んだ。
ハナを返せ!
ハナをいじめるなっ‼︎
ハナのスカートにしゃがみ込むそいつの頭に叩き付ける。
ごずっ。
音がして、ぎゃっと声があがった。
幼いレンでは威力が無い。
それでもそいつは顔を歪めてレンに向かってきた。
こぶしが見える。
頬がぐもっという。
こぶしが見える。
腹がげぼっという。
目の前が赤く染まって、何が何だかわからない。
体が吹っ飛んだ時。
きつく握ってたポットが飛んで、窓を突き破って外に落ちていった。
そのガラスの破裂音がハナの心を揺さぶった。
血飛沫と怒号で凍った心が揺り動く。
「ひぅ…」
微かな嗚咽が、今まで塞がっていた喉を開いてハナは叫んだ。
「いやあぁぁぁっ レンちゃあん!レンちゃあん‼︎」
ガラスの割れる音と女児の甲高い叫びは通行人の注意を引いた。
警察がそいつを捕まえて。
レンは救急車で運ばれた。
レンの側からハナは離れようとしなかった。
そして退院の時、母ちゃんじゃなく爺ちゃんという人がきた。
爺ちゃんはいい人だった。
レンとハナは初めてお腹いっぱい食べた。
隠れて眠る事も無くなった。
そしてゆっくりとハナも笑う様になった。
人生には楽しい事もあると知っていった。
だから異世界に来て、新しいスタートは三度目だ。
二度目は爺ちゃんが死んだ時。
一年前に高校に入学した時、ふうっと亡くなった。
勉強しろって言って、金も遺してくれたからとりあえず高校に行ってる。
でもこの世に二人で取り残されてしまった。
それからは互いがつっかえ棒のようで、支え合っていた。
今度のスタートは異世界だ。
結婚だと言う。
番って、大事で愛おしい魂の半分なんだそうだ。
ハナも大事にしてもらえて守ってもらえるんだ。
そうだよね、もうハナが縋る相手は俺じゃ無い方がいい。
ハナも独り立ちして、好きな相手と生きた方がいい。
今度こそハナが幸せになれる。
俺は男だからハナを守る。
俺は兄ちゃんだからハナを大事にする。と思ってた。
母ちゃんは綺麗で可愛いくてハナに似ている楽しい事が好きな鬼だ。
バカなのに夜露死苦という難しい漢字を好むから、俺達も蓮華と華美って言う変な名だ。
"お泊まりデート"にドアに鍵掛けて、パンを一つ投げ込んで二歳児を置いていく様な女だ。
もちろん何日も帰って来ない。
俺は泣くハナを慰めて、散らかるゴミから食べる物が無いか漁った。
父ちゃんは知らない。
時々新しい父ちゃんが出来るけど、大概ろくでなしだった。
母ちゃんの友達ってのがしょっちゅう来るけど、顔を見たら殴られるから、ハナと公園のタコ滑り台の下でいつもしゃがんでた。
ハナは怒鳴られるのに弱い。
大きな声で怒鳴られると震えて動けなくなる。
ハナはすっごく可愛い顔をしてるから、時々母ちゃんの友達が撫でてくる。
頭だけじゃ無く体も触ってくるから、気持ち悪くて隠す様にしている。
ある日そいつが母ちゃんのいない時にハナのパンツを脱がそうとした。
俺はそいつに噛み付いて、動けないハナを引っ張って逃げる。
いつもの公園に逃げようとした。
でもドアは鍵が掛かって開かない。
「クソガキがっ‼︎」
拳骨を喰らって飛んだ。
レンの体はドアに当たって散乱したゴミ袋に転がる。
わ~んと頭の中に羽音が湧く。
怖くて竦んだハナを掴むと、そいつは引きずる様に部屋に戻っていく。
レンは四つん這いのままに後を追うと、そいつのでかい尻に殴りかかった。
「このガキっ!」
腹に蹴りが入って
グボっと胃液が飛ぶ。
そのまま台所テーブルに突っ込んだ。
げぼげぼと体を丸めて息を吐く。
全身がどくんどくんと呻いている。
みるとそいつはハナを布団に突き飛ばしていた。
ハナはブルブル震えて声が出ない。
だめだ‼︎
だめだ‼︎ だめだっ!
熱いのと痛いのにがくがくしながら、テーブルの上のポットを掴んだ。
ハナを返せ!
ハナをいじめるなっ‼︎
ハナのスカートにしゃがみ込むそいつの頭に叩き付ける。
ごずっ。
音がして、ぎゃっと声があがった。
幼いレンでは威力が無い。
それでもそいつは顔を歪めてレンに向かってきた。
こぶしが見える。
頬がぐもっという。
こぶしが見える。
腹がげぼっという。
目の前が赤く染まって、何が何だかわからない。
体が吹っ飛んだ時。
きつく握ってたポットが飛んで、窓を突き破って外に落ちていった。
そのガラスの破裂音がハナの心を揺さぶった。
血飛沫と怒号で凍った心が揺り動く。
「ひぅ…」
微かな嗚咽が、今まで塞がっていた喉を開いてハナは叫んだ。
「いやあぁぁぁっ レンちゃあん!レンちゃあん‼︎」
ガラスの割れる音と女児の甲高い叫びは通行人の注意を引いた。
警察がそいつを捕まえて。
レンは救急車で運ばれた。
レンの側からハナは離れようとしなかった。
そして退院の時、母ちゃんじゃなく爺ちゃんという人がきた。
爺ちゃんはいい人だった。
レンとハナは初めてお腹いっぱい食べた。
隠れて眠る事も無くなった。
そしてゆっくりとハナも笑う様になった。
人生には楽しい事もあると知っていった。
だから異世界に来て、新しいスタートは三度目だ。
二度目は爺ちゃんが死んだ時。
一年前に高校に入学した時、ふうっと亡くなった。
勉強しろって言って、金も遺してくれたからとりあえず高校に行ってる。
でもこの世に二人で取り残されてしまった。
それからは互いがつっかえ棒のようで、支え合っていた。
今度のスタートは異世界だ。
結婚だと言う。
番って、大事で愛おしい魂の半分なんだそうだ。
ハナも大事にしてもらえて守ってもらえるんだ。
そうだよね、もうハナが縋る相手は俺じゃ無い方がいい。
ハナも独り立ちして、好きな相手と生きた方がいい。
今度こそハナが幸せになれる。
38
お気に入りに追加
131
あなたにおすすめの小説
白い結婚をしたら相手が毎晩愛を囁いてくるけど、魔法契約の破棄は御遠慮いたします。
たまとら
BL
魔道具のせいでイケメンハイスペックなのにチェリー道をいくヴォルフと、ちょっとズレてるレイトの汗と涙とこんちくしょうな白い結婚の物語
過食症の僕なんかが異世界に行ったって……
おがこは
BL
過食症の受け「春」は自身の醜さに苦しんでいた。そこに強い光が差し込み異世界に…?!
ではなく、神様の私欲の巻き添えをくらい、雑に異世界に飛ばされてしまった。まあそこでなんやかんやあって攻め「ギル」に出会う。ギルは街1番の鍛冶屋、真面目で筋肉ムキムキ。
凸凹な2人がお互いを意識し、尊敬し、愛し合う物語。
BLゲーム? いやいや、もふもふパラダイスです。
トムヤムくん
BL
破滅する悪役令息に生まれ変わった主人公は、断罪を回避しようとするが、そもそも恋愛が成立しないことを思い出した。
このゲーム、攻略対象が獣人なのだが、獣人は覚醒するまで、もふもふのけものなのだ。
しかもゲームの主人公以外は獣型と話せない。
迷走する悪役令息の明日はどうなる???
※これは頭をからっぽにして読む系統のお話です。
※こんなゲームあるか!!と思われる皆様、このお話はフィクションです。
※優しいこころでお読みください。会わない方はブラウザバック(^_-)-☆
異世界に召喚されて失明したけど幸せです。
るて
BL
僕はシノ。
なんでか異世界に召喚されたみたいです!
でも、声は聴こえるのに目の前が真っ暗なんだろう
あ、失明したらしいっす
うん。まー、別にいーや。
なんかチヤホヤしてもらえて嬉しい!
あと、めっちゃ耳が良くなってたよ( ˘꒳˘)
目が見えなくても僕は戦えます(`✧ω✧´)
転生したら乙女ゲームの攻略対象者!?攻略されるのが嫌なので女装をしたら、ヒロインそっちのけで口説かれてるんですけど…
リンゴリラ
BL
病弱だった男子高校生。
乙女ゲームあと一歩でクリアというところで寿命が尽きた。
(あぁ、死ぬんだ、自分。……せめて…ハッピーエンドを迎えたかった…)
次に目を開けたとき、そこにあるのは自分のではない体があり…
前世やっていた乙女ゲームの攻略対象者、『ジュン・テイジャー』に転生していた…
そうして…攻略対象者=女の子口説く側という、前世入院ばかりしていた自分があの甘い言葉を吐けるわけもなく。
それならば、ただのモブになるために!!この顔面を隠すために女装をしちゃいましょう。
じゃあ、ヒロインは王子や暗殺者やらまぁ他の攻略対象者にお任せしちゃいましょう。
ん…?いや待って!!ヒロインは自分じゃないからね!?
※ただいま修正につき、全てを非公開にしてから1話ずつ投稿をしております
兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~
クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。
いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。
本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。
誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。
お迎えから世界は変わった
不知火
BL
「お迎えに上がりました」
その一言から180度変わった僕の世界。
こんなに幸せでいいのだろうか
※誤字脱字等あると思いますがその時は指摘をお願い致します🙇♂️
タグでこれぴったりだよ!ってのがあったら教えて頂きたいです!
婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される
田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた!
なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。
婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?!
従者×悪役令息
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる