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異世界の事情
1 魔法陣に落ちる
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足元に変な絵が浮かんで、それがぺかって光ったのはゲーセンのビルの前だった。
双子のハナが「最近、変な視線を感じる」って言うから、誘き出して締めようと思ったのだ。
だから言い逃れ出来ない様に、目撃者の多いゲーセンの入り口で網を張っていた。
ハナはちょっとビビりだ。
ようやく元気な女子高生になってたのに、大声を出されると怯える。
美少女がふるふるするのが刺さるのか、それとも母親に捨てられたのが珍しいのか、俺様野郎がまとわってくる。
そんな奴等をいなしていたら、レンは喧嘩に強くなっていた。
目の中にいきなり光が飛び込んだ。
眩しさにびっくりして、きょろきょろしたら足元からだ。
足元をぐるりと丸く取り囲んだ変な絵が、チカチカと光っている。
薄っすら靴が透けて、足首まで光が溢れて、頭がフリーズした。
いや! ストーカーの罠かっ⁉︎と焦った。
光はすんすんと点滅している。
透けるのが足首から膝へとにじり登って、脚がガラスになっていくようで、気持ち悪くて動けなかった。
「い、いやっ‼︎何これっ⁉︎れんちゃん!」
泣きそうなハナの声で直ぐに頭が冷えた。
見るとハナの足元にもその絵があって光っている。
慌てて手を引っ張って背中に回して庇ったら、絵も一緒に滑って来てその二つが重なって一つになった。
途端に点滅がどんどん速くなっていく。
眩さに目の奥がきりきりして耐えきれずに目を瞑る。
暗闇の中で脳裏に絵の模様がはっきりと浮かび上がり、次の瞬間何故か落下していた。
内臓がひゅんっとなる感覚と、浮遊感が胃と脳を持ち上げて意識が飛びそうだ。
くっついたハナの体温だけが命綱だった。
《ほぉ。妹想いの良き兄じゃのう》何処かで声がする。
《そちは何を望む?》その声は頭の中で響いていた。
しゃらん、しゃらんと音がする。
何処か厳かなその声に、レンはいつも祈っている言葉を唱えた。
「ハナが(飢えずに、殴られずに、怯えずに)幸せになって欲しい」
音が沁み込む静寂の中で、遠くでほほほと笑い声が木霊した。
目を開けても白い闇が広がっている。
上も下もわからないまま轟轟と音を立ててレンを掻き回す。
ぐるぐると渦の中に沈んでいって、たまらずに再びぎゅっと目を閉じながらハナだけは助けてくれと何度か叫んだ。
気が付いたら石の床の上に二人は抱き合ったまま座っていた。
うめき声や息遣いがして、みると他にも人がいた。
ここは境界線の様に丸く囲われた絵の中で、まだ光が残っているそこにレン達は座っていた。
「な、何が起こったんだ…」
「ねぇ、コレ魔法陣っていうヤツ?」
「え、異世界召喚って事⁉︎」
ざわざわする中で、レンは震えるハナの背中を摩りながらあたりを伺っていた。
白い柱から伸びる高い天井はドーム状で窓が無い。
この部屋はそんなに大きく無い円形だ。
そして壁際にはTVで見た事のある白いローブの人が均等に並んでいた。
逃走経路をチェックしていると、パンパンと手を叩く音がした。
「はぁい!皆葉こちらに注目して下さぁい‼︎」
唯一の出入り口の前。
そこにはぽよんとしたあんこ型のおじさんがいた。
双子のハナが「最近、変な視線を感じる」って言うから、誘き出して締めようと思ったのだ。
だから言い逃れ出来ない様に、目撃者の多いゲーセンの入り口で網を張っていた。
ハナはちょっとビビりだ。
ようやく元気な女子高生になってたのに、大声を出されると怯える。
美少女がふるふるするのが刺さるのか、それとも母親に捨てられたのが珍しいのか、俺様野郎がまとわってくる。
そんな奴等をいなしていたら、レンは喧嘩に強くなっていた。
目の中にいきなり光が飛び込んだ。
眩しさにびっくりして、きょろきょろしたら足元からだ。
足元をぐるりと丸く取り囲んだ変な絵が、チカチカと光っている。
薄っすら靴が透けて、足首まで光が溢れて、頭がフリーズした。
いや! ストーカーの罠かっ⁉︎と焦った。
光はすんすんと点滅している。
透けるのが足首から膝へとにじり登って、脚がガラスになっていくようで、気持ち悪くて動けなかった。
「い、いやっ‼︎何これっ⁉︎れんちゃん!」
泣きそうなハナの声で直ぐに頭が冷えた。
見るとハナの足元にもその絵があって光っている。
慌てて手を引っ張って背中に回して庇ったら、絵も一緒に滑って来てその二つが重なって一つになった。
途端に点滅がどんどん速くなっていく。
眩さに目の奥がきりきりして耐えきれずに目を瞑る。
暗闇の中で脳裏に絵の模様がはっきりと浮かび上がり、次の瞬間何故か落下していた。
内臓がひゅんっとなる感覚と、浮遊感が胃と脳を持ち上げて意識が飛びそうだ。
くっついたハナの体温だけが命綱だった。
《ほぉ。妹想いの良き兄じゃのう》何処かで声がする。
《そちは何を望む?》その声は頭の中で響いていた。
しゃらん、しゃらんと音がする。
何処か厳かなその声に、レンはいつも祈っている言葉を唱えた。
「ハナが(飢えずに、殴られずに、怯えずに)幸せになって欲しい」
音が沁み込む静寂の中で、遠くでほほほと笑い声が木霊した。
目を開けても白い闇が広がっている。
上も下もわからないまま轟轟と音を立ててレンを掻き回す。
ぐるぐると渦の中に沈んでいって、たまらずに再びぎゅっと目を閉じながらハナだけは助けてくれと何度か叫んだ。
気が付いたら石の床の上に二人は抱き合ったまま座っていた。
うめき声や息遣いがして、みると他にも人がいた。
ここは境界線の様に丸く囲われた絵の中で、まだ光が残っているそこにレン達は座っていた。
「な、何が起こったんだ…」
「ねぇ、コレ魔法陣っていうヤツ?」
「え、異世界召喚って事⁉︎」
ざわざわする中で、レンは震えるハナの背中を摩りながらあたりを伺っていた。
白い柱から伸びる高い天井はドーム状で窓が無い。
この部屋はそんなに大きく無い円形だ。
そして壁際にはTVで見た事のある白いローブの人が均等に並んでいた。
逃走経路をチェックしていると、パンパンと手を叩く音がした。
「はぁい!皆葉こちらに注目して下さぁい‼︎」
唯一の出入り口の前。
そこにはぽよんとしたあんこ型のおじさんがいた。
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