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そして王宮

41 王族達の印象

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四階のシガールームで寛ぐ。
テールコートを脱げ捨てると、塔の自動人形がすぐに片付けていった。

セバスティンはグラスを受け取って情報の擦り合わせを始める。


セバスティンは隠遁生活の中でも表と繋がっていた。
弟のオーランジェ公爵の領地運営と、授爵された伯爵の領地の運営をしながら世間の情勢を伺っていた。
サモエドに見張らせながら、細く長く伺っていた。



今夜、レリアを見て驚きはそれぞれだった。


王と王妃は驚きと喜びと苦痛で顔を歪めていた。
だろうな。
念願の孫。
正当な孫。
でも手を差し伸べられない。
自分達がそう仕組んだ。

王太子はこの十五年で感情が摩耗したのか、呆然と切なそうに見ていた。
ああ、アレは失った郷愁だ。
自分の、な。
そうやって自分を憐れんで生きていればいいさ。

王太子妃は相変わらず、牛の様な乳をぐんと突き出して、若い娘のドレスを着ていた。
……だが、私は騙されない。
その巨大な乳と宝石に目を眩ませて、Aラインとなった甘めのフワフワしたドレスは腹部を隠している。
若向けの痛ドレスと見えていても、胸から下は可愛いらしく広がったドレスは、その中に秘密を隠しているだろう。

そして第二王子。
知らなかった奴は、心底驚いた顔をして(ザマアミロ)蕩ける様に笑った(チクショウ)
奴は一目でレリアがサフィア様の子供で。
自分の子供だと悟ったのだ。
あんな笑顔をしやがって。
忌々しい……

だがお預けだ。
奴にまだレリアを合わせはしない。
焦れ。
苦しめ。
あの頃の私のように。


物思うセバスティンの横顔をじっと見つめていたサモエドは、自動人形から受け取ったピンチョイスの皿をテーブルにそっと置いた。



「……奴が動き出したよ…」

横顔から目を離さずに囁く。
陶器の人形の様だったセバスティンのまつ毛が、ピクリと震えた。
その言葉がじっくりと脳に落ち込んだらしく、めごっと目が見開かれた。

「……奴が?」

声が掠れている。
振り向いたその唇がわなわなと震えているのに、サモエドは歓喜の熱を味わった。

「そう、奴が。やっとだ。」

セバスティンの口角がゆるゆると上がっていく。
目が三日月のようになった顔は、まるでピエロのデスマスクのようだ。
無理もない。
長かった。
この執着は恋ではないかと思える程に二人で追い求めた。


~~奴~

あの断罪の日。
当たり前だが、セバスティンがいたのなら、あんな真似はさせなかった。



ミラーテには熱烈な信奉者が、王太子以外に二人いた。
騎士団長の息子のゼラスと、財務大臣の息子のモリナロルだ。
ゼラスは気のいい脳筋馬鹿で。
言うなれば犬の様に、骨を与えて上手く使う事が出来る男だった。

そしてモリナロルは。

セバスティンはレリアに、理性とモラルと罪悪感は人の心の中の怪物だ。と、言った。
だが、ソレを初めから持たない者もいる。
モリナロルは持たない者だった。

多分、彼はミラーテを心底愛しているのだと思う。
ソレはセックスとは別の、もっとドロリと深い所で。

セバスティンの人に畏れを抱かせるタイプとは違い、モリナロルはむしろ侮られるほどに柔らかく腰が低い。
だが本当は底なし沼の様な奴で。
セバスティンとは同族嫌悪で、言葉を交わすこともなく警戒しあっていた。


あの時、ミラーテは、パーティーの最中に華々しくヒロインになって王妃になりたい。
と、望んだ。


それがあの断罪劇の始まりだった。


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