41 / 84
そして王宮
41 王族達の印象
しおりを挟む
四階のシガールームで寛ぐ。
テールコートを脱げ捨てると、塔の自動人形がすぐに片付けていった。
セバスティンはグラスを受け取って情報の擦り合わせを始める。
セバスティンは隠遁生活の中でも表と繋がっていた。
弟のオーランジェ公爵の領地運営と、授爵された伯爵の領地の運営をしながら世間の情勢を伺っていた。
サモエドに見張らせながら、細く長く伺っていた。
今夜、レリアを見て驚きはそれぞれだった。
王と王妃は驚きと喜びと苦痛で顔を歪めていた。
だろうな。
念願の孫。
正当な孫。
でも手を差し伸べられない。
自分達がそう仕組んだ。
王太子はこの十五年で感情が摩耗したのか、呆然と切なそうに見ていた。
ああ、アレは失った郷愁だ。
自分の、な。
そうやって自分を憐れんで生きていればいいさ。
王太子妃は相変わらず、牛の様な乳をぐんと突き出して、若い娘のドレスを着ていた。
……だが、私は騙されない。
その巨大な乳と宝石に目を眩ませて、Aラインとなった甘めのフワフワしたドレスは腹部を隠している。
若向けの痛ドレスと見えていても、胸から下は可愛いらしく広がったドレスは、その中に秘密を隠しているだろう。
そして第二王子。
知らなかった奴は、心底驚いた顔をして(ザマアミロ)蕩ける様に笑った(チクショウ)
奴は一目でレリアがサフィア様の子供で。
自分の子供だと悟ったのだ。
あんな笑顔をしやがって。
忌々しい……
だがお預けだ。
奴にまだレリアを合わせはしない。
焦れ。
苦しめ。
あの頃の私のように。
物思うセバスティンの横顔をじっと見つめていたサモエドは、自動人形から受け取ったピンチョイスの皿をテーブルにそっと置いた。
「……奴が動き出したよ…」
横顔から目を離さずに囁く。
陶器の人形の様だったセバスティンのまつ毛が、ピクリと震えた。
その言葉がじっくりと脳に落ち込んだらしく、めごっと目が見開かれた。
「……奴が?」
声が掠れている。
振り向いたその唇がわなわなと震えているのに、サモエドは歓喜の熱を味わった。
「そう、奴が。やっとだ。」
セバスティンの口角がゆるゆると上がっていく。
目が三日月のようになった顔は、まるでピエロのデスマスクのようだ。
無理もない。
長かった。
この執着は恋ではないかと思える程に二人で追い求めた。
~~奴~
あの断罪の日。
当たり前だが、セバスティンがいたのなら、あんな真似はさせなかった。
ミラーテには熱烈な信奉者が、王太子以外に二人いた。
騎士団長の息子のゼラスと、財務大臣の息子のモリナロルだ。
ゼラスは気のいい脳筋馬鹿で。
言うなれば犬の様に、骨を与えて上手く使う事が出来る男だった。
そしてモリナロルは。
セバスティンはレリアに、理性とモラルと罪悪感は人の心の中の怪物だ。と、言った。
だが、ソレを初めから持たない者もいる。
モリナロルは持たない者だった。
多分、彼はミラーテを心底愛しているのだと思う。
ソレはセックスとは別の、もっとドロリと深い所で。
セバスティンの人に畏れを抱かせるタイプとは違い、モリナロルはむしろ侮られるほどに柔らかく腰が低い。
だが本当は底なし沼の様な奴で。
セバスティンとは同族嫌悪で、言葉を交わすこともなく警戒しあっていた。
あの時、ミラーテは、パーティーの最中に華々しくヒロインになって王妃になりたい。
と、望んだ。
それがあの断罪劇の始まりだった。
テールコートを脱げ捨てると、塔の自動人形がすぐに片付けていった。
セバスティンはグラスを受け取って情報の擦り合わせを始める。
セバスティンは隠遁生活の中でも表と繋がっていた。
弟のオーランジェ公爵の領地運営と、授爵された伯爵の領地の運営をしながら世間の情勢を伺っていた。
サモエドに見張らせながら、細く長く伺っていた。
今夜、レリアを見て驚きはそれぞれだった。
王と王妃は驚きと喜びと苦痛で顔を歪めていた。
だろうな。
念願の孫。
正当な孫。
でも手を差し伸べられない。
自分達がそう仕組んだ。
王太子はこの十五年で感情が摩耗したのか、呆然と切なそうに見ていた。
ああ、アレは失った郷愁だ。
自分の、な。
そうやって自分を憐れんで生きていればいいさ。
王太子妃は相変わらず、牛の様な乳をぐんと突き出して、若い娘のドレスを着ていた。
……だが、私は騙されない。
その巨大な乳と宝石に目を眩ませて、Aラインとなった甘めのフワフワしたドレスは腹部を隠している。
若向けの痛ドレスと見えていても、胸から下は可愛いらしく広がったドレスは、その中に秘密を隠しているだろう。
そして第二王子。
知らなかった奴は、心底驚いた顔をして(ザマアミロ)蕩ける様に笑った(チクショウ)
奴は一目でレリアがサフィア様の子供で。
自分の子供だと悟ったのだ。
あんな笑顔をしやがって。
忌々しい……
だがお預けだ。
奴にまだレリアを合わせはしない。
焦れ。
苦しめ。
あの頃の私のように。
物思うセバスティンの横顔をじっと見つめていたサモエドは、自動人形から受け取ったピンチョイスの皿をテーブルにそっと置いた。
「……奴が動き出したよ…」
横顔から目を離さずに囁く。
陶器の人形の様だったセバスティンのまつ毛が、ピクリと震えた。
その言葉がじっくりと脳に落ち込んだらしく、めごっと目が見開かれた。
「……奴が?」
声が掠れている。
振り向いたその唇がわなわなと震えているのに、サモエドは歓喜の熱を味わった。
「そう、奴が。やっとだ。」
セバスティンの口角がゆるゆると上がっていく。
目が三日月のようになった顔は、まるでピエロのデスマスクのようだ。
無理もない。
長かった。
この執着は恋ではないかと思える程に二人で追い求めた。
~~奴~
あの断罪の日。
当たり前だが、セバスティンがいたのなら、あんな真似はさせなかった。
ミラーテには熱烈な信奉者が、王太子以外に二人いた。
騎士団長の息子のゼラスと、財務大臣の息子のモリナロルだ。
ゼラスは気のいい脳筋馬鹿で。
言うなれば犬の様に、骨を与えて上手く使う事が出来る男だった。
そしてモリナロルは。
セバスティンはレリアに、理性とモラルと罪悪感は人の心の中の怪物だ。と、言った。
だが、ソレを初めから持たない者もいる。
モリナロルは持たない者だった。
多分、彼はミラーテを心底愛しているのだと思う。
ソレはセックスとは別の、もっとドロリと深い所で。
セバスティンの人に畏れを抱かせるタイプとは違い、モリナロルはむしろ侮られるほどに柔らかく腰が低い。
だが本当は底なし沼の様な奴で。
セバスティンとは同族嫌悪で、言葉を交わすこともなく警戒しあっていた。
あの時、ミラーテは、パーティーの最中に華々しくヒロインになって王妃になりたい。
と、望んだ。
それがあの断罪劇の始まりだった。
5
お気に入りに追加
301
あなたにおすすめの小説
薬師は語る、その・・・
香野ジャスミン
BL
微かに香る薬草の匂い、息が乱れ、体の奥が熱くなる。人は死が近づくとこのようになるのだと、頭のどこかで理解しそのまま、身体の力は抜け、もう、なにもできなくなっていました。
目を閉じ、かすかに聞こえる兄の声、母の声、
そして多くの民の怒号。
最後に映るものが美しいものであったなら、最後に聞こえるものが、心を動かす音ならば・・・
私の人生は幸せだったのかもしれません。※「ムーンライトノベルズ」で公開中
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。
やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。
昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと?
前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。
*ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。
*フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。
*男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。
眠れぬ夜の召喚先は王子のベッドの中でした……抱き枕の俺は、今日も彼に愛されてます。
櫻坂 真紀
BL
眠れぬ夜、突然眩しい光に吸い込まれた俺。
次に目を開けたら、そこは誰かのベッドの上で……っていうか、男の腕の中!?
俺を抱き締めていた彼は、この国の王子だと名乗る。
そんな彼の願いは……俺に、夜の相手をして欲しい、というもので──?
【全10話で完結です。R18のお話には※を付けてます。】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる