上 下
25 / 84
学園

25 サモエドの楽しみ

しおりを挟む
夜、サモエドの一日はその日録画したデーターを編集することで終わる。

サモエドはセバスティンの依頼、そして自分の趣味と、一石二鳥の気分で王都のあちこちに録画の魔道具を放している。
ソレは固定のものだけじゃ無く、たとえば温室では虫として飛んでいる。
個人を特定して付けている物もある。

ソレを夜、編集する。
画として空中にぱっぱっと映し出して、保存するものをピックアップする。

会議室の議事録や、魔導師達の汚職や贈賄は、もちろん大好物だ。
ちゃんと個人に振り分けて保存している。
(もしもの為の保険として)

王宮の片隅に映るものの中に、"小さな恋の物語""愛と欲望の狭間"と、勝手に銘打ったシリーズがある。
まあ、侍女や騎士の恋のあれこれだったりするが。
今日もそれのファイルにデータが増えることをにんまりして、ワインを注いだ。

他人の本気は自分の愉しみ。

こうやって日の終わりにワイン片手に愉しむのはとても心地良い。
たまに、とても心を寄り添わせたて応援している健気な娘と、町ですれ違ったりするとドキマギする。
向こうはもちろん自分の事をこれっぽっちも知らない事が、さらに背徳感を満足させる。
そんな罪悪感さえ日々を彩るスパイスとして、サモエドは楽しんでいた。




「ん”っ⁉︎」


画像を流していた右手の人差し指をピクリと止める。

そこには眼鏡を外したレリアと、ザラド王子が一つのベンチに座っていた。


何だコレ。

思わず拡大する。
音もボリュームをあげていく。

「残された人は幸せに暮らしているとずっと思ってました。」

レリアの言葉にザラドは目を見開いている。

「いつまでもいつまでも悪役にさせられているなんて惨めすぎる。」

その言葉はザラドだけじゃ無く、サモエドの心も鷲掴んだ。



驚いた。


ザラド王子があけすけに告解している。
そりゃ、そういう効果のものをベンチに付加したけれどね。
それでも王子として、これだけ魔力が高ければちんけな付加魔道具に抗えるはずだ。
それなのに腹の中を素直に吐き出している。

そしてレリア。
本音を吐く姿は久しぶりに見た。



………この二人。
どういう化学反応が起こるんだろう。
コレで状況が変わるのか?


サモエドは、ぼんやりしていて人肌に温まったワインをぐいっとあおった。
そしてそのデータを、自分以外は開けられない収納空間に押し込んだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

薬師は語る、その・・・

香野ジャスミン
BL
微かに香る薬草の匂い、息が乱れ、体の奥が熱くなる。人は死が近づくとこのようになるのだと、頭のどこかで理解しそのまま、身体の力は抜け、もう、なにもできなくなっていました。 目を閉じ、かすかに聞こえる兄の声、母の声、 そして多くの民の怒号。 最後に映るものが美しいものであったなら、最後に聞こえるものが、心を動かす音ならば・・・ 私の人生は幸せだったのかもしれません。※「ムーンライトノベルズ」で公開中

(…二度と浮気なんてさせない)

らぷた
BL
「もういい、浮気してやる!!」 愛されてる自信がない受けと、秘密を抱えた攻めのお話。 美形クール攻め×天然受け。 隙間時間にどうぞ!

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

「今日DK卒業した18歳童貞の変態です… おじさんたちのチンポでっ…ボクにケツイキを教えてくださいっ……!」

えら(プロフ画像 あじよし様)
BL
学生時代に自覚したゲイセクシャル。片想いの同級生にはその気持ちを伝えられず、親には受け入れられず… 愛を求めた18歳の男の子【モモヤ】が DK卒業のその日に、愛を求めておじさんたち50人とホテルでまぐわうお話。(表紙 Canvaで作成)

異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。

やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。 昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと? 前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。 *ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。 *フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。 *男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。

小さい頃、近所のお兄さんに赤ちゃんみたいに甘えた事がきっかけで性癖が歪んでしまって困ってる

海野
BL
小さい頃、妹の誕生で赤ちゃん返りをした事のある雄介少年。少年も大人になり青年になった。しかし一般男性の性の興味とは外れ、幼児プレイにしかときめかなくなってしまった。あの時お世話になった「近所のお兄さん」は結婚してしまったし、彼ももう赤ちゃんになれる程可愛い背格好では無い。そんなある日、職場で「お兄さん」に似た雰囲気の人を見つける。いつしか目で追う様になった彼は次第にその人を妄想の材料に使うようになる。ある日の残業中、眠ってしまった雄介は、起こしに来た人物に寝ぼけてママと言って抱きついてしまい…?

眠れぬ夜の召喚先は王子のベッドの中でした……抱き枕の俺は、今日も彼に愛されてます。

櫻坂 真紀
BL
眠れぬ夜、突然眩しい光に吸い込まれた俺。 次に目を開けたら、そこは誰かのベッドの上で……っていうか、男の腕の中!? 俺を抱き締めていた彼は、この国の王子だと名乗る。 そんな彼の願いは……俺に、夜の相手をして欲しい、というもので──? 【全10話で完結です。R18のお話には※を付けてます。】

処理中です...