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学園
2 ざまぁのカケラ
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「馬鹿を吐かすなぁ‼︎」
ザラドは声を張り上げる。
何度も言うが、ここは図書室。
私語厳禁なのだ。
「リーリアは嘘などつかんぞっ。
どこにそんな証拠がある!」
うん。
五月蝿い。
大声大会じゃないんだから。
「そうよ、そうよ。
私はいつも虐められてるのよぉ。」
固めていた男の腕をゆっくり離し、レリアは散らばっていた本を拾う。
ああ、こんなに汚れちゃったよ。
丁寧に本の汚れを拭ってると、ザラドが再び叫んだ。
「貴様!返事しろっ!」
レリアはふう、とため息をつくと本を掲げた。
「まず本好きのシャルア様は、本をこんなになる事はしません。シャルア様の背後でそちらの女性が本をばら撒いたのです。」
「ひっどぉい 私だって本好きよぉ。
本を探していたら、いきなり足を引っ掛けられたのよぉ!」
ウルウルした女性は、成る程小動物の可愛いさだ。
ザラドはでれりと崩れる。
「ほう、本を探して。…どんな?」
「えっ、あっ、課題の為の本よぉ!」
「課題か。リーリアは勉強熱心ですねぇ。」
三人組がうんうんと頷く。
~~そんな訳あるかぁ!
「『美味しい魔物料理』『ダム建設と灌漑事業』『君を探して(R15)』『星の子供達』……この参考資料を使うなんて、どの様な課題ですか?」
タイトルを読み上げると、リーリアは真っ赤になって口籠った。
「ソレにね、証人では無く証拠が欲しいならお出し致しますよ。
ここは図書室。貴重な本が沢山ありますしね。」
レリアはにっこり笑った。
天井に付いたどう見ても滲みを指差す。
「もしもの為の記録の魔道具があちこちにございます。司書に願って見せて頂きましょうね。」
びくん!
釣り上がった魚の様に、リーリアが跳ね上がった。
赤い顔が青黒くまだらになっている。
「ザ、ザラド様ぁ。私、ショックで疲れちゃいましたぁ。お茶を頂きたいですぅ。」
「いや、理不尽な所業はきちんと処理しなくては。」
「ぁあぁ…、めまいが致しますぅ…」
「リーリア!可哀想に!わかった。サロンに行こう」
ザラドはリーリアを姫抱っこして、怒涛のように走り去った。
……呆然とした静けさが図書室に流れる。
何処からかクスッと笑いが流れ、人が動き出す気配がする。
何もなかったように始まる図書室の流れに、レリアはこの寸劇が珍しくない事を感じた。
「ありがとう、レリア。」
シャルアはため息混じりにそう言った。
手にした本をそうっと棚に戻す。
「ここにそんな高度な魔道具があったなんて知らなかったわ。」
「うん。僕も知らないよ。」
「えっ?」
はい、出まかせでーす。
シャルアはクスッと笑うと、図書室だと言うことを思い出して口に手を当てた。
そう、私語厳禁だからね。
可哀想な本達を司書にお願いすると、レリアとシャルアは図書室を出る。
「ごめんなさいね。貴方、目立たずに暮らしたいって言ってたのに。」
もう、あの王子グループに目をつけられちゃったわよ。
そう、レリアは今シャルアの家から学園に通っている。
まあ、親戚ポジだ。
入学から、とにかく目立たずに過ごしてきた。
シャルアは案じてくれたけど。
大丈夫。
訳の分からない言い掛かりに、黙っていたら自分のプライドが傷ついちゃうし。
どうせもうすぐデビュタントだ。
セバスの目論見通りなら、否応もなく目立つことになる。
ザラドは声を張り上げる。
何度も言うが、ここは図書室。
私語厳禁なのだ。
「リーリアは嘘などつかんぞっ。
どこにそんな証拠がある!」
うん。
五月蝿い。
大声大会じゃないんだから。
「そうよ、そうよ。
私はいつも虐められてるのよぉ。」
固めていた男の腕をゆっくり離し、レリアは散らばっていた本を拾う。
ああ、こんなに汚れちゃったよ。
丁寧に本の汚れを拭ってると、ザラドが再び叫んだ。
「貴様!返事しろっ!」
レリアはふう、とため息をつくと本を掲げた。
「まず本好きのシャルア様は、本をこんなになる事はしません。シャルア様の背後でそちらの女性が本をばら撒いたのです。」
「ひっどぉい 私だって本好きよぉ。
本を探していたら、いきなり足を引っ掛けられたのよぉ!」
ウルウルした女性は、成る程小動物の可愛いさだ。
ザラドはでれりと崩れる。
「ほう、本を探して。…どんな?」
「えっ、あっ、課題の為の本よぉ!」
「課題か。リーリアは勉強熱心ですねぇ。」
三人組がうんうんと頷く。
~~そんな訳あるかぁ!
「『美味しい魔物料理』『ダム建設と灌漑事業』『君を探して(R15)』『星の子供達』……この参考資料を使うなんて、どの様な課題ですか?」
タイトルを読み上げると、リーリアは真っ赤になって口籠った。
「ソレにね、証人では無く証拠が欲しいならお出し致しますよ。
ここは図書室。貴重な本が沢山ありますしね。」
レリアはにっこり笑った。
天井に付いたどう見ても滲みを指差す。
「もしもの為の記録の魔道具があちこちにございます。司書に願って見せて頂きましょうね。」
びくん!
釣り上がった魚の様に、リーリアが跳ね上がった。
赤い顔が青黒くまだらになっている。
「ザ、ザラド様ぁ。私、ショックで疲れちゃいましたぁ。お茶を頂きたいですぅ。」
「いや、理不尽な所業はきちんと処理しなくては。」
「ぁあぁ…、めまいが致しますぅ…」
「リーリア!可哀想に!わかった。サロンに行こう」
ザラドはリーリアを姫抱っこして、怒涛のように走り去った。
……呆然とした静けさが図書室に流れる。
何処からかクスッと笑いが流れ、人が動き出す気配がする。
何もなかったように始まる図書室の流れに、レリアはこの寸劇が珍しくない事を感じた。
「ありがとう、レリア。」
シャルアはため息混じりにそう言った。
手にした本をそうっと棚に戻す。
「ここにそんな高度な魔道具があったなんて知らなかったわ。」
「うん。僕も知らないよ。」
「えっ?」
はい、出まかせでーす。
シャルアはクスッと笑うと、図書室だと言うことを思い出して口に手を当てた。
そう、私語厳禁だからね。
可哀想な本達を司書にお願いすると、レリアとシャルアは図書室を出る。
「ごめんなさいね。貴方、目立たずに暮らしたいって言ってたのに。」
もう、あの王子グループに目をつけられちゃったわよ。
そう、レリアは今シャルアの家から学園に通っている。
まあ、親戚ポジだ。
入学から、とにかく目立たずに過ごしてきた。
シャルアは案じてくれたけど。
大丈夫。
訳の分からない言い掛かりに、黙っていたら自分のプライドが傷ついちゃうし。
どうせもうすぐデビュタントだ。
セバスの目論見通りなら、否応もなく目立つことになる。
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